ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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猛獣、パパになる

 

 

 

「さぁて鬼怒川カスミさんよ、なんか言う事あるよなぁ?」

 

 

後手に手錠を掛けられ目の前で正座をする生徒へ問いかける

 

「いやぁ〜本当に驚いたよ。素手でドリルを止められた上にそのままスクラップにされるなんて微塵も予想していなかった。猛獣の通り名は伊達では無いねぇ。」

 

「そうじゃねえだろ!早朝からこんな事しやがって。何食ったらショッピングモールのど真ん中ブチ抜こうって思考に至るんだよ!」

 

「そこに源泉が眠っていると私の勘が言っていたんだ。そうカッカしないでくれよ、お詫びに掘り起こした上質な土をプレゼントするから。」

 

 

「その土で埋めてやろうか?」

 

 

「──ッ!?」

 

 

カスミは思わず背筋をピンと張るが臆する事なく続ける

 

「し、しかしな?考えてもみろ。温泉を完備したショッピングモール、実に魅力的じゃあないか!」

 

「通路のど真ん中で風呂入りたい奴なんか居てたまるか。」

 

「そこまで無計画では無いよ。ちゃんと温泉を掘った上で整備もするつもりだったさ。」

 

「こう見えて建築も好きでね。つまり、長い目で見れば君はこのショッピングモールの利益を害しているとも言える。その責任、ちゃ〜んと取れるんだろうな?」

 

「現在進行形で利益を害してる奴に言われても説得力ゼロだ。もうじき風紀委員がお前を引き取りに来る、それまで大人しくしてろ。」

 

 

カスミの弁解に呆れていると、瓦礫に躓きながら忙しなくヒヨリが駆け寄る

 

「キョウタロウ君、被害状況が割れましたよ。負傷者は温泉開発部の人以外なし、中央ホールの陥没とドリルが突っ込んだ際の正面玄関の全損です。」

 

「確実に工事を入れなきゃなんないし、こりゃしばらく営業は出来ないな。」

 

「当分はお買い物も満足に出来ないんですね....どうせ私の人生なんてこんなのばっかりですよ。」

 

「帰りにケーキ買ってやるから元気出せって。」

 

「ほ、ホントですか!?5号のショコラケーキが良いです!因みにこの会話は録音してます。」

 

「....その行動力は見習わなきゃいけねぇ気さえするよ。......?キリノから....はい、もしもし。」

 

『そちらは喜悠凪キョウタロウさんでお間違いないでしょうか。』

 

 

携帯越しの声を聞いた瞬間に警戒心が一気に高まる

 

電話に出る直前、液晶に映った文字列は間違い無く“中務キリノ„だったが今話している相手から発せられる声はキリノとは似ても似つかない

 

「失礼ですが、どちら様で?」

 

『申し遅れました、私は山海経の梅花園で教官を務めております。春原シュンといいます。』

 

(確か...キリノがたまにパトロールしてる自治区だっけな)

「喜悠凪キョウタロウで合ってます。しかしながら何故キリノのケータイを貴女が使用しているのでしょうか。」

 

『それが....事情を知らない者からするとあまりに荒唐無稽でして、話すよりも見てもらって頂いた方が早いかと...』

 

「....わかりました。すぐにそちらへ向かいます。」

 

 

煮え切らないまま通話を切るが、思考の大半は心配の感情が占めていた

 

「キョウタロウ君ってあんな丁寧な言葉遣い出来たんですね。何かあったんですか?」

 

「お前はマジで余計なひと言が多いよな。まぁいい、たった今急用が入った。このバカの引き渡しはお前に任せる。」

 

「え!?まさか私に風紀委員の対応をしろって事ですか!?無理です!!それに!ケーキはどうなっちゃうんですか!?あー!待って下さい!!」

 

 

 

 

「録音データ使って抗議してやりますぅぅぅぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは好機....!逃げるぞメグ!」

 

 

 

 

 

 

「逃すと思う?」

 

「これは、これはヒナ委員長殿、ご無沙汰して....

 

「問答無用。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ここが梅花園か。」

 

 

辿り着いた真っピンクの大きな建物の目の前に、1人の女の子が落ち着かない様子で立っていた

 

「君が電話をくれた春原シュンかい?」

 

「あ、いえ、春原シュンは私の姉です。私はシュン姉さんの妹で同じく梅花園の教官のココナです。」

 

「そうか、俺はキョウタロウ。君の姉さんにここへ来るように言われたんだ。」

 

「貴方がシュン姉さんの言ってたお客さんですね。どうぞ中へ。」

 

 

ココナの先導で園の中へ通される

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーい!ほんもののケーサツさんだ!」

 

「そのわっか、わたししってる!こーあんきょくってとこのやつ!」

 

「すっごいびじんさんだね!どうやったらあたしもあなたみたいになれますか?」

 

「こらこら、みんな邪魔しちゃダメですよ。」

 

「みんな元気だな。」

 

 

園児たちに揉まれながらも奥へと進んでいくと子供をあやしている人物が見えてくるが

 

「シュン姉さん、連れてきました。」

 

(......は?....え?....疲れてんのかな....)

