ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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 あまり使ってる人少ないですけど、作者的にはここ好きが多いと嬉しかったりします。面白いと思ったり良いと思った文賞には横スワイプしてみてください!

 あと活動報告書きたいので匿名解除します。
 一応完結までの構想は練ってるので多分エタらないはず。



終幕

 

 

 

「お疲れ。惜しかったわね」

 

 推薦種目2種目目の四方綱引きを終え、テントに戻ると神室さんが労いの言葉をかけてきた。隣にはアリスの姿も見える

 

「うん。やっぱあのチームは強いね」

 

 それに片手を上げながら答える。

 鬼頭君、橋本君、葛城君を連れたAクラス最強布陣で挑んだ試合だったが、結果としては第2位。惜しくもCクラスに敗北を喫したのだった。

 綾小路、須藤の組み合わせがチートすぎる。単純な力で多分あの2人に勝てる人なんてそうそう居ないからな。

 

「それはそうと、早く坂柳のやつを何とかしてくれない? あんたが借り物競争で綾小路のやつを引っ張っていってからずっと不機嫌なんだけど」

 

「ええ……」

 

 先程から黙ったままだと思っていたらそんな理由があったとは。

 

「……」

 

 今にも『つーん』と言いそうな雰囲気をまといながら、こちらと頑なに目を合わせようとしない有栖。

 何だこの生き物。可愛すぎるだろ。

 

「いや、あれはしょうがないでしょ? 1番の友達ってお題だったんだし。お前と俺の関係はそうじゃないだろ?」

 

「ふーん。じゃあここで証明してください」

 

 そう言った有栖はジリジリと四つん這いでこちらに這い寄る。

 えっ、何。ここでキスされんの俺? 神室さんの目の前で? 

 

「ふふっ、いいでしょう」

 

 戦慄しながら出方を伺っていたのだが、有栖がとった行動はあぐらをかいた俺の股の間に収まることだった。

 そのまま有栖は顎の辺りに後頭部をコツンと当ててくる。その行動の意味を理解した俺は、右手でサラサラとした銀髪を撫で始めた。

 

「……随分手慣れてるけど、あんたたちいっつもそんなことやってるの?」

 

「いくら真澄さんと言えどこのポジションはあげませんよ。私は旭くんみたいなNTR好きとは違う「馬鹿」……んっ」

 

 サラッとエグい発言を投下しようとした有栖の口を、その白くて柔らかい頬をつまむことで閉ざす。

 

「あぅ……むー。んあっ」

 

 腹が立ったのでそのままこねくり回してやる。……赤ん坊の肌みたいだな。キメ細かくてニキビも一切ない。

 最後に頬を指で軽く弾くと、有栖は得意気に胸を張った。

 

「どうですか真澄さん。羨ましいでしょう?」

 

 そう言ってマウントを取る有栖は、それはそれは絵に書いたようなドヤ顔を浮かべているのだろう。表情を伺うことは出来ないが容易に想像できる。

 

「……いや、別に」

 

「……ちょっと迷いましたね。真澄さんは案外ロマンチストなところがありますから。浮気はダメですよ旭くん」

 

「しねぇよ」

 

 こんな可愛い彼女がいてなんで浮気できるんだ。お前はもっと自信持てよ。……まあ恋愛面で自己肯定感が無いのは俺のせい何だけどな。

 恥ずかしい気持ちもあるが、ちゃんと正直に愛してやらないとな。もう二度と不安にさせないって誓ったんだし。

 

「んっ」

 

 後ろから小さい背中を抱きしめると、有栖は少し苦しそうに声を漏らした。今までもスキンシップは色々としてきたが、そのときとは互いの立場も考え方も全く違う。

 速くなった互いの心臓の鼓動を感じながら、心底俺はこいつの事が好きなんだと再確認するのだった。

 

「全く。怒ってるとか言っておいてすぐ機嫌よくするんだから。私はもう行くけど、イチャつくのに夢中で遅れないでよ?」

 

