……。
…………。
俺は気づくと白い空間のような場所で仰向けで寝ていた。
「ここはどこだ……?」
俺の手元にデッキがない。デュエリストにとって、デッキは命。そのデッキがないということは……。
「俺は死んだのか」
ホネヌキの圧倒敵なデュエルパワーに俺の体が耐える事ができなかったのだろうか。
俺は右に寝返りを打った。
なぜだか、心が心地が良い。
デュエリストと「ねー」しての宿命から開放され、心が軽くなったとでも「ねーってばー」いうのだろうか。
……?
おかしい、死んだはずの俺に声が聞こえるはずなど……。
俺が目を開くと、目の前に銀色の髪をした幼女がいた。
「誰だ」
「ずっと待ってたんだよ」
「誰だと言っている」
「君も大概だよね、あんな戦略に負けちゃうなんて」
「だから、貴様は誰なんだ!」
目の前にいる少女はなぜか、俺の質問に答えようとしない。
少女は立ち上がり、悪戯にわらった。
「それはあなたが一番知ってるんじゃない?」
「俺がか?」
「うん」
その一瞬、一面が突然、プラネタリウムのように変わり、夜空が現れた。
俺は驚いて、立ち上がった。
「なんだ、これは!?」
俺が今いる空間が透明の箱になったかのようにどこかわからない世界に飛んでいた。
「ここは、過去。君は過去にタイムスリップしたんだよ」
「なんだと……!?」
少女は膝をついて、一差し指である一点を示す。
「ほら、あそこを見てみて」
そこには、祭壇のような場所があった。
「なんだ、あれは……!?」
「あれは儀式。人々に悪魔と契約したと言われる女性の体を神に捧げ、悪魔を追い払おうとしたんだ」
儀式……。人は昔からカードを使い人外のものを使役したという……。
『いや! 私は死にたくない!』
女性の叫び声が聞こえてくる。
二人の男性に捕らえられた女性はどこか、見たことのあるはだけた衣装を着ており、顔は布のようなもので、隠されていた。
「もしや、あの女性を生け贄に捧げ、神を召喚しようと言うのか!?」
「ううん、一人だけじゃないよ。何十人ものの人間を生け贄として捕らえられているの」
俺が別の場を見ると、倉庫のようなところに兵士に囲まれ、手足を縛られた人々がいた。
しかも、その中には俺よりも幼い子どもが多く、全体的に若い子ども達が多かった。
「っく……」
「どこに行こうとしてるの」
「あんなのを黙ってみろと言うのか!」
「デッキもないあなたに何ができると言うの?」
俺は立ち止まる。確かに、今の俺にはデッキはない。
「君は弱い人。デッキがなければ何もできないんじゃない?」
「……」
いいかえせなかった。
デッキがない今、俺はそれを召喚することができなかった。
「見て」
「……?」
少女は再び、祭壇を指した。
祭壇から悪魔が現れる。
「あれは……『サキュバス・ナイト』!」
『サキュバス・ナイト』(OCG)
通常モンスター
闇属性 戦士族 レベル5 攻撃力1650 守備力1300
魔法を唱え、相手を血祭りにあげる悪魔の魔法戦士。
「あんな下級低俗悪魔のせいで多くの人々が死ぬと言うのか!」
「それがデュエルだよ」
「なに!?」
「あれはデュエル。モンスターにはモンスターで倒さなければならない」
彼女がその一言をいった途端、暗い空から一本の銀色の光が立つ。
「あれは……」
あの輝き。あの嘆美。あの声。
まちがいない、あれは……。
「シルバーアイズ…………なのか?」
『なんだ、あのドラゴンは!』
『デュエルで倒せ!』
『デュエル!!』
それを見た兵士達は集まって、円盤状のデュエルディスクを持ち、それぞれが使役するモンスターを召喚する。
『ミノタウロス』(OCG)
通常モンスター
地属性 獣戦士族 レベル4 攻撃力1700 守備力1000
すごい力を持つウシの怪物。
オノひと振りで何でもなぎ倒す
『グレムリン』(OCG)
通常モンスター
闇属性 悪魔族 レベル4 攻撃力1300 守備力1400
いたずら好きの小さな悪魔。
暗闇から襲ってくる。気をつけろ!
『サイクロプス』(OCG)
通常モンスター
地属性 獣戦士族 レベル4 攻撃力1200 守備力1000
一つ目の巨人。
太い腕で殴りかかってくる。
要注意。
だが。
銀色に輝く竜は戦意を見せず、一筋の光をモンスター達に照らす。
またたく間に、モンスター達は戦う意思を失い、消えていく。
悪魔『サキュバス・ナイト』もまた、シルバーアイズの出す銀色の輝きに昇天された。
そして、兵士達は倒れ、捕らえられていた人々が解放されていく。
「これは単なる一つの伝説に過ぎないよ」
「一つ……」
そして、先ほど兵士に抵抗していた女性の顔の布がとれる。
その姿は俺のデッキに入っていた『
「あれは、俺のデッキに入っていたモンスターなのか!?」
「ううん、逆だよ。君のお父さんがこの伝説に沿ってモンスターをデザインしたんだ」
「父さんが……?」
「君のデッキはシルバーアイズだけじゃない、他のモンスターだってお父さんが作ったんだ」
そして、また景色が変わる。
次は都市だった。
銀色に輝く竜を左眼に銀色の瞳をもった女子高生が追い掛けている。
次は戦場だった。
争いの絶えない国との戦いの中、騎士と少女が重なり合い、竜が現れる。
「このビジョンは一体……!?」
「伝説は一つじゃない、ましてや二つなんかでもない」
そして、次の場面は、
「あれは、小学生の時の俺……!?」
今も思い出したくない父さんが死んだ……いや、殺された日。
『私はモンスターでダイレクトアタック!』
仮面の男が使役する道化師のモンスターが父さんを切り裂く。
『うわあああぁあああああ!!』
「父さん!」
思わず声が出る。だが、ここからはでることはできなかった。
出られない俺の代わりに現れたのは、過去の俺だった。
『お父さん! しっかりして!』
『
『そんなことできないよ! お父さんも早く!』
『お前なら……伝説の竜を…………『
お父さんは俺を突き飛ばし、立ち上がり、仮面の男に向かって走り、殴りかかった。
俺は姉さんにつれていかれた。
「父さん……」
俺はいつの間にか、泣いていた。今でも忘れないあの日のこと。
平和だった俺達の家族を引き裂いた白と黒色のマントと、仮面をした男。
「まだ終わってないよ」
「なにがだ……?」
「君は気づいたはずだよ、可能性は一つや二つなんかじゃない、無限にあるんだって」
彼女の姿がとうのく。
「!? 何が起きて……!?」
俺はいつの間にか、暗い空間に投げ飛ばされていた。
「ばいばい、デュエル、頑張ってね」
彼女はニコっと笑って、俺に手を振る。
「まて、お前は一体なにものなんだ! 教えてくれ!」
「…………」
俺は必死に手を伸ばして、向こうに行こうとするが、とどかなかった。
しばらくすると、俺の視線は暗くなり、意識が遠のいた。
「……私をつかいこなしてよね」