神の子   作:しろ0322

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いつも感想、誤字報告ありがとうございます。
感想への返信は基本していませんが、内容はすべて読ませていただいております。
今後も変わらず返信はしませんが、物語の展開に関わらないような質問についてはなるべく答えていきたいと思います。
また他の漫画やアニメ、小説については皆様と比べると知らないことが多いため不躾な質問をしてしまう事があります。その点についてはどうかご容赦ください。


あれだけ暗い話を連続して出しておいて申し訳ないですが、
あんまり引き伸ばしても話が進まないのでサクッと進めます。

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追記
活動報告でも書かせていただきましたが、誠に勝手ながら7/22まで投稿を休止します。
次回更新までお待ちください。
よろしくお願いします。


十全十美

今芸能界で話題の有馬月が入学してくると聞いた陽東高校の学生達は浮き足立っていた。

 

元来、陽東高校というのは有名から無名まで数々の芸能人が在籍する特殊な学校である。

そのため、芸能人に会う事は別段特別な事ではなく、たとえ有名な芸能人が在籍していたとしても、あまり特別視される事はない。

ただ例年であればそうだったのかもしれないが、今年は一味違っていた。

 

幼少期から変わらないその甘いマスクと紳士的な振る舞いは多くの女性を虜にし、彼の努力からくる博識な知性は多くの男性から尊敬されていた。

決して今の立場に甘える事のない彼の芸能に対する姿勢は世間から高評価を得ていた。

 

彼を一目見た人はその完璧な容姿、才能、立ち振る舞いから彼の事を「神の子」と呼ぶ。

 

――

 

「ライト様っ先月発売の写真集最高でした。…これにサイン貰えたりって…できますか…?」

 

「勿論構わないよ。どこに書けばいいかな?」

 

「…ここに〇〇ちゃんへって…」

 

何度書いたかわからないサインをライトは手慣れた感じで素早く書く。

そして手渡す時には熱い眼差しで相手に目を、いやその先の心を見る。

 

「はいどうぞ。買ってくれてありがとう。でもあの写真集ちょっと高かったでしょ?僕はもう少し値段を下げたかったんだけど事務所が許してくれなくてね。君みたいな子に余り無理しないで欲しいけどまた買ってくれると嬉しいな」

 

「!!…あ、ありがとうございます!私、腎臓売ってでも買います!」

 

『腎臓だってよ。お前のファンやべえな。終いには寿命の半分くらい捧げてくれるんじゃないか?』

(リューク。笑いそうになるから黙っててくれ)

『それにしても月の写真集ばっかり買ってないで、りんごの一箱くらい送ってくれてもいいのにな』

 

「(リュークの奴五月蝿いな)…他にもサイン欲しい子いるかな?まだ時間があるから頼んでくれた子全員分今日は書くよ」

 

ライトの一言でサインを貰おうと思った人が殺到したが、これを危険だと見た教員により最初の10人以外を解散させた。

 

――

 

『クククッ昔もそうだったが今は一段と人気があるな。流石は月』

『それにしてもミヤコといい、有馬家の人間といい皆んなお前の信者ばっかりだな。宗教団体でも作る気か?』

 

「あんまり人前で話しかけないでくれよ。危うく今日は笑いそうになったじゃないか。僕程優れた人間なんだそりゃあ人気だってでるさ」

「宗教か。あながち間違えでもないかもね」

「人間って脆いから、心に闇を抱えてる時に手を差し伸べれば大体あんな感じになるよ。ただやり過ぎると今の状態みたいに自分で考える事を放棄するから余り役に立たないけどね」

「その点ミヤコさんは元々の能力の高さもあるが、ミサみたいに馬鹿じゃないし高田みたいにプライドも高くないから僕の理想に近い。……それに比べて有馬夫妻はダメだ。最近は指示を仰いでばっかりでウンザリする。金と地位に執着するのは扱い易くていいが……まあ時がきたら」

 

『殺すってか?確かにあれじゃヨツバの火口みたいだよな。いい死に方はしなそうだぜ!クククッ』

 

「まあ色々話したけど要は僕はかつての母さんと同じように完璧ってわけだ。……ただそんな完璧な僕の数少ない弱点があそこから睨んでるけど」

 

『またアクアか。ルビーといい全く懲りない奴らだぜククク』

 