「はーい」

 

 ため息とともに、神室さんはテントを出ていった。

 

「気まずそうでしたね」

 

 微笑みながら穏やかな口調で語る有栖。

 

「こんな事してたら流石にそうなるっしょ」

 

 傍から見たら俺たちは付き合いたてのバカップルにしか見えないんだろう。

 だが実際は人生の半分以上を共に過ごしてきた幼馴染だ。正直家族と言っても良い。少なくとも俺はこいつや坂柳さんたちのことは家族だと思っている。

 

「ふふっ。……いつまで続くんでしょうね。晩年でこんな事してたら流石に恥ずかしいと思いませんか?」

 

「いいや。全然」

 

 こうして有栖とくっついてる瞬間が、俺にとっては1番安心出来る時間なんだ。何にも代えがたい幸せな時間。

 それが変わらない限り、多分俺たちはずっとこのままだ。

 

「……私もですよ。愛しています、旭くん」

 

「ああ。俺もだ」

 

 有栖の言葉に応え、股の間に座る有栖を持ち上げこちらを向けさせる。

 テントの外からは試合中の上級生を応援する声と、野太い掛け声が聞こえてくる。そんな中、俺は体育祭とはかけ離れた、湿った空気にあてられてしまったのだろう。

 頬を赤らめてこちらを上目遣いで見つめる有栖を見て、俺は自然にその小さな唇に口付けをしていた。

 

「んっ……」

 

 艶っぽくて柔らかく、そして甘い匂いがする。

 両手で小さな頬を包みこむと、貪るようにそれを引き寄せる。

 呼吸が苦しくなるまでそれを続け、少し離れて互いの目を見やる2人。

 

「有栖」

 

 心臓の鼓動が更に早まるのを感じる。まるでトレーニングで追い込みをかけた後のようにうるさい。

 そんなふしだらな体を鬱陶しく思いながら、ぼんやりとした思考で最愛の女性の名前を呼ぶ。

 

「っ……だめです。こんな場所で……見つかったら大変ですよ」

 

 自然に自身の胸に伸びていた俺の手を取ると、有栖は正面から抱きついてきた。

 

「今日は帰ってきてからって言ったじゃないですか。ちゃんと待っててあげますから。まずは目先のことを済ませちゃいましょう?」

 

「……うん」

 

 色々と限界だが、ここで欲に負けるのは色々と終わっている。

 断腸の思いで伸ばした手を引っ込め、1度大きく深呼吸をした。

 

「危ねぇ……」

 

「本当ですよ。やはり私たちも人間、三大欲求には勝てないみたいです」

 

 そんなことを言う有栖だが、体がスっと軽くなっため良しとしよう。

 それと同時に、俺は心底この可愛い彼女に依存しているんだと再度自覚する。

 

「じゃあ、頑張ってください。……速く帰って来てくださいね?」

 

 そして、多分それは有栖も同じだ。

 俺たちは、どうしようもないくらい依存し合う、共依存の関係なんだろう。

 俺は、有栖がいない世界なんて考えられない。

 

「うん。頑張るね」

 

 だが、そんな関係も悪くは無い。

 そう思いながら、俺は目の前の愛しい彼女に言葉を返すであった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 恐らくオレの人生で最も気まずかったであろう堀北との二人三脚を終え、残るは競技は3学年合同1200メートルリレーだけとなった。

 体育祭のクライマックス、それも3学年合同となるとその競技を見届けようと残った生徒や教員が観客席にごった返しになっている。

 

「やっぱりアンカーだよなお前は」

 

 レーンの内側で待機しているオレに話しかけできたのは九条。体育祭でしのぎを削りあったライバルだ。

 

「そりぁあな。ここで決着をつけるつもりで来たんだし」

 

 恐らく今までの戦績はほとんど五分五分。騎馬戦で負けていることを考慮しても微々たる差だろう。

 

「勘弁してくれよ。200メートルならおまえの方が速えだろ」

 

