「中間テストお疲れさま〜。かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
麻子ちゃんの音頭で始まったお疲れ様会。メンバーは網倉麻子ちゃん、白波千尋ちゃん、小橋夢ちゃんと私の計4人。3人はクラスの中で特に私と仲がいい友達。親友だね。
お疲れ様会の会場は、言い出しっぺの麻子ちゃんの部屋。飲み物とデザート、お菓子が用意されてる。
これまではお互い名字で呼び合ったりしてたんだけど、テスト勉強を機に名前呼びに変わったりしてる。距離感がぐっと縮まった。
「帆波ちゃんのおかげで無事に乗り切れたね」
「みんなの実力だよ〜」
「いやいや、帆波ちゃんの教え方がわかりやすくてだいぶ助かったよ」
「一之瀬さんがマークしてた範囲も結構出てたよね」
「預言者かと思っちゃった」
「たまたまだよ。過去問とかあったらもっとみんなに貢献できたんだけど」
「どれだけクラスに貢献する気なんだか」
「テストは一旦終わったんだし、今は気楽に楽しも」
「そうだね」
麻子ちゃんの言葉に頷いて、テストのことは一旦頭の片隅に追いやる。
テスト期間は正直余裕がなかった。切羽詰まってたわけじゃなくて、長洲くんと遊べて楽しかったこととか、目の前の勉強に集中しなきゃって思って視野が狭くなってた。
今考えてみたら、長洲くんは縦の繋がりもある。きっと過去問を入手することもできたはず。利用する感じがして申し訳ないけど、次からは頼んでみようかな。って、結局テストのこと考えてる。
だめだめ。切り替えなきゃ。
「帆波ちゃんって結局生徒会に入らなかったんだよね。なんで?」
「夢ちゃんストレートに聞くねー」
「麻子ちゃんも気になってたでしょ」
「まぁね」
そう。私は生徒会に入ることをやめた。一度話を聞かせてもらった堀北会長や橘先輩には申し訳なかったけど、私には力不足だって理由を作って取りやめさせてもらってる。もちろん、生徒会で学べたこともあったと思う。
それでもクラスのこととか他クラスのことを考えたら、入らなくて正解だったかもしれない。こっちのことに集中できるから。
「他の人に相談させてもらって、クラスに集中しようかなって」
「あー長洲くんか」
「うん。そうだ……よ? …………え? な、なんで知ってるの!?」
「いや知らなかったけど、この身近な期間で相談相手として適任と名高い長洲くんが妥当な候補じゃん」
「その反応だと、正解みたいだね」
か、カマをかけられた……!?
……こほん。当てられて驚いたけど、何も焦るようなことじゃないか。みんなも長洲くんのこと知ってるみたいだし、良い印象を持ってもらえてるみたい。なんだか自分のことみたいに嬉しいな。
「長洲くんは生徒会について何て言ってたの?」
えーっと、上品じゃない内容は伏せといた方がいいよね。私も自分で言うのは恥ずかしいし。
「今の生徒会は良いけど、次期生徒会の会長候補の印象が良くないって」
「次期会長候補?」
「うん。長洲くんとは合わない人みたい」
「あの長洲くんがそう断言する人か……」
「今聞いてる印象だと性格悪そう」
「そ、そこまではどうなんだろうね」
これは長洲くんが信頼されているからだよね。Bクラスにも長洲くんと仲がいい人は何人もいる。長洲くんはムードメーカーじゃないけど、学年……ううん、学校全体で名の通った生徒。その人の良さまで知られてる。同じ学年だと余計に印象が良い。
だから、普段から知ってる長洲くんと、その長洲くんから嫌われてるまだ見ぬ先輩なら、どうしても先輩の方が悪く見える。
「すごい人みたいなんだけどね」
「性格が?」
「ええっと……。南雲先輩って人なんだけど、元々Bクラスなんだって。でも今はAクラスになってて、しかも他のクラスを寄せ付けない独走状態。すごいよね」
