温泉旅行、とても楽しかったです。
高級そうなソファの背もたれに身を預けながら、ぼうっと天井を見つめる。
あれから、PCの履歴や部屋においてあったデータチップを片っ端から確認した。
どうやらここは、ゲーム内で頻繁に利用していたコーポプラザのマンションのようだ。
買上げているようで、どうやら数年この部屋に住んでいるらしい。
他にも、資金やビークル、物件などなど、様々な資産を保有しているようだ。
気のせいじゃなければ、プレイしていたセーブデータよりも、少し・・・
いや、かなり多かった。
ゲーム内ではアイテム増殖やNPCとの取引時のバグを利用して、常にエディを稼いでいた。
それにしても、こんなに大富豪だっただろうか。
前世では平社員だったやつがこんな大金持っていたら、クロウズやスカベンジャー、コーポの連中に襲われて、即GAME OVERだ。
慎重に行動しないと。
まずは、自身を守る必要があるが・・・
どうやら、引き継いでいるのは資産だけではないようだ。
まずは、サイバーウェア。
キロシオプティクスMk.3に自己診断プログラム結果を映し出す。
ゲームの時から大差はない、と思う。
基幹システムにはネットウォッチ・ネットドライバーMK.5
メモリブーストや視覚野サポート、予備心臓や生体モニターなど、隠しエンド用に構成したサイバーウェア群だ。
まあ、隠しエンドを回った際にはレベルも上がっていたのもあり、"愛武器"でひたすら攻撃していたら余裕で勝ててしまったんだが。
他にも、強化足関節や弾道コプロセッサ、光学迷彩、アースプレート、皮膚下プレート・・・
・・・これ、アダム・スマッシャーに襲われても返り討ちできるのでは?
おっと。
いけないいけない。
いくらサイバーウェアが高級仕様でも、中身は平和ボケした日本人。
油断は禁物だ。
ゲームでの戦法が通じるとも限らない。
しっかりと武器を準備しておこう。
そういえば、一つだけ気がかりがある。
首を擡げるのも面倒な私は、右手を頭上に持ってくる。
女性らしい手だ。
弾道コプロセッサのラインは入っているが、全体的にほっそりとしている。
だが、自己診断プログラムの結果では、弾道コプロセッサと"ゴリラアーム"が装備されているとある。
どこからどうみても女性の手なんだけどな。
アニマルズが愛用している力強い手には見えない。
あとで、クッションでも殴ってみるか。
今は放っておこう。
手を下ろして、深く息を吐く。
こうして、ぼうっとしながら、自身の内面に意識を向けるとわかる。
続けざまに確認した資産やサイバーウェアだけではない。
引き継がれているのは他にもある。
知識だ。
ハック、体術、サイバーウェア、銃器の取り扱い、デバイスやハードウェア。
だから、自己診断プログラムもPCの操作もスムーズに行うことができる。
戦闘・・・は、今は一旦考えないように・・・
・・・そうだ、ゲーム内では、カンフーの知識をBDで取り込むことで、達人級の腕前になったキャラがいた。
あの技術があれば、難なく戦闘ができるのではないか。
そう、たしかあれは、クラウドの従業員で、ジュディの・・・
「・・っジュディ!!!!!!」
ぐだっとしていた状態から飛び起きる。
そうだ!!
ここが、"サイバーパンク2077"の世界なのは間違いない。
なぜ、こんな事になっているのかも。
なぜ、ゲームのキャラになっているのかも。
"元の私"、"俺"がどうなったのかも。
もう何もかもがわからない、が。
ここは、サイバーパンク2077の世界なのだ!!
ということは。
まさか、いるのか。
ジュディが。
この世界に。
「~~~~~~っ!!!!」
興奮が抑えられない。
憑依?転生?して、二度目の衝撃だ。
こうなった原因は分からないが。
これはもう、そういうことなのでは?
女性の体になったわけだし。
これは、もう、そういうことですよね。
・・フフ、フフフ
・・・ッハ!?
いけない、妄想に浸りすぎていた。
今は、自分の状況をしっかり認識しよう。
何を考えていたんだったか。
そう、戦闘だ。
つまるところ、技術と武器、あとは私次第といったところか。
技術は後で確認するとして。
未だに開けてない"あの部屋"を確認してみるか。
ソファから立ち上がり、ベッドの前にある自動ドアの前に立つ。
ゲームと違い、どうやらセキュリティスキャンがあるようだ。
赤い光が頭から爪先までをなぞる。
スキャンが終わると、扉が開く。
圧巻。
まさに圧巻の一言だ。
見渡す限り、武器、武器、武器。
ハンドガン、サブマシンガン、ショットガン、アサルトライフル・・・
スナイパーやテック武器まで。
全部確認するのはなかなか骨が折れそうだ。
ゲームでは、空っぽのショーケースと小さな箱だけがおいてあり、アクセスすることで保管庫の中の武器を取り出すことができていたが。
現実・・・?に、なったことで、少々、変わったのだろうか。
部屋自体の広さもそうだが、武器はしっかりとショーケースに入っている。
壁一面の武器と、箱に入ったグレネード。
広さは、大体12帖くらいだろうか。
そういえば、この部屋以外もデザインは変わらないが、広い気がする。
リアルになったことで、調整されている・・・?
