ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

49 / 57
公安局ダイアリー 2

 

「充電は完了だな。」

 

これより撮影を再開する。先程に引き続き錠前サオリでお送りしていくぞ。

 

ヘルメット団を捕らえた後は公安局長に引き渡し、いつも通りの業務に戻った。

 

「つっても、それももう終わったけどな。」

 

「なら姫がやっていた様に何か質問をすべきだろう。」

 

 

突如サオリの顔が真剣さを増す

 

Q.何故、あの時は私を庇ってくれたんだ?

 

「あの時?あの時って、どの時だよ。」

 

「調印式襲撃の日。私がミサキにお前ごと撃てと命令した時だ。」

 

「そんな事もあったな。」

 

「いくら重傷と言えど、お前の力なら私をあのまま肉盾にでも出来た筈だがお前はそれをしなかった。」

 

「あー....その事か。」

 

「あの時、私たちは本気で殺す気でいた。それなのに、お前は明らかに私を庇った。その事がずっと気になっていてな、この場を借りて知りたい。」

 

「...そうだな.....強いて言うなら、怖かったからだな。」

 

「怖かった....?なら尚の事、私を盾として使うべきじゃなかったのか?」

 

「あー違う違う、俺が怖かったのは、お前が死ぬかもしれないってのが怖かったんだよ。」

 

「私が?意味がわからん...」

 

「キヴォトスの人間がその程度で死なないなんて事は分かりきってる。でも、時々どうしても頭を過っちまうんだよ。“もし死んじまったらどうしよう„って。」

 

「それはお前にも言える事じゃないのか?」

 

「俺は良いんだよ。自分の身体は自分が1番よく分かってんだから。」

(前世の感覚が抜けないなんて、口が裂けても言えねぇよなぁ....)

 

 

 

 

「いや駄目だ。お前はもっと自分を大事にするべきだ!」

 

 

調印式の日ですら感じなかった圧が放たれる

 

「....わ、分かったよ...これからは善処する。」

 

「善処では駄目だ、誓ってくれ。」

 

 

今度は先ほどの威圧感が嘘かの如く祈る様に手を握り込まれる

 

「えぇ.....お前なんか面倒くせぇぞ?」

 

「.......分かった、誓う必要はない。その時が来たならば、私がお前の盾となろう。」

 

「うん、俺の話聴いてた?」

 

「安心してくれ。私自身もそこそこ頑強な方だとは自負している。そこらの銃撃程度で倒れるつもりは毛頭ない。」

 

「気持ちだけ、気持ちだけ受け取っとくよ....」

 

 

サオリはほんの少しだけ不服そうな表情を浮かべる

 

「そんな顔すんなよ...俺も頼るべき時はちゃんと頼るからさ。な?」

 

「そうか....所詮は我儘だ。これ以上私から言えることは何もない。」

 

 

サオリとの短い問答を終え改めて時計を見る

 

「そういや昼飯はまだだったな...何か食べに行こうぜ。金は出すからさ。」

 

「....嬉しい提案だが、そこまで世話になるわけには.....」

 

「サオリさん、サオリさん。」

 

「な、なんだ....?」

 

 

戸惑うサオリに隣で作業をしていた生徒が耳打ちをする

 

「....わ、わかった。そう言えば良いんだな....?」

「はい。これも交友の一環ですよ。」

 

「それでは、ゴチになります。」

 

(真剣な顔でそれ言うの面白いな。)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

2人で近場の喫茶店へと出向く

 

店内は賑わいながらもレトロな家具が穏やかな空気を醸し出す風情のある内装

 

店に入るとある2人と目が合う

 

「キョウタロウー!こっちですよ!」

 

「店員さん、あそこと相席でお願いします。」

 

「かしこまりました。では、あちらへどうぞ。」

 

 

店員の案内でテーブル席へ着く

 

「キリノは休憩で、フブキはサボりか?」

 

「まぁそんなトコ。」

 

「そこは否定しろよ。」

 

「これどうぞ。」

 

 

キリノから渡されたメニュー表には写真付きで気合の入りようが伺えるスイーツと挑戦的な価格設定

 

「あ、私はオールドファッションのセットで。」

 

「....ワッフルという物が気になるな。」

 

「目玉はザクロのパイとレモンタルトか....どっちも美味しそうで悩ましいな。」

 

「でしたら、2人でその2つを頼みましょうよ。」

 

「ホントか?ならキリノはどっちが良い?」

 

「タルトでお願いします。」

 

 

各々が注文を終えると、しばらくしてメニューがやってくる

 

「ではごゆっくり〜。」

 

 

 

「ホットコーヒーか....この店も理解ってるね〜。」

 

「これがワッフル...」

(可愛らしい見た目だ...)

 

「そんじゃ早速ひとくち....

