INFINITE CROSS FUTURE   作:ゲオザーグ

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ほんとはもっと早くに仕上がってましたが、ネタと気分的な都合で予約機能使ってまでこんな時間に投稿してみたり


鎖にあらず

「ハァッ!?」

 

「なっ…!」

 

「えぇっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

「っ…!」

 

「あぁ~やっぱり……」

 

 帰国以来、自身の功績も含め、極力ISに関する話題を避けていたことから、何か思うところがあると考えていた弾と、目の前で再度動きを止めていたガルガロス以外は、彼女の返答に皆驚愕する。

 

「いらねぇってか。ソイツはやっぱ、2年前の大会か?」

 

その理由に思い当りがあるガルガロスが訊ねると、帰ってきた答えは肯定だった。

 

「はい。一夏があのような目に遭ったのは、世間にもてはやされ、愚かにも舞い上がっていた私のせいです。ISのせいなどと、言い逃れするつもりはありません。だから、とても怖いんです。新たな力に現を抜かして、また一夏を失ってしまうのではないかと……。ですから今の私では、あれに乗っても引き出せる性能はせいぜい基本の1割が限界でしょう。例え世間から『伝説のブリュンヒルデ』などと称賛されていても、性能を十全に活かしきれないのであれば、所持に必要性を得られないかと。翼を失い、刀折れ矢も尽きた戦乙女(ヴァルキリー)など、誰も必要としませんから」

 

 見方によっては、国の都合に振り回された哀れな偶像と取れなくもないが、彼女はそれさえも「見抜くことができなかった自分が未熟だった」と結局自身を責め立てるだろう。それでも無意識のうちに張りぼての栄光とそのきっかけになったISを拒んだ結果、全盛期からIS適正を大きく下げ、ドイツで発症したISへの拒絶反応につながった。いくらか癒えた現在においては、かつてのように急な脱力や嘔吐などの症状こそ発しなくなったものの、満足に飛び回るどころか、数歩歩くことすら大変な労力となることだろう。折角最新型の専用機を提供されても、その性能を完全に発揮できないのであれば、所持する資格はない。そう考える千冬に対し、ガルガロスの見解は異なるものだった。

 

「別に構いやしねぇよ。『タイガー()・シャー()プバイト()』は元々一夏(イチ)の『グレー()ト・ホ()ワイト()』のついでみたいなモンで、データ取得だなんだはハナから計算外だったしな。それに()()()()()()ておくのは勿体なかったし、そもそもアンタがそう考えてるのと同じように、万が一アンタの身に何かあった時、悲しむのはイチだ。」

 

「っ…確かにそれはそうですが、だからと言って使いこなせない機体を渡されても意味はありません。護身だけなら学園に配備されている『打鉄』でも事足ります。」

 

 ただでさえ一夏のことを挙げられると、一気に反論の余地がなくなってしまう千冬だが、何とかこらえて必死に言い逃れをするが、直後思わぬ伏兵が現れる。先ほどから隣に並び、服の袖を掴んでいた一夏だ。

 

「千冬姉は……『タイガー・シャープバイト』のこと…嫌い?」

 

「い、一夏? 急にどうかしたのか?」

 

 タイミングも内容も唐突で、どう答えるべきか悩む千冬だが、普段何かと彼女の行動を気にする一夏は、珍しく視線を彼女ではなく、眼下の一角に並ぶ機体――それも『グレート・ホワイト(自身の専用機)』ではなく、千冬が頑なに受け取ろうとしない『タイガー・シャープバイト』の方に向けていた。

 

「座学の時、ISのコアには…意識みたいなものがあるって……教わった。さっき、千冬姉が手放してから、凍結されてた…って聞いたけど、その間…『暮桜』は、苦痛と孤独しか、なかったと思う。それに…『暮桜』は、どんな姿でも……千冬姉と、一緒にいたいんじゃ、ないかな」

 

 千冬が感じたのは、しっかり学んだことを覚えていたことへの感心と、痛いところをつかれたことへの苦笑だった。束が製作したISのコアには、「愛着を持ってもらえるように」と1種の学習成長型AIが搭載されている。――対してガルガロスのコアには、サポートAIとしての任を果たすことを優先し、事前にある程度機体の装備などのデータを登録してある。――故にその点に触れられると、それなりの覚悟を持って決めたはずの誓いも最早ただの片意地でしかなく、周囲からすれば「いつまでこんな茶番を繰り広げるんだ」としか思われまい。

 

