まるで心の奥底を見透かすような、眩しい程に輝く瞳に覗かれる中、僕の意識は覚醒した。
――
僕の持つ記憶が正しいのかは、映像や記録を見ない限り証明できないが、もし夢で無いのであれば、僕は転生というものをしたのだろう。
前世では、キラと呼ばれる存在が人類の頂点に立とうとしていた。
キラはデスノートという殺人能力を使い、世界の犯罪者を根絶やしにするかの如く、力の行使をしていた。
結果的にキラの裁きにより、犯罪者の総数は減少の一途を辿り、世界の犯罪の7割が減少していた。
キラの支配による、混沌とした平和ではあったが、人類は、いや善人にとっては束の間の平穏を手にしようとしていた。
…昔、松田さんが言っていたように、例え力による支配であっても、真面目に真っ直ぐ生きる弱い人にとっては、いい世界だったのかもしれない。
そんな中、キラ事件の捜査に加わった僕は、Lと呼ばれる名探偵のもと捜査を行っていた。
元々優秀であったLに加え、この僕が加わったこともあり、何度かキラを追い詰める事はできた。
だがキラの策略により、L、その次に父さん、最後は僕自身も力の前に敗れてしまった。
転生してすぐは、策略に嵌って死んだことに対して、とても受け入れ難い屈辱を受けたが、最終的にこうして新たな生を受けたのなら、トータルで見れば僕の勝ちだと思っている。
…ただ思い返す上で、一つ納得のいかないこともある。
記憶力には自信のあった僕だが、所々曖昧な部分もある。
キラとの対決という密度の濃い人生であったはずだが、印象に残っている事は、捜査した期間に比べるとそれほど多くはない。
思い出せる内容も、無理やり辻褄を合わせたような歪さを感じることもある。
僕はもっと違う事をしていたような予感もする。
ただ残念なことに、記憶がない以上確かめようがない。
――
…そう過去を振り返っていると、輝く瞳に覗かれていたのを思い出す。
(僕としたことが、危うく見られているのを忘れるところだった。不審に思われないよう、今は赤子のフリをしないと)
周囲を心配させまいと、子供らしい笑みを浮かべる。
「きゃー!アクアが笑ったー!」
「おいっ、バカアイドル、それはライトだろ。いい加減名前覚えろ」
「えー、人の顔と名前、覚えるの苦手なんだから仕方ないでしょ。」
今世に於いても名前は月(ライト)であった。
前世と同じネーミングセンスを持った人間がいるという事で、初めは父さんが転生したのかと疑ったこともあった。
それほど珍しい、いや唯一無二と言っていい名前だ。
兄と姉も僕に負けずとも劣らず、中々ユニークな名前をしていた。
家族構成は僕と母さんの他に、愛久愛海(アクアマリン)という兄と瑠美衣(ルビー)という姉がいる。
ただ、兄、姉と言っても、3つ子の兄弟のため、歳の差はない。
よくもまあ、あの体から3人も産まれてきたものだ。
記憶にある、母さんという存在は、もう少し落ち着きのある感じの筈だったが、今目の前にいる新しい母さんは、16歳のアイドルらしい。
今日は休養から復帰となる初日のため、先ほどから少々騒がしい。
母さんの事を認識した時に、16歳のアイドルが出産をするという思慮の浅さに、内心見下していたこともあったが、復帰に向けた直向きな姿、3人の子供を育てるという意志の強さを目の当たりにした事で、今では家族として大切に思っている。
僕含めて子供は3人。いくら僕たち3人が“転生者”ということで、一般的な子供と比べ手はかからないといっても、アイドルと子育ての両立という、普通であれば手に負えず諦めるようなこの状況、
ただ、ここには決して悲壮感は漂っておらず、我が子の成長を日々実感する母さんの姿と、まるで天国にいるかのような表情の浮かべる兄さんと姉さんの姿を見れば、誰が見ても幸福が満ち溢れているのはわかるだろう。
前世に残した母さんと妹に対する贖罪ではないが、この幸福な空間だけはどんな手を使ってでも守らなけばならない、僕はそう強く決意した。
tips
デスノートを所有していた者が全てのノートの所有権を放棄すると、デスノート自体に関する記憶を失い、デスノートを使うために行った行動の記憶は、デスノートが絡まない形で残る。