ようこそ純愛過激派の教室へ   作:妄想癖のメアリー

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新任教師

 

 

 

 茶柱先生との取引が成立してから1週間が経った日の放課後、オレ達空手部員は部室に集まっていた。九条、堀北、オレとお馴染みの面子が揃っている……が。

 

「新しい顧問、楽しみですね皆さん」

 

「……何で坂柳が居るんだ?」

 

 道着に着替えてマットの上に座るオレ達と違い、坂柳が部室端に置かれたパイプ椅子に制服で座っている。

 余りにも自然とそこにいるものだから、声をかけられるまで気が付かなかった。

 

「だって旭君の部活に顧問の方がいらっしゃるんですよ? 私にはどのようなお方なのかを見届ける義務があります」

 

 そう言って気に入らない人間だったらどうするつもりなんだろうか? 

 ……まあ、九条も堀北も特に文句はなさそうだし、オレから言うことは無いだろう。それにオレ以外の3人は空手部顧問の素性を知らないんだ。不安になる気持ちも分かる。

 隠し事をしている後ろめたさはあるが仕方のないことだ。茶柱先生との取引を漏らせば、こちらの情報を握っている彼女を敵に回すかもしれないからな。

 

「まあ、そうだな」

 

 鋼のメンタルで必死に罪悪感を押し殺していると、部室の扉を開けて茶柱先生が入ってきた。

 

「全員集まっているな。事前に説明した通りだが、今日はお前たちの顧問……正確には部活動特別顧問という役職の方がいらっしゃる。心配はしていないが、失礼のないように」

 

「はい」

 

「おー」

 

 頷いて返事をする堀北、パチパチと嬉しそうに拍手をする九条と、それぞれの性格が出ている。

 

「てことは茶柱先生は顧問辞めちゃうんですか?」

 

「いいや、私はこのままだ。法律上私が顧問を続ける必要は無いが、ここは色々と特殊だからな。学校側も初めての試みだし、今は保留といったところだ」

 

 九条の質問に答える茶柱先生。オレは彼女から既に話を聞いていたため特に疑問もない。

 

「まあ、必要が無くてもやめる気は無いがな。この部活の指導は楽でいい」

 

「それ普通言います?」

 

「手が掛からないと褒めているんだ」

 

 茶柱先生の言葉に苦笑いを浮かべる九条。未経験者の茶柱先生が部活に顔を出しても出来ることは無いからな。

 

「……そろそろだな。呼んでくるから待っててくれ」

 

 時計を確認し部室を退出する茶柱先生。

 場を満たしていた緊張感が抜け、堀北が小さく息を吐いた。

 

「さて。鬼が出るか蛇が出るか」

 

 険しい顔で呟く九条。

 

「茶柱先生の反応を見る限り、相手が露骨にこちら側に干渉するつもりは無さそうですが……もし私たちの考察が当たっていた場合、逆に厄介な相手になりそうです」

 

()()()()()()()()()()()()()()()』これはオレたち4人の中での共通認識だ。外部との接触が規制されているこの学校では、オレに接触する手段は限かなりられる。空手部所属の九条がオレと交流があるとあちら知られた以上、父親がこのチャンスを逃すとは思えない。

 

「……そうだな」

 

 坂柳の呟きに応えながら、これから来るであろう顧問について思案する。

 この一週間で茶柱先生からもらったデータは全て頭に叩き入れたが、その有用性は凄まじいものだった。

 学校が創設されてから今までに行われたすべての特別試験の情報は勿論、教員が閲覧できる生徒の個人情報の全てがまとめられていたのだ。そして今から紹介されるであろう空手部顧問の情報も載っている。

 教員のデータは入っていないと言っていたが、空手部顧問は立場で言うと茶柱先生の部下的な存在に当たる。情報を見れない方がおかしい。

 

 

 

 ────空手部特別顧問、如月(きさらぎ) (かおり)。年齢22歳

 名前を見たときはまさかと思ったが、九条を指導できる人材として選ばれたのは、オレ達と大して年の変わらない女性だった。性別で判断するつもりは一切ないが、顧問は男性だと思い込んでいたが……これはかなり意外だった。

 

 道場の師範代である父を持ち、彼女本人も指導者としての資格、教員免許を取得。その上空手の実力も折り紙つき。幼少期から大会で成績を残しており、高校生の頃に一度だけ全国大会で優勝した経験も持っている。

