「いやぁー、まさか双子じゃなくて、3つ子だったとはねー」
「あの時のセンセーの顔、すっごく面白かった☆」
入院時の検査では双子だと思っていたが、まさかもう一つの命が宿っていたとは思いもしなかった。
おそらく双子の陰に隠れていたのだろう。
ただ、そういった双子だと思われていたのが、三つ子や四つ子だったりといった話は何度か耳にした事はあるが、まさか自分が受け持つ妊婦、ましてや推しである星野アイで遭遇するとは誰も予想できなかっただろう。
そんな予想外な出来事に遭遇した俺の顔が間抜けヅラだったのかは、その場で鏡で確認したわけではなかったが、一緒に話を聞いていた斎藤社長の顔を見るに、自身の間抜けヅラを想像するのは容易いことであった。
「いつまでも笑うなよ…。いくら話に聞いていた事はあったとしても、まさか自分の受け持ちに起きるとは思わないだろ。いくら医者が普段から冷静になれるよう努めていたとしても、あの場にいれば誰だってあんな顔になるさ」
まるで用意していたかのような饒舌に流れ出る言い訳をアイは聞き流す。
空を眺めるその表情は、適当に組み立てられた言い訳などには毛程の興味ももっていないようであった。
「…で、そんな平然と振る舞ってるお前は、当然3人目の名前くらい考えてるよな?」
「いやぁー、2人分はすぐ思いついてたんだけど、流石に3人目となるとねー…天才な私でも中々思い浮かばなくって」
「やっぱり、名字が星野だから、光り輝くような名前がいいと思うんだよねー☆宝石とか星の名前とかがいいと思うんだけど、これだっ!って言うのがなくてね」
「ダイヤモンドとかエメラルドっていうのも思いついたんだけど、なんか響きが微妙でさぁ。末尾がドで終わるのって可愛くないよねー」
(いや、響きがとかいう問題じゃないんだが…。アイの子供達よ、名前が周りと比べて少し?変わってるかもしれないが強く生きてくれ…)
今、彼女が思いついている名前が、まさか自分の名前になるとは哀れなものである。
「…それにしても、今日は特別に月が綺麗だね!」
「急に話飛んだな…。そりゃあ、今日は満月だからな」
所謂、月といっても、満ち欠けによって名前がいくつかあり、その見た目も変わってくる。
満月に近い13夜というものがあるが、今日のような満月と比べると大分劣る。
今の俺たちと同じように、この満月の偉大さ美しさに魅了されているものは少なくない。
「そろそろ冷えてくるから中に戻るぞ」
そう言いながら、俺は振り返りながら彼女を見る。
真剣な横顔で名前を考える星野アイの頭上には満天の星々。
満月の夜であっても、人々の道標となるほどにひときわ輝くその星は、宵の明星なのか、はたまた星野アイ自身なのか
(私、月も好きだなぁ…)
ただこの場でわかるのは、満月から伸びる一筋の月華は、星野アイを祝福するスポットライトのようであったということ。
(そうだ!月と書いてライトって読ませるのもアリかも…!)
その名前に問題があると知るものは、この世界にはいない