甘ったれた現実に絶望を。   作:あるとりあ

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自分の個性に

『俺の個性は魂の道標。そう名付けられている』

「魂の道標?」

この場にいるほとんどの人が頭にクエスチョンマークを浮かべただろう。それもそのはずだ。

『そう、具体的に何ができるのかというと、前世、前前世の記憶、能力を引き継ぐというものだ』

ただ今度は別の疑問が浮かんだのであろう八百万が質問してくる。

「では、今の姿は前世の容姿ということでよろしいですの?」

『ああ、そういう認識で構わない』

「つまり、前世の能力は前世の容姿にならないと発揮出来ないんですの?」

『いや、そういう訳じゃない。この体を1番長く使っていたからな。これが一番使いやすいんだ』

ほんの少しの情報でここまで推理できるのは素直に凄い。正直ここまで言い当てられるとは思っていなかった。

『他に何か質問はあるか?』

すると上鳴が手を挙げた。

『確か、上鳴電気だったな。それで、質問って?』

「他になんか出来ることってないのか?前世の能力が使えるってことは他になにか出来そうだけど」

こいつ、アホそうな見た目して以外に頭切れるタイプか?

『確かにそれ以外にも出来ることはある。例えばそうだな、、』

俺は指を鳴らすと目の前に扉が現れた。

「なんだ?これ」

『まあ入ったら分かる』

上鳴はその扉に躊躇いなく入って行った。それに俺も続く。

中は俺の創った世界が広がっており、中心には堂々と千年城ブリュンスタッドが鎮座している。この城は、まだ前世で生きていた時にアルクェイドと戦った際に勝ち取った城だ。

厳密にはこの城は彼女の固有結界の中にある物なのだが、根源と接続した際にその設計図が手に入ったので再現可能となった。

続々と扉からクラスメイトが現れる。

「すげぇ、なんだここ」

『俺の精神世界のひとつだ。そしてこの城は千年城ブリュンスタッドという』

ほかの皆は喋ることを忘れたかのように目の前にある城に目を奪われている。

「どういう理屈ですの?私はこんな大きな城を作ることなんて不可能ですわ」

空想具現化(マーブルファンタズム)、これは俺が前世で手に入れた能力のひとつだ。頭の中にあるイメージを現実に具現化する』

「てことはなんでも作れるってこと?」

今質問してきたのは緑谷だったな。

『ああ、ただし明確なイメージが必要となる。イメージがちゃんとしていないと』

俺は目の前に1本の剣を具現化した。ただその剣は俺が触れた瞬間に粉々になって砕けてしまう。

『こうなる』

「私と同じような個性ですのね。でも貴方はこんな大きな城の詳細で明確なイメージを完全に記憶しているというのですか?」

『いや、ある所から設計図を引っ張って来ている』

「ある所?」

『これに関しては知らない方がいいだろう。この世界にはまず概念さえも存在しないものだからな』

「もしかして貴方が前世で生きていた世界は、この世界ではないんじゃありませんか?」

まあ、気づくだろうな。別に意図的に隠そうともしていないし、今までの俺の言動から推測しても容易くその推測にたどり着くだろう。

『どうしてそう思ったんだ?』

「まずおかしいと思ったのは貴方の個性です。少なからず前世の記憶を引き継ぐという個性は聞いたことがありませんし、このような事が出来る個性ならば必ず話題になっているはずです。

個性は発現した時点で医師から発現証を発行されます。個性が発現しているかを調べる薬もこの個性と呼ばれている超能力が初めて発見されてからすぐに開発されました。そして個性の発現に関して国が嘘の防止の為に心拍数と脳波を観測しながら質疑応答していく仕組みとなっています。つまり個性の詐称は不可能なのです。この時点でおかしいと思ったことが1点。

またあなたの言動にもおかしさが見受けられました。貴方は説明の際にこうおっしゃいました。〝この世界には概念すら存在しない〟ではなぜ貴方は概念すら存在しないものを知っているのか?という疑問が浮かびました。これで2点。以上が私が疑問に思った理由です」

見事だ。正直ここまでまともな推測だとは思わなかった。

『正解だ。確かに俺の前世はこことは違う世界だ』

「異世界ってことか!?どんな世界だったんだ??剣と魔法の世界とか?」

『いや、こことそこまで変わらない世界だったよ。多少なりとも違いはあるが余り変わらないな』

「なるほど、パラレルワールドでしょうか」

こいつほんとについこの間まで中坊だったのかよ。

『まさかその言葉が出るとは思って無かったが、概ね正解だ』

「パラレルワールドってなに?」

今度は芦戸が質問してきた。無理は無い、実際大人でも知らない人も居るしな。

「それは私から説明致しますわ。パラレルワールドとはある世界から分岐し、それに並行して存在する別の世界を指します。並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われていますわね」

「へぇーじゃあシゲシゲはすごいんだね!」

『シゲシゲ?』

「そう!國重のしげから取ってシゲシゲ!!」

まあ別にそこまで嫌でもないし、構わんか。

「そうだ!この後放課後に入学記念パーティしようよ!!」

芦戸が再度思いついたようにそう提案する。

「さんせー!」

「いいじゃんそれ!!」

「どこ行くー?」

各々が楽しそうに交友を深めているのを見て、俺は少し居た堪れない気持ちになった。ヒーローを目指す。この事にどれだけの夢を見て、どれ程の努力を重ねたのか俺には想像もつかない。ただ、その恋焦がれていた夢によって彼らは現実を知る事となるのだ。ヒーロー何てものは夢物語じゃない、綺麗事では済まされない、反吐が出るほど醜い、されど弱音は吐けないそんな道筋へと彼らは進む。

人間は醜くく、愚かだ。そんな事を言っていた人を知っている。人間とは犠牲が無くては生を謳歌出来ぬ獣だと罵った人を知っている。あの人達の言う通りだと思う。どの世界に産まれても人間は醜い。強者は弱者を甚振り、理解出来ないものを迫害し、誰もが自分中心に生きる。その中に俺も含まれていることも自覚している。

しかし、あの人達の言葉には続きがある。彼らは口を揃えて、ただ人間の創り出すものは美しい。と語っていた。愚かで、醜く、何処までいっても自己中心的だったとしても、それでも彼等には尊ぶ物がある。家族愛、友愛、親愛、自己犠牲そして意思。

ここにいる彼等も美しいと思える物を持っている。だから願わずにはいられない。もし彼らが人間の醜さや愚かさ、救えなさを知ったとしても、折れず、助け合い、鼓舞しあって立ち直る事を。

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