復讐が終わったアクアマリン   作:ぬがー

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コネクション

「ねぇって! どこ行くの!?」

 

「……」

 

「監督って誰の事!?」

 

「……」

 

「今どの辺に住んでるの!?」

 

「……」

 

「あんたドコ中!?」

 

「……いつまで付いて来る気だよ」

 

「私の質問に全部答えるまで!!」

 

「マジかコイツ」

 

 陽東高校の面接も終え、帰宅する前に五反田監督の所に向かうとルビーに告げたアクア。

 何故かやたらとグイグイ絡んで来るロリ系先輩有馬かなの事は無視していたのだが、そんなの知らんと言わんばかりに質問を投げつけ付いて来る。それどころかまだまだ付いて来るつもりだと言う。

 アクアは引いた。

 

「まだ役者やってるんだよね!?」

 

「……まぁ再開予定」

 

「!! じゃあさ! ちょっと話しようよ! これからカラオケとか行かない!?」

 

「行かねぇよ」

 

「えっ、じゃあ私の家とか?」

 

「距離の詰め方ヤバいって。ほぼ初対面の男家に招くとか何考えてんだお前。逆に心配になってくるぞ」

 

 家族がいて安全を確保出来てるとしてもマズい。この先輩は行動は不審者だが見た目は間違いなくいいのだ。そして(最近は見かけないが)元天才子役として知名度は間違いなくあるため、こんな風に接していれば良からぬ事を企む者だっているだろう。声をかけた相手がアクアだから良かったが、悪い相手だったらシャレにならない事態にもなり得た。

 おまけに当人がテンパってまともに考えられていない様子なのも見て取れる。アクアとしては不信感以上に危なっかしい子供を見る気持ちが強くなってしまっていた。

 

「仕方ないでしょ。私これでも芸能人なんだから! ちょっと喫茶店で話でもってわけにはいかないの!」

 

「それにしたってお前もうちょっと考えて……あーもういい。話せるとこならある」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー有馬かな! 見ない内にデカくなったなおい!」

 

「ぐふっ!」

 

 かなを伴い五反田スタジオにやって来たアクア。

 なんだかんだかなは過去に大ヒットした芸能人で、身元もはっきりしていれば監督との面識だってある。なら連れてきても問題ないだろうと思っての行動だったが間違いなかったようだ。

 

「お客さんかい! ご飯食べてくかい!?」

 

「わっ!? えっと、お構いなく!」

 

「かーちゃん! 客来たらとりあえずメシ勧めるのやめてくれよマジで!」

 

「……いつもこんななの?」

 

「……まぁ概ね」

 

 監督は利便性の面から実家暮らしのため、監督の母が話に入ってくることが多々ある。大事な話をしていても腰を折られるなどしょっちゅうだ。今も笑うか引くか悩む漫才を見る羽目になっている。

 アクアから常々「子供部屋おじさん」「そろそろ親元から離れたら?」「結婚して独立したら?」などなど言われ続けても一向に改善できない監督の弱点である。

 しかしかなはその光景を見て、羨ましそうに目を細めた。

 

「いいなぁこういうの。うちは両親が田舎に引っ込んでてさ。私一人で寮暮らしだから。ご飯もいつもウーバー頼りで手料理とか食べる機会ないし」

 

「……まぁ良いものなのは同意する。でもそれじゃ金かかるだろ。今稼げてないし」

 

「それを言わないでよ!? 貯金だけは子役時代の稼ぎで引くほどあるから問題ないの!」

 

 アクアも監督に弟子入りして長い。斎藤ミヤコ及び星野兄妹には『日曜の晩御飯は家族揃って食べる』というルールがある。主に稼ぎ頭が死に前社長が失踪した会社を立て直すため死ぬほど忙しかったミヤコがアクアとルビーへ親代わりとして接することを忘れないために作ったルールだが、アクアもまたこのルールで縛られないといけない程に五反田家で世話になっていた。何度も繰り返される光景に慣れて呆れつつも、これは得難いモノだと思い支えられて育ってきたのだ。

 その価値をわかってくれたことでアクアの心の防壁はかなり薄くなっていた。この男、大概チョロい所がある。

 

「で、話ってのはなんだったんだ?」

 

「……今ね、私がヒロインやってる作品があるんだけど、まだ役者が決まってない役があるんだ」

 

「ん? ヒロインやる予定、じゃなくてやってる? まだ決まってないって誰か役を降りたのか?」

 

「あんまりおいしい役じゃないからゴネたのよ。それでリスケすることになっちゃって」

 

「だからって今日偶々あった奴ねじ込めるのか。子役の頃から何年もやってねーっていうのに」

 

「まぁその、ちょっと問題のある現場なのはそう! でも名前調べても見つからなかったし、今仕事ないでしょ? (プロデューサー)の鏑木さんには可愛がられてるから、掛け合えばスルッと決まるかもよ?」

 

「……」

 

 正直な所アクアには監督経由のコネはあるし、焦らなくても仕事を回してもらえる状況ではある。演者が急にいなくなって困ってるような現場にいく必要はそこまでない。

 

「なんて作品?」

 

「『今日は甘口で』っていう少女漫画が原作のドラマ」

 

「ド名作じゃねーか」

 

「お、興味ある?」

 

「『今日あま』は俺も読んでるし。Pに連絡してくれ。やる」

 

 だが断る理由もない。アクアには将来は役者ではなく医者になると言う時間制限もあるのだし、せっかく誘われたのだからやってみてもいいだろう。

 

「やった! アンタの演技楽しみにしてるから!」

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