あの日から、そこそこの年月が経った。
少し生意気で、自信に満ちた未来ある少年の時から時間が経った。
俺はジムリーダーにはなった。
ただ、チャンピオンなんてとんでもない。
俺は万年最下位を争うマイナーリーグで燻った弱いジムリーダーだった。
あのときのポケモン達、俺の机に置かれていた6匹はリーグでは使用していない。
一応1匹を除いて家で放し飼いこそしているが、バトルには1度しか使用していない。
ジムリーダーになったときのリーグ初戦で、俺はあいつを使って3タテした。
見たことも無い恐ろしいポケモン。
そう言われていたらしい。
そして、当時期待の新星と噂されたチャレンジャーを完膚なきまでに壊してしまった。
不正も疑われた。
このガラルの地ではお目に掛かれないポケモンを持って、過剰な攻撃を振るったなんて言われもした。
俺は3回のリーグ戦への出場停止の処分を受けた。
ぶっちゃけこれは、ちょっと負けた位で駄目になったお相手に投資していた不特定多数の怒りを買ったというやつだ。
本来勝った方がここまで言われることも無い。
まあ、よりによってウツロイドを出した俺も悪い。
しかも相手がとくぼうの低いポケモンだったのもまずかった。
なんにせよびびった俺は毒にも薬にもならないようなヌルい手しか使わなくなった。
そうしているうちに5年も経っちまった。
おまけに、今年は親の顔より見た(比喩)あのチャンピオンであるダンデがチャレンジャーとして出ている。
俺は思ったよ。
あ、終わったなと。
なんにせよ、ほどほどに戦って今年もリーグに残留すんべと手持ちの調整をすることにした。
これが間違いだったのかもしれない。
ダンデが手を抜かれたことについて、わざわざチャンピオンになった後に言及してくれたのだ。
ほんのちょっとの一瞬で、地方のちょっとしたインタビューだった為に気付いた奴も気にした奴もそんなに居なかったのが幸いだったが、俺は嫌な汗をかくはめになった。
ぶっちゃけ俺のテキトーな姿勢は割とばれている。
ポプラのばぁさんには会う度に小言を言われるし、カブさんにもチクッとしたことを言われたこともある。
それでも何とかなっているのは俺がギリギリで勝ち星を挙げているからに過ぎない。
あっという間にリーグの改革やらダイマックスやらを整備したマクロコスモスの社長であるローズ委員長にもばれていて、ギリギリで見逃されたが、君より優秀な毒ジムのリーダー候補が居たら……とさりげなく忠告されてしまった。
秘書の怖いオリーブさんには真面目にやらない奴はお慈悲で席を……といろいろ言われてしまった。
まあ、本気のぶつかり合いは怖いからな。
俺は今のところこのスタンスでいくつもりだ。
だが、その次に開催されたリーグで俺は負けが込んでいた。あと1戦落とすとヤバイところまで来ていたが、ようやくの最終戦。相手はあのダンデだった。
負けたら委員長のことだ、多分ジムリーダーから解雇されるだろう。
俺は負ける。ほぼ間違いないだろう。
仕方ない、どっか田舎のトレーナースクールの講師にでも潜り込むとしよう……なんて後ろ向きな覚悟で会場に向かった。
試合形式は3対3。
俺はあのときのヤブクロン、そいつの進化した姿であるダストダスを繰り出す。
ダンデは……! 初手リザードンか。
ダストダスはそこそこ硬いが、受けられるポケモンでもない。なんなら[くだけるよろい]なので物理で攻められると割と脆い。
あと、この世界で一番きついのがコマンド式じゃ無くてリアルタイム進行になったことだ。
ぼーっと見てると速攻で終わるからな。まじで。
「ダストダス、アシッドボムだ!」
「リザードン! あなをほる!」
不味い。タイプ一致でなくともだいぶ持って行かれるか。
「耐えてカウンターでアシッドボム!」
リザードンが地面の中を高速で移動してくる。
迎え撃てる技も無いので迎撃を選択する。
「かえんほうしゃ!」
「どくびしだ!」
保険だ。
それにしても開幕リザードンとは予想が外れたな。
まあ、若いチャンピオンに負けて終わるのも良いだろう。
「もう一度、かえんほうしゃだ!」
ダストダスが力尽きる。
「ありがとう、ダストダス。
行ってこい、モロバレル」
モロバレルは毒と草タイプ。
リザードン相手には割ときついか。
ん? リザードンを手元に戻して……ダイマックスか!
こんな中継も入ってないしょぼいリーグ戦でガチガチに勝ちに来るとは……流石チャンピオンってとこか。
「キョダイゴクエン!」
「どくどく!」
……ここはダイジェットじゃ無いのか?
わからんがまあやるだけやろう。
「ダイジェット!」
「ベノムショック……すまない」
一発でひんしか。
最後か……
ん? 本気で来いってか……
わかったよ。
「頼んだ、ウツロイド!
お前にこいつが倒せるかな!?」
────
なおリザードンは倒したが、勝負には負けた。
そして、俺の元には特に通知なども無く。
普通に残留出来た。
なんでかって言うと、毒ジムの人気のなさにある。
俺の後任が居ないからだ。
ぶっちゃけジムトレーナーも居ない。
マクロコスモスから資金が降りて来ていなかったら余裕で潰れている。
扱い的には客のほとんど居ない赤字路線みたいな物だろうか。
なんにせよ、俺の解雇は免れた訳だ。
俺は自宅でお気に入りのソファにどさっと腰を下ろした。
来客の予定はあるが、いつもの社員さんの定時報告だけだしな。俺の世は明るいかもしれん。
※なお、この際の来客は社員に代わり、ローズ委員長が来る模様。