ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
「…………」
「...キリノ、やっぱキョウタロウのこと心配?」
「は、はい.....」
キリノとフブキが、キョウタロウの居ない病室で暗くなり始めた曇天を眺めていた
「私も。大丈夫って分かってても不安になっちゃうよね。」
「....少し前に私と射撃訓練をした時がありました。その時のキョウタロウ、明らかに照準もブレていて、終わった時も激しい動きはしていないはずなのに息を切らし汗もかいていました。」
「それって、立ってるだけでも神経削られるくらいの痛みを感じてたかもってこと?」
「キョウタロウは芝居だと言ってましたが....やっぱり無理矢理にでも止めるべきだったのでしょうか........」
「もう、そんなウジウジしたってしょうがないよ。」
弱々しく体を縮めるキリノにフブキが喝を飛ばす
「で、ですけど.....」
「私たちに出来ることは、信じることとキョウタロウが帰って来た時にゆっくり休めるように治安を守ること。出来ることを目一杯やろうよ。」
「そ....そうですね!キョウタロウは私たちを信じたんです!疑ってしまってはキョウタロウが浮かばれません!」
自身を鼓舞するように両頬を叩き明るさを取り戻す
「その方がキリノらしいよ。よーし、なんかお腹空いてきちゃったし、ご飯いこ?」
「そうですね!」
2人がドアを勢いよく開けたかと思うと誰かとぶつかりキリノが尻餅をつく
「ちょっと大丈夫.....って、カンナ局長!?」
「すまない。怪我はないか?」
「はい....どうして局長がここに?」
「SRT特殊学園の諸々の手続きが一段落ついたんでな。入院初日以来、来れてなかったから見舞いに来たんだが、キョウタロウは居ないようだな。どうしたんだ?」
「え、あ、え〜と、ト、トイレ!トイレに行きました。少し時間がかかるかもしれません。」
「そうそう!最近、お腹が不調気味って言ってたし...」
「....そうかそうか.......それで、本当のところはどうなんだ?」
「「え...」」
しどろもどろになる2人を見据えるカンナの眼が鋭さを増す
「この部屋には不審な点がいくつもある。まずは不自然なほど整ったベッド、さっきまで使われていた状態ではない。次にベッド傍に置かれた片方だけのスリッパ、アイツはギプスを巻いていた。このスリッパはアイツの物で間違い無いな?」
「さ、さすが公安局長....」
「更に、病室からはランチャーとコートが無くなっている。トイレに行くだけの人間が持つものとは到底思えん。そして床の所々に落ちている白い屑。大方、ギプスを無理矢理引き裂いたんだろう。」
「「....おっしゃる通りです...」」
「全く....武器まで持ち出してどこへ行ったんだ?」
カンナの圧に負け2人がこれまでの経緯を話す
それを聞いたカンナは思わず眉間を押さえる
「あちゃ〜....こりゃダメだぁ。」
「すいません、キョウタロウ...」
「あのバカ...他校のイザコザに首を突っ込むならまだしも、公的な記録から抹消された自治区に殴り込むのは話が別だぞ。」
背もたれに深くもたれ難しげな表情を浮かべる
「連邦生徒会長の不在による各自地区の混乱、それに加えてSRTの件。今ヴァルキューレは大きく動けない状況だ。」
徐に立ち上がりドアへと向かうカンナが言葉を漏らす
「たが1人に背負わせるわけにはいかない。....もう外も暗くなったな。お前たちも帰って休め。」
そう短く言い残し病室を去っていく
「さっきの言葉、カンナ局長も何かしら手を貸してくれるのでしょうか...」
「さぁ。今頃キョウタロウはどうしてるのかな。案外もう解決してたりして。」
「きっと今回もうまく行きますよ!」
気を取り直して再びドアに近づくと、部屋へ駆け込んでくる人物とぶつかる
「「あでっ!」」
「また!?って今度は先生かぁ....」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「テメェらに喉ぶち抜かれたこと忘れてねぇからなぁ!!」
アリウス自治区ではユスティナの大群とスクワッド陣営で苛烈な攻防戦が繰り広げられていた
キョウタロウに向かってくるユスティナだけは銃を撃つことはなく、その腕を伸ばし捕らえる素振りを見せる
次々と押し寄せるユスティナ薙ぎ払い進もうとするが、どれだけ攻撃を仕掛けても淡い青と黒の様相が視界から消えることはなかった
「....おい、このユスティナってもしかしなくても無限湧きか?」
「複製ならいくらでも生み出せるのかもね。ほら、向こうからまた出てきた。」
会話の最中でさえ死角となった場所からユスティナが湧き出る
ユスティナからのダメージは少ないものの持久戦により身体の傷が徐々にぶり返し、スクワッドも押され気味になっていく
「埒が開かないな、こうなったら私が盾になって無理矢理突破する。」
「よせ、それより良い方法を思いついた。」
前に出ようとするサオリを制止しランチャーを連結させる
近づくユスティナを弾き飛ばしながらバッテリーの出力を最大まで引き上げる
「仕留め損ねたヤツのリカバリーは頼んだ。」
前方にレーザーを放ち、一直線に道を開ける
サイドに残ったユスティナを他の3人が仕留めつつ走り抜けようとする
「掴まれ、一気に進むぞ。」
サオリの肩に腕を回し、足を踏み出した瞬間に隣の壁が風船のように弾け飛び2人も巻き込まれてしまう
「あぁ....2人とも大丈夫ですか!?」
「なんとかな。クソっ....今度はなんだよ。」
煙の中から数人のアリウス生が出てくるが足元もおぼつかない様子で次々と倒れていく
「お!やーっと見つけたー☆大きな音がしたからもしかしたらって思ったけど。ビンゴだね!」
「....やはり追いかけてきたか。」
「会いたかったよ!サオリ!私だけ仲間はずれなんて酷いじゃん!仮にも一緒にクーデター起こした仲なのにさ。」
この場にそぐわない日常の一幕のように笑顔でサオリに歩み寄る
「おい、止まれよ。」
「感動の再会に水を差すなんて....」
首だけを動かしながら弓矢を構えるキョウタロウの方を向く
「ねえ、私も流石に怪我人を痛ぶる趣味はないけど、邪魔するつもりなら君でも容赦しないよ?」
「あ?邪魔してんのはお前だろうが。公務執行妨害で逮捕してやろうかぁ?このゴリラ!!!!
