ようこそ純愛過激派の教室へ 作:妄想癖のメアリー
長い『────』で区切ったときは視点が変わります。
個人的な話になりますが、高校の良い雰囲気だったクラスメイトが、昨日1個上の大学生と付き合ったらしいです。ですがこの場合はNTRではなくBSS(僕が先に好きだったのに)ですね。普通に発狂しそうです。
有栖の爆弾発言から数時間。入学式を終え、敷地内の施設について説明されたのち解散となった。
大事な幼馴染云々の話は、皆が騒ぎ出してから少しして入学式の時間が来たため助かったが、タイミングがもう少し早かったら酷い目に合っていただろう。
「解散が早いのは助かりますね。色々と揃えたいものものが多いので」
現在時刻は13時を回った辺り。帰り道を歩いていると、隣に並んだ有栖が嬉しそうに語った。
そんな飄々とした態度に、俺は先ほどの出来事を思い出して抗議の声を上げる。
「あのなぁ、さっきの幼馴染の話もそうだけど、なんで一緒に帰るって言っちゃったわけ? えっと……橋本君たちにカラオケ誘われてたんだけど」
解散した後俺たちはクラスメイトの橋本君に「女子とカラオケ行くけど一緒に行かないか」と誘いを受けていたのだが、こいつが嘘の予定をでっち上げて断ったのだ。せっかく友達を作るチャンスだったのに、後ろで見ていた女子達から生暖かい目を向けられて超恥ずかしかった。
周りへのアピールは別に良いとして飛ばし過ぎである。もう多分カップルみたいな扱いされてるよ絶対。嬉しいけど。
「良いじゃないですか。名前もハッキリと覚えていない相手に、最初から無理する必要はありませんよ」
それを言われたらおしまいなんだが……最初なんだし許してくれ。
「で、今日はこれから何するの?」
大方買い物とかだと当たりを付けていたが、有栖の返答は俺の予想の斜め上を行くものだった。
「私の部屋に行きましょう。良かったですね旭君。恐らく女子のフロアに最も早く足を踏み入れた男子生徒になれますよ」
「言い方」
そんな取り留めのないやり取りを数度繰り返しながら歩く。
入学式で早く帰れるのは1年生だけじゃないのか、寮へ向かう道には上級生と思われる生徒がちらほら見受けられる。
「学校から寮への道が近いのはありがたいですね。同じ方向にコンビニもありますし、自制しないと色々と大変なことになりそうです」
多分食べ過ぎとか使いすぎとかを心配してるんだろうが、正直言って杞憂だと思う。太ってるところ想像できないし。
「10万ポイントも貰えるからね、金払いが良いのはありがたいことだよ」
「本当にそう思いますか?」
だから金に関して焦点を当てて返事をしたのだが、次の瞬間有栖は小さく笑って質問してきた。多分10万ポイントを貰えるという所に対しての質問だろう。
となると俺の答えは1つだ。
「
「どうしてですか? 先生は毎月一日にポイントが貰えると説明していましたよ」
そんな分かり切った事を聞いて来る有栖。さて、彼女の望む理由を説明できればいいのだが……
「毎月貰えるとは言っても、
「ですが、高々500人近くの生徒のためにこれだけお金をかける学校ですよ。その程度の出費は問題ないと思いますが」
そう反論してくる有栖。確かに散々土地代や施設代でお金を使っているのに、そこだけをケチるのか。という論点だろう。しかし俺の考えは全く違う。
「いいや。ここで肝になってくるのが先生の『入学を果たした君たちにはそれだけの価値と可能性がある』って発言」
確かに非常に高い倍率を突破して入学した俺たちには、それだけの価値があると言われても何ら不思議じゃない。しかしそれは
例えば入学できたからって油断して勉強を一切しなくなってしまった生徒。問題行動ばかりで学校の品位を下げるような生徒。
「実力で生徒を評価するって言ってる学校が、これから頑張って成長しようとする生徒と、堕落していく生徒を同じ扱いにするのはちょっと無いかな。多分だけど、成績や態度に応じて上げ下げされるんじゃない? 有栖が気にしてた
彼女が教室へ行く前に言っていた『気になること』にも言及してみる。
「流石旭君、良い推測です。私も同意見です。他に気が付いた生徒は居なさそうでしたが」
「正直言い方が悪いよアレは。俺だって監視カメラ云々を見て回れなかったら気づかなかっただろうし」
玄関、廊下、食堂、体育館、これら全てに死角がないように監視カメラを設置されていたのだ。防犯のためと言われれば何も言い返せないが、問題なのはこの後だ。
「
そう考えるのが一番納得できる。俺の予想をまとめると『最初に配られた10万ポイントは生活用品をそろえるための資金。来月からはおおよそ3~5万ポイントが成績や授業態度等の平常点に応じて支払われる』という感じかな。
「大方私もその予想です。後で先生に確認しに行きましょうか。あの場では説明されませんでしたが、質問は歓迎とのことなので」
「……行ってらっsy「何を言ってるんですか。あなたも行くんですよ」えー、目付けられそうで嫌なんだけど」
