深層よりこんにちは -ダンジョン脱出を目指す幼女のお話- 作:いちごの入った大福
世界各地に新たなダンジョンが生まれた。
日本も例外ではなく、国内では通算11個目のダンジョンである。
新たなダンジョンがもたらす影響は非常に大きい。
プラス面を言えば、ダンジョンに挑むため国内各地から冒険者が集まるので、必然的に人口が増えて経済が活性化する。
知名度も自然と上がるので、外部からの宿泊客に観光客に、人通りが激しくなる。
マイナス面を言えば、危険である事だろう。
ダンジョンからは不定期に【スタンピード】という現象が発生する。これらダンジョンの1〜50階層までのモンスターがダンジョンの外に押し寄せる現象である。
これの対策のため、発生時は半径5km以内が封鎖される。たちのくにしても残るにしても、住んでいた人たちにとっては勘弁してほしいことだろう。
【スタンピード】は危険だ。今では対処法が確立しているものの、初めて発生した四国地方では対処ができず、被害が甚大だった。
今や四国は滅んでダンジョンから溢れたモンスターに占領された魔の地である。
冒険者以外にも自衛隊など国管轄の組織がダンジョン攻略に参加しているのは、スタンピード対策でもある。
さて、そんなダンジョンだが、中に侵入している
この新しいダンジョンが生まれた時、これがとある騒動を呼んだのだ。
【ダンジョン内人数:1】
ダンジョン発生からすぐに駆けつけた者が見つけた表記である。
誰かがダンジョン内に迷い込んだ事を意味していた。
すぐさま本ダンジョンは封鎖され、自衛隊と有志の冒険者が組んで内部捜索が行われた。
捜査にあたった者は軒並み100レベル前後であり、通常のダンジョンなら20階層付近の探索が出来る実力者の冒険者達であった。
しかし、捜査は思っていたよりも早く頓挫することになる。
この新しいダンジョンは、適性レベルが通常よりも高かったのだ。
通常であれば、1階層の適性レベルは1〜5で2階層は6〜10と、5ずつ上がっていく。
国内で唯一100階層を走破した時も適正レベルは500であり、その事例が覆されたことはなかった。
しかし、このダンジョンの適正レベルは、1階層であれば1〜20と非常に幅広かった。
本来は20階層まで足を伸ばせる100レベル前後のメンバーは5階層にたどり着いてから引き返すことになった。
手前の階層を探せど見つからず、夜間になったことで捜索部隊が全員撤収した後も、人数表記は1のままだった。
そんな中、警察から情報提供があった。
【地元の小学生、天堂マリアが行方不明である】
この情報は当時の世間を震撼させた。
状況証拠は間違いなく「天堂マリアは新しいダンジョンに引き摺り込まれた」と示していたのだ。
この事実はすぐさま報道によってキャッチされ、大々的に報じられた。
ダンジョンに巻き込まれた小学生という事実は世間の注目を呼び、様々な世論が飛び交った。
彼女が天涯孤独である事まで報道された。プライバシーもあったものじゃない。
ともあれ他ダンジョンからレベルの高い人員が動員され、同情的な有志もさらに集まり、自衛隊と冒険者の必至の捜査により9階層までの全てを隅々まで捜索された。
しかし、天堂マリアが見つかることはなかった。
今や天堂マリアは悲劇のヒロインである。
どうして彼女は上層にいないのか。
どうして彼女は今もなお生存しているのか。
いつか、ダンジョンから人が撤収した夜間に表示される【ダンジョン内人数:1】の数字が消えてしまうのではないか。
全てが手遅れになる前に、我々は彼女を見つけ出さなければならない。
【ゴブリンハイロード Lv208】
『グオオオオオオ!!』
今はこの10階層のフロアボスを撃破し、一刻も早く先へ進む事だけを考えよう。
私は先遣捜索隊の隊長として号令をあげた。
「奴を倒して天堂マリアを救出するぞ!!」
「「「オオオオオオオ!!」」」