INFINITE CROSS FUTURE   作:ゲオザーグ

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本来は前章でヒロイン各員を始め原作との剥離部分についての説明を進めたかったんですが、ただでさえストーリー停滞気味なのにキリがなくなりそうなんで以降でき次第追加していく形になりそうです


欲望の巣窟
混沌の幕開け


 本来なら入学式を終え、初見の相手に自己紹介をする新入生達が賑わうであろうIS学園1年1組の教室は、現在異様な空気に包まれている。

 揃いも揃って席から離れぬ彼女達の視線は、大半が教室中央に並ぶ縦列前方に納められた3人の男性IS適応者に向けられているが、それには単純な興味や好奇心だけではなく、侮蔑や不快感も少なからず含まれていた。

 そうした決して少なくはない負の意識に当てられたのか、五十音順で2番目となった五反田弾はすっかり委縮してしまっていたが、先頭になった(かぎ)(はら)(しょう)()は、右隣の席に座る護衛対象の四十院神楽の様子を(うかが)いながら参考書を読み進めており、逆に後方の(はや)()(かず)(ひろ)こと一夏に至っては、顔の大半――額から口元までを遮光性の高い黒のバイザーで覆い、腕を組んで椅子の背もたれに寄りかかり、すっかり居眠りを決め込んでいる。

 そうして沈黙に包まれたまま、諦めた弾がどれくらい経っただろうかと思考をずらし始めた頃、教室のドアが開き、新たに1人入ってくる。

 

「皆さん、入学おめでとうございます。私は副担任の山田真耶です。これから1年間一緒に頑張りましょうね!」

 

 背格好だけ見れば、頑張って大人になりきろうとする同年代のようにも見えるが、相手はまさかの副担任――要はれっきとした教師と知れば、普通なら多少は賑やかになるのだろうが、生憎(あいにく)と引き続き注目を浴び続ける3人の前には、真耶など霞んでしまう程度の存在でしかないらしい。それでも真耶は己が役職を全うしようと、実質アウェイ状態で無視され続けながらも、必死に連絡事項などを説明していき、ある程度話を終えたところで、おそらくこの場にいるほぼ全員が望んでいるであろう指示を告げる。

 

「え~……それでは皆さん、出席番号順に自己紹介をどうぞー、ハハハ……ハア」

 

 一切反応がないことに内心泣きそうになりながらも、何とか教卓横に設置された自身の席に座り、各員の自己紹介まで漕ぎ着けると、ひとまず無事1人ずつ順に、趣味や特技をアピールして進めていく。

 

「イギリス代表候補生、セシリア・オルコットです。立場(ポジション)に驕ることなく、皆さまの模倣となるべく、このIS学園で己を高められるよう、努力を積みたく存じますわ」

 

 そして教室窓側列の最奥から、クラス唯一の留学生――セシリアが自己紹介を終えると、次を期待するように視線が翔摩へと集中していく。当の翔摩はそれに気づいてか、呆れるような軽い溜息をしてから席を立ち、名乗り始める。

 

「四十院財閥所属、鈎原翔摩だ。一応こっちのお嬢――もとい、同財閥令嬢神楽さんの護衛もしてるんで、仲良くできるかどうかはともかく、そこんとこよろしく」

 

 簡潔に私情(プライベート)は最小限で、かつ必要事項は明確に示して座る翔摩への視線は多くの期待が失意に変わる中、数人挟んで続くのは弾。翔摩ほど度胸は座らせることはできなかったようで、多少アタフタしながら立ち上がりはしたものの、軽く深呼吸をして落ち着く。

 

「あー、五反田弾です。実家は食堂なんで、料理、特に和食には多少自信アリ、かな……。まあ、ISに関してはほとんど素人みたいな感じだけど、何とぞよろしく…」

 

 自己評価としては悪くはないが難ありなところか、と思いながら座る弾が心配げに見るのは、席こそ真後ろだが、番号は大きく離れているため、もうしばらくかかることになる一悠(一夏)。ひとまず自分達が相手なら、言葉を選ぶようにたどたどしくも話すことはできるが、こうして不特定多数を相手にするのは初めて見ることになるため、果たしてうまく自己紹介できるか不安になってくるが、そこはぶっつけ本番となるだろう。

 そうこうしているうちに順番が回ってくると、目元がバイザーでサッパリ判別できなかったがどうやら起きていたようで、スムーズに立ち上がり、今までとは逆に周囲の注目を歯牙にもかけない様子で自己紹介を始める。

 

「速美一悠だ。世間じゃ織斑一夏がどうとか言われたが、織斑千冬(ブリュンヒルデ)とは赤の他人だ。アンタ等が俺達をどう思おうが勝手だが、手ぇ出すってんなら眉間ぶち抜かれても文句は言わせねえぞ。まあ、せいぜいモルモットにされるまでの短い間になるだろうが、せいぜいそれまで頭数減らないように祈ってろ」

