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キラが世間を賑わせるようになってから早五年。一時は犯罪件数の大幅な減少が見られたが、ここ一、二年は若干の増加傾向が見られていた。
その要因はSNSの普及により増長する承認欲求だと言われている。それに「キラは殺人や強盗をしない限り裁きをくださない」「キラも小物相手は対処しきれないから裁きをしない」などという出処不明の噂が要因だったりする。
「まったく、SNSっていうのは恐ろしいわね。2人とも気をつけるのよ。特にアクア、貴方恋愛リアリティーショーに出るんだから気をつけなさいね。相手はせめて一人にすること。幾ら視聴率の為だからって2人以上にアプローチはしないように。きっと2股掛けた瞬間袋叩きにあうわよ」
「ああ、分かってる。誘った手前もあるから寿さんと示し合わせて上手いことやろうと思ってる」
アクアは半ば無理やり寿みなみを誘ったこともあり、なるべく穏便に番組を進めるため事前に打ち合わせをしようと思っていた。それに番組上、妹の紹介で元々知り合いだったというていで進めれば自然でもある。それにこれは何処の馬の骨かも分からない雌猫より、多少?胸は大きいが他の人より信頼できる寿みなみを選ばせたいルビーの希望でもあった。
「それに視聴率のために俺が目立とうとしなくたって、目立つ奴いるしな」
「ああ……ライトか!最近週刊誌によく載るよね!たしか……『イケメンクイズ王は夜も帝王だった』みたいな見出しだっけ」
ライトは持ち前の頭脳を活かしここ最近はクイズ番組に出演していた。クイズ番組と言えども台本があったり予め指定された回答があったりするみたいだが、ライトはその一切のヤラセを無視し、誰よりも早く回答していった事で単純にクイズが強いという意味と番組編成を無視した暴君ぶりを表現してクイズ王と一部では呼ばれてたりする。
そんなライトは人たらしということもあり共演した女性と噂になり易く、本当か嘘か分からないような内容が週刊誌を賑わせていたりした。
「そんなの書かれてたな。まあどれもこれも証拠がない眉唾物だったがな。確かリアリティーショーに出る黒川あかねも噂になってたよな。お前この前黒川あかねに会ったって言ってたがどんなだった?」
「あー、あかねちゃん?なんか満更でも無さそうだったよ。っていうか腕組んでたし。なんか少し前から付き合ってるんだってー。でもそうするとライトは弟だから私はあかねちゃんのお姉ちゃんってことか!年上の妹ってなんか萌えるね!」
「おまっ!あいつら付き合ってたら、番組のカップル半分出来上がってるじゃねーか。……視聴率爆死か?」
「はいはい!貴方達、話はその辺にしてそろそろ家に帰りなさい。アクアは明日撮影あるんだからもう寝ないと。事務所の施錠をするから帰る準備ができたら声かけて」
「はーい」
そう言ってミヤコは窓や裏口などの施錠確認のためミーティングスペースを離れていった。
ミヤコがいなくなったのを見計らってアクアはルビーに話しかけた。
「なあ。最近の芸能界おかしくないか?」
「おかしいって?あー、ロリ先輩の両親が立ち上げたプロダクションが数年で業界最大手になりそうなこと?副代表がライトなんだっけ」
「いや、まあそれもあるんだが……どっちかというとキラの裁きのほうだ。キラが世間に認知され始めてから数年間は主に犯罪者に対する裁きだった。それが最近じゃ芸能界を中心とした小児買春や人権侵害の噂がある大物が対象になっている」
「あー……英語で出された声明の翻訳だから正しいか分かんないけどあれだよね『人々の偶像たる芸能界は人々の規範になる為に一切の腐敗を取り除かなければならない』だっけ。うわっ、私よくこんな長いの覚えてるな」
キラから定期的に世界に向けて声明が出されていた。
最初はキラの存在を世界に示すようなものばかりであったが、ここ最近は特定の国、地域、業界を名指しするものも出されている。
昨今では国家もキラの裁きにより犯罪が激減したことで、予算のお荷物となった軍隊や警察の縮小を表明し、浮いた予算を子育てや福祉に割り当てることを表明している国もあるくらいだ。こうしたことでキラの声明に協力的だったり好意的に受け止める国も少なくない。
そしてルビーが言っていたのは某アイドルグループの社長による児童に対する猥褻行為や人権を侵害するような労働を推進しているプロダクションに向けた声明だった。
「でだ、日本だと業界最大手が潰れて有馬プロダクションが最大手になりそうって言ったが都合が良すぎないか?出来て二、三年のプロダクションが偶々競合がキラの裁きにあって業界大手に躍り出る。……まあ実力や影響力は有馬かなとライトがいるから申し分は無いが、会社が大きくなると言ってももう少し段階がある」
「えー考えすぎじゃない?それを言うならあかねちゃんとみなみちゃんのところだって、それにウチだって裁きに合ってないよ?寧ろ大手が潰れたことで仕事だって回ってくるし。」
「それに私たちは今まで通り真面目にやっていけばいいんだからあんまり気にしなくていいんじゃない?ニュースにはまだなってないけどキラを暴こうとする暴露系Youtuberが音信不通になってるって呟かれてたよ。私お兄ちゃんに、センセに居なくなって欲しくない……」
「……すまん。軽率だったな。これからは気をつけるよ。それにまだ君がアイドルになった姿を見れてないから死ぬわけにいかないしな」
「うん、センセ大好き……」
ルビーは少し背の高いアクアの胸に収まるように抱きつく。アクアもライトにこの前言われた兄離れ妹離れについては考えず、華奢なルビーを壊さないように優しく腕を回し引き寄せる。
数分後流石にミヤコを待たせすぎたと思ったアクアはルビーを引き離した。
「……そろそろミヤコさんも待ってるだろうし帰るか」
「うん!そうだね!センセニウムも補充出来たことだし今日は満足!」
「ミヤコさーん!帰る準備出来た!」
ただルビーにああは言ったもののアクアはまだ何か気になるようだった。
(……キラの悪に対する容赦の無さ。善人にとっていい世界を作りたいと言う意志。俺はどこかで知っている気がするが……)
――
二人を家まで送り届けたあとミヤコは電話をしていた。
「アクアとルビーがキラについて話してました。アクアは少しですが有馬プロダクションの躍進を疑ってるようでしたので注意すべきかと。ええ……はい……はい……。では取り敢えず暫くは様子見という事で。また何かあったら連絡します。明日の撮影お二人共頑張ってください。では失礼します……………あかねさん」