「まあそういうなって。あれでも家族なんだ。そうだな…そろそろ毎回聞かれるのも疲れてきたし、今日は高校入学祝いとして答え合わせをしてあげようか」

 

まるで仇に対峙するかのように星野アクアはライトを睨みつけていた。

 

――

 

「そんなに熱い視線を送って、何か用か兄さん?僕男色の気はないんだけど」

 

「……お前、いつになったら母さんに会いにきてくれるんだ?もう10年だぞ…今まで帰ってくるチャンスは何回もあった筈だ。俺とルビーも待ってるし母さんだってきっと…!」

 

「先週も聞いたよその言葉。ああそうだね、チャンスは幾らでもあった。それこそ小学校入学のタイミングで戻る事も可能だった。もしかしたらその頃だったら母さんも僕の事を覚えてたかもね」

 

「だったらっ!」

 

「今まで詳しく言わなかったけど、今日は高校入学祝いとして教えてあげるよ」

「兄さん達にはいつか帰るって言ったけど、この世界が変わらない限り僕は戻るつもりは無い」

「きっと今母さんに記憶が戻ったとしても恐らく同じことを繰り返されるだけだ」

 

 

「…あの事件、僕達は被害者で何一つ悪くない事は勿論わかってる。僕たち家族は心無い人たちのせいで心身共に傷を負っていた」

「…ただそれでもあの時の兄さん達はとてもじゃないが見ていられなかった。まるでお互いの傷を舐め合うかのように依存する毎日。このままじゃ何も変えられない、だから僕は外に出た」

 

 

「…それに事件から一年後、徐々に子育てを再開し始めて元気も出てきたことはミヤコさんから聞いてる」

「…でも僕が戻る事で、あの希望の見えない毎日に戻る可能性が1%でもあるのなら僕はその選択はしない」

「僕は僕が好きな母さんを取り戻すためだったら、なんだってする。五年や十年離れる事なんて本当の意味で失うことに比べればどうって事ない」

「……」

「兄さん。兄さんと姉さんが好きだった母さんはこのまま何もしなくても取り返せるのか?」

「このまま一生あの男と醜い世間に負けたままでいいのか?真っ直ぐで真面目な人間が損をする世の中でいいのか?」

 

「そ、それは…」

 

「僕はいつ母さんが戻ってきてもいいように世界を変える。今までだって、ただ座して時が過ぎ去るのを待っていたわけじゃない。準備だってしてきた。その結果が今の僕の評価だ。『弱きを助け強きを挫く』これは僕に与えられた使命だ。兄さん達は今の自分の行いを誇れるか?」

 

 

ライトの言葉にアクアはハッとさせられる。

放たれた言葉は心に痛いように突き刺さる。「ただ一緒に居れればいい」そう思ってきたアクア達だったが、それが悪手だったことに気付く。現実から眼を逸らそうとしていたアクア達と違いライトは自らの思い描く世界の実現とかつての平和な頃の家族を取り戻すため邁進していたのだ。

 

 

「……………」

「……クソッ………そうだな。ライトの言う通り本当は俺が、そしてルビーが前世で見た母さんの姿を取り戻したいと思っている。ただ俺たちは何も出来ず現状に甘えるだけだった……。今も母さんは一人で泣いてる時があるんだ。本当はもっと寄り添って一緒に考える事ができたはずなのに、あの時母さんが言いかけた言葉が脳裏を過って俺はあの姿を見て見ぬ振りをしていた。まったく酷い息子だよな…」

「俺たちが初めて過去を明かした時もあの事件の時もそうだ。いつだってライトのお陰で上手くいってきた。お前があの時後押ししてくれなければ、未だにルビーには話せて無かっただろう。俺たち家族はそんな頼りになる弟に甘えすぎてたんだろうな。たった一人欠けるだけでこの様だ…」

「俺もライトを連れ戻せば解決すると心の中でどこか思ってた。今思うとそれ、依存だったんだな……。前世が医者でありながら気づけてなかった。兄貴失格だな。悪かったな今まで執拗に連れ戻そうとして」

「……ルビーともちゃんと向き合ってみる。どうせ血が繋がってるから結婚なんてできない。そろそろ兄離れしてもらわないとな」

 

「しんみりしてる所悪いけど、その前に妹離れしないと。ミヤコさんから聞いたよ。今でも手を繋いで寝てるんだって…?」

 