「分からんぞ。何せこれは短距離走じゃなくてリレーだからな」

 

 確かに単純な走力ではオレに分があるだろうが、それもコンマ秒単位の話だ。十数メートルの差を縮められるほどの差はない。

 平田や須藤、堀北などCクラスには精鋭が揃っているが、それは相手のクラスも同じ。試合展開によっては隣を走ることなく結果が決まることだってありえる。

 

「随分と楽しそうだな九条」

 

 そんな俺たちに話しかけてきたのは生徒会長の堀北学。

 体育祭でも浮ついは様子は一切なく、凛としたたたずまいで立っている。しかし、九条と同様にその表情は何処か期待が見え隠れしていた。

 

「学さん! そりゃもちろんっすよ。今回のリレーでこいつと決着着けるんですから」

 

「ほう? 綾小路とか」

 

 堀北兄とはちょくちょく部活に顔を出してくるので顔見知り程度の関係性はあるのだが、いかんせん堀北の兄だという事実が少し気まずさを生じさせる。

 ……まあ、借り物競争やその他もろもろの話は伝わってないはずだから、今に限っては大丈夫だと思うが。

 

「鈴音と懇意にしているそうだな」

 

全然伝わってたんだが。

 堀北兄は堀北との血筋を感じさせる鋭い眼光をこちらに向け、圧力を強めてきた。

 

「九条からすべて聞いている。まさかあの鈴音に男が出来るとは思ってもみなかった」

 

「……いや、付き合ってはないぞ。おい九条、お前ある事無い事吹き込んでるだろ?」

 

「んー? 何のことかな?」

 

 ……こいつ、後で絶対泣かせてやる。

 そんな決意を胸に抱いたタイミングで、ついに最後のリレーがスタートした。

 オレ達Cクラスの学年順位は恐らく3位。1位であるAクラスに逆転することはほぼ不可能だが、Bクラスとは現在僅差で並んでいる状況。リレーの結果で逆転もありうる。そしてオレ自身の最優秀生徒賞もかかっている負けられない戦いだ。

 

「須藤が一番手か。こりゃキッツい展開になりそうだな」

 

 圧倒的な走力で他の集団に15メートル程さを付けた須藤。それを見て九条が呟く。しかしそこに諦めの念は無く、これからの試合展開を楽しみに待つばかりであった。

 順番としては須藤が1番手。2番手は手堅い足の速さを持つ平田。そこから堀北含む女子3人を間に入れ、最後にオレだ。

 

「任せんぞ平田!」

 

 そしてスタート地点から200メートルを走り切った須藤。その好リードに沸きあがるDクラス。次なる走者平田へとバトンが渡る。

 続いて集団の先頭を駆け抜けてきたのはAクラスの神室。1番手ということもあって他のクラスは女子の比率がほとんどだが、その足の速さは目を見張るものがある。

 

「橋本!」

 

「任せろ!」

 

 そのバトンは橋本へと渡る。そのまま平田に遅れる形でカーブへと差し掛かったが、周りに誰も居ない状況の為かその後ろの集団よりはスムーズに移行できたようだ。

 

「お疲れ。後は任せといて」

 

「はぁ、はぁ……お疲れ」

 

 走り終えた神室に九条が駆け寄りねぎらいの言葉を掛けている。

 そんな中でもトップを走る平田、その少し後ろを追随する橋本たちは次の走者まで50メートルを切っている。そして次々と後続の生徒が後を追うが、開いた差は殆ど詰められることはなく、計画通りのリードを保ったまま3番手の小野寺へ。

 問題があるとすればここからだ。女子としては足が速い小野寺だが、後続から迫ってくるのは男子たちが殆ど。そのリードは確実に詰められていく。

 

 そして間に女子を入れていたのはオレ達だけではないようだ。

 1番手に神室、2番手に橋本と続いて3、4番手は女子で構成されているようで、5番手の鬼頭にバトンが渡った時点で2年Aクラス、3年Aクラス、1年Cクラス、1年Aクラスといった順番となっている。

