祟りの蛇の観察記録   作:よよぎ

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蛇の暇つぶし

 

 

 蛇の祀られる社から数キロ離れた山の中。

舗装された道を外れた脇道を、1つの影が進んでいく。

草木で鬱蒼とした道をそのまま進んでいくと、そこに見えてくるのは長年放置されたであろう墓地である。墓石は苔生し、動物が地面を掘り返した様な後も見受けられる。

しかし。こんなに自然豊かにもかかわらず、生き物の気配が全くしない。 よく見れば掘り返された後もかなり古く、至る所に動物の白骨死体が転がっている。

 

まるで、そこら一帯の生命が全て同時に息絶えた様な。

そうでもなければ説明が付かない様な違和感が、確かに

その場に存在する。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「…この骨を見る限り、恐らく10年は経っていない。

精々が4、5年だろう………お前の仕業か?」

 

彼がそう呟き後ろを振り向いた直後、巨大な骨が彼を突き上げようと真下から迫り上がる。

 

が、蛇はそれを回避。そしてそのまま骨を引き抜き、呪力の感じる方へブーメランの勢いでぶん投げ。直撃したのを確認し2、3発追撃を入れる。

 攻撃をしたのは、人骨を巨大にした様な呪霊。蛇の攻撃により肋と首に損傷が入るが瞬時に回復し、巨人の骨の様な巨大な骨を十数本出現させ、攻撃に入る。

しかし、蛇はそれを簡単に全てへし折り。折った骨に呪力を纏わせた足で蹴りを入れると骨はバラバラに砕け、呪力の籠もった破片が散弾の如く骸骨へと降り注いだ。

 呪霊は頭蓋骨に穴が開き、骨の何本かが折れ。

至る所にヒビが入り、かろうじて立てている様子で蛇は思わず関心を見せた。

 

 

「思ったよりかは丈夫だな。恐らくだが現代の区分で言う特級相当、領域展開も期待できそうだ。フフフ……」

 

 ニヒルな笑みを浮かべる蛇はそう呟き。呪霊の再生を

待っていると骸骨は再生を完了させ、全身をカタカタと震わせながら掌印を結び始めその名を口にした。

 

 

 

「領域展開•破掌残天遇」

 

 

 その直後に現れたのは、辺り一面の骸の山。人間の物とは思えない大きさの骨で墓標が作られ、夜の様に真っ暗でありながら妙に明るく感じてしまう。

そして。地面からは次々と術者と同形の骸骨が這い出し、数十にも及ぶソレが蛇を囲みケタケタと笑う。

それはまるで。勝ち誇った勝利の雄叫びの様にも、その影を馬鹿にして嘲ている様にも見える。

 

 そう、呪霊は彼を領域に引き込んだ時点で勝利を確信してしまった。故に、彼の行動に対する反応が一歩遅れた。

 

 

「―――”鬼衆蓋天(きしゅうがいてん)” 勝ち誇る暇があるのなら動け」

 

 呆れた様子でそう言うと、彼の足元から赤黒い蔓の様な物が根を張る様に伸び始め。 分岐した棘状の蔓が這い出してきた骸骨の半数を突き刺し、刺さった所から塵になるとまるで蔓に吸収されるかの様に消えて行く。

そして気づけば領域全体が既に蔓に侵食され、骸骨の呪霊は焦った様子で何かをしようとするが何も起きない。

 

そこはもう呪霊の制御下にはなく、残った半数の骸骨も

すでに侵食され、制御権は蛇に移っている。

鬼衆蓋天(きしゅうがいてん)、複数の縛りで成り立つ領域対策であり。

その真価は。対象の領域を付与された術式ごと乗っ取り、それを行使すると言う物。

 

もちろん弱点と欠点があり、蔓が領域を覆い尽くすまでに足元の核を破壊すれば浸食が止まり。破壊されれば縛りの効果で、領域が解けるまで術式の行使は不可能に。

 その上。侵食している間は複数の技を併用できず、術式を使用せずに核を守り切ると言う制約がある為に成り立つ技なのである。そしてさらに、この条件をクリアした上でようやく発動が出来るのが極の番、その内の1つ。

 

「極の番。”画魂贋転(がこんがんてん)”」

 

 その言葉で彼の右腕が大きくうねり出し。赤黒く染まったと思えば、腕が腐り落ちる様に落下し。

それが大きく膨れ上がると、蛇のような形を取り領域内のあらゆる物を飲み込み始める。

呪霊本体や残った骸骨も漏れなく飲み込まれ、領域を浸食した蔓がまるで自分から吸い込まれに行くかの様に結界を剥がしながら蛇へと向かって同化する。

そして、その数秒後には元の墓地へと戻り。彼の腕は完全に再生して、蛇の様な形になっていた腕は大きな球体に

なっており。 それを飲み込むとため息を付き、墓地を一瞥するとその場を去って行った。

 

それから3時間が経ち。至る所で暇を潰した蛇が、自らが祀られる社に戻ると扉を開けて眠りに着き、目が覚めたのは十数時間先の事。

 

 

 

 

■■■■■■■

 

 

 

 

 

意識が浮上する。肉体の中に何かが拡張された感覚を覚えながら体を起こし、外に出ると裏手に周り人間の頭蓋骨をイメージしながら呪力を回す。

すると手元に頭蓋骨が現れ、カタカタと震え出す。

それなりに扱いやすく、いい術式だ。

逆にこれで弱い理由がわからん、人型にこだわらなければもっと強かっただろうな。 後は単純に呪力の出力不足。

 極の番による術式の増築。 例えるなら銃が私でマガジンが肉体に刻まれた術式、そして弾丸が抽出した術式。

領域を使う相手限定で弾丸の製造工程に入る事が可能で、それ相応の縛りを設ける事で弾の製造を可能にしている。構想は既に出来ていたが、ここ数百年で領域が使える奴は格段と減ったからな。試すに試せなかった。

 

「コレに少しだけ縛りを加えて、術式の性能を上げる事も出来そうだな。あの術式と併用すれば、空想の産物だったあれも実現できるかもしれないし。

少し模索してみるとするか…………」

 

 手元の骸骨を消しながらそう呟く顔は、真剣その物で。軽く背筋を伸ばしながら、京都に向かうかと呟やきながら社を後にして行った。

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