復讐が終わったアクアマリン   作:ぬがー

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 こういうことやってそう、と思って加えた捏造設定だらけです。
 原作では描写されてない事なので注意してください。


今ガチ③

 5月の第2日曜日。その夜の事。

 アクアはルビーとミヤコの三人で夕食を取っていた。

 

「「「いただきます」」」

 

 ここ最近、アクアは夕食時に家にいない事が多かった。理由は仕事だ。

 『今ガチ』の収録は土日の朝から夕方、場合によっては夜まで行われる。出演者の学業に配慮した日程だが、収録が終わってから直帰しても夕食には少々遅い。出演者と一緒に食事に行くこともあり、日曜日の夕食は家族揃って取るという約束も守られない事が多かった。

 しかし今日はルビーも意地を張ってアクアを待ち、アクアも急いで帰ってきたので三人で食卓を囲むことが出来た。

 

「やっぱり皆で食べた方がご飯はおいしいね!」

 

「そうね。レッスンもあったしお腹空いてたでしょう。

 アクアも仕事が増えたし、スケジュール管理も任せちゃってるけど大丈夫?」

 

「大丈夫。報告した通りブッキングしないよう注意してる。問題ないよ」

 

 アクアは『今ガチ』以外にも仕事を自分で取ってきて、自分でスケジュール管理も準備も行って仕事をしていた。苺プロはネットに強い芸能事務所だが、俳優業は手薄で自分で大体全部やる必要があるのだ。

 そして役者としては復帰したばかりのアクアに仕事があるのは、アクア自身のコネの成果だ。

 復讐のため子役として芸能界に関わろうとした頃、また裏方として関わるため現場に受け入れられ少しでも自由に動けるように準備していた頃の事。アクアは当時のADを始め大人に対して礼儀正しく振る舞い、パニック発作を起こした時は助けられてきた。つまり大人達に借りが出来たわけで、貸しだけではなく借りでもコネには変わりない。折に触れては手紙を出したり、会いに行ったりして、縁が途切れないようにしていた。彼らとは薄い関係だがもう10年近い付き合いがある。

 出世した彼らに役者復帰の連絡を入れると、一部の人からは仕事を貰うことが出来た。アクアには「飛び抜けて顔が良い」「五反田監督が保証する程度には演技ができる」という分かり易い長所もあるため、使い所が決めやすかったのもあるらしい。アクアが『今日あま』に飛び入り出演して役者に復帰したなら、仕事を回して貰えるようになるのは『今ガチ』が終わった後くらいになっていただろう。しかしこの世界では一足先に役者復帰を伝えていたため、既に仕事をいくつか回して貰えるようになっていたのだ。

 

「現場の人ともうまくやれてる。次も使ってもらえそうだ」

 

「相変わらず器用にこなすわね。いつも仏頂面なのに」

 

「すごいよね。コレで人付き合い上手なの」

 

「ルビーだってあの音痴でアイドルやれるのは凄いと思うぞ」

 

「わ、私はこれから上手くなるもん! ね、ミヤコさん!?」

 

「そうね。今まで以上に頑張ってるもの。ルビーなら出来るわ」

 

 和やかに会話が弾み、皆楽しい時間を過ごしていった。

 食事が終わると例年通りアクアとルビーが何か物を取り出してくる。

 

「ミヤコさん、これあげる」

 

「俺はこっち」

 

「ありがとう二人とも」

 

 二人とも何の日のプレゼントかは言わない。言えない。

 ミヤコとの関係について感情の折り合いが付かない中、何年も前に始めて今も続いているのが、この何も言わずプレゼントだけ渡すという習慣だった。

 二人にとって母親はアイだ。でも自分たちを育ててくれたミヤコには恩も親愛もある。自分たちの関係性をどう言えばいいのか整理しきれず、それでも感謝を表そうとして始まったのがこの習慣だ。

 例年はプレゼントは渡すがそれ以外は普段と何も変わらない日曜日。そのはずだったのだが、今日は違った。

 