 

「熱い展開だな。殆ど横並びじゃねえか」

 

 先ほどの順番で内側からレーンへと立つオレ達アンカー。九条が言った通りその差は微々たるものだった。だが5番手の堀北が健闘惜しくも鬼頭に抜かれ、オレと九条の立つ位置が交換される。

 堀北が少し遅れた状態で上位3クラスのアンカーにバトンが渡ろうとしていた。

 

「悪いけど待ちはしないぞ」

 

 バトンが渡る瞬間、九条はニヤリと笑いながらオレの背中を叩いてきた。

 

「あ?」

 

 南雲、堀北兄がバトンを受け取る準備を始める。それでもなお、九条はオレから視線を逸らさない。

 正直この段階で勝負の決着はほぼ付いているようなものだ。この3人相手に、10メートルをもの距離差を覆すのは容易ではない。

 

「惚れた女からバトンを継ぐんだろ?」

 

 だが、そんなオレの無粋な思考を読んだのか、九条は小さく好戦的な笑みを浮かべながら呟いた。

 

 

 

「────追いついて来いよ、()()

 

 

 

 同時に弾丸の様に駆け出した九条たち。後ろを振り返ると、バトンを持った手を伸ばす堀北と目が合った。

 

 

 

「綾小路くん!」

 

 

 

 距離差が何だ。相手が強いから何だ。

 

 

 オレはクラスの思い、そして堀北の思いが込められたバトンを、たった今受け取ったのだ。

 

 

 

「頑張って!」

 

 

 

 ああ。こいつらは本当に────

 

 

 

「────任せろ」

 

 

 

 堀北からバトンを受け取り、オレは開幕フルスロットルで駆けだした。

 練習のとき、個人競技、その全てに全力をつぎ込んだつもりだった

 だが、たった今オレは初めて、人の思いを乗せて全力を出した。

 10月の涼しい風をその身に浴びながら、何も考えずに全てを出し切った。

 

 

 

 ────そして十数秒後、怒号のような大歓声がグラウンド中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

「おめでとう、綾小路君」

 

「ああ。未だに実感は湧かないけどな」

 

 表彰台からCクラスのテントに戻ろうとグラウンドの裏手を歩いていると、堀北が穏やかな笑みを浮かべ労いの言葉を掛けてきた。どうやら通り道で待っていてくれたらしい。

 オレが今右手に持っている分厚い紙には『最優秀生徒賞』と書かれている。

 一年生の最優秀賞ではなく、全生徒の中で最も点数を取った生徒に送られる賞状だ。

 

「まさかあそこから逆転するなんて思わなかったわ。流石といったところかしら」

 

「お前のおかげだ。ありがとう」

 

「……何故私に感謝するのかは分からないけど……まあ、一応受け取っておくわ。……格好良かったわよ」

 

 恥ずかしそうに小さく呟く堀北。顔が赤く見えるのは夕陽のせいだろうか? 

 それを調べる手段は無いが、不思議とオレには一つの確信が芽生えつつあった。

 

「────なあ堀北」

 

 恥ずかしさからか急いで背を向けて距離を取ろうとする堀北。

 丁度周りには誰も居ない。伝えるにはいい機会だろう。

 

「何かしら」

 

 振り返ることなく返す堀北に、オレは震える声を必死で抑えながら言い放った。

 

「お前のこと好きだ。……もしよければ、オレの恋人になって欲しい」

 

「っ! ……本気、なのかしら?」

 

 一度大きく肩を震わせた堀北は、ゆっくりとこちらを振り返りった。突然の告白に驚いたのか、視線を右往左往させている。

 うん。告白が下手すぎるぞオレ。そりゃ堀北もこんな反応にもなる。

 

「ああ。これを取ったら伝えようと思っていた」

 

 恥ずかしさを誤魔化しながら右手に持った賞状を見せる。

 いや、たぶん行けるはずだ。借り物競争でお姫様抱っこで連れて行ったときもまんざらでもない反応だったし、これで振られたら九条に八つ当たりするくらいには本気の気持ちだ。