「たしかに凄いけど……、一之瀬さんとも違うタイプの人、なんだよね? 長洲くんが合わないなら」
「たぶん、そうだね」
本当はどういう人かも聞いてるけど、私はまだ会ったことがない。長洲くんのことを信用してても、会ったこともない人のことをあまり悪く言えないよ。
「それならあんまり意識しなくていいんじゃない?」
「夢ちゃん?」
「その南雲先輩って人が帆波ちゃんみたいな性格の人なら、どうやって独走状態まで持っていったのか参考にできたと思う。でも違うタイプの人なら、無理に意識する必要もないよね。帆波ちゃんの良さが消えるデメリットの方が大きいよ」
「私の良さって……何かあるの?」
「かわいいところ」
「天然なところ」
「無防備なところ」
「え……」
「今のも本音だけど、純粋な優しさが帆波ちゃんの良いところだと思うな」
「そうかな。ありがとう」
親友に言われるとまた少し違うね。心がくすぐったいや。
「さて、ここからは女子会らしい話をするよ」
「麻子ちゃん、女子会らしい話って?」
「前振りありがとう帆波ちゃん」
前振りのつもりじゃなかったんだけどな……。
「ずばりコイバナよ!」
「イェーイ!」
「こ、こいばな?」
この中に告白した人とそれを断った人がいるんですけど……!
千尋ちゃんの様子をチラッとみたら、千尋ちゃんも拍手をしてて結構ノリがいい。そうだよね。気にし過ぎる方がいけないよね。
「それじゃあまずは、好きな人がいる人〜」
手をあげた人は2人。麻子ちゃんと千尋ちゃん。
「おお! 半数に好きな人がいる! まずは千尋ちゃんから聞こうかな」
夢ちゃんもノリノリだね。人の恋話って興味出るもんね。
「同じ学年の人?」
「うん。名前は言えないけど、同じクラスの人だよ」
「「おおー!!」」
千尋ちゃんのメンタルが強過ぎる……! 私は今すっごく気まずいよ!?
「他にもヒント!」
「これ以上は駄目」
「残念。次は麻子ちゃんの番」
「昔からの片想いなんだよね」
「ほほう」
麻子ちゃんは、中学生の時から好きな人がいるんだって。その想いがずっと残ってるみたい。これで麻子ちゃんがその人とお付き合いできたら素敵な話なんだけど、この学校は外部の人と連絡が取れない。もどかしいよね。
「次の恋に行けたらいいんだけどね」
「切ない……! コイバナなのに切ないよ! 次は帆波ちゃん!」
「え? 私手をあげてなかったんだけど」
「長洲くんとはどうなの?」
「長洲くんとは友達だよ? 男の子の中では一番素敵だなって思うけど」
「えー。私は帆波ちゃんと長洲くんがお似合いだと思うけどなー」
「2人の性格も合ってるもんね」
そう見られてるのは……嫌ではないかな。長洲くんに迷惑がかからなければ大丈夫。でも私が思うに、椎名さんがいるんだよね。付き合ってないって言ってたけど、距離感とか雰囲気がもう付き合いの長いカップルだよ。
「帆波ちゃんが違うって言うならそうだとして。みんなは彼氏ができたら何かしたいことある?」
「そういう夢ちゃんは?」
「定番どころはまず抑えたいよね。この学校だと限られてくるから、まずは映画館デートか買い物デートかな」
あれ? 買い物デート……。
「服選びとかしてほしいよね。相手の好みがわかるし」
選んでもらったね。
「プレゼントされたら最高」
プレゼントしてもらったね。
「麻子ちゃんは?」
「外でのデートもいいけど、お互いの家に行く関係も良いと思う。変な意味じゃなくて、プライベートを知られてもいいって思える関係、良くない?」
「良い。でもそれはステップ踏んでからじゃない? いきなりはよっぽど相手のことが信頼できて好きじゃないと無理かな」
「それもわかる。段階飛ばし過ぎていやらしく思われても仕方ないやつ」
い、いやらしく思われるの!?
