授業が終わったIS学園の放課後。体育館の1部に設置された道場から本館をつなぐ廊下を、篠ノ之箒は非常に苛立ちながら大股で歩いていた。
(全く、
怒りの原因は、6年ぶりに会ったはずの一悠こと一夏。到底彼女が考える男のイメージから程遠い、周囲に怯える様な彼の振る舞いは、
それが離れている間にどこでどう歪んだのか知らないが、折角の再会だからと声をかけただけでこうも手酷く門前払いされるとは、到底納得できない。
(千冬さんも千冬さんだ!『極度の情緒不安定』だと?恐怖を払いまっすぐ芯の通った心を育むために、剣道をやらせようと毎日家まで通っていたのに、『お前のせいで一夏が余計に傷つく』などと追い払って!わざわざ姉さんに連絡して何度妨害されたことか!そうやって甘やかしていたから、女性に手をあげるばかりか飛び道具に頼るあんな卑劣な奴になってしまったではないか!)
自分と違い、手先が器用で剣道以外の様々なことをやっては褒められていた束のことは、対照的に剣道一筋で暴力的なせいであまり評がよくなかったことから気味悪がって逆恨みをしていたが、家を離れ行方を晦ませてからは「翻弄された」と憎悪を募らせ、その発明品たるISで活躍する千冬や、依存して全く関係ないはずの自分にまで縋りついては、アテにならないと知るや杜撰に扱ってきた政府の人間も同じくらい不愉快な存在だった。そのせいで各地を転々とする中でも続けることができた剣道の中学大会では、相手から「どうせ姉のコネだ」とケチをつけられたせいで一気に気分が最悪になり、殴りかかってせっかく獲得した優勝を取り消されたばかりか、所属していた部からも追い出されてしまった。
(どいつもこいつもISIS!そんなにあれが大事か!だったら私までISに縛り付けるな!)
段々と前々から溜まっていた鬱憤にも引火してきた箒は、思わず足を止めがてら壁を横殴りしてしまう。突如響いた音と荒々しく肩を上下させながら息をする彼女の様子に、周囲の生徒は思わず固まるが、しばらくして暴れる様子がないと分かると、ある者はそそくさと立ち去り、別の者はひそひそと彼女について仲間と話し合う。
「(はぁ・・・全く、心身を落ち着かせるために道場で素振りをしてきたのに、アイツの振る舞いを思い出したせいで大分心が乱れてしまったな。部屋に戻ったらもう1度シャワーでも浴びるか・・・)っだぁ!?」
ビクビクとこちらを窺う生徒達を不愉快に感じ一睨みした後止めた歩みを進めようとするが、その矢先左足から激痛が走る。すかさず真新しい内履きに目を向けると、見るからに今着いたばかりの踏み跡が甲の部分にしっかりと刻まれていた。
「誰だ!人の足を踏んで謝りもしない奴は!今ならまだ名乗れば許してやるぞ!」
即座に再度周りをにらみつけるも、一様に「違う」「私じゃない」と否定してそそくさと逃げていく。
「揃いも揃って・・・やはりこの学園は碌な奴がいない・・・」
千冬が聞いたら「お前がその筆頭格だろうが」と嫌みの1つも言われただろうが、すっかり生徒達が無くなった廊下には、もう何かを言ってくる相手はいない。ウンザリした箒がまた進もうとした矢先、今度はまるで誰かに殴られたかのような衝撃が左半身を襲い、そのまま壁に叩きつけられる。
「づぅ・・・(今度は何だ!?付近には誰もいなかったはずだぞ!?痛くてたまらんが、とにかくこれ以上ここにいても碌な目に遭わん!妙に力が入らんが、早く立たないと・・・)」
混乱する中、何とか立ち上がろうと両手を壁に付けようとするが、何故か左腕が反応しない。確認のため痛みをこらえて振り返ると、あろうことか酷く焼きただれた腕は、肩から先が廊下の反対側に転がっている。
「ぇ・・・ぁ・・・(あれが・・・私の腕・・・?一体・・・どうなって・・・)」
それを最後に事態が理解できぬまま意識が遠のき、倒れ伏した箒は、爆発音を聞いて駆け付けた生徒や教師に発見され、そのまま病院棟に収容された。
他のも進めんとな・・・