 

「そう。本気なのね」

 

「ああ」

 

 無限にも感じられる沈黙の後、堀北は小さくため息を吐いた。

 

「……気に入らないわ」

 

「えっ」

 

 まさかの返答に呆けていると、堀北はこちらに一歩寄って来てオレの胸にトン、と指を指してきた。

 

「最優秀賞を取ったから告白したとは言っていたけど、それを取らなかったら、あなたはずっと黙ったままだったってことかしら?」

 

「えっ……あー、いや。そういう訳ではなくてだな……」

 

 まさかの角度からのツッコミに尻込みしてしまう。しかし堀北は容赦なく詰め寄ってくる。

 

「私もあなたも、自分の気持ちを伝えるのが下手な人間よ。それは分かるでしょう?」

 

「……ああ」

 

 先ほどの浮ついたムードは何処へやら、堀北はすっかり説教モードへと入ってしまった。

 しくじった。まさかこういう返答が返ってくるとは思わなかった。

 ……初恋が上手くいくことはないとはよく言われているが、なるほどな……そうだな、これはヘコむな。

 

「……だから、これから相手に何か思う所があったら正直に言いなさい。じゃないと、互いに不満をため込むことになるわよ」

 

「ん?」

 

 何か流れが想定していたものと違うぞ。これからオレフラれるんだよな? 

 

「人と付き合うのはお互い初めてなんだから。こういう所はしっかり決めるべきよ」

 

「……因みになんだが、告白の返事って」

 

 遠慮がちに問いかけると、堀北はキョトンと首を傾げた。

 

「何を言ってるのかしら。YESに決まってるじゃない。だからその後の話をしているの。途中で口を挟まないで頂戴」

 

「あっ、マジか」

 

 気持ちを伝えるのが下手だとかいろいろ言っていたが、早速致命的なすれ違いが生まれているみたいだ。

 

「てっきり振られたかと思ったぞ」

 

「呆れた。私の今までの反応を見てよく言えたものね」

 

「でもよく言うだろ? 女は皆役者だって」

 

 その瞬間頭に浮かんだのは櫛田の姿だった。頼むから出てこないでくれ。

 

「私がそんな器用なタイプに見えるかしら?」

 

「……確かに見えないな。まあそういう所が好きなんだけどな」

 

 真顔でそう言い放った瞬間、堀北はオレの脇腹にチョップをかましてきた。

 

「痛っ」

 

「急に口説かないで」

 

「? 自分の気持ちを正直に伝えろって言ったのは堀北だろ?」

 

 早速実行したのになぜ殴られる必要があるんだ。

 だがそんな俺の行動は堀北のお気には召さなかったようで、頭を抱えながら再度脇腹を小さく突いて来る。

 

「どうしてあなたはそう0か100かでしか物事を考えられないのかしら。……まだ心の準備が済んでないの。分かるでしょ?」

 

「……そういうものなのか」

 

 いまいちよく分からないが、普通の人ならそう思うのだろう。それを理解できないのは生まれ育った環境によるせいだろうな。

 九条や堀北のおかげでオレの心は溶かされつつあるが、こういう細かな所は凍ったままなのだろう。

 

「綾小路君、私の目を見てもらえないかしら」

 

 そんな事実に寂しさを覚えていると、ふと堀北がそんなお願いをして来た。

 

「? いいぞ」

 

 断る理由が無いため堀北と目を合わせる。凛とした綺麗な瞳にオレの顔が映る。

 すると堀北は、オレの目元を覆う様に右手を顔に重ねてきた。突然の行動に困惑していると、ふと唇に柔らかくて温かい感触が伝わってきた。

 

「ちょ!? 何して────っ!?」

 

 流石に鈍いオレでも何をされたかは容易に想像できた。

 ギョッとして目を抑えている手を引きはがすが、堀北はその手を振り払いオレの首に手を回す。そしてもう一度抱き着くようにして口付けをしてきた。

 

