復讐が終わったアクアマリン   作:ぬがー

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プロローグ

 もし芸能人の子供に生まれていたらと考えたことはある?

 容姿やコネクションを生まれた時から持ち合わせていたらと。

 

 あるいは突如不思議な力に目覚めたらと考えたことはある?

 鬱屈とした日々を特別な力で吹き飛ばすことが出来たらと。

 

 僕は真面目に考えた事は無かった。

 だってそうだろう?

 

 

 自分の話とは思わなかったんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった、んだよな」

 

 美しい抜け殻のような雰囲気の少年、星野愛久愛海(アクアマリン)ことアクアがひとり呟く。

 彼はかつて雨宮吾郎という産科医だった。

 しかし推しのアイドルであるアイの出産当日、彼女のストーカーに襲われて死亡し、目が覚めた時にはアイの息子の赤ん坊になっていた。

 それからの4年間はアクアにとって幸せな時間だった。不器用ながら必死に愛してくれた母、共に母をアイドルとして推す(ルビー)、母を支えてくれた社長夫妻。前世でアイに子供を安全に産ませるという約束を守れなかった吾郎の死など気にもせず、吾郎を殺したストーカーに感謝してしまうほどアクアは満たされていた。

 

 しかしそんな幸福な日々は唐突に終わる。

 アイのドーム公演当日、引っ越したばかりだと言うのにかつて吾郎を殺したストーカーが突如来襲。アイは殺され、アクアは死に行くアイを見ていることしか出来なかった。

 実行犯のストーカーも自殺し、生きていても意味がないから死のうかと考えたアクアだったが、実行犯が吾郎を襲った人物と同一であること、そしてスキルも何もない一般人であるにもかかわらず引っ越し直後のアイの居場所を突き止めたことから黒幕が別にいると推測。仇を必ず見つけ出し、自身の手で殺すまで死んではいられないと決意する。

 

 そこからは根気と執念の下準備だ。

 まずアイが妊娠以前から使用していたスマホの情報から交友関係のあった関係者の情報を探った。何桁かもわからないパスワードを一つ一つ、毎日毎日毎日毎日毎日毎日入力し続け、4年の月日をかけてついにパスワードの突破に成功する。

 そして仇を探すため、芸能人に直接接触できるポジションを得るべく行動もする。状況証拠からアイの仇はアクアと妹の父親である可能性が高く、DNA鑑定で特定するためだ。そのために何としても役者になる覚悟で交流のあった五反田監督に弟子入りするも、才能の無さにより断念。芸能界に関われるなら何でもいいと裏方として経験を積んでいった。

 アイの死から10年以上。治まる事のない怒りと憎しみに身を任せ、ただひたすら復讐のための準備を続けていた。

 

 

 

 その準備がある日突然無駄になる。

 神だの霊だの霊能力者だの、頭がおかしいんじゃないかと思うようなことを言う国家機関にスカウトされたのだ。霊現象を秘密裏に処理し表沙汰にしないのが職務だと言う。

 彼らが言うには父親も霊能力を持っていたから定期的に様子見しており、最近になってアクアが無意識ながら霊能力を開花させたからスカウトに来たのだと言う。全く想像もしない方向から、探し求めた情報が全て押し寄せてきた。

 曰く、父の名前はカミキヒカル。

 曰く、アイの妊娠当時に彼はまだ15歳の中学生であり、そのためアイは父親が誰か里親である斎藤壱護にすら話せなかった。

 曰く、現在のカミキは神木プロダクションの代表取締役を務めているが、裏では霊能力を用いて殺人鬼もやっている。

 曰く、事故処理も完璧で被害も優れた女優に限られているため少なく、かつカミキ自身の戦闘力も高いため人材を消費するには釣り合わず処理は後回しにされ続けている。

 などなど。

 明晰なアクアの頭脳でも理解が追い付かないほどの量と質の情報だったが、これを聞きアクアは認識を改める。

 

 

 

 可能な限り苦しめて殺すんじゃ時間がかかりすぎる。アイの仇は一刻も早く討たなくてはならない。

 

 

 

 そこで提案されたのが、アクアが将来的に組織に協力する代わりに処理の優先度を最優先に変更すると言うもの。

 アクアの霊能力はレアな医療系の物であり、医学知識を身に着け併用すれば大きな成果が期待できる。ゆえにアクアは霊能力の修行と並行して医大への進学を目指し、医者として協力してほしいらしい。それが約束されていれば上司を説得し十分な人材を動員することが出来るそうだ。

 冤罪を避けるため、迅速かつ念入りにアクア自身でもカミキヒカルについて調査を行い、情報に誤りが見られなかったため条件に同意した。

 

 

 

 そうしてアイの復讐は達成された。

 大人数で袋叩きにし、あっさりと、何の波乱もなく。

 

「……」

 

 これで良かったのだとアクアは思う。

 アイの仇は間違いなく取れた。アイへの執着という個人的なこだわりで殺人鬼を野放しにしておく事ほどアイへの冒涜はないだろう。だからこの選択は間違っていないはずなんだ。

 

「……」

 

 しかしやることが唐突になくなってしまった。これからどうすればいいんだろう。霊能力の修行をやっても時間は大いに余る。愚にも付かない空想が突如として現実になったせいで、どうすべきか、どうしたいのかが思い浮かばない。

 ぼんやりと天井を見つめながら考え続け、ようやく言葉を思い出す。

 

『アクアは役者さん?』

 

『アクアならきっと、誰よりも凄い役者になれる!』

 

「……」

 

「役者、やってみるか」

 




カミキヒカルは原作からしてゴローの死体の隠蔽で明らかに人知を越えた現象起こしてるので超能力者とか霊能力者でいいと思います。
あの大きさの洞窟に死体を放置して見つからないってどう考えてもおかしい。
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