 確かに部活動の顧問としてはこの上ない人材だが、九条の経歴と比べるとどうしても見劣りしてしまう。確かに週5日(平日4日、休日1日)ここで指導を行い、教員免許を取得している上で守秘義務を守れる者となるとなかなか見つからないのだろうが、九条に指導できる人材なのかと言われれば微妙なところだ。

 

 そして不可解なのが、彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だがこれに関しては安心できる材料だ。坂柳の父親で、オレの事情を知ってなお入学を許可してくれた理事長の推薦だ。彼女に父親の手が及んでいる人物ではないことは確実だろう。

 

 

 

「あなたのお父様は採用にどのくらい関与できるのかしら?」

 

 坂柳理事長のことを考えていたタイミングで、堀北が坂柳に質問を投げかける。

 娘である坂柳なら何か知っているのではないかという考えだったのだろうが、それに答える坂柳の表情は険しいものだった。

 

「立場上ある程度の選定には関われるとは思いますが、この学校は国が直接運営している学校です。他の高校の様に一枚岩ではありません。明らかに適正な人材を除いて別の教員を採用することは出来ないでしょう」

 

「その人材をあちら側が用意できるかってことか。ホワイトルーム時代の教官たちはどうだったの?」

 

 記憶を辿ってみるが、今思えば子供を育てる環境としては最悪だったとしか思えない。

 

「正直ろくでなしばっかりだったな。経歴に傷のある人物ばかりだった印象だ」

 

「そりゃそっか。まともな人材ならそんなプロジェクトに協力したりしないしな。リスクが大きすぎる」

 

 オレに顔を知られている事を考えても、ホワイトルーム時代に面識のある人物が来るとは思えない。履歴書の写真にも見覚えは無かったからな。

 

「ま、たとえ先生が敵だったとしても俺たちのやることは変わんないっしょ。そんな地獄みたいな環境にお前を戻すつもりは無い」

 

 そんなありがたいことを言ってくれる九条。入学前の状態ならともかく、今の楽しい生活からあそこに戻るのは流石に御免だ。

 

 

 

 少しして部室の扉が開き、茶柱先生が入ってくる。その後ろには履歴書で見た若い女性の姿があった。

 これから紹介されるのに座りっぱなしなのもあれなので、立ち上がって姿勢を正す。

 

「えっ」

 

 九条の驚いたような声が聞こえてきたが、それも無理はないだろう。オレも最初想像していた人物像とはかけ離れていたからな。

 明るめの茶髪をゴムバンドでまとめ、白のスポーツウェアを着ている、茶柱先生や星之宮先生とはまた違い、凛とした表情をした美人だ。身長は160㎝程だろうか。

 

「では紹介を行う。空手部特別顧問兼、体育教師の如月先生だ」

 

 茶柱先生から促され、如月先生が一歩前に出る。

 そしてオレ達3人を見渡した後、何故か九条の方を見つめながら二カっと笑った。

 

如月(きさらぎ) (かおり)です! よろしくお願いします! そして……」

 

()()()!? 何でここに居るんすか!?」

 

 九条が声を荒げながら如月先生の言葉を遮る。珍しい九条の失礼な言動に堀北と目を丸くしたのもつかの間、如月先生の姿が視界から消えた。

 

「ちょ」

 

 瞬間、何かが倒れるような音が隣から聞こえてきた。

 

()()()()()()()()()! ちょっと見ない間にまた身長伸びたんじゃない? 体も前よりガッチリしてるし、トレーニングもしっかりやってて偉いぞ!」

 

 隣を見ると、尻もちをついた九条の上に如月先生が抱き着いている。……ちょっと待て、理解が追い付かない。

 

「……九条。どういう関係だ?」

 

 放心するオレ達をよそに、復帰が早かった茶柱先生が九条に質問を投げかける。

 今も尚抱き着かれている九条は、困惑半分嬉しさ半分の表情をこちらに向け、恥ずかしそうに小さく呟いた。

 

 

 

「えっと……芳さんは()()()()()()()()()()。えっと……とりあえず離れません? 先生」

 

「やだ!」

 

 

 

 ……なるほど。そういうパターンか。

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

「……それでは、私はこれで失礼する。これから部活を共にする関係だ。年齢も近いだろうし、交流を深めてくれ」

 

 そう言ってそそくさと退出する茶柱先生。……逃げたな。

 

「ありがとうございました! 茶柱先生!」

 

