ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
「…………き………れ。」
「…お……き……………くれ。」
「キョウタロウ、起きてくれ。」
セイアの呼びかけと瞼の上から感じる少しの光で目を覚ます
「......またこのパターン?」
目覚めてから真っ先に周囲を見渡す
しかし、目に映るのは薄暗い祭壇ではなく荘厳な山々が連なる絶景
「ようやく目を覚ましよったか。」
目の前の景色に見惚れていると聴いたことのない声に思わず振り向く
「.....明らかに未成年な奴がキセルなんて吸ってんじゃないよ。」
「そう堅い事を言うでない。」
「この空間はアンタが創ったものか?」
「想像に任せよう。ここに妾以外が足を踏み入れる事は初めてじゃが、一度に2人も来るとは思いもせんかった。」
「君が寝ている間に諸々の話は済ませてしまった。君に話さなければいけない事もあるが、今はここから出る事が先決だ。」
「出られんの!?マジ!?」
「本来ならここから出る事は不可能らしいんだが....
「其方らは一つの幸運と巡り会えた。この妾.....百鬼夜行の預言者、クズノハと
「めちゃくちゃ物騒な単語が聴こえたんだけど.....」
「抜け出すには己を構成する本質を1つ手放さねばならぬ。セイアの場合、『未来視』じゃろうな。」
「俺の場合は?」
「お主は必要ない。」
意外な返答に素っ頓狂な声をあげながら聞き返してしまう
「じゃあ俺出られないのか!?」
「話は最後まで聞くものじゃ。セイアの場合、本質を歪められてしまったが為に手放す必要がある。しかし、お主にそういったものは診られなかったが器の方は面白いことになっておった。」
(やばい....話が飲み込めない.....)
「このことに関しても後々君に話そうと思うが、簡単に言えば君は私と比べて容易くこの空間から出られるということだ。」
「妾がセイアを導く。お主はそれに相乗りしていけばよい。」
「そうなのか。セイアはそれで良いのか?」
「もちろんだよ。君のことはベアトリーチェに囚われた後ずっと見ていた。君はミカの暴走を受け止め助けようとしてくれた。一歩間違えれば自分が死んでいたかもしれないのに......。今度は私が動く番だ。」
「そうか....ありがとな。」
「戻ったらミカに伝えて欲しい。私がミカと話たがっていると。」
「任せてくれ。」
「さあクズノハ、頼む。」
「......では、此れにてさらばじゃ、セイア、坊主。現世に戻っても妾を探そうとするなよ?妾はもう、其処には居らぬからの。」
白んでいく視界の中でクズノハが最後に言葉をかける
セイアにかけられたであろう言葉は聞き取れなかったが自身にかけられた言葉はかろうじて聞き取ることができた
「戻った後、己の器を取り戻せるか、この先の困難を乗り越えられるかどうかもお主次第じゃ。心を強くもて。そしてなによりも友を、師を信じよ。」
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「貴女が、先生か。みんなを助けてくれて....ありがとう。」
"その声、さっき叫んでた子....だよね?合ってる?"
「あ、ああ。私は錠前サオリだ。」
"サオリの声、遠くからでも聴こえたよ。おかげでここまで来れた。後は任せて。"
ベアトリーチェへ向き直る先生が自身の端末へひっそりと話しかける
"(なんでキョウタロウから知らない人の声が聞こえるの?)"
【先生、あの生徒さんから普段とは全く違う波長の脳波が検出されました。】
「不可解な大人、私の敵対者.....」
"貴女がなにを企んでるか知らないけど、これ以上私の生徒を傷つけるつもりなら許さないよ。"
「.....あなたは、もしかしたら私を誤解しているのかもしれませんね。」
"誤解もなにも、変な儀式したり、キョウタロウの身体使ってミカたちを襲ってたよね?"