「痛っ」

 

 突然の行動に焦って尻もちをついてしまう。立ち上がろうと地面に手を当てるが上手く体が動かない。……どうやら腰が抜けてしまったようだ。

 

「はぁ……んっ」

 

 そんなオレを見下ろしながら唇を指で拭う堀北。

 艶やかな動作に頬に熱を帯びるのを感じていると、堀北は勝ち誇った表情を浮かべて話した。

 

「これで分かったかしら? 心の準備がいかに大切かということを」

 

「……はい」

 

 うん。オレの心普通に全部溶けてるなこれ。今も心臓がうるさくて仕方がない。

 

「ほら、行くわよ綾小路君。あんまり遅いと探しに来るかもしれないし」

 

「あー……待ってくれ堀北」

 

 そう言って歩き出した堀北を呼び止める。

 

「?」

 

 不思議そうにこちらを振り返る堀北に右手を伸ばし小さく呟く。

 

「……すまん。腰が抜けて立てないんだ。手を貸してくれないか」

 

 ……自分で言ってて死にたくなってきた。初キスで腰を抜かすとかダサすぎだろオレ。

 

「ふふっ、仕方ないわね。ほら、万歳しなさい」

 

「……万歳?」

 

 何故か嬉しそうにオレを抱き上げる堀北。

 ……まあ、この笑顔が見れただけでも、体育祭を頑張った甲斐があったと言えるだろう。

 それと同時に、オレの脳裏に一人の男の顔が浮かんできた。

 

「……絶対に守り抜いてやる」

 

「? 何か言ったかしら?」

 

 そんな俺の呟きは、体育祭の喧騒に紛れてなくなるのであった。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 体育祭を終え、振替休日となった月曜日。オレは久々となる外食を楽しんでいた。

 いつも行っているファミレスとは違い、高級な内装が施された落ち着いた雰囲気の焼肉店だ。

 

「とうとう付き合ったのか! 良かったなーマジで!」

 

 対面に座る九条が嬉しそうに声を上げる。

 普段なら周りの迷惑を考える九条だが、今オレ達が居る部屋は完全個室。よほど大きな音を出さない限りは問題ない造りになっている。

 

「おかげさまでな」

 

「私としては最優秀賞を取ったら云々の下りに物申したいけれどね」

 

「あはは……まあ多分俺が取ってても遅かれ早かれ告ってたと思うよ?」

 

 上からオレ、堀北、九条の順で会話が進んでいく。今回は付き合ったことの報告をするために呼んだため、もちろん一緒だ。

 そして、九条の隣で気まずそうに座っている生徒がもう1人。

 

「私、いない方が良くないですか?」

 

 そう。九条の彼女である坂柳だ。

 一応謝罪を受け入れ和解したとはいえ、坂柳側からすると少し気まずいようだ。

 

「オレと堀北が呼んだんだ。何せ坂柳も()()()のうちの一人だからな」

 

「……なるほど」

 

「ん? どういうこと?」

 

 少ない言葉に疑問符を浮かべる九条に対して、坂柳は『関係者』という言葉でオレの言葉の意味を理解したようだ。

 因みに堀北には付き合った日、つまり体育祭が終わった後にしっかり話をした。そのため堀北にとっては既知の話となる。

 

「オレの昔話を聞いてほしくてな────」

 

 この話をすることによって様々なリスクがあるのは分かっている。だが、オレはオレの彼女と親友のことを心底信頼しているからな。正直不安もあるが、こいつらなら大丈夫だろう。

 

「おおー」

 

 パチパチパチ、とまるで子供向けの劇が始まるときの様に手を叩く九条。……いやちょっと待て。

 

「軽くない? オレ滅茶苦茶勇気出して話す決断したんだけど」

 

「だから何回も言ってるだろ。お前の過去なんて知ったこっちゃねえって」

 

「ええ……」

 

 流石にそれは無いだろ! 人の気持ちも知らないで! 

