「えっ!? アクア、ドラマに出るの!?」
「規模は小さいドラマだけどな。今日いきなり縁が出来た」
五反田家で夕飯まで食べてから帰ってきたアクア。
職務的に社長であるミヤコへ報告しないといけないのもあるが、隠すような事でもないのでルビーにもドラマの事を話した。
「なんて作品に出るの?」
「『今日は甘口で』って漫画。原作読むか?」
「アクアの部屋にあったやつだよね? あれおもしろかった!」
「貸す前に勝手に読むな」
「いいじゃないそれくらい。
―――最近出来たネットTV局制作のドラマで全6話。もう3話まで放送済み。メインの役者も新人が多いし、規模としては小さめね」
ミヤコが調べればすぐにアクアが出演予定のドラマは見つかった。ネット局のドラマの為、すぐに視聴可能だ。
アクアは五反田家で既に見てきていたが、ルビーは目を輝かせてノートパソコンを覗き込む。
『人間は嫌い。
だって皆、自分の事しか考えてないから』
「あっ、ロリ先輩! ほんとに主役だ!」
『オマエソンナカオシテタノシイノ?』
「……?」
『ナンダ。ワラエバカワイージャン』
『からかわないで』
「…………」
『オレノオンナニテヲダスナ』
『ハッ、ナンダテメエ』
『けんかはやめてー!』
「…………………………」
最後まで見ることもなく、無言のまま視聴が終わる。
二人ともかなり困ったような表情だ。
「……『今日あま』ってこんな作品だっけ?」
「……概ねこんな感じじゃなかったかしら?」
「……なんか原作にいないオリキャラが活躍してたけど」
「……出来るだけ多くの役者を使いたい制作側の事情でしょうね」
「……展開もさ、こんなんじゃなかったよね?」
「……原作全部を6話に収めるんだもの。どうしても物語をカットする部分が出てくるのよ」
「……オリキャラ足してるのに?」
「……そっちの方が大事なんでしょう」
「……役者の演技も」
「……演技未経験の子が多いみたいね。本業はモデルみたい」
「…………なんていうか……ひどいねコレ!?」
「企画段階から問題のある作品だしな。まだ頑張ってる方だ」
アクアは五反田家で既に視聴済み、アクアと同じく五反田家で夕飯を食べてから帰ったかなから空き時間に事情も聞いている。制作側の事情も込みで説明を始めた。
「この作品はモデルの宣伝用だからな。女性層にイケメンのお披露目が出来ればいいから役者の演技力は二の次。売り手の都合が前に出すぎて面白くなり様がない。
それでも裏方は優秀だ。ダメな演技を観れる作品にする技術があるし、脚本も役者に合わせて考えられてる。ひどい演技だが観れなくはないって思っただろ?」
「演出とかはしっかりしてたね。でもさー、ロリ先輩ってさ、もっと演技上手くなかった? 主役がこれじゃダメなんじゃないの?」
「作品全体のバランスを考えて抑えてるんだそうだ。
一人だけ上手すぎれば他の役者の下手さが際立つ。そうなれば作品全体がダメになる。だから自分の役者としての評価を下げる下手な演技もする。
自分の演技力をひけらかして大ヒットし、旬が過ぎれば仕事が無くなった元天才子役有馬かななりの処世術だ。
我を通さず、作品の品質向上に務める使いやすさ。自身と同等以上に演技の上手い競争相手が犇めく芸能界で、それでも有馬かなを使う理由として身に付けたモノらしい。今回の撮影においてもかながその辺りを弁えているから主役に使ってもらえたと言うし、無駄ではなかったのだろう。
「何か気にくわなそうね?」
「……まぁそれなりに。僕も天才子役有馬かなの全盛期に役者を目指した子役だったから。ああなって欲しくはなかったよ」
アイが殺されて、仇である父親を探すため芸能界に入った。監督のコネで端役だが映画に出演もした。
結果、自分の才能の不足を突き付けられるだけに終わった。
アクアはかなとは性別が違い、年も違い、子役としての格すら違う。演じる役で競争になることはなかった。それでもテレビ越しに見る
かなの顔を見て当人とわからなくても、その演技は忘れられずにいるほどに。そんな価値あるモノが雑に使い潰されている状態など理解は出来ても納得などしたくない。
ただルビーはそれが気にくわなかったらしい。唯一の共演を引き合いに出し、アクアの自虐に抗議する。
「えー!? 子供の頃はアクアが泣かせてたじゃん。それなのに?」
「あの時は演技をしなくていい役が用意されてたからだ。演技じゃ比べ物にならないって初見で諦めてた」
「……そんなことないと思うんだけどなー。ママだってアクアのこと褒めてたしっ!」
「はいはい、ルビーも駄々こねないの。
アクアも苺プロの俳優として久々のお仕事がコレでいいのね?」
「ああ。なんかやりようはありそうだし、いい仕事にしてくる」
かなに対して最初からアクアの好感度が高かった理由の独自解釈①です。