 

「キ、キョ、キョウタロウ。」

 

「どうし....!!??!?!?!!!???」

 

 

声に促され視線を上げると、目の前にはフォークに刺さったタルトのひと片

 

「どど、どうぞ.....」

 

 

 

「ちょいちょい、これ取れ高だよ。」

「ほ、本当か!?」

 

 

 

「口を押さえてどうしたんですか?....ほ、ほら、どっちも食べたがってたじゃないですか...」

 

 

 

 

(やばい...ニヤニヤが止まらん.....)

 

 

 

 

Q.キョウタロウは何をしてるんだ?

 

A.「うーん、多分自我を抑えてるんじゃないかな?」

 

「スイーツとはいえ生物(なまもの)なんですから、早く食べないと味が落ちてしまいますよ?」

 

「そう、だな。」

 

 

緩む口を持ち直し、差し出されたフォークを受け入れる

 

ひとくち噛めばレモンの酸味とそれを優しく包むクリームとバターの風味が広がる

 

「んん!さすが目玉なだけあるな!」

 

「キョウタロウ、つ、次は...その、私に......」

 

 

キリノが軽く口を開けながら待機する

 

 

 

(ほんっっっと可愛いなぁ!ったくよぉお!!!その顔はもはや犯罪級だよ!!後でサオリにデータ貰わないとな。)

 

「キョウタロウ....?」

 

「あ、ああ!悪い悪い。ほら、あーん...」

 

「あー....ん。.....!!絶品ですねっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと撮れてる?」

 

「ああ。しっかり撮れている。」

 

「そのデータ後でコピーさせてね。」

 

 

 

 

「では私もタルトをひとくち。」

 

「あ、キリノ...キョウタロウも....」

 

「どうかしました?」

 

「なんだよフブキ。」

 

(自覚無しかぁ)

「いや、そのまま食べるだな〜って思っただけ。気にしないで。」

 

「....?何が言いた....

 

「キョウタロウ!!気にせず!気にせず頂きましょう!!!」

 

「お、おう...」

 

(キリノは寸前で気づいたみたい...)

 

(こ、こここ、これは....明らかに確実に十中八九、関節キス.....!?)

 

「んん....優しい甘さ.....」

 

 

3人が食べ進める中、キリノのフォークは一向に動かないままでいた

 

(なんでキョウタロウはこんなにも普通に味わってるんですか!?もう!!前回といい、どうして私ばかりがこんなに悶々とした思い出すを.....)

 

「.....キリノ?食べないのか?」

 

「え!?....あ、いえ!食べますよ!?」

 

「そんな早食いしなくても誰も盗らないだろ。」

 

「キリノ〜、このお店って追加でアイスも乗っけられるみたいだよ。」

 

「食べます!こうなったらヤケです!」

 

(なんでヤケ?...まあいいか。)

「サオリも好きな味選んだらどうだ。」

 

「な...私にも選ぶ権利があるというのか!?」

 

「あるから、俺の気が変わらないうちに頼んじまえ。」

 

「な、なら…………………………

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「じゃあ、俺たちは仕事の続きがあるから。またな。」

 

「失礼する。」

 

 

店から離れる2人の背中を見送る中、キリノの表情険しいものになる

 

「フブキ....」

 

「なに?」

 

「今日は走りながら帰りませんか?あとパトロールも走りながら....」

 

「え?....あー、流石のキリノもアイスクリーム4つの後は、そういう考えになるんだね。」

 

「と、とにかく!先ほどの分を消費しなければなりません!行きますよフブキ!!」

 

「え〜〜、走るのは4つも食べたキリノだけで良くない?」

 

 

フブキの言葉を無視してキリノは走り去っていく

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

もうすぐ長い1日が終わる。

 

ここからは戒野ミサキがやってくね。

 

ここはアイツの自宅。

 

殺風景で特に面白みもない部屋だけど、らしいと言えばらしいかも。

 

「ナチュラルに不法侵入すんじゃねぇ!」

 

「うるさい。普通に近所迷惑になること考えたら?」

 

「なんだテメェ警察呼ぶぞ....って俺もお前も今は警察か.....」

 

Q.アンタは帰ってから普段何するの?

 

A.「まぁ、飯食って風呂済ませて録画した番組を観るくらいだな。」

 

「...意外とまともな生活してるんだね。」

 

「お前が言うと言葉の重みが違うな。とりあえず、晩御飯作るけど何が食べたい?」

 

「なんで私の分まで作る気でいるの?」

 

「だって、今日泊まるつもりで来たんだろ?アツコからそう聞いてるけど。」

 

(姫.......)

 

 

心の中で悪態をつくミサキを他所に無防備な背中は黙々と調理を始める

 

夕食を終え、お風呂も済ませれば残りは自由時間となる

 

「俺はソファで寝るけど、お前は寝室で寝るか?鍵も掛けられるし、安心できると思うけど。」

 

「アンタがそうしろって言うなら、それに従うだけ。」

 

「お前は明日早かったよな。」

 

 

ミサキは首を縦に振り肯定を示す

 

「そんじゃ、もう寝な。」

 

「.....子供扱いしないで。」

 

 

そう言い残しミサキは寝室へと入る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(枕が変わると眠れないって話、本当なのかな.....)