 ……何か話す気無くなったな。いやちゃんと話すけど。

 

「俺は『今の』お前が好きで友達やってんだよ。だから過去の話なんて正直どうでもいいの、分かる?」

 

「……そうなのか?」

 

「だから何回も言ってんじゃん。てかそこまで引きずるとか、かなりハードル上がってるぞお前の過去話」

 

 そんな九条を見ていたら、何だか馬鹿らしくなってしまった。……恥ずかしくて口には出せないが、こいつと友人で心底良かった。

 

「因みに旭君はどこまでなら信じますか? 綾小路君の過去については」

 

「んー……やっぱアツいのは宇宙人かクローンの二択だよね。後は荒廃した世界から過去を変えるために来た未来人とか。異世界転生は……ギリ信じない!」

 

「人の過去で遊ぶなバカップル」

 

 締まらない空気に辟易しながら、上がり過ぎたハードルを必死に下げるのであった。

 

 

 

 







──綾小路清隆

以上前話同様

四方綱引き:1位
男女混合二人三脚:1着
1200mリレー:1着
合計:1275点

──九条旭

以上前話同様

四方綱引き:2位
男女混合二人三脚:1着
1200mリレー:3着
合計:1250点

 団体戦の結果が反映されるかどうかは書かれていなかったためこのような点数で計算しましたが、一応反映されてもされなくて綾小路が最優秀賞なのは間違いないです。

 以下結果発表

 学年別順位
1位:Aクラス(+50cpt)
2位:Cクラス(0)
3位:Bクラス(-50cpt)
4位:Dクラス(-100cpt)

 赤組(ADクラス)勝利のため
Aクラス:1606→1656cpt
Bクラス:603→453cpt
Cクラス:488→388cpt
Dクラス:342→242cpt

 ドロドロ恋愛→友情努力勝利→青春ラブコメと来て最後はギャグで締めます。
 ぶっちゃけ2話に分けた方が良かったかもって思ったり。

 そして原作と変わった点を追加でまとめておきます。
 僕が今後の展開を考える時に参考にしますので、『ここも変わってるんじゃないの?』ってのがあったら感想で追加してくれると超助かります。
 新しいところ以外にも微妙にニュアンス変えてるところあるので、暇な方は30話『謝罪と進展』を見て違う所を探してください。
 
☆綾小路が学生生活を全力で楽しんでいる
・綾小路と堀北が超信用し合っている
・堀北が既に兄と和解している
・クラスでの堀北の影響力が滅茶苦茶強まっている
・軽井沢が綾小路の寄生虫になっていない
☆龍園のやる気スイッチがオフになってる
・坂柳の綾小路に対する興味が薄れている(無くなったわけではない)
・葛城の影響力が低下していない。
・坂柳の影響力が地の底まで落ちているが、その分九条の影響力が上がっている
・Aクラスが『表面上』統合している
・Bクラスで一之瀬の影響力が低下している
・Dクラスが空中分解状態になっている
・Cクラスの団結力が平田、櫛田に加えた堀北を中心として上がっている
・↑の影響で櫛田が原作よりキレている

↓以下追加です

・綾小路が堀北、九条に過去を教えている
・綾小路が南雲に目を付けられている
☆綾小路が学生生活を守るため覚悟ガンギマリになっている
・綾小路の女子人気、クラスでの地位がかなり高まっている
・綾小路と堀北が付き合っている
☆上記その他もろもろ含めて櫛田がブチギレている
☆『憎悪のホワイトルーム生』が九条にボコられている
・堀北兄に信頼できる友人(九条)が居る
・依存によって坂柳が精神的に大幅弱体化(単純な能力値は上昇)
・一之瀬の影響力が更に低下。その分神崎の影響力が上がっている
☆高育に新任教師(空手部顧問)が配属される予定

 ☆の所は大分影響してきそうですね。
 次章は原作6.7巻は完全に統合してオリジナル章をやりたいと思います。ぶっちゃけこっからが本番だったりするのでお楽しみに!

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