「ハァ、わかった。わかったよ一夏。素直に受け取るからそんな目を向けないでくれ。と言っても、当の『暮桜』……もとい『タイガー・シャープバイト』が私を受け入れるかどうかは別だがな。もしかしたらとっくに見放しているかもしれんぞ?」

 

「どーだか。少なくとも貧相過ぎた攻撃面は大幅に強化させてもらったぞ。昔みたいに品のない特攻はしなくてもいいから、そこは慣れとけ」

 

 そして束の説得も(むな)しく、千冬が選手引退とともに「引き続き所持していても、今後満足に性能を発揮できる見込みがない」と手離した後、『暮桜』は凍結処分された。――正確には何度か新たな搭乗者(パイロット)を乗せようと試みられたが、『暮桜』は誰1人受け入れず、候補者達は指1本動かすどころか、その場から微動だもできなかった。かと言ってAIをリセットして新たな機体に搭載しようにも、コアを取り出したまではよかったが、当然というべきか頑なにリセットを拒まれたことが原因だったのだが。

 そうした経緯から、例え千冬自身に拒まれようと、『暮桜』は彼女以外を受け入れる気などさらさらないと考えたガルガロスが、より長所を伸ばし、同時に短所を補うようにと作り上げたのが、この『タイガー・シャープバイト』だった。

かつて千冬は、刀型近接ブレード『雪片』1つで敵の懐に潜り込み、自分のシールドエネルギーを攻撃に転用する唯一仕様特殊能力(ワンオフアビリティー)(れい)(らく)(びゃく)()』で相手のバリアを切り裂き、強制的に『絶対防御』とよばれる保護機能を発動させる、文字通り『身を削る』戦い方をしてきた。しかし近年ISの発達はすさまじく、現在量産型の主体となっている日本製の『打鉄』や、シャルロットの実家であるデュノア社が製造しているフランス産の『ラファール・リヴァイヴ』を含む第2世代機相手なら問題なく立ち回れるものの、世界各地で試行段階に入っている第3世代機や、その先の世代機が主流になっていけば、いずれ懐に入る間もなく撃墜されるだろう。仮に現行の量産型が相手でも、千冬以外では『零落白夜』を発動できたところで、オンオフのタイミングを見極めきれず、攻撃のタイミングを見計って動き回るうちにエネルギー切れを起こし、勝手に自滅するのが確実と言えるほど使い勝手が悪い。そして何より『零落白夜』はシールドエネルギーに対しては非常に強力だが、それこそ眼前に並ぶガルガロス・モデルのような装甲を充実させた機体に対しては、最早無力に等しい。

 いくらISがまだ発展途上にあるといえ、ただでさえ中遠距離用の射撃武装がなく、唯一の攻撃手段も非常に使い勝手が悪い機体など、到底使えるものではないと判断したガルガロスは、まず攻めの手を増やすべく武装――とりわけ使い勝手がよく、多様な機能を備えた射撃武装の追加を、最優先で行った。それこそが左腕の肘から手首と一体化し、大きくせり出した大型の口径変更機能搭載キャノン砲、『ネコザメ(ブル・ヘッド)』で、連射速度だけでなく、銃口をカメラのシャッターよろしく絞ったり広げたりすることで、発射するビームの威力や攻撃範囲を調整できる。近接に関しても、相手の攻撃を防ぐと同時に、反撃用のシザーブレードを収納した腰のシールドユニット

オグロメジロザメ(グレー・リーフ)』を装備し、そして何より代名詞たる『雪片』と『零落白夜』に対しても調整を行った。攻撃時に放出されるエネルギーを抑え、なおかつ刃部分に集中させることで、絵面的には大分寂しくなったものの、元来の『零落白夜』より少ないエネルギー配分でより大ダメージを与えるようになっている。加えて『雪片』そのものを右手と一体化させることで、より効率のいいエネルギーラインを接続できたのも大きい。

 

「拒絶反応と体調の急変については、『暮桜』のコアに蓄積されたデータで大丈夫だろ。体への負担は機体が調整してくれるはずだが、実質まだ慣らしもできてねぇから、無理はすんな。さぁて、いい加減話聞いてるのも飽きたろ? そろそろ待ちに待った初搭乗(ファースト・フライト)といこうか」

 




次回やっと機体に搭乗します。我ながらここまで引っ張る作品もそうないと思いました。いやぁ~長かった・・・

ってな訳で(実質見られるころには年明けてそうですが)皆様よいお年を
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