ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
ハッピーアンラッキーバレンタイン
「うしっ!とりあえずは完成だな。」
まだ寒空に星が瞬く刻
1人の男が大量のチョコレートを前に達成感に満ちた顔を浮かべていた
「ヴァルキューレの人の少なさに感謝する日が来るとはな.....作り忘れとかないよな?」
男はチョコレートをひとつひとつ指差しながら確認する
南京錠の形をしたホワイトチョコ、子熊を象ったチョコ、バラのレリーフのイチゴチョコ、ログハウスの様に組み上げられたミルフィーユ
「スクワッドの分はあるな。.....次は....」
ビターチョコを土台とした肉球型のミルクチョコパイ、球型にしたトリュフチョコを3つ積み上げた雪だるまチョコ、そして構成する要素を全てチョコで仕上げた手のひらサイズのパフェ
他にもカップに盛られチョコスプレーで彩られたチョコや甘味のコーティングを施された輪切りオレンジ
全ての確認を終えて時計を見る
「思ったより早く作れたな...この寒さなら溶けねぇだろうし、ゆっくりラッピングするか。」
並べられたチョコをひとつずつカラフルな包みに入れていく
(本当は先生とか他のみんなにも上げられたら良かったけど、それやると立場がどうって局長がうるさいしなぁ。)
季節外れのサンタクロースよろしく、ラッピングされたチョコを大きな袋に詰め家を出る
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「みんな、好きなの取ってくれ。全員分あるから慌てんなよ。」
ヴァルキューレシラトリ支所では多くの生徒が白い袋に駆け寄っていた
「すっごい...これ中になんか入ってる....フルーツっぽい味だ。」
「私のはライチのソースが入ってた!」
「んん!こっちはブルーベリーソースだ。」
「オランジェットもバランスの良い味。」
皆はじける様な笑顔を絶やさず思い思いに味わう
「お前らにはこっちだ。」
他の生徒の様子を遠目で見ていたスクワッド一同の前にも袋が出される
「私たちにも用意してくれていたのか...」
「い、良いんですか....私も貰ってしまって、良いですか!?」
「遠慮はいらねぇよ。味わってくれたらそれで良い。」
「では、ありがたく...」
それぞれがチョコを開封する
「これは...南京錠か?」
「ああ、錠前の"
「「「………………」」」
「よし分かった。今のは流石につまらなかったな。記憶から消してくれ。......サオリ?なんで震えてんだ?」
「い、いや、フッ...気にしないでくれ.....フフッ....」
震えるサオリを放置し自身のチョコをまじまじと見つめる
「ミサキのは熊だね。私はバラかな?すごく上手に出来てるね。」
「私はログハウスですね。良いですねぇ...私もいつかこんな家に住んでみたいです。」
「お菓子の家なんて夢いっぱいだね。」
「アンタってこんな器用だっけ?」
「夜なべして作ったんだよ。どれも中々手強かったな....」
「なんか食べるながら勿体なく感じてきちゃった。」
「いや食べろよ。」
「じゃあ、ゆっくり楽しむね。」
「.....ありがとう。」
微笑むスクワッド一同から少し離れたデスクへと向かう
「局長、少々お時間拝借します。」
「そんな畏まってどうした?お前らしくないな。」
「大それたモンじゃ無いんですがこれを。」
「これは、肉球?」
「局長が使ってるマグを参考に作ったチョコパイですよ。」
「...よく出来てるな。」
受け取った菓子をそっと引き出しにしまう
「お気に召しませんでしたか...」
「...何を言ってるんだ、大事な部下からの贈り物だ。さっさと食べてしまっては勿体ないだろう。」
「......っ!嬉しいコト言ってくれますね。」
「分かったら仕事に戻れ......と言っても恐らくはまだ渡したい相手がいるんだろ?行ってこい。」
「お気遣い感謝します。」
「それが終わったら仕事に戻るんだぞ。」
両者とも自然に満足気な笑顔が浮かんでいた
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「あ、おはよ〜キョウタロウ〜。」
「おはようフブキ。」
両足を机に乗せ脱力したフブキに迎えられる
「この日にここに来たってことは“そういうコト„だよね。キリノならパトロールに出たよ。道はいつもと一緒。」
(なら戻るのを待つより、直接会った方がいいな。)
「話が早くて助かる、ありがとな。はいこれ。」
フブキが唐突に机へと置かれた箱を開く
「おっ!トリュフチョコが贅沢に3つも!?作るの大変だったんじゃないの?」
「手間はかかったが、その分美味しく出来たと思うぞ。」
「わざわざありがと〜。にしても可愛い雪だるまだねぇ、キリノの分はどんな風に作ったの?」
言葉を聞いた瞬間キョウタロウは自慢気にスマホのフォルダを開く
「見ろよコレ。器までチョコで作った手のひらサイズのミニチョコレートパフェ、自信作だ。」
「わざわざ写真まで撮っちゃって、こんなのよく作ったね。」
「....今更だけどこんな本格的に作って引かれないか.....?」
「なーに今更になって怖気付いてんのさぁ全く....ここまで来たら玉砕覚悟で突っ込むしかないよ。」
「そ、そうだよな....早速行ってくるぜ。」
「心の隅くらいで応援してるよー。」
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「本日も交通安全ご協力ありがとうございました!!」
「こちらこそ、いつもありがとね。」
「いえいえ!本官も街を歩く方々から元気を貰ってますから。」