まあ、今はいい。
それより、ショーケースの真ん中。
扉から入って正面に鎮座する武器セットが有る。
作業机の上に堂々と設置されているそれらは、ゲーム内で使用していた愛武器だ。
1つ目は、オーバーチュア ARCHANGEL
電気ショックを与える大口径のリボルバーだ。
デザインが好きで愛用していた。
2つ目は、カーネイジ・モックス
ジュディからもらうことができる、パワーショットガンだ。
デザインは、残念ながら通常のカーネイジと同じ仕様だ。
模様が消えてしまっている。
これが、カーネイジ・モックスではない可能性もあるが、そうでないことが、なんとなくわかるのだ。
おそらく修正力というやつか。
どうやら、この体はジュディとの関係性がないらしい。
はあ・・・・・・・・・・
今までで一番、大きなため息が出た気がする。
気を取り直して。
3つ目。
これは、いいのだろうか。
いや、わかる。強いのは間違いない。
なんせ、手に入れてからアップデートを繰り返し、最大限強化した。
ずっと愛用しており、スキル構成も合わせている。
高い物理ダメージと電気ダメージ、加えて、出血やヘッドショットでのクリティカル率向上効果もある。
なにより、キロシのスキャンが教えてくれている。
これは、武器だと。
そう、これは、特定のロマンス後に手に入るギャグ(ガチ)武器の"ジョン・マラコック卿"だ。
頭が痛くなって、手で擦る。
だって、見た目の面白さと、使いやすさ、なにより数少ない非殺傷武器でありながら、あの攻撃力。
強かったので、主にサイバーサイコ相手に愛用していたのだ。
ま、まあ、一見すると武器には見えないし。
逆に、普段持ち歩く分にはいいのかもしれない…
DPSは2500近いし。
うん、やはり使い慣れた?武器が一番。
ちゃんと持っておこう。
ショーケースから武器を取り出し、作業台に並べる。
カーネイジなどはかなり重いはずだが、あまり重量感はなかった。
こういった武器用のホルスターもしっかりある。
だが、タンクトップとショートパンツの今の格好では、持ち歩くには不便だな。
ついでに、着替えてしまおう。
ワードローブから引っ張り出し、可能な限り違和感なく重装備を身にまとう。
街の中であまりガチ装備すぎると警戒されるからね。
タンクトップはそのままに、ガスマスク、改良型アラミド繊維ベスト、アンチメックカーゴパンツ、多目的バイカーエクソジャック。
全体的に紫で統一し、肩周りは動かしやすいように何も身に着けていない。
タトゥーが映えていて良い。
本当は、安全面では肌の露出を抑えたほうがいいんだろうが。
打撃系の武器やハンドガン、グレネードの取り回しを考えてこうなった。
ホルスターを使用して、武器も身に着けていく。
ジョン様は、大型ナイフ用のホルスターを使って隠している。
鏡の前で確認するが、なかなか凄腕の傭兵に見える。
よし、チンピラ程度なら凄むだけで黙らせることができそうだ。
それに、腰には愛用していたグレネードを大量につけて隠している。
何度か、武器の収納と取り出しを繰り返して、違和感がないことを確認する。
スムーズに出し入れができるのはこの体のおかげだろう。
一先ず、大抵の荒事から逃げることくらいはできそうだ。
"ぐうぅぅぅぅ"
不意に、腹が鳴った。
そういえば、"目覚め"てから、飲み物程度しか口にしていない。
部屋には菓子や、保存食などもあるし、その気になれば、一月くらいはこもっていられそうだ。
だが。
着替えて、武器も装備して、正直、興奮している。
この熱が冷めないうちに、外に出てしまいたい。
窓から見る景色は大好きなゲームの世界なのだ。
甘くない世界なのはわかっている。
だが、こればっかりはもうどうしようもなかった。
よし、外に出て、腹ごしらえだ。
幸い、"体の経験・知識"が教えてくれる。
恐らく、マックスタックでもない限り、そうそう怪我はしない"はずだ"。
「よし!」パンッ
頬を張って気合を入れて、扉から外に飛び出した。
はい、というわけで、主装備確認でした。
次回からは多少会話パートを盛り込んでいきたいですね。
紹介した装備は、まんま自分が使っていた装備です。
まだ説明していないこともあるので、お楽しみに。