 

 完全に喧嘩腰だった。それこそ1月ほど前まで、人影どころか気配にすら怯えていたのがウソのような攻撃性と敵意に、思わず弾が頭を抱えていると、再度教室のドアが開き、この場を何とかできそうな人物が姿を見せるが、そっちもそっちで先の発言に圧され、その場から動けずにいた。誰が悪いかと言われれば間違いなく敵意むき出しの一悠だろうといえ、自動化の弊害ともいうべき間の悪さに、思わず額に手を当て悩む真耶だったが、さすがにこのまま放置するわけにもいかないので、せめて自分が何とかせねばと覚悟を決めて席を立ち、呆然と佇む相手――ピンポイントで話題に挙げられた織斑千冬に声をかける。

 

「織斑先生、お疲れ様です。今自己紹介をしていたところで、その、多分聞こえたと思うんですが、今速美君が挨拶を終えたとこでして……」

 

「ああいえ、こちらこそ、遅くなって申し訳ない山田先生。少し、会議が長引いてしまっていて、な……」

 

 そこでようやっと千冬の方もスイッチが入り、何とか話を続けようとするが、HR(ホームルーム)を理由に何とか抜け出してきた、先ほどまでの実質会議とは名ばかりな、大の大人のわがままに付き合わされていたことを思い出すと、酷く気が滅入ってきてしまい、とても話を進められなくなってしまうため、強引に話題を切り替えることにする。

 

「皆の自己紹介に割り込むような形になるが、そこは勘弁してくれ。あまりいい話題ではなさそうだったが、先程丁度よく、なのか悪くかはともかく……奇遇にも名前を呼ばれた織斑千冬だ。私の仕事は、諸君らをこの1年でIS操縦者として使い物になるまで鍛え上げることだ。と言っても、私自身も理解が追い付かぬまま色々と特例を割り当てられたせいで、何分こうして教卓に着くのも、今日が初めてでな。申し訳ないが、正直自分でも担任として使い物になるかどうかはわからん。故にネームバリューばかりの私より、山田先生の方が頼りになる場面も多くなると思うが、その分皆とは真摯に向き合いたい。言う事が分からなければ分かるまで教えてやるし、出来なければ出来るまで指導してやる。学園の規則に接触しないことが前提となるが、私の指導に不満や納得できないことがあれば、逆らってもいい。ペーペー過ぎて頼りないだろうが、1年間よろしく頼む」

 

 ひとまず教卓に向かい、そこから無難な挨拶を済ませる。特別扱いを嫌い、正規の教員免許試験に合格した上で務めることになったが、皆無に等しい信頼を微塵でも獲得したいのか、祀り上げも兼ねたであろう一夏の担任就役のため、特例を理由に研修などは免除などと恩着せがましい言い方でバッサリカットされたため、ノウハウも皆無で、年下ながら教師としては先輩たる真耶頼みに等しい。それでも対峙する生徒達を少しでも不安にさせまいとしっかり決めたはいいものの、どうも皆呆然とした様子で反応がない。しかし思わず大丈夫か尋ねようとしたところで、一転して浴びせられたのは大音量の歓声だ。

 

「キャーーーーーーー!千冬様、本物の千冬様よ!」

 

「ずっとファンでした!」

 

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

「あの千冬様にご指導頂けるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 湧き立つと表現できるような狂騒に等しい称賛の乱射。しかし彼女達はその熱意と憧憬(どうけい)に眼前で体を震わせる千冬が苦しめられているとは露にも知らず、教卓に出席簿を叩きつけて()()()()()()()()()様を見た途端やっと異変に気付き、静まり返る。

 

「………………すまない。皆があれを喜び、憧れてくれることは、悪くないと思う。しかし、私にとってあれは、多くの人をそうとは知らずに踏み躙った、出来レース同然の八百長試合だ。恥ずかしながら気づいた時には、そのせいで私自身も多くの物を失っていた。だから私が教える過去の話は、皆が望むような活躍の逸話より、惨めで無様な、それこそこの場にいる者の期待も信頼も失うような、そうした話ばかりになるだろう。聞きたいというなら、そこは覚悟しておくことを警告させてもらう……では、やらかした本人()が言うのもどうかとは思うが、気分を改め、自己紹介を再開してくれ」

 

 何とか息を荒げながらも事情を説明した千冬の一言で、半分ほど進んでいた新入生達の自己紹介も、残りの面々が無事済ませていく。それが終わったところで、残り少ないHRをどうするか真耶に確認すると、ちょうど1つ報告されていなかったことがあり、最後にそれを伝えて終わりにしようと思った矢先、チャイムが鳴り出す。