学校が明かしていないということは、それを知らない生徒達がどのような行動を取るかを知るためだろう。そんな中、いくら質問は自由だからと言って暴きに行くのは面倒な奴扱いされそうだ。
「大丈夫です。どのような意図があるかは分かりませんが、先生はあれだけヒントを残してくれたんです。もしかしたら気づいてほしいのかもしれません」
大分希望的な観測だな……まあいいや。どうせ引きずってでも聞きに行くんだろうから。
「ついて行ってあげるから、とりあえずモールに食材買いに行こう」
「コンビニでいいのでは? すぐ近くにありますよ」
「フライパンとか色々買いたいんだよ。今日から飯、作ってやるから」
頭をポリポリと掻きながら呟く。……何ともこっぱずかしいセリフだ。
「ふふっ、なんだかんだ言ってやる気満々じゃないですか。……では、これからよろしくお願いします」
そんな俺がおかしかったのか、有栖は俺の手を取り、上目遣いで小さく微笑んだ。
「……うん」
そんな有栖の不意打ちに、俺からは返事をすることしかできなかった。
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入学初日の夜。新しい環境に慣れてないのもあるのだろうが、寝付けなかったオレは寮近くのコンビニに足を運んでいた。
エレベータで一階まで行き、寮のエントランスを抜けてコンビニに向かう。まだ4月の始まりの時期、制服のジャケットを脱いで外に出たせいか少し肌寒い。
「いらっしゃいませー」
深夜帯に差し掛かる為か、店員は1人しかいなかった。他に客も見当たらないため少し気まずい。
そんな中、オレは一度食べてみたかった食品に手を出すことにした。ペ〇ングというカップ焼きそばである。幸い1番目の届く所にデカデカと飾られていたためすぐ分かった。毒々しい赤い見た目をしているが、こういうものなのだろうか。
「ありがとうございましたー」
気まずさからか急いで選んだのは炭酸ジュースとカップ焼きそば。何とも体に悪い組み合わせだが、1日くらいは許されるだろう。
そう思って店を出たが、カップ麺を作る上で大事な要素が欠けている事に気づいてしまった。
「お湯無いじゃん……」
そう、オレの部屋にはお湯を沸かすための道具が無い。電気ポットはおろかフライパンややかんなども持っていないのだ。
「作ってから帰るか……」
幸いコンビニから寮まではそう遠くない。作ってお湯を捨ててからでも冷めはしないだろう。
そう思ってお湯を入れ3分。どうやら上手く作れたようだ。
「……美味そうだな」
蒸気の中で小麦色に輝く麺が、コンビニの明かりに照らされてより魅力的に目に飛び込んできた。……幸い外には誰も居ない。一口くらい食べても問題ないだろう。ほ、ほら冷めてしまっては元も子もないだろ?
好奇心に駆られたオレは、そんな言い訳をしながら赤い色の袋に入った調味料を全てかける。そして、昼間の須藤と同じように一気に麺をすすった。
「!? がっ! げほっ……!?」
その瞬間感じたのは、口の中を駆けまわる灼熱感だった。吐き出しこそしなかったが、たまらずせき込んでしまう。
せき込みながら本能的にレジ袋の飲み物に手を伸ばし、プシュという音が鳴ると同時に口を付けるが、痛みは治まるどころか強くなるばかり。
飲んだ後に思い出した。オレが買った飲み物は強炭酸のジュース。逆効果にもほどがある。
「ちょ、ちょっと大丈夫? ほら、さっき買ったばっかの、飲んで」
あまりの辛さにうずくまっていると、ふと横から小さな紙パックの牛乳を渡された。
それをひったくるように取ると、中身をストローで吸い一気に喉へ流し込む。
「はぁ……はぁ」
10秒ほどで辛さが引いてきた。額には粒状の汗が浮かんでいるのを感じる。……何という食べ物だ。日本の若者は皆こんなものを食べているのか!
日本国民の狂った味覚に戦慄したオレは、先ほど誰かに命を助けられたことを思い出した。
「えーっと……大丈夫、ですか? ここじゃアレなので、向こうのベンチにでも行きましょう」
しゃがんだ状態から左上を見ると、そこには心配した様に眉を八の字に曲げる男子生徒の姿があった。
その生徒が手を伸ばしてきたため、オレはやっとの思いでその手を取り引っ張ってもらう。
「……すまん。助かった」
そしてすぐ近くのベンチに移動し、3人用のベンチに1人分の間隔を開けて横に座る。
「いえ、大丈夫です。出たら今にも死にそうな勢いだったのでびっくりしちゃいました」
立ち上がって分かったが、身長はオレより一回り大きいだろう。そして着痩せしているが、差し出された手や体つきを見るにかなり鍛えていそうだな。さっき引っ張られた時も凄い力だったし。
「初めてペ〇ングの焼きそばを食べたんだが、あんなものが人気なんだな。流石にびっくりだ」
そう言うと、目の前の男子生徒はオレが持つ焼きそばのパッケージをチラッと確認し、「あー」と納得のいった様子。
「これ、新作期間限定の超辛い奴ですよ。これで体調悪くなっても責任一切取らないって書いてあります」
そんなものがあるのか……いや、体調を崩すくらいの辛い食べ物を作る理由って何かあるのか?