「!?…やっぱり今までの情報源はミヤコさん経由か。お前有馬やミヤコさんをどうやって手懐けたんだ?昔から人垂らしなのは変わらないな」

「それにしても弟に説教されるとはな。…お前やっぱり年齢鯖読んでないか?」

 

「はあ…今更そんな話か。そんなわけないだろ。むしろ兄さんのその凝り固まった思考の方がおじさんに近いんじゃないか?」

「それに『神の子』と呼ばれてる僕が、年齢詐称の中身おじさんより老けてたら『神の子』じゃなくて『神』になってしまうだろ。まだ神になる気は無いって」

 

「おい俺が気にしてる事を…。最近の流行とファッションセンスとズレててルビーからおじさんって言われてるの知ってるな…?」

 

以前アクアが着ていたクソダサいロゴと文字が入ったTシャツを思い出す。

 

「取り敢えずあのダサいTシャツやめた方がいいよ」

 

「おま…、はっきり言うな……。それにしてもライトの時々垣間見る辛辣な態度、ファンが見たら幻滅されるかもな」

 

「兄さん知らないのか?そういうのはギャップ萌えって言って女性にモテるんだよ」

 

「お前モテすぎて複数の女と付き合うなよ。どこぞの芸能プロの社長みたいに今話題のキラに殺されるぞ」

 

『キラに殺されるから気をつけろよ だってよ!クククッ』

 

「ははっ、僕は大丈夫だよ」

 

――

 

「話に夢中になってて聞くの忘れてたけど、姉さんは一緒じゃないのか?」

 

「ルビーか?ルビーなら…ああ、あそこに」

「…なんだあれデカイな」

 

「まったく、兄さん冗談はやめてくれよ。姉さんは母さんと同じでそこまで大きくないじゃないか」

 

「お前実の姉に向かって中々酷いな」

「…じゃなくて隣だ隣」

 

『ウホッ!ありゃあでけえな。あんなのついてて足下見えんのか?』

 

(…ここにはセクハラジジイしかいないな)

 

「ちょっと僕挨拶してこようかな。何だか仲良くなれそうだ」

「…………いや、向こうに僕を睨み付ける可愛い子が待ってるから今日は辞めとこうかな。…いやあ、今日は寒いな」

 

「今日けっこう暖かいぞ。お前が寒いのは気温とは関係ない別の原因だろ」

 

そこには壁に穴が空きそうな程ライトを睨み付ける有馬かなの姿があった。

ルビーの隣にいた寿みなみに視線を向けていたところをちょうど見られてしまったライトは、この後有馬かなの重い愛に付き合わなければいけない事が確定したためゲンナリするのであった。

 

『有馬かなもミサと同じくらい重いよな。死神は痛みを感じない筈なのに、俺も最近胃が痛いぜ』

 

「そろそろ時間だし僕は行くよ。勿論さっきのこと姉さんに話してくれても構わない」

「僕は僕のやり方で世界を変え、いずれは母さんを迎えにいく。そこには兄さんと姉さんも必要だけど今みたいに燻ってるようじゃ…ダメかもね」

 

「ああそうだな。『日々は一瞬。悔いはないように』だろ?いつか絶対家族全員で同じ場所に立ってやる。そろそろ兄の威厳を見せないとな」

 

「周回遅れで僕に追いつけるのか?……そうだな少し成長の手助けをしてあげるよ。今度僕は恋愛リアリティーショーに出るからそれに兄さんも出てくれ。きっと糧になる筈だ。」

「ただ兄さんが出ると男が一人余るから………そうだな、さっき姉さんの隣にいた子にオファーを出してくれるか?」

 

「俺もまだ話したことないから上手くいくかわからないがな。それより番組の出演者勝手に増やしていいのか?」

 

「まあまだ始まってないし何とかなるよ。それに今芸能界では『有馬』の影響力は絶大だ。監督には貸しの2、3個あるから頷いてくれるよ。というか頷かせる」

「期限は来週末だ。それまで考えておいてくれ」

「じゃあね」

 

ライトが話を終え一人になったところを狙いすましたハイエナかのようにファンが群がっていった。

 

「ライトのやつ同じクラスなのに一人で行きやがった。俺と一緒なら気を遣われてあそこまで人だかりにならないのに。あいつ結構天然だよな…」

 

この後妹の友人にナンパ紛いな事をすることになったアクアは胃がキリキリと痛むのを感じるのであった。




カミキ?知らない子ですね
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