 

「と、もう時間か。では、教卓を取り換えてくるのでいったん席を外すが、簡単に言えば中学までのおさらいでといえ、次の時間から早速山田先生の授業が始まるから、しっかり準備をしておくように。それと、放課後前にクラス代表を決めておきたい。これは学年ごとに行われるクラス対抗戦の他、生徒会の開く会議や委員会などに出席する、要は一般の学校におけるクラス長のようなものだ。選別において自他薦やは問わないが、一度決まれば基本一年間変更は無いので、各員その点を考慮し、可能な限り慎重かつ迅速に候補を決めてほしい」

 

 ひとまず要件を全て報告し終えたため、破損した教卓を待機形態のタイガー・シャープバイト――胸元のポケットに収納された、ワインレッドのフレームに青いレンズのサングラス――の拡張領域(バス・スロット)に収納し、教室を後にする千冬。それに「フォローのため」と真耶が同行していくと、さっそく何人か席を立つが、HRが終わったとあって他クラスの生徒が廊下から教室を覗き込み、また互いに牽制し合っているからか、翔摩の質問に答える神楽を除き誰もが無言で向かい合い、男子3人との間に妙な空間ができる。そうした緊迫の空気を壊すように立ち入ってきたのは、セシリアと、長い黒髪を首元でまとめた、凛々しい印象の女子。

 

「失礼、少しお話よろしいでしょうか?」

 

「あ、あぁ、俺は問題ないけど……」

 

 翔摩は気づきこそしたが神楽との会話で間が遅れ、一悠に至っては相手する気などないとばかりに再度居眠りの体勢に入ってしまったため、必然的に対応するのは弾となる。そうした状態のためかなり挙動不審になってしまったが、2人ともそれを理解しているからか、特に咎めるようなことはない。

 

「お気遣い感謝するとともに、ご事情お察ししますわ……と、それでは改めて。イギリス代表候補生、セシリア・オルコットです。できることなら、可能な限り長く共に過ごせることを期待しますわ」

 

 一悠はともかく翔摩に関しては悪気はないといえ、どうも両者の割を食って何かと苦労が絶えなそうな弾の様子に、思わず言葉を詰まらせるセシリア。しかし目的を思い出し、再度の自己紹介とともに軽くお辞儀をし、可能な限り友好的に振舞うと、隣の同行者も続く。

 

「島津産業機構、工業部門所属のテストパイロット、島津義豊(よしとよ)だ。名字の通り、薩摩の勇士島津家の流れを組む身で、今の名も関ヶ原の敵陣突破で名高い義弘公と豊久公にあやかって改めたものだ。折角の(えにし)、ともに有意義なものとしようぞ」

 

「あー、その、どうも……」

 

 祖先とは言え戦国武将への憧れから改名までするなど、義豊はかなり行動派(アグレッシブ)な人物のようで、さも当然のように差し出した手に弾がおずおずと手を伸ばすと、そのまま掴んで握手を交わし、続けて翔摩、一悠と手を向けるが、最後の一悠だけは無反応だったため、少々不満げな顔を浮かべながらも手を戻す。

 

「それで、こうして声かけてきたっけことは、やっぱ青田買い目的か?少なくとも仲良くしておくに越したことはなさそうだしな」

 

「身も蓋もない言い方をしてしまうと、その通りですわね。良くも悪くも世界の注目を集められている以上、私の祖国イギリスに限らず、どこの国も可能な限りあなた方とのパイプ作りに必死ですの。例えば中国は代表候補生の入学手続きを終えていて、来週以降こちらに通学させる予定ですし、ドイツやオランダ、ブラジルやペルーなどもあなた方との接触(コンタクト)、あわよくば誘致(スカウト)を目的に自国の代表候補生を転入させようと、必死に交渉を繰り広げているそうですの」

 

「無論中国に限らず、速美の伯父貴殿が黙らせた筈の米露も含め、あちこちから色々と声が上がってる様でな。国内からも私やそっちのお嬢ちゃん以外に、推薦込みであちこちからテストパイロットや代表候補生が入学したし、落ちたところからも編入届が多数送られとるらしい。どれだけ入って残れるかはともかく、順当にいけば卒業する再来年までは、そうした連中が豊作になりそうだ」

 

 呆気なく目的を明かした2人は、そのまま神楽を始め付近の何人かを巻き込む形で居座り続け、チャイムが鳴るまで雑談に興じ続けた。――神楽の後ろの席から一悠を恨めし気に睨みつける、篠ノ之箒については、誰1人言及せぬままに。




どうでもいいかもしれませんが、一夏の偽名変えました。
今度以前投稿した方も修正しときます
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