「大体は罰ゲームとかが用途です。美味しくて食べてる人は中々いないですよ」
「そうなのか……とにかく助かった。お前は命の恩人だ、ありがとう」
目の前の高身長爽やかイケメンに感謝を述べる。何故だろう、彼に後光が差して見える。明かりなんて街灯のLEDしか無いのに。
「とにかく良かったです。1年Aクラスの九条旭です」
何と向こうから挨拶をしてくれた。堀北、須藤と違ってまともそうな人だし、是非ともオレの第一友達になってもらいたい。
「1年Dクラスの綾小路清隆だ。同い年だから敬語は要らないぞ」
「あ、同い年だったんだ。何でか勝手に先輩だと思っちゃってたわ。じゃあ綾小路って呼ぶね」
……九条から陽キャの波動を感じる。きっと中学の時は運動部に入ってさぞモテていたんだろう。
「オレが言うのも何だが、何でこの時間にコンビニなんて来たんだ?」
現在時刻は11時30分。店員こそ何も言わなかったが、もし教師に見つかったら小言を貰うのは間違いない時間帯だ。
そう聞くと、九条は苦笑いをしながら頭をポリポリと掻いて答えた。
「いやー新しい環境だからか眠れなくてさ。そう言う綾小路は何で?」
「オレも同じだ。眠れないし腹が減ったからな。後はこういう深夜のコンビニに憧れてたってのもある」
本当は深夜ではなく、コンビニそのものも初めて行くのだが、わざわざそれを言う必要は無いだろう。
と言うより、友人らしい会話ができているのにオレは心底感動していた。今までは基本毒でしか返ってこない堀北、沸点があまりに低すぎる須藤と、中々強烈な面子だったからな。オレが望んでいたのはこういうやり取りなんだ……!
「にしてもペ〇ング食べた事無いなんて珍しいね。綾小路ってもしかして超大金持ちだったりする?」
「いや、そういう訳じゃないんだが……親が厳しくてな。そう言うのが食事になることは無かったんだ」
やはりカップ麺の1個すら食べた事無いのは中々珍しいらしい。一つ学びを得た。……いや、もう2度と辛いペ〇ングは食べないという学びの方が大事だな。
そこで、ふと右手に握られた牛乳パックを思い出した。
「そう言えば、お前の牛乳を貰ったんだったな。新しいの買って来るよ」
「あーいいよいいよ別に。大した額じゃないし。おもろいとこ見せてもらったし」
人好きのする笑みを浮かべながら語る九条。確かに中々滑稽な姿を見せてしまった。思い出したら恥ずかしくなって来た……今日の自己紹介といい、失敗してばかりだな。
「あ、そうだ。連絡先交換しようよ。俺まだ友達いなくてさー」
今日は厄日だと思っていたまさにその時、九条から連絡先を交換しないかと提案を受けた。……なるほどな。今までの失敗は全てこの時のためのものだったのか。
「ああ。よろしく頼む」
「やった! 第一友達ゲットだぜ」
何とも嬉しそうにはしゃいでくれるものだ。
それから数分ほど会話を続け、寮に帰る道でも会話が途切れることは無かった。九条の話題の振り方が上手いからだろう。
何と言うか、他人と会話をすることに慣れているような印象を受けた。こちらが欲しい話題を的確にくれるというか、そんな気持ちよさがある。
「じゃあね綾小路。また明日学校で」
「ああ、また」
終わり良ければ総て良し。そんな言葉を体現するような1日だった。
制服のままベッドに飛び込んだオレは、すっからかんだった友達欄に追加された九条の名を見て口角が上がるのを感じた。
「ふふふ、これで堀北に馬鹿にされずに済むな」
────この出会いが、後に他クラスをも巻き込む大波乱につながるのだが、それはまた別のお話である。
我らが原作主人公綾小路君の登場です。
「綾小路はこんなことしない!」って思った人は言ってください。やる気があったら直します。
まあ初期のころはホントに愉快な性格してるので、別にあり得なくは無いかなってのが個人の感想です。
因みにこの出会いはサブタイトル通りです。NTR漫画みたいな展開ですが、ちゃんと純愛なのでご安心ください。
あと多分今までもこれからも一番綾小路を苦しめたと思う。ペ〇ング極激辛焼きそば。