神の子   作:しろ0322

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お待たせしました!
“次回”から平和回です!


家族の在り方

事件から早数週間、一時はアイの隠し子について様々な批判があったが、母子共に心体に被害を受けていた事、犯人が過去他の女性に対してもストーカー行為をしていた異常者だった経緯から同情が集まり、予想以上に早く事態は沈静化していった。

最近ではもっぱらパーティー中に急死した敏腕経営者の死に対する考察や、洗えば洗うほど出てくる余罪について大衆は執心していた。

 

一方、星野家にとってもこの数週間は現状の限界を痛感させるような日々を送っていた。

 

アイはあれから一度は持ち直したものの、目標が無くなったことにより無気力な状態が続いていた。

なんとかミヤコが生活のサポートに入ってはいるが、ミヤコ自身子供はいないが家庭を持つ身であり、仕事も忙しい事で段々と立ち行かなくなっていった。

またアクア本人については問題無いが、ルビーは今まで以上にアクアに執着し、ここ数日はトイレ以外常に一緒にいる。

ライトが如何に天才といえども、身体能力は四歳児のため手伝えることなんて殆ど無かった。

 

――

 

そんな時、社長の壱護から重要な話があると言われたため、ライトはミヤコに連れられ苺プロダクションに来ていた。

 

「ライト。お前は賢いから包み隠さず話させてもらう。これから話すのはお前達の未来の為でもある。真剣に聞いてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

「今星野家には二つ問題がある。それが一体何かわかるか?」

 

「母さんが僕たちの面倒をミヤコさんに任せっきりな事、所謂ネグレクトに近い状態である事が一つ目」

「そして二つ目は単純にお金の問題。母さんも人気があったとはいえ稼げるようになったのはここ最近だ。ここの所出費が多かった上に、今はほぼ無職と同じ。貯金がそろそろ尽きそうとかそんな感じかな」

 

「ああそうだ。今まで何とか支援してきたがそろそろ限界が来る。アイの事は娘のように思っているが、稼ぎ頭のアイが活動休止に入った以上、出費を抑えて何とか会社を存続させなければならない」

「育児についても…まあライトに言うのは心苦しいが精々二人が限度。しかも今は大きい子供の育児をしないといけないからな……」

 

「ああなんとなく分かってるからそこまで遠回しに言わなくていいよ。要は生活が立て直せるようになるまでの間、一人何処かに預けたい、そういうことだろ?」

「そしたら僕が適任だね。最近じゃアクアとルビーはお互いに離れようとしないから、一緒に売りに出せば人気が出るかもね」

「…僕が家を出るのは良いんだけど、何処か当てはあるのか?」

 

「以前五反田監督の作品でアクアが共演した有馬かなさんの家が手を挙げてくれた。どうやら今回の騒動を聞いたかなさんがライトの事をひどく気にしていたみたいでな、何度か連絡が来てたんだ。それで相談してみた所、かなさんとの男女ペアでの売り出しをしてもいいのならという条件付きでOKが出た」

「一応苺プロの取り分もあって、こちらが紹介した仕事のギャラは4割、紹介していない仕事に関しても2〜3割ほどいただけるようになってる。残りの分についてはライトの養育費や有馬家のために使うそうだ」

 

「なるほど、それなら例え一緒にいなくても家族のためになるね。いいよ僕行くよ」

 

「お前に貧乏籤を引かせるような真似をしてすまないと思ってる。俺たちはライトなら頷いてくれると思ってお願いしていた。卑怯な大人だと思っててくれて構わない」

「いつか必ず全員で迎えに行く!それまでどうか我慢して欲しい!この通りだっ」

 

壱護は例え相手が四歳児であっても真摯にお願いをしていた。決して子供だからといって誤魔化すのではなく、何もかも包み隠さず情報を開示してくれている。

本来ならギャラの取り分などここまでハッキリと言わなくてもいいはずだった。

 

(この人なら母さん達を任せられる)

 

こうしてライトは家族に一時の別れを告げ有馬家へと旅立っていった。

 

――

 

明日から晴れてライトは二度目の高校生活を送ることになり、進学先はアクアとルビーに合わせたため陽東高校の芸能科進学コースとなっている。

昨今は高学歴俳優、高学歴アイドルの需要がクイズ番組、教養番組などで高まり、それを受けた陽東高校も世の中に合わせる形で国内外関わらず難関大学を目指す偏差値70越えの進学コースを設立した。

ルビーは芸能科、アクアとライトは芸能科進学コースへと入学が決まっている。

 

明日は入学式という晴れの日。ライトの両親である有馬夫妻は息子の成長を目だけでなく映像にも焼き付けようと、慌ただしくカメラの準備をしていた。

 

有馬月15歳。星野家に戻る事は叶わず、有馬家で過ごした時間は星野家で過ごした時間より長くなってしまった。

 

――

 

少し時は遡る

 