「この儀式はキヴォトス外の力を利用し、私がより高位の存在になるために用意されたのです。そうして高みに登り、この世界を救う。それこそ大人が到達すべき境地!」
"そんな事が誰かを犠牲にしたり殺して良い理由にはならない。"
「........理解してくれると思っていたのですが、やはり貴女は敵対者に他ならない。ここで消えなさい!」
先生へ一切の躊躇いも無くレーザーを放つ
「させません!!!」
命中する直前にミネが先生の方へシールドを投げ込む
投げられたシールドは地面に深々と突き刺さりレーザーと先生を遮る
「防いだから何ですか?直接手を下すまでです.......ッ!?」
一歩踏み出そうとするベアトリーチェの足下にイオリとヒナの弾丸が放たれる
「先生には指一本触れさせない。」
「また動こうとしたら次は当てるからな!」
「虚仮威しですね。貴女たちは絶対に撃たない。生徒を愛する先生がそのような事を指示するとは思えませんからね。」
ベアトリーチェの言葉に、皆一様に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてしまう
「先生、これは教訓です。ただの人間に世の全てを救うことなど出来はしないのです。」
【先生、あの生徒さんからもう一つ、別の脳波が確認されました。】
先生のシッテムの箱を持つ手が震える
「先生、貴女はここで滅ぼし儀式を完遂させます。心配することはありません。トリニティもゲヘナもすぐ後を追わせますよ....」
ベアトリーチェが自身の背後に拳を打ちつけたかと思うと拳を中心に空間がガラスのように砕ける
その中にベアトリーチェが入っていくと同時に割れ目がぼやけて消えていく
「先生、気をつけて!」
先生の前で構えていた生徒たちが一斉に前進した瞬間、先生の目の前の空間が先程のように砕ける
「皆さん!背後に!」
「先生にぃ....近づくなァァァ!!!」
ハスミの声で皆が振り向くが、その間に境界を作るようにレーザーが放たれ、飛びかかったツルギも吹き飛んでしまう
それは先生にも同様で挟み込むようにレーザーが放たれるが先生には傷ひとつ付かない
「何かバリアのようなものを張っていますね。戦場においても強気でいられるのはそれのお陰ですか。」
"それだけじゃないよ。私には頼れる生徒たちが付いてる。たまに責任に潰されそうになるけど、それでも私を信じてついて来てくれる。それにキョウタロウはもうすぐ戻ってくる。"
「信頼などタチの悪い病に等しいものに縋るなど、呆れて言葉を紡ぐ気にもなれません....」
ベアトリーチェが左腕を先生の首へ伸ばすが、その直後の光景に場の全員の動きが止まる
「な、なにが起こっているというのです......!?」
首へと伸ばされたベアトリーチェの左腕は、同じく自身の右腕に掴まれていた
『人の身体で随分好き放題やってくれたな!』
その言葉と共に、掴んだ左腕が本来とは逆の方向に強引に曲げられ折れてしまう
『だあぁ!イッテエエ!』
「馬鹿な、貴様は...あの時完全に意識は消し去ったはず....」
『地獄から舞い戻って来たぞ、クソババア。』
"良かった〜〜、今度こそダメかと思ったよ...."
『あんなにカッコつけといて何言ってるんですか?....て、それよりなんで此処に来れたんですか!?』
「それが....局長と先生に即日バレてしまいました!」
先生の背後からキリノの声もする
"それにカンナにも頼まれたの。キョウタロウは絶対無茶するから手を貸してやって欲しいって。"
『そっか、カンナ局長が.....』
「貴様ら...今の状況をわかっていて呑気に話しているのですか?」
『当たり前だろ。お前が動かせる腕を折った。そして俺の意識が邪魔をして眼球の操作も覚束ない。お前と俺は同時に話せないんだからちょっと....いや、しばらく黙ってろ。』
『おーいミカ、セイアは無事だ。会ってお前としっかり話がしたいらしい。』
「ほ、ホント!?....良かった...またセイアちゃんと話が出来るんだね....」
『良かったな。』
その後もベアトリーチェを強引に黙らせ会話を続ける
『こんな状況ですけど、何で俺の意識が戻るって分かったんですか?』
"とあるスーパーAIが教えてくれてね。"
『まぁ....詳しい事は後で聞きますよ。今はコイツを身体から追い出す方法を考えましょう。....って言っても策は考えてるんで先生は手を貸して下さい。』
"お安い御用だよ。それで何をしたらいい?"
『簡単ですよ、俺をひたすら撃ち続けて下さい。」
"OK!任せて!!!"
"「「「「「「「えェェェェ!!??」」」」」」」"
"ち、ちょっと待って!本気で言ってる!?"
「そうだぞ!?そんなことをしたら、今度こそ死んでしまうぞ!」
『安心しろサオリ。俺は死を覚悟しない、必ず勝てるって信じてる。』
ゆっくりと皆の間を歩いていく
『もうじきベアトリーチェに主導権を奪い返されてしばらく表には出て来れなくなります。』
「その隙に仕留めようってわけね....」
『その通り。ヒナと正実の委員長さん達ならやれるだろ。』
「.....お前の頑丈さは噂に聞いているが、本当に良いんだな?」
『ああ。もうすぐベアトリーチェが出てくる。最後にこんな面倒事を押し付けてしまってすいません。頼みます先生。』
その言葉の直後に頭を押さえ始める
「ぐ.....ぬぅぅ.....」
「出て来たわね....諸悪の根源。」
「あの男...最後の最後に不遜なことを.....」
"さあみんな!決着つけるよ!"
我先にとツルギが突撃したことを皮切りに全員が一斉に引き金を引く