 懇切丁寧なお辞儀と共に、はきはきとした様子で感謝を伝える如月先生。茶柱先生の疲れの籠ったため息など気にも留めていないようだ。

 そしてそのまま俺たちの方を見ると、如月先生は両手を合わせて申し訳なさそうに謝罪をした。

 

「ごめんね~みんな。びっくりさせちゃったでしょ? 久しぶりで舞い上がっちゃってさ。みんなの名前、教えてもらってもいい?」

 

 色々とすっ飛ばしている気がするが、どうやら今から自己紹介をするようだ。目が合った為オレから挨拶をする。

 

「綾小路清隆です」

 

「堀北鈴音です。よろしくお願いします」

 

「綾小路君と堀北さんね! よろしく!」

 

 ニコニコと嬉しそうに挨拶を返してくれた。先生から……陽キャの波動を感じる。

 どこか既視感を感じていると、九条がマットの上に座りながら不満げに声を上げた。

 

「来るならそう言ってくださいよー。大会のとき会ったでしょ?」

 

「理事長からサプライズだから言うなって言われちゃってさ。あの人も粋なこと考えるよね」

 

 と言っても、久しぶりの再会に九条もテンションが上がっているようだ。普段大人びた九条にしては珍しく、子供のような笑みを浮かべている。

 

「……お久しぶりです。如月さん」

 

 そして、対照的に低いテンションで声をかけるのは坂柳。やはりこちらとも面識はあるようだ。

 

「あ! やっぱり有栖ちゃんだよね! 相変わらず小っちゃくて可愛いねー」

 

 正面に立つ坂柳の頬をこねくり回す如月先生。九条がよく坂柳にやっていることだ。

 ……こうしてみると本当に九条と似ているな。先ほど感じた既視感は九条と出会ったときのものだろう。

 

「化粧が落ちるのでやめてください。後小さいは余計です」

 

「化粧してるの有栖ちゃん? もしかして男でも出来た?」

 

「ええ。九条旭という素敵な男性とお付き合いしています」

 

 テンションが低いというか、これ多分不機嫌なだけだな。

 知らなかったとはいえ自分の男に抱き着かれたんだ。独占欲の強い坂柳が機嫌を悪くするのは仕方のないことだ。

 

「うっそー! とうとう付き合ったんだ! どっちから告白したの!?」

 

「一応俺からだよ」

 

 紆余曲折あっての結果だが、九条から告白したことに変わりはないからな。

 ドヤ顔をする九条に対し、如月先生はしみじみとした様子で頷いている。

 

「成長したねーあっくん。昔はあれだけチキンだったのにね……そっかぁ

 

「それ言わなくてよくない!?」

 

「……今更ですけど、あっくんって呼んでるんですか?」

 

 流石に突っ込まざるを得ないぞあっくんは。いやあさひだからあっくんと言えばそうなんだろうが、それ以前に高校生男子にその呼び方は色々とマズイ気がする。

 

「そうだよ? なんか呼び方変えるタイミング分かんなくてさー。あっくん別に恥ずかしがらなかったし良いかなって」

 

「私以外、からかってくる友達も居ませんでしたしね」

 

「お前も一言余計だよ!」

 

 如月先生、坂柳、九条とテンポよく会話が進んでいく。九条の空手の先生と考えても、長年の付き合いなのは確実だろうし。

 そして、思い出したかのように如月先生がパンと手を叩いて立ち上がった。

 

「じゃあちょっとみんなの実力見ちゃおっかなー。着替えて来るから待ってて!」

 

 そう言って荷物を持ち部屋を退出する如月先生。……何と言うか、少し疲れたな。

 警戒していた人物がまさかの九条の恩人というのは肩透かしもいい所だ。もちろん怪しい人物が来るよりかは100倍マシだが、未だに影の者としてやっているオレからすると、九条と如月先生のペアは眩しすぎて目が眩む。

 

「いやーマジか。また芳さんに教えてもらえるのか。ちょっとアップしてくるね!」

 

 練習場の反対側へと移動し、ストレッチや打撃の練習を行う九条。心なしかいつもより動きのキレが良いように感じる。

 

「九条君、随分と嬉しそうね。姉弟子兼先生と言っていたけど、どういう関係なのかしら?」

 

 隣に座る坂柳に小声で質問する堀北。確かにオレも気になるところだ。

 年齢は22歳と履歴書に書かれていたが、九条が空手を始めた時期は彼女はまだ中学生のはずだ。

 