「この後僕は出掛けたいんだけど、ミヤコさんも付き合ってもらえる?」

 

「? 構わないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクアとミヤコが肩を並べて歩く。場所は墓地だ。

 

「まさかアクアが墓参りに行きたいだなんてね。これまで来た事なかったでしょう。それにルビーを置いてきて良かったの? 昼も来たけどアクアが来るならもう一回来たがってたわよ?」

 

「色々あったんだよ。ルビーには悪いけどミヤコさんに相談したかったから。何か埋め合わせは考えておく」

 

 いよいよ普段ではあり得ないアクアの言動に「これは何かデカい事があるぞ」とミヤコも身構える。

 そんなミヤコを他所に、アクアはアイの墓に手を合わせ、香水を僅かに吹きかける。

 

「それは何?」

 

「カーネーションの香水。今日ミヤコさんにあげたのとお揃いのやつ。アイに子供なんていないことになってるし、花を供えるわけにはいかないから」

 

「―――ッ!?」

 

 カーネーションと言えば母の日に送る花だ。これまでアクアはプレゼントは母の日らしい物は避けて贈っていた。なのに今年は違ったと言う。身構えていたミヤコも嬉しいより先に動揺するほど意外な行動だった。

 

「今日はなんていうか、悩み相談? 結論出せるとは思ってないしまとまりもない事言うと思うんだけど、話だけ聞いてほしくて」

 

「アクアが話してくれるならいくらでも聞くわよ。言ってもらえるなら嬉しいわ」

 

「ありがと」

 

 一呼吸置いて、アイの墓の前でアクアが語り始める

 

「今ガチでさ、母の日の話になって。その時僕は何も答えられなくて。取り繕うべきだったんだろうけど、そもそも自分の本音がわからなかったから、そっちに意識が向いてたんだ。

 ミヤコさんの事もわかってないけど、俺にはアイの事もわからなかった。俺にとってアイってなんなんだ? 推し? 母親? それとも他の何か?

 僕はアイの事をお母さんって呼んだ事すらろくにない。 結局俺はアイの事を何もわかってなかった気がする」

 

 アクアの幼年期はミヤコも知っている。

 転生した事はミヤコは知らないが、気味が悪いほど賢い子供で、やたらと大人びていてアイに対して保護者目線な時すらあった。あれがアイを母と思えていなかったからだと言うのなら納得がいく。

 その後もアクアはアイとの思い出を振り返り、その時どう思っていたかを語り続ける。

 そうすることでアイへの思いが見えてくるようで、過去の記憶すら頼りにならなくなるようで、アクアにとってアイは何だったのかという問いの答えに近づいたり離れたりを繰り返した。

 長々と話し続け、疲れてきたのかアクアはようやく話を打ち切った。

 

「―――ふぅ。とりあえずこれくらいでやめておく。何も答えは出せなかったけど、吐き出したら楽になれた」

 

「聞かせてもらえてよかったわ。私は話を聞いていて一つ答えが見つかったしね」

 

「……?」

 

「ちょっと、いやだいぶ……かなり? アイも未熟だったけどちゃんと母をやれていたのね。

 アクアはアイを愛しているし、あなた達は間違いなく家族。自分の事はわからないでしょうけど、傍から見れば簡単よ」

 

「……………………」

 

「じゃあ帰りましょう。ルビーが待ってるわ」

 

 ミヤコは上機嫌で歩き出す。

 アクアもミヤコを追いかけ、並んで家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみになんで急にお墓参りしようと思ったの? そっちは聞いてなかったわ」

 

「最近はアイの写真とか見てもフラッシュバックが起きる事減ったから、イケるかと思って。ちょっときつかったけど出来てよかった」

 

「ッ!? フラッシュバックってどういうこと!? え、そんな状態だったの!? 家でもアイのポスター貼ってるじゃない!?」

 

「あ」

 

 最後の最後で口を滑らせたアクアは、この後ミヤコとルビーに問い詰められ逃げ切った。

 

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