担当の性癖を破壊したトレーナーと性癖を破壊された担当のお話 作:性癖のブラックホール
「マスター、抱かせてください。すぐに」
「………唐突すぎないか?」
僕は今、担当の愛バに迫られていた。壁ドンのオマケつきで。いやホントになんで? 君みたいなカッコよくて可愛くて美しいあまりにも整った顔の女性に壁ドンなんてされたら間違いなく犠牲者が出るぞ? 僕はもうお察しくださいなのでこんなことされた時点で心臓が破裂しそうです。まだ遺書を書いていないというに。というか色々語弊しかない言い方だな? よし、ウマ娘刑務所にぶちこまれてやるぜ。嫌だよ。というか今日オフだぞ? 僕はこの家の住所を伝えてないんだが?
「とりあえず落ち着いてくれないかブルボン」
「そのためにマスターを抱かせて欲しいのですが」
「文脈だけみたらとんでもないこと言ってるの分かってる?」
「マスターがお望みであれば私が抱かれる側になっても構いません」
「それは正しい返答になってないねぇ!」
「四の五の言わずに抱かれなさい」
「ぐぇっ」
話の展開もクソもなく無理矢理抱き寄せられる。いつにも増して人の話を聞かないポンコツサイボーグ度合いが酷い。まあ抱かれると言っても文字通りハグをされるだけなので何も問題はないのだが、このポンコツサイボーグときたらわざとそういう風に聞こえるよう言葉を選んでいる節がある。人前だろうと気にせず堂々と言い放つもんだから僕の評価がどうなっているのかは考えなくても分かるだろう。確信犯。こらそこ、宇宙猫しない。
「オペレーション『ハグ』を実行中………むふーっ」
「…なんかすごくすごいご満悦なのは理解した」
問答無用で抱き付かれてしまったのでもう諦めるしか選択肢がない。ウマ娘のパパパッパパゥアには勝てないからね、仕方ないね。諦めが肝心だとウマ娘古事記にもそう書いてあります。なにより僕の愛バがですね、ナイスバディでしてね、筋肉がついてる所とかは非常にアスリートなのにそれ以外がすごくすごい柔らかくてですね? 鋼の意志が無ければ即死していた。
「マスターの心音を感知。鼓動が早いようですが、緊張されているのですか?」
「そりゃあまあ女の子に抱き付かれたら男なら誰だってそうなるから」
「あんなにもマスターの方から抱き締めてくれたのにですか」
「あれはあくまでもブルボンのリラックス目的だと…」
「そのおかげでクラシック三冠をこの手にできたことは理解しています」
何をしていたかと言われれば、ブルボンの出走前にリラックス目的でよくハグをしていただけなのだが。ブルボン自身、己の適性が自身の夢に対してあまりにも向いていない事は自覚していたのもあり、よく不安になっていたのだ。その不安を解消すべく僕が取った行動がハグなだけである。レース前は真剣に不安を取り除く目的しか頭になかったから…等と今は反省はしている。後悔はしていない。嘘です今だけはしてます。メンタルリセット! もっと他に方法があったんじゃないかと思わずにはいられない! 石仮面はありません。
「マスターの心音がゆっくりになったのを確認。集音モードに入ります」
「人の心音実況しないで? あとそんな集中して聞こうとしないで? めたんこ恥ずかしいから」
「マスターの心音を聞くのが最近の楽しみですのでその提案は却下します。因みに私がこうなったのもマスターのせいですので」
「いや僕のせい…………だなぁ。これに関してはちょっと否定できないな…」
最終的に、僕は自分の心音を聞かせてまで不安がるブルボンを落ち着かせていたのは事実である。三冠のかかる舞台、夢への到達点。いくらサイボーグと呼ばれる彼女といえど、そのプレッシャーは僕には計り知れない。周囲の期待、二人で積み上げた努力の決勝、己が果たす夢に王手をかけた舞台。これで緊張したり不安にならないのは心臓に毛が生えた皇帝ぐらいなものではなかろうか。皇帝をなんだとおもっているんだ。
まあそんなブルボンへの対応の最終手段としてハグの上に心音を聞かせるというトンデモ手段に出た訳ですが。それ以来何かとブルボンは僕の心音を聞きたがるようになった。なってしまった。どう考えても担当の癖を破壊してしまったようです。修復はもう不可能みたいですね。一息つけるとかそういう問題ではなくなっている。
「とくんとくん言っていますね、とても心地よいです。ステータス『安らぎ』を獲得中」
「僕の胸をとんとんしながら実況しないで? 何時までやるのこれ」
「オペレーション完了時刻はマスターが老衰でお亡くなりになるまでです」
「なんかおかしくない?」
「責任は取ってくださいね、マイマスター」
性癖がマッチする方がいるととても嬉しい…嬉しみ