「ハッハッハッ、相変わらず気分の良い警察さんだ。そうだコレ、今日はバレンタインだからチョコは無いけどアメちゃんあげる。」
「あっ!ありがとうございます!美味しくいただきますね!」
「それじゃあねー。」
スーツ姿の犬を見送り、業務の一端が終わる
(今日はバレンタイン....となると明日くらいにはフブキが割引されたドーナツを沢山の買ってきますね。)
これから起こる事を考えながらパトロールの道へ戻る
「....やはり朝の内は静かで平和ですね。こんな日はきっと良い事があるに違いありませんね。」
「おーい、キリノーー。」
「....!キョウタロウじゃないですか。おはようございます!!」
「おはようキリノ。」
「この時間に外に出てるなんて珍しいですね。もしや!何か事件ですか....!?」
「いや、事件じゃないんだ。」
「では、どうしました?」
「そ、そのだな...こ、これを渡したくてな。」
「....?この包み紙は...」
「......チョコ。」
「ほ、ホントですか!?あ、ありがとうございます!」
そうしてキリノが包みに手を伸ばした瞬間
パァンッ
銃声が響くと同時に2人の目の前で中のチョコごと、包みが弾け飛ぶ
「....は?」
「....え?」
キョウタロウは包みが弾ける寸前で視界に捉えていた弾丸の軌道を辿る
「なんか面白そうな事してんじゃーん。」
「でもそういうモノ程、邪魔したくなっちゃうんだよね〜。」
辿った先には不良生徒が数名
それを見るキョウタロウも顔から色が失せる
「覚悟は出来てんだろうなぁ?」
「クハハッ、良い顔してんねー。今度はテメェが喰らいな!」
ゆっくりと近づくキョウタロウの胴体へショットガンが撃ち込まれるが
「...あ、あれ?全然効いてないよ.....」
ほんの少し身体が仰反る程度で動きは止まらない
「ま、待て!来るなっ!.....ヴァアッ」
顔面を掴まれた不良の1人はそのままアスファルトに身体をめり込ませられダウンする
「こうなりたくなかったらとっとと失せろ。」
「これは.....や、やばい、本気でやばい。逃げるぞ....」
リーダー格であろう生徒の一声で皆反対方向へ走り去っていく
「おい待て!コイツも持って帰れ!」
「し、失礼しましたーー!!」
不良が去り、あたりは再び平穏を取り戻すが
「......俺なりに頑張って作ったのになぁ.....」
粉々なったチョコを見ながら膝を折る
「あ、あの....大丈夫、ですか?」
「どうだろ......」
絞り出す様な返答しかされず、何より周りからも同情の目が向けられる
(こ、ここは私が何とかしなくては!!)
「キョウタロウ!向こうのカフェで一緒にモーニングでも食べませんか!」
「....うん。」
意気消沈したキョウタロウの手を引きカフェへと入り、注文を済ませる
「ほらキョウタロウ、温かいココアでもいかがですか?」
「ありがとう。」
「その....私に渡そうとしていたのはどんなチョコだったんですか?」
「....こんなのだけど。」
キリノは向けられたスマホ画面を見る
「す、すごいですね....!途切れて見えませんが他にも沢山のチョコを作っていますね。」
「まぁ....シラトリ支所の全員に渡せる数は作った。」
「そうなんですか.....私は気持ちだけでもとても嬉しいですよ!」
「......そう思ってくれてるのか....」
「もちろんです!キョウタロウが手間暇かけて作ってくれたという事実だけで充分なんです!」
キョウタロウに少しだけ笑顔が戻る
そのタイミングで注文したモーニングセットがやってくる
「チョコレートのドーナツか。」
キリノは綺麗な黒のドーナツ、キョウタロウにはココナツチョコのドーナツ
「お互いの色に合わせてみました。」
「どうせなら半分こして両方楽しもうぜ。」
「それ良いですね!私もココナツの方も気になっていたんです。」
口調から気分が戻った事を察知したキリノも調子を上げモーニングを楽しむ
モーニングをたべおわり店から出ると先程までの快晴が嘘のような雨模様が広がっていた
「土砂降りですね...」
「一応折り畳み傘は持ってるけど使うか?」
コートの内から折り畳み傘を取り出す
「キョウタロウのコートって何でも入りますよね。ありがたく使わせて貰います。」
返事を聞き傘を渡そうとするが
「.....どうされましたか?」
「どうしたって、使うんだろ?」
「........え!?あ、あの使わせて貰うというのはですね....その、あ、相合傘のことでして.....」
「あ、相合傘!?本気か!?」
「....キョウタロウは嫌...ですか?」
「ち、違う、嫌なわけないだろ。」
「でしたら!早く帰りましょうよ。」
傘を広げ、ヴァルキューレへの道を歩く
「キョウタロウ、肩が濡れてませんか?」
「濡れてるが気にする事はねぇよ。別に何ともない。」
「私は気にしますよ!ほらもっと寄ってください、風邪をひいてしまいますよ?」
「大丈夫だって、この程度で風邪になるわけないだろ。」
「むむむぅぅ........えいやっ!」
「お、おい...」
傘を持つ腕を強引にキョウタロウの方へ跳ね返す
「さあ、私の肩はどんどん濡れていきますよ。」
「えーと.....つまりは.....」
「も、もっと寄らないと私が濡れて風邪をひいてしまいますよ?良いんですか....?」
「......そいつはいけねぇや。」
小さな傘のもと、肩を寄せ合い互いの体温が伝わる距離になる
「濡れてないか?」
「ええ、お陰さまで。」
「なら良かった。」
会話はそこで途切れるがキリノの笑顔は絶えることなく雨景色の中で輝く
(やっぱり今日は良い事がありました。)