「一之瀬さん? 顔真っ赤だけど大丈夫?」
「ほんとだ。テストの緊張が解けて熱とか?」
「う、ううん。ちがうにょ」
「にょ?」
「……帆波ちゃん。もしかして長洲くんを部屋に呼んだ?」
「っ!?」
「やっぱり」
なんでわかるの!? やっぱりってどういうこと!?
それより先に弁解しなきゃ。いやらしいことなんて何もないって。
「ち、ちがうの! 長洲くんにはお世話になってるから、だからお礼がしたくて!」
「それで部屋に呼ぶのは大胆だね」
「こらこら。夢ちゃんも揶揄わない」
「……は、はしたないって思われちゃったかな……」
(かわいい)
(かわいい)
(すき)
「ま、まぁ、長洲くんだし大丈夫じゃない? 帆波ちゃんの気持ちを理解してくれてるよ」
どうだろう。私だってそう思いたい。長洲くんならって信じたい。でも真相は聞かないとわからなくて。それを聞くのはもっと恥ずかしい。聞くこと自体がはしたないと思う。
うぅ、穴があったら入りたいよ。
「帆波ちゃん。長洲くんのこと好きじゃないのに結構気にするんだね」
「だ、だって長洲くんは大切な友達だから。変に思われたくないよ……」
「夢ちゃん。これはもしや」
「もしかするかもしれないね」
(一之瀬さん、長洲くんのことを?)
「なんでみんな黙っちゃうの……?」
「ごめんごめん。帆波ちゃんって長洲くんの気になるとこある?」
「え……なんで急に?」
「いいからいいから」
話が強引に変えられちゃった。さっきの話に戻せる雰囲気でもないから、私はちょっと考えて正直に答えていく。
「長洲くんがなんであんなに優しくしてくれるんだろうって気になることはあるよ」
(帆波ちゃんがそれ言う?)
(ブーメランじゃない?)
「長洲くんって、初対面でもすごく話しやすいんだよ。そういう雰囲気を作ってくれてて。私にも丁寧に接してくれたし、相談にも真剣に乗ってくれたんだ」
そういうお仕事も世の中にはあると思う。でも長洲くんはボランティアだし、何より長洲くんは自分からそれを宣伝してない。相談する人が押しかけてる。それなのに一切嫌な顔をしない。普通はそんなのできないよ。
「気兼ねなく頼れちゃうし、長洲くんが同じクラスにいてくれたらなぁって思うこともあるんだ。でも頼るばかりじゃ駄目だし、長洲くんを支えたいとも思うの」
「それは良い関係だと思うよ」
「そうだよね! それとね、長洲くんって料理全般得意みたいなんだけど、私の料理が好きって言ってくれて。だからこれからももっと食べてもらいたくて、それでお弁当のおかず交換をすることにしたの」
「うーん、こっちはもうお腹膨れてきたかも」
「これで自覚ないんだね」
「初恋みたいだし、見守るのがいいんじゃない?」
「ライバルいるんじゃない?」
「私たちが、一之瀬さんをサポートすればいい」
「「それだ!」」
みんな何喋ってるんだろう? 私も勢い余って話し過ぎちゃったかな。親友に長洲くんのことを知ってもらいたかったけど、みんなでの会話を楽しむ方が大事だよね。
「一応聞くけど帆波ちゃん。長洲くんが他の女の子と話してたらどう?」
「? いつものことじゃない? いろんな相談受けてるもん」
「そこはそうだね。じゃあ校外で長洲くんが他の子と遊んでたら?」
「それも別に……。食材の選び方を教えることもあるって聞いたよ?」
それに椎名さんとは放課後によく一緒にいるもんね。
「それなら、長洲くんが他の女の子の部屋に行ってたら? デートしてたら?」
「それは……」
それも椎名さんとならあり得る。そう思ったんだけど、結構自然な光景にも思えるんだけど。
「それは…………」
なんでだろう。
それがたとえ椎名さんでも嫌な気持ちになってる。
私は、なんでこんなにモヤモヤしてるんだろう?
椎名「ハヤトくん。今度は一緒に作りましょう」