星野家のエキサイティングで温かな日常   作:ハッピーエンド大好きクラブ

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まだアクア達が中二だったときのお話です。



焼きおにぎり

 

 

「お兄ちゃんってさ、ナルシストだよね」

 

「どうした藪から棒に」

 

早朝、洗面所でアクアが顔を洗ってタオルで拭いていると、ルビーが不満げな表情を浮かべて声をかけてきた。

ルビーの「お兄ちゃんナルシスト発言」は今に始まったことじゃない。

どういうわけか鏡の前に立つとアクアは自分の顔を長時間見つめてはフフフとニヤける癖がある。

 

妹からすれば随分とまあ自分の容姿に自信があるものだと思う。学校では先輩後輩、クラスメイトの女子からモテているし、告白されたことも一度や二度などではない。

ルビー視点から見てもお兄ちゃんはカッコいい。イケメンの中でも上位に食い込むだろう。

しかしだからといってそれを自覚されるのはかなり気持ち悪い。

 

イケメンは「俺ってカッコいいよな?」なんてことは絶対に言わない。自分がイケてるなんて気づかない、という偏見を抱えているルビーはアクアの癖に対して苦言を呈していた。

 

「そういうの気持ち悪いから止めたほうがいいと思う。虎を見習いなよ!アイツは自分のことなんて興味ないんだから!」

 

「アレはアレでおかしいけどな」

 

「ていうかなんでお兄ちゃんがモテて私には誰も声かけてくれないの!?おかしいよ!お兄ちゃんだけモテるのはゆるせない!」

 

こんなことを言っているくせにルビーは自分の顔とルックスに絶対の自信を持っている。

つまるところ自分が可愛い女子だと気づいているのだ。

 

なのにどういうわけか男子にモテない。勿論話しかけられることはある。クラスに男友達は何人かいる。だがラブレターを貰ったことはおろか告白すら受けたことがない。

それが彼女にとっては許せないことだった。

 

「別にモテなくてもいいだろ。自分のステータスに影響するものじゃないんだから」

 

「アクアー?ルビー?朝ごはんできたよー」

 

「あっ、はーい!」

 

母親のアイに呼ばれた二人はリビングに入って食卓につく。

手を合わせて「いただきます」と口にしてから朝ごはんを食べ始めた。

 

「ママ!今日もまたお兄ちゃんが鏡越しに自分の顔見てた!」

 

「また?んー、でもアクアはイケメンでカッコいいし、私は気にしないけどな」

 

「むぅ…………私もお兄ちゃんみたいにチヤホヤされてみたいよ」

 

「もうルビーったら。ルビーは魅力たっぷりな女の子なんだから、この先絶対良い人と会えるよ。ママが保証する」

 

アイは胸をドンと叩いた。

 

「その良い人は虎かもな」

 

「やだ!絶対やだ!虎だけは無理!」

 

自分でもうまく言葉に出せないが虎次郎だけは異性としては見れない。

どちらかというと大切な家族としか見たくない。もう一人の兄として接したい。

朝ごはんを食べたあとは学校へ行く準備を済ませる。

 

「アクア、ルビー、お弁当お弁当!」

 

玄関で靴を履く二人にお弁当を持たせたあと、アイは手を伸ばしてギュッと抱きしめる。

 

「行ってらっしゃい。アクア、ルビー」

 

「「行ってきます」」

 

二人が家を出たのを見送ってからアイは今日が何曜日が思い出せず、カレンダーを見て確認した。

 

「えっと…………今日水曜日か。…………あれ?」

 

冷蔵庫の側にあるパンパンに詰まったゴミ袋。そういえば昨日、ゴミの日に出さなきゃねとアクアに溢していたような……………。

 

「やっば!今日ゴミの日じゃん!」

 

ゴミ出しを忘れていたアイは慌ててゴミ捨て場に駆け込んだ。

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

前世の記憶があるアクアにとって自分の容姿は物珍しいものだ。医者だった頃はそこそこカッコいい程度だったが今ではファンクラブが出来ているほどだ。

因みにルビーにもひっそりファンクラブが結成されていたが裏で潰しておいた。

廊下を歩くだけでも女子に手を振られる。アイの素晴らしい遺伝子がそうさせているのだろうが、アクアは表には出さないが内心モテ期が来たのだとウッキウキになっていた。

何より脂物をたくさん食べても胃もたれしないし、夜ふかししても顔がむくれることがない。

若者の健全で健康的な肉体の変化を毎日確認するのがちょっとした楽しみでもある。

 

しかし毎朝のチェックがルビーにとって不快に繋がるのならもう少し自重しないといけない。

なんてことを授業中に考えながらアクアは窓から見える景色へ目をやった。

 

「──────?」

 

何か香ばしい匂いが漂ってきた。焦がし醤油の香りだ、教室全体に広がって生徒たちがざわつき始める。

 

「わ、すっごいいー匂い!なんだろう!」

 

ルビーが目を輝かせて口を開く。理由は別としてこの香りへ全然嫌いじゃない。

先生が困惑していると、なにか勘づいたのかハッとした表情になって窓を開けて上を覗いた。

ここは三階、四階は屋上になっていて立入禁止。ここでアクアも気づいたのか、小さく頷いた。

 

「虎次郎のやつ…………また屋上に登ったのかぁぁあああ!!」

 

憤慨した先生が教室を飛び出した。残された生徒たちはぞれぞれ顔を見合わせる。

少しすると屋上からであろうか、二人の口論する叫び声が聴こえてきた。

 

「虎次郎!!お前また懲りずに屋上に登ってんのかぁ!!」

 

「バカが!今日は授業なんてやってられねぇんだよ!先生も焼きおにぎり食うよな!一個余分に焼いてやったんだぜ!」

 

「食う!けどまずはお前を叱る!」

 

「じゃああげない!」

 

また問題児の虎次郎の仕業だ。壁を素手で登って屋上へ行き、そこで日光浴をしたり遊んでたりする。

一番酷かったのは屋上に七輪を用意して秋刀魚を焼いていたことだ。

 

アクアはいつものことだと嘆息する。

 

「お腹空いたなー」

 

「ルビーちゃんまだ二時間目だよ?」

 

ルビーは逃走した虎次郎からこっそりラップに包んだ焼きおにぎりをもらって、授業中にいかにバレずに完食するRTAを勝手に初めて開始一秒でバレたのだった。

 

家に帰ったあと、星野家の食卓はこの話題で持ちきりだった。

 

 

 






次回はいつになるか分かんないけど、書きたい話が沢山あるのでそれをゆっくり書いていきたいと思います。
まあ首を長くしてお待ちくだチィ。

ここで「今ガチ」で書けなかったところを書くのもいいかも。

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