深層よりこんにちは -ダンジョン脱出を目指す幼女のお話- 作:いちごの入った大福
拝啓 天国のお父様、お母様
お空の上からマリアをみていますか?
ダンジョンの中は見えませんか?それだとさびしいです。
マリアは今、ダンジョンでくらしています。
ここは危ない場所です。何度かお空にとびかけました。
お父様とお母様が見えたこともありました。追い払ってくれてありがとうございます。
それでもマリアは生きています。
お父様とお母様に会うのは、ちゃんと80歳くらいまで生きてからと決めています。
どうかマリアを応援していてください。
ダンジョン深層より 愛を込めて
天堂マリア
◆
この階層は全体が真っ暗で、ただひとつの光源もありません。
壁も床も光を吸収する特殊な鉱石で出来ているらしく、明かりをつけてもちっとも明るくならないのです。
たいまつ等の照明が役に立たない以上、ここで活動するのに【暗視】のスキルは必須です。
ここのモンスター達は例外なく【暗視】を習得しているし、非常に耳が良いです。
どいつもこいつも隠密と隠密看破を得意としているから嫌になっちゃいます。
マリアは小学生ひとりだというのに、よってたかって!
今も眼下に音も出さずにのそのそと歩く、真っ黒な四足歩行の獣。
彼らの攻略法はひとつです。
バレてもいいから先手必勝!!
「どりゃーーーーー!!!!」
◆
はじめまして、天堂マリアと申します。
小学生5年生、まだ誕生日が来てなかったので10歳でした。
何故そんな子供なマリアがダンジョンに居るのかというと、ダンジョン生成に巻き込まれたからです。
この世界ではごく稀にダンジョンが生成されます。
実際に見た感想ですが、なんかこう、ズーーン!!と沈み込んでドーーン!!って感じでした。
そのドーーン!!となったところに入り口が生まれるらしいのです。まったく不思議なものですね。どういう仕組みなんでしょう?
マリアはそのズーーン!!と沈み込んだところに巻き込まれちゃったんです。
巻き込まれた事例を聞いたことがないので分からないのですが、相当に深くまで落ちたように思えます。地獄みたいな場所でしたもん。
ダンジョンの階層は100階層まで存在すると言われています。
世界で制覇されたダンジョンがどれも100階層だったからです。
これまで公式に制覇されたダンジョンは3つ。
アメリカにひとつ、中国にひとつ。日本は3番手でした。何だかんだ先進国です。
そう、日本でも制覇実績があるのです!
つまりどれだけ深く落ちちゃってても、助けが来る可能性があるのです!
……の、はずなのですが。
マリアはこれまで10階くらいは登って来たのですが、まだ人ひとり出会った事がありません。もしかしてダンジョンに落ちちゃった事が判明してないのでしょうか?
今の階層は不明。うーん絶望です。
今でこそ落ち着いたマリアですけれど、最初はもうひどいものでした。
身体は痛いしお腹は空くし、周りは化け物が跳梁跋扈。
当然泣いちゃうし自暴自棄になるし、お腹は空くし喉は乾くし。
ただ幸いなのは、あの地のモンスターが一定以下の弱者に興味を示さなかったことです。
我々が地面を歩くアリンコを気にしないのと同じですね。マリアはアリンコの行列をつい目で追っちゃうタイプです。可愛いですよね、アリンコの行列。
そんな地で空腹を満たすためにきのみを食べたり
湧き水を探して飲んだり
初めて得たスキルが【悪食】でショックを受けたり
頑張って火を起こして死肉の残りを焼いて食べて
毒も瘴気もへっちゃらだったのは、生まれつきのスキルが【状態異常無効】であるからだったのが判明したりして
いつの間にかその階層の敵と対等に渡り合えるようになって、ついにマリアは自力で地上に戻ることを決意したのです。
◆
このダンジョンで過ごしてたぶん半年くらい。もう正確な日付は覚えてないけれど、マリアは必然的に、ダンジョンで生きる術を身につけました。脅威の成長スピードです。マリア成長期なのです。
まず先手を取る事。
このために音を出さずに移動する【サイレントムーブ】敵を察知する【索敵】索敵に引っかからない隠密を無効化する【隠密看破】のレベルはガン上げしています。
先に見つかったら逃げる。相手が格下であっても仕切り直す。これは必須テクニックです。
次になるべく一撃で倒す事。
先手を取っても抵抗を許すと結局一手しか変わらないですが、それでも良いからとりあえず全力を叩き込むこと。
一撃で倒す威力を得ることが出来るなら、あらゆるリソースを一点に集中させれば良いので大きく有利に立つことが出来ます。ぶっちゃけラクです。
この2つを遵守すれば、どの階層の敵も有利に立ち回れるのです。
「よいしょ」
ドスン!!
地面に突き立てた鉄塊のような大剣が地面に亀裂を広げます。
足元には先ほど討伐した黒い獣のしかばねが転がっています。
今日のごはんです、大事にしないといけません。
……とはいえ、ご飯が欲しいのはマリアだけではないのです。
周りを取り囲むように隠密しているモンスターの群れ。どいつもこいつも肉の横取りを狙っているハイエナさんです。
「こんにちは、マリアです」
まずは挨拶。反応なし。
「マリアのえものですよ」
ここにいると言葉で話す機会がないので、なんだかたどたどしくなります。かすれた声をかけますが、誰も聞く耳を持ちません。
知能が高いが故に言葉が通じているのは分かっています。声が掠れたのが失礼だったのでしょうか。
さて、このように先手必勝がとれない場合はどうしましょう。
普段は逃げる一択なのですが、大事なご飯を守らねばならないから逃げられないんです。
そんな時の選択はひとつ。
「あのよで くいろ」
後手の先手必勝です。
襲いかかるモンスター達に鉄塊を振るいました。
天堂マリア
Lv????
E:アースクォーツの鉄塊
E:死神の外套
E:竜の髪飾り
E:ボロボロのスカート
E:子供用スニーカー