元々男の子が欲しかった有馬夫妻と弟が欲しかった有馬かなからは快く受け入れられた。

勿論、有馬夫妻にはライトを娘のかなと組み合わせる事で、かなの能力を更に飛躍させるためという打算もあったとは思う。

しかし、ライトの天性の人当たりの良さというのもあるが、男の子も育てて見たかったという母と、今まで家族の中で男一人で肩身が狭かった父、そして自分をお姫様のように扱ってくれたライトにかなは恋慕を抱いていたため、急速に仲を縮めていった。

その姿は元々家族であったかのような感じであった。

 

一時期スランプに陥っていたかなだったが、ライトとペアで仕事をしていくことで彼から学ぶことも多々あり、芸能人としても人としても成長していった。

また有馬家にとっては嬉しいことに、今までかな単体で仕事を探さなければならなかったが、ライトが入ったことにより、かな、ライトの個別とセットという計三パターンで仕事が取れることになり、有馬の名前は芸能界で急速に影響力を高めていくことになる。

 

――

 

そして中学校入学の日、有馬夫妻と斉藤夫妻の計らいもあり、アクア、ルビー、ライトの3人は同じ私立中学に入学することになっていた。

この頃にはアイも女優兼歌手として芸能界に復帰してしばらく経ち、生活も安定してきたことから徐々にライトを星野家に戻していこうという話になっていた。

 

アイとライトを引き離した直後は何度か取り乱すことがあったみたいだが、育児と仕事に追われる中で段々と落ち着いていったようだ。

 

入学式のあと久々の親子対面を予定しており、お互い芸能人であることから、近くのお店を貸し切って食事会をすることになっていた。

 

(あれから約八年。アクアとルビーとは仕事場でも会うしほぼ毎日連絡を取り合ってるから久々って感じはしないが、母さんとはあの病室での事以来会ってない。何処かの誰かが演出を齧ってるみたいで、この後僕はサプライズで店に入ることになっている)

 

「では不肖、私斉藤壱護から乾杯の音頭を取らせていただきます。思い返せば…「かんぱーい!」

「っておいバカアイドル、俺が折角いい話をしようとしてたのに勝手に乾杯するなって!」

 

「へへーん、社長の話が長いのが悪いんだよ。それにもう私アイドルじゃなくて女優だからバカアイドルってのは間違ってるね☆」

 

「お前はああ言えばこう言うな…全く歳を重ねて大人しくなるかと思ったが全然そんなことなかったな……」

 

「それで今日は何でこのメンバーなんだっけ?星野家、有馬家合同入学おめでとう会なら有馬さん家の子がいないと変だし、社長とミヤコさん二人とも来てるけど仕事は大丈夫なの?どうせこの後お酒飲むんでしょ?」

 

「ああ。今日はだな、久々の親子対面という事である人を呼んでいる。おーい入ってきていいぞ」

 

「えっ?親子?アクアとルビーならここにいるけどどういうこと?」

「あっ、アクアとルビーの友達のライト君だ!そういえば、かなちゃんとよく共演してるから何でだろうって思ってたけど、かなちゃんの弟だったんだね!じゃあ名前は有馬月君か!いい名前だね!」

 

「は……?お前何言ってるんだ……?」

 

「会うの分かってたら何かお祝い買っておけば良かったな〜。もっと早く言ってよ〜、なんか一人だけ準備してなくて馬鹿みたいじゃん!」

 

周囲から幾つもの視線がライトに突き刺さる。

その視線には憐れみが溢れていた。

 

「てめぇ!言って良いことと悪い事がっ「僕、ちょっと体調が悪いみたい。病院行ってくるから、皆んなは楽しく始めててくれる?」」

 

そういってライトは足速に店を出ていった。

 

「ミヤコっ!」

 

「ええ、私も一緒に行ってくるわ」

 

「いえ、今日は中止にしましょう。ライトも体調が悪いみたいですし、折角の子供達のお祝いですから仕切り直してまた後日にでも」

 

「…ええ、お店の方には私から謝っておきます。ライトには謝っておいてください。ウチの馬鹿が申し訳なかったと…」

「いくぞ、バカアイドル…」

 

「え〜、私何か気に障るようなこと言ったかな〜?でもライト君が体調不良になっちゃったならまた今度だね」

「じゃあ私達も帰ろっか。ほら、アクアとルビーも行くよ!」

 

 

 

客席は誰もいないのにまるでお葬式のような空気が漂っていた。

 

――

 

診察の結果アイは心的外傷及びストレスによる解離性健忘、所謂記憶障害を患っており、ライトに関する記憶の他に事件で起きた内容、アイドルになる前の記憶の一部を失っていた。ライトの記憶に関しては、親子が引き離されたことによるストレスが原因だろうとのことだった。

 

――

 

ライトを星野家に戻してもお互いにメリットが無いどころか、記憶が戻ったことによる影響が予想できないため、その年の夏ライトは正式に養子として有馬家に入り有馬月になった。

 

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