 

「お待ちしておりました。貴方がキョウタロウさんですね。」

 

「こんにちは!おにーさん!いえ、おねーさんですか?」

 

「......ちょっと失礼。」

 

 

シュンの隣に立つ園児をじっと見つめる

 

「....?わたしのおかおに、なにかついてますか?」

 

 

見た目こそ4,5才ほどの子供だが、頭には明け方の空を切り取ったように鮮やかなヘイローとコバルトブルーの瞳

 

「間違い無い....キリノだ...」

 

「はい!わたしはきりのです!」

 

「でも、なんでこうなっちまったんだ?変な物でも食べたか?」

 

「おかしはたくさんもらいました!」

 

「こうなってしまった原因はおおよそ検討が付いています。ですが、解決には時間がかかるかと。」

 

「そうか....」

 

「そこで提案なのですが、貴方がキリノちゃんのお世話をしてみてはいかがでしょうか?」

 

「俺が?」

 

「はい。子供は普段と違った環境にずっと居ると慣れるまで少なからずストレスを溜めてしまいます。ですから貴方のもとでお世話するのが最適かと。勿論、お忙しいのであれば梅花園で.....

 

「いえ構いません。寧ろさせて下さいお願いします。」

 

ネクタイが跳ね上がるほどの勢いで華麗なお辞儀を披露する

 

それを見たシュンも微笑みを浮かべる

 

「....わかりました。どうぞ、こちらお着替え一式です。」

 

 

シュンから大きめの紙袋を受け取る

 

「こんなに大量に....良いんですか?」

 

「いえいえ、元はと言えばこちら側の不手際でもありますので。困ったり、分からないことがあれば何でも聞いてくださいね。」

 

「ありがとうございます。キリノ、行こうか。」

 

「はーい!」

 

「じゃ、みんなにバイバイするか。」

 

「みなさんバイバイです!」

 

 

「「「「ばいば〜い」」」」

 

「「「またねー!」」」

 

 

2人は皆の姿が見えなくなるまで手を振り続け梅花園を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「キョウタロウ、わたし、おなかがペコペコです。」

 

 

繋いだ手をクイと引っ張られ立ち止まる

 

「そういや俺も朝から何も食べてないな。かと言って山海経の土地勘なんて全くねぇしなぁ....」

 

 

 

 

 

 

「そこの人!お腹が空いてるならウチに来ない?」

 

 

声の方を向くと気風の良さげで大きな尖り耳の女生徒がいた

 

「あ!ルミおねーさん!」

 

「お!キリノちゃんじゃん!さっきぶりだね!」

 

「キリノ、知り合いか?」

 

「はい。ルミおねーさんは、よくあそこにたべものをもってきてくれるらしいです。」

 

「その時にキリノちゃんと仲良くなったの。キリノちゃんのことはシュン教官から聞いてるよ。子供の世話は大変って聞くから沢山食べて精力つけないと!」

 

「わたしも、ルミおねーさんのりょーり、たべてみたいです!」

 

「ほら!キリノちゃんもこう言ってることだし。それにいくらかサービスもするからさ!」

 

 

2人に目をやると両者眩しいほどに瞳を煌めかせていた

 

「なら、行くか。」

 

「「やった!」」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はい!ご注文のエビフライ炒飯と特大餃子。タレはご自由にどうぞ。」

 

「このえびさん、わたしのうでくらいながいです....!そっちのギョーザはまくらにできちゃいそうですね。」

 

「ホントにでかいな、お互いよく噛んで食べような。」

 

「いただきます!」

 

「頂きます。」

 

 

キリノは炒飯に、キョウタロウは餃子にそれぞれ手をつける

 

「んん〜〜!!ほっぺがおちちゃいそうです!」

 

「うん!うまい!」

 

「.......!どうぞ!」

 

 

餃子に舌鼓を打っていると横からキリノがレンゲを差し出してくる

 

「え?嘘.....マジ?」

 

「はい!おいしいものはわけあえば、もっとおいしくなるとシュンおねーさんがいってました!」

 

「そそ、そうか....」

 

「はやくしないとさめちゃいます。あーん。」

 

「あ、あーん.....うん。すごい美味しいよ。じゃあ俺も。ほらあーん。」

 

 

小さく切り分けた餃子をキリノの口元へ運ぶと勢いよく飛びつくように口にする

 

「ふわふわです!すごくおいしいですね!」

 

 

そのままキリノはご満悦な様子で再び炒飯を食べ始める

 

(まさか...推しとの“あーん„がこんな形で実現するなんて...正直思考が追いつかなくて味もよく分からなかった。しかし“あーん„をして貰えたという事実があるだけで俺は充分だ。)

 

 

その後は料理の味も上手く感じられないまま時間は過ぎていった

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様です。」

 

「ごちそうさまでした!」

 

「お粗末さまでした。すごく良い食べっぷりだったよ。あの幸せそうな顔、料理人冥利に尽きるってものだよ。」

 

「こっちこそ、ご馳走になったよ。ありがとう。」

 

「キョウタロウ!またここにきたいです!」

 

「そうだな。また近いうちに来ような。」

 

「またのご来店お待ちしてます。」

 

 

2人は再び手を繋ぎながらD.U.への長い道のりを歩いていく

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ふぅ〜、次の記事の原稿はこんなところかな。あとは写真の選出と見出し.....

 

「マイ先輩、マイ先輩!大スクープですよ!」

 

「どうしたの?シノンちゃん。」

 

「それがヴァルキューレ公安局の喜悠凪キョウタロウ氏の事なんですけど.....

 

 

 

 

隠し子がいました!!!」

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