ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
「不本意だが感じるよ、本物の警察官の気迫を....だが警察官で居る限り、いずれまた己の願いに、心を支配される。」
「いいえ、そんなことにはなりません。力をどう使うかは、自分で決めます!行きますよ....」
「推しと直接やり合うのも、悪くねぇな....」
ホルスターから銃を抜き目の前の男へ構え、銃を向けられた男も中腰で挑発するかのように構える
「貴方の道楽に...付き合う気はありません!」
両者全く同じタイミングで弾を放つ
互いの足、腕、肩、胴に次々と直撃し真っ赤に染まっていく
そして激しい撃ち合いの末、先に体を真っ赤に染めた男が体勢を崩し膝をつく
「ハァ....中務キリノ、気を抜くんじゃ...ねぇぞ....警察官の人生は生半可なモンじゃない。その運命を、覚悟しろ....!」
「ひとつだけ礼を言わねばなりません。訓練にお付き合いいただき、ありがとうございます。これでまた一歩、人々を守れる立派な警察官に近づけた気がします!」
「ハハッハハハハ!ハァ、天晴れだ...中務キリノ!」
男は満足したような笑顔で天を仰ぎながら倒れる
".....えっと....何してるの?"
「何って訓練ですけど。激しい動きは無いし、弾もゴム弾なので安心して下さい。それにキリノの射撃技術も信じられないくらい上達しましたね。」
「不服ではありますが、先生からのアドバイスを実践してみました。」
(あえて人質を狙うって奴か...何を人質に判定したかは知らんが。)
"それは良かった、2人が着けてるそのパッドは何?"
「訓練用のもので、一定以上の衝撃を受けると青から赤に色が変わって被弾を示してくれるんです。」
"そう....あとさっきのお芝居みたいな掛け合いは?"
「訓練でもリアリティがあった方が良いかなと思いまして。」
「思いの外楽しいものでした。」
"(めちゃめちゃ見たことある芝居だけど)それよりもさ、今日セイアちゃんと会う日だよ?"
「「..........」」
"忘れてたんだね....もうすぐ約束の時間だよ。お医者さんから私の同伴を条件で外出許可貰ったから、着替えたら行こ。"
「すいません...キリノ、パッドだけ返してきてもらって良いか?」
「はい。気をつけてくださいね。」
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車椅子をおされながら一際豪勢な観音開きの前へやってくる
"私はこれからナギサちゃんに会わないといけないから、終わったら連絡して。"
「ありがとうございました。」
その場を後にする先生を見送り扉に手を掛ける
「失礼します。」
「待っていたよ。君が喜悠凪キョウタロウだね。話はナギサから聞いているよ。」
菓子やポットが置かれた大きなテーブルへと車椅子を進め、セイアと対面する
「すまないね、つい先日重体から目覚めたばかりだというのに。本来はこちらから伺うのが筋なんだが、私も行動を制限されている身なものでね。」
「目覚めて数十分で病室に押し入るよりはマシだよ。」
「ふふ、まぁ死にかけた者同士仲良くしようじゃないか。」
「縁起でもないこと言うなよ...」
「早速聞きたいんだが、君は何故、今回の行動を起こそうと思ったんだい?」
セイアの表情から笑顔が消え語気も鋭くなる
「私は予知夢という形で未来を認識できる。当然、今回の騒動も見えていたんだが、ある日唐突に夢の内容が変わったんだ。それまで見えていたのは君がナギサや風紀委員長に話したものと全く同じだった。」
「どう変わったかは大体想像つくけど....」
「大体合っていると思うよ。まるで先生達の肩代わりをする様に君だけが倒れた。こんな事を言ってしまうのもなんだが、前者のままであっても甚大な被害は出るが先生達は助かって事件も解決する。それは君も分かっていた事だろう。」
「....ああ。」
「その事を踏まえて今一度問う。何故、今回の行動を起こそうと思った?」
暫しの沈黙の末にようやく口を開く
「......強いて言えば、エゴなのかもな。」
「エゴ?警察故の正義感の類いなどではなく?」
「そんな高尚なものじゃないさ。ただ、自分の周りの人間には傷付いて欲しくないって我が儘だ。」
「そうか....今回は上手く事が運んだが、君の行動が新たに別の結果を、強いて言うなら最悪の結末を招いていたかもしれない。君はそれが怖くはなかったのか?」
「言われてみれば、確かに怖いな。でも、起こると分かってる悲劇を見て見ぬふりなんてしたくなかっただけだ。」
「.......なら君は、どんなに絶望的な未来であってとしても抗うと言うのかい?」
沈んだ顔で問いかけるセイアとは対照的に陽気に切り返す
「きっとそうするだろうな。どんなにハッキリと見えた未来でも、それは所詮ひとつの可能性だ。それにそんな質問をするって事は、セイアだって未来を変えたいと願ってるんじゃないのか?」
「...そうかもしれないね。だが、私は君ほど強くはなれない。怖くて怖くて仕方がないよ。誰にも話せないし、話したところで信じてもらえない。しかし君は抗う道を選んだ。」
「でも現実は、セイアの見た予知夢の通りになったと。....カッコつかねえなぁ...」
「いや、確かに未来は変わったよ。」
「え?予知夢と相違なく、俺は倒れたわけだろ?」
「実はあの夢には続きがあってね。そもそも夢の内容が変わる事自体が今まで無かった。」
「....それで?」
「夢の続きでは、君は対峙した4人にあのまま殺されていた。だが君は今確かに、私の目の前に生きて存在している。死ぬ未来を辿るはずだった人間がだ。ナギサから君と話したと聞いた時はまだ夢の中なんじゃないかと思ったよ。」
言葉を続けるセイアの面は段々と晴れやかとは言えずとも軽いものになっていく
「私は、これから君が歩む最悪の未来を見てしまっている。」
思わずたじろぐが、それでもセイアは言葉を続ける
「だが君ならきっと変えられると信じているよ。」
「....そうかい。」
言い切るセイアはどこか吹っ切れたように笑顔を浮かべる
「さぁ、辛気臭い話は終わりにしようか。最近ナギサが大量にロールケーキを作らせていてね、君も食べたまえ。」
「え、丸ごと一本!?....じゃあ、遠慮なく。.........美味いな。」
「口に合うようで何よりだよ。病院食に飽きたらまた来ると良い。」
「あと、今回の件以外にも、稀に君を予知夢で見る時があったね。」
「例えば何が見えたんだ?」
「1番印象的だったのが....メイド服姿で爆破される君と、絶叫しながら旧校舎を全力疾走する君だな。」
「ン"ッッッ!もっと....こう...他にあったろ!よりによって何でそんなモノ見んだよ!?」
「ハハハ、見えてしまったモノは仕方がないさ。」
それからなんて事ない世間話に花を咲かせ終わりの時間がやってくる
「そろそろ先生の方も用事を済ませてるはずだし、俺も退散するとしますよ。」
「今日は来てくれてありがとう。君のトリニティへの立ち入り制限はホストの権限で撤回しておくよ。今後は自由に出入りすると良い。」
「ありがとな。ケーキも美味しかったよ。」
キョウタロウが退室し1人となったセイアが少しずつ言葉を漏らす
「この世界は、君に心底優しくないな。命を賭してまで守った存在を自らの手で壊すことになるのかもしれないのだから。」
セイアは夢の内容を振り返る
ステンドグラスだけが輝く廃墟で自らが生んだ数多の骸の上を闊歩し、先生すらも手にかけ悍ましい笑みを浮かべるキョウタロウ
「どんなに恐ろしくても、目を逸らすことは許されない。私には彼の行く末を見届ける義務がある。」