..........悪い。最後のは口が滑っただけだ、忘れてくれ。」
「.....そっか。」
笑顔のままのミカが途端に銃口をキョウタロウに向け発砲を始める
その銃撃を全て受け止め、吹き出る血も激痛も無視して金棒をミカへ振るう
すぐ近くに湧いたユスティナを盾代わりにするが、その防御ごと吹き飛ばし壁の奥へ押し戻す
「おいサオリ、ミカは俺が引き受ける。お前はアツコのところに急げ。」
「待てその傷では無茶だ。私も....
「残って戦うなんて抜かすなよ?お前は何のために命懸けでここまで来た?こうしてる間にも儀式は進んでるかもしれねえんだぞ。」
「そんなことは分かっている。だが、その身体で聖園ミカを相手にすればタダではすまないぞ。」
「そう思うなら全部終わらせてさっさと助けに来い。」
「......分かった、絶対に助けに戻る。」
ヒヨリとミサキをまとめ自治区を走り去っていく
「痛いな〜、もう!」
壁の奥からユスティナが投げつけられ、それを弾いた瞬間に切れた視界からミカが急接近し取っ組み合いとなる
「また同じ手に引っかかったね。君ってもしかしておバカさん?」
「お前だって挑発にまんまと引っかかりやがってよ。」
「ムカつく....でもね、君に言われてから視野を広く持つよう心掛けるようになったんだよ。」
そう言いながら左脚を渾身の力で蹴り抜く
折れたかと錯覚するほどの衝撃を受け思わず膝をつき上から抑え込まれてしまう
「弱点は狙ってかないとね。それでスクワッドはどこ?」
「知ってどうするよ?」
「私がされた事ぜーんぶお返しするの。特にサオリからは奪われた分だけ奪う。」
「檻から出てきたばかりなんだろ?やめとけよ。」
「"やめとけ"って、私は帰る場所も大事なものも全部奪われたのに、何でサオリは今まで通りに生きられるの?」
「まぁ、私も一人で勝手に暴れて台無しにしたくせに、いまさら被害者ヅラするの?って感じだけどさ、サオリだってそうならなきゃ不公平でしょ?」
抑え付けられ、低所に降りた脇腹にミカの蹴りが何度も襲いかかる
「君の手もどんどん冷たくなってるし、早く喋んないとホントに死んじゃうよ?。」
「ハハハ....そいつは勘弁だな。ゴリラに蹴り殺されるなんざ、死んでも死に切れねぇ...よ!」
全身にありったけよ力を込め一気に押し返す
「人をイラつかせる天才だね。」
「そうかっかすんなよ。ストレスは肌の大敵なんじゃないのか?」
距離を縮めようとする2人の間を弾丸が横切る
「聖園ミカを発見。ターゲットの男も一緒です。スクワッドは見当たりません。」
「スクワッドは放っておけばユスティナが勝手に排除するだろう。」
アリウス生が包囲網を展開する中、今までなりを潜めていたユスティナも再び湧き出る
「今日はよく囲まれる日だな。」
「随分と深傷を負っているようだが、抵抗しなければ身の安全を保証しよう。まあ、多勢に無勢の状況だ。賢い選択をするんだな。」
「そうかい.....」
キョウタロウが提案を持ちかけるアリウス生に近づいたと思えば、金棒の一撃で目の前の生徒が空へ打ち上げられる
「これが俺の答えだ。多対一なんて腐るほど経験してんだ、この程度で怖気付くわけねぇだろが!」
言葉と同時に集団の中心へ飛び込んでいく