復讐が終わったアクアマリン   作:ぬがー

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恋愛リアリティショー

「……はぁーーーーー……」

 

「先輩辛気臭ーい。溜息吐くのやめない?」

 

「流されるままアイドルなんかになっちゃったんだから仕方ないでしょ……。頭じゃダメだって分かってたのに私はなんでいつもこう……」

 

「でも先輩、女優だけしてても詰んでたよね? お兄ちゃんとミヤコさんも言ってたよ」

 

「がふっ! ……それもわかってるわよ。どの道カンフル剤は必要だった。何か別の挑戦は生き残るために必要で、だから分も悪い賭けでもアイドルに挑んで―――」

 

「自分を納得させるのに必死だねー」

 

「どう言えってのよアンタは!!」

 

「暗い雰囲気やめてくれたらそれでいいかなー」

 

 アイドルとしてスカウトされ、苺プロ所属となったかなはいきなりダレていた。

 アイドル活動を始めれば若手役者枠としての仕事を失うことになる以上、セルフプロデュース上リスクが大きすぎる無謀な賭けだとはわかっていた。苺プロ自体も大手ではなく頼りになるか分からなかった。過去の失敗から自分が売れるとも思えなかった。

 だから勧誘は断るべきと頭では判断していたのだ。でもゴリ押しされて応じてしまったから、どうにか自分の行動を受け入れようとしているのだ。

 なおこんな押しに弱い癖に見た目は良くて金も持ってる小娘とか、悪い大人から見れば鴨葱どころではない。誰かに食い物にされる前に立派な大人が運営する事務所に所属出来たのはかなにとって幸運だっただろう。それを実感することは出来ないから、悩むことはやめられないのだが。

 

「あーわかったわよ。過ぎた事考えてちゃ凹むだけ、今の事考えるわ。

 アクアは今日、仕事よね? 何やってるんだっけ?」

 

「あー……んー……これ。私もまだ見る気になれなくて。一緒に見る?」

 

「見る」

 

 ルビーが番組の動画を開いたタブレットをかなが覗き込む。

 

今からガチ恋♡始めます

 

『鷲見ゆき、ファッションモデル、高校一年生』

 

『熊野ノブユキ、ダンサー、高校二年生』

 

『黒川あかね、女優、高校二年生』

 

『MEMちょ、ユーチューバー、高校三年生』

 

『森本ケンゴ、バンドマン、高校三年生』

 

「リアリティーショーね。

 芸能生活をしている高校生たちが週末に色んなイベントを通して交流を深め、最終的にくっつくとかくっつかないとかそういう番組。

 鏑木Pの番組だけあって皆顔がいいわねー」

 

「あ、最後はお兄ちゃんの登場」

 

『星野アクア、役者、高校一年生』

『めっちゃ緊張するわ~。皆よろしくね!』

 

「「いや誰!?」」

 

 あまりの普段とのギャップに二人が叫ぶ。リアリティの欠片も感じられない、爽やかすぎる嘘100%の笑顔だった。

 

「お兄ちゃん、陰のオーラ出してる闇系じゃない! キャラ作りすぎ!」

 

「メディア用にしてもこれはやりすぎ!」

 

「でもアクアの顔だとこういうの似合うでしょう?」

 

「「それはそうだけどッ!」」

 

 アクアの顔は間違いなく良い。芸能界では「自分は特別に可愛い/カッコいいと相手に信じさせる力」を「スター性」と呼ぶ人もいるが、星野兄妹は信じさせるまでもなく事実として特別に顔が良い。アクアの華やかな容姿に明るい言動は似合っていて、客引きには効果的だと一目でわかった。

 

『え~かっこぃ~っ。役者さんってあこがれるぅ』

 

「ぶりっこタイプ。お兄ちゃんこういうのには厳しいし、この子はないなぁ」

 

『MEMちょも可愛いね。めっちゃ照れる……』

 

「「は? 死ね」」

 

 やはり普段とは違う言動に二人はついて行けない。アクアがこんな反応をしているのが気にくわなくてしょうがない。

 

「はいはい、二人とも落ち着いて。

 普段通りのアクアじゃ宣伝には向かないでしょ? 身近な男が他の女にデレデレしてる所見たら腹が立つのはわかるけどね」

 

 ヒートアップしかけた二人をミヤコや諌める。ほぼ素人で性的な事に潔癖なルビーはともかく、芸歴の長いかなの反応は少し困り物だったが顔には出さない。

 

「アクアも役者。そういう男を演じる気持ちでそこにいるんじゃないかしら」

 

「「演技……」」

 

 あくまで嘘。それでルビーは一応は納得出来たらしい。

 だがルビーを抑える事を期待していたかなの方がまだ納得がいかないようだ。

 

「わかってるけど……。

 これ、最後本当に告白して恋人になったりするんですよね?」

 

「そうね。形式だけでもそこの筋は通すことになるでしょうね」

 

「告白成功したらキスとかするんでしょ?」

 

「まぁ定番ね。前シーズンでもやってたわ」

 

「……こんな番組、なんで受けたんだろ……」

 

 真面目に凹んでる様子のかなにミヤコは結構困っていた。芸歴が長いのに潔癖過ぎる。ルビーの介護要員としても期待していたが、介護は必要なのはかなの方かもしれない。

 アクアの推薦があったとはいえ、面談も無しに採用は早まったか。そう考えたが、別の可能性も思い浮かぶ。

 

(もしかして誰に対してもこうってわけじゃない? アクアに恋してるとか?

 ……さすがにないか。つい最近再会したばかりだし、前に会ったのだって10年以上前に、映画のワンシーンを撮影する時間だけ。いくらアクアがカッコいい子だからってそこまで拗らせたりしないでしょう)

 

 実は予想が的中しているなどさすがのミヤコも思わず、芸能界を見てきた大人として子供(かな)にアドバイスを送った。

 

「貴女だって女優を続けるなら、いずれキスシーンとかも求められる。ここを割り切るのも仕事の内。この業界でガチガチの貞操観念持ったままだと辛いわよ。

 でもそういうのを避けやすいアイドルの方が貴女には向いてたかも。何せ純潔性を売りに女優や歌手とは差別化を図ってるわけだし、私もさせる気はないわ。こういうの怪我の功名って言うのかしら」

 

「―――ッ、分かってるけどさ……!」

 

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