「芳さんの父親と私のお父様は親しい間柄です。元々旭君はお父様の紹介で、彼女の父親が開いている道場へと入門しました。……そこで、幼い頃の旭君の面倒を見ていたのが芳さんです」

 

「なるほど。中学生が小学生の面倒を見ることは珍しいことではないし、それなら納得だわ」

 

 確かにそれなら姉弟子兼先生という九条の発言にも納得がいく。

 

「堀北は九条と面識あったよな? 先生のことは知らなかったのか?」

 

「言われてやっと思い出したって感じね。年も離れていたし、お互い眼中になかったんじゃないかしら」

 

 確かにその頃の堀北なら知らなくても不思議じゃないな。兄貴と自分と同世代にもかかわらず対抗できる九条にしか目が行かなかったのだろう。

 

「それにしても仲良いんだな。まるで距離の近い姉と弟みたいだったぞ」

 

「姉と弟という表現はあながち間違いではありません。仕事柄、旭君の両親は家に居ないことが多かったので……勿論私が一番でしょうが、そういう寂しさを彼女で埋めていた節はあるでしょうね」

 

 そんなオレの素朴な疑問に答えてくれた坂柳。だが、その表情がひどく歪んでいたことが印象に残った。

 

「……あまり好きじゃないのか? 彼女のこと」

 

 思わず質問をしてハッとなる。少なくとも、これから交流を深めるであろう相手に対していうことではなかった。

 

「すまん、忘れてく「いいえ。構いませんよ綾小路君」……」

 

 オレの言葉を遮る形で返答する坂柳。

 

「好きではないかという質問ですが、YESかNOかの二択であればYESになるでしょうね……ですがそれは適切な答えではありません」

 

「?」

 

 疑問符を浮かべるオレと堀北に対し、坂柳はニッコリと穏やかな笑みをこちらに向けて答えた。

 

()()()()()()()()()()()()()。もちろん、旭君には内緒でお願いしますね?」

 

 その表情とは全く逆の物騒な言葉を発する坂柳。背筋に寒いものを感じたオレは堪らず堀北の方を向いた。

 

「女って怖いな。堀北」

 

「それ、櫛田さんに絡まれている私に対する嫌味?」

 

 ……それを引き合いに出すのは反則じゃないか? 

 

「と、とりあえずホワイトルームの刺客でないことは確実だな」

 

「そうですね。身元がはっきりしていて実力も問題なし。就職もしていなくて教員免許も偶然持っている……そうですね。不本意ですが彼女ほど適正は居ないでしょう。不本意ですが」

 

 話を変えようと話題を振ったが、坂柳の恐ろしい笑みは張り付いたまま離れない。

 

「まあいいでしょう。どうせ彼女に入り込む隙はありませんし、ホワイトルーム云々は杞憂だったようです」

 

 確かに彼女なら坂柳理事長が推薦した理由も頷ける。坂柳にも借りが出来てしまったな。

 

「そうだな」

 

 ほっと息を吐きながら、オレはこれから先生になる人に失望されないように体のストレッチを行うのだった。

 

「お! お前もやる気になったか! 芳さんマジで強えから油断すんなよ?」

 

「いつまでも白帯は嫌だからな。全力を出すつもりだ」

 

「いいねー」

 

 九条に合流し、他愛のない話をしながら体を動かす。この時間が、オレにとっては何よりも楽しいかけがえのない時間だ。

 

 

 

 

 

 ────だが、このときのオレは想定すらしていなかった。

 

 空手部顧問が九条の馴染みだと、父親の介入は失敗したと、油断しきっていた。

 

 九条とオレが親しい関係だと相手に知られた時点で、父親の毒牙が向かうのはオレだけではなかったと。

 

 

 

 

 

『速報です。先日上海市で行われた空手道アジア大会にて、日本代表として出場した九条旭選手を乗せた護送車が事故を起こしたとのことです。この事故により数名の軽症者の他、九条選手が消息不明となっており、現地の公安当局が情報収集にあたって────』

 

 

 

 

 

 そんな、簡単な想定すら出来なかった。

 

 

 





 NTR漫画みたいな展開になってますが、純愛なのでご安心ください。
 オリキャラの如月先生ですが、容姿は鬼龍院先輩、性格は星乃宮先生をマイルドにしたイメージです。



 ──高度育成高校教員データベース──

 氏名:如月 芳(きさらぎ かおり)
 年齢:23歳
 誕生日:4月29日 

 担当科目:体育
 部活動:空手部特別顧問
 
 

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