 

 

真夜中と呼べる時間帯に唐突に目が覚める

 

(こうして独りで寝るのも久々かも。)

 

 

部屋中を見渡しても目に入るのはカーテンの隙間から差す月明かりのみ

 

耳に入るのも服と毛布が擦れる音だけ

 

(アイツはもう寝てるのかな.....)

 

 

リビングに出ればソファの上で規則的に胸元を動かすヘイローの消えた影がある

 

(ホント隙だらけ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眠れないのか?」

 

「....っ!」

 

 

不意の言葉と共に今では見慣れた六芒星のヘイローが現れる

 

無音に近い足音も気配にも気づかれたと言う事実が一瞬だけ鼓動を強く打たせた

 

「悪い。ビックリさせるつもりは無かったんだ。」

 

「なんで...アンタ確かに眠ってたはずでしょ?」

 

「昔のクセが抜けなくてな。」

 

「....クセ?」

 

「ブラックマーケットで過ごしてた頃は敵だらけでな。寝てる時に襲われるってのもザラだったんだ。」

 

「.....だから、結果として自衛できる様に感覚が鋭くなったと......アンタにもそれなりの苦労があったんだ。」

 

「お前らに比べたら大した事じゃないって、今は思うよ。」

 

「....殺そうとした相手を助けた上に同情までするなんて、アンタおかしいんじゃない?」

 

「子供ってのは教育次第で天使にも悪魔にもなる。お前らは悪魔を演じる事でしか自分と周りの奴を守る術を持たなかったってだけさ。」

 

「そんなこと言って.....私達が芯まで悪魔だったらとか、普通考えない?」

 

「もしそうだったとしても、拳骨かまして更生させるだけだ。」

 

 

半ばふざけた様な答えにミサキは溜息をつきながら呆れた顔を浮かべるが、ネガティブな感情は微塵も含まれていなかった

 

その後の会話が続く事はなく夜に相応しい静寂が訪れるが、虚空を見つめることに耐えかねたミサキがそれを破る

 

「アンタさ....」

 

「どうした?」

 

「いくら上からの指示でも、よく私たちを受け入れてくれたよね。」

 

「1番の被害者だったトリニティがそれで納得してんなら、俺から言うことはねぇよ。それに、お前らの行く宛が無かったならブラックマーケットで面倒見るつもりだったさ。」

 

「....牢屋に放り込むんじゃなかったの?」

 

「それはひとつの贖罪の形だ。今は大きくヴァルキューレの力になってくれてる。」

 

「....それが私たちに対するアンタの評価なんだね。」

 

「ああ。これからも頼りにしてるぜ。」

 

「...買い被りすぎ....」

 

 

そう呟きながらそっぽを向くミサキを他所に、ソファから立ち上がり体を伸ばす

 

「ちょっと早すぎる気もするけど、朝の準備でもするか。出来上がったら起こしてやるから、それまで少しでも眠ったらどうだ?」

 

「寝ないのは不寝番で慣れてるから、アンタを見てることにする。」

 

「...好きにしたら良い。お前、甘いの平気か?」

 

「平気。好き嫌いは特にないから。」

 

「あ、見てるだけだったら、オーブン予熱しててくれないか。あと、チョコも溶かしてくれ。」

 

(朝から重くない.....?)

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいこれ。」

 

「あ、ありがとうございますミサキさん。」

 

「映像が出来たのは良いけど、結局どうすれば良いんだろう.....」

 

「頼んできた子に渡せば後は勝手にやってくれるでしょ。」

 

「そうですね.....。それにしてもミサキさん....」

 

「なに?」

 

「何だかミサキさんから甘い香りがします....カスタードクリーム、ココアパウダー.....あっ、ほんのりとシナモンの香りもしますね。」

 

「....探知犬でも目指してる?」

 

「ええ!?そ、そんな訳無いじゃないですか!?」

 

「ミサキは朝ごはんに何食べたの?」

 

「...シフォンケーキって名前だったかな。初めて作るって言ってた割には中々美味しかった。」

 

「朝からスイーツなんて贅沢ですねぇ。私もキョウタロウ君の手料理いつか食べたいです。」

 

「私に言われても....」

 

「じゃあ今度はみんなでお泊まりしよっか。」

 

「それは流石に迷惑でしょ。」

 

「それなら、今日の晩ご飯だけでもキョウタロウ君の家でご馳走になろう。キリノも一緒に誘えば簡単にOKくれるよ。」

 

「それもそう...ですね。」

 

「そう言えば、キョウタロウ君はどうしたの?いつもなら誰より早く事務所にいるのに。」

 

「野暮用があるって、巡回終わってそのままトリニティに向かった。」

 

「相変わらずお忙しいんですね....」

 

「私たちも早く仕事にかかるよ。」

 

 

キョウタロウの使う机から手付かずの書類の束を取る

 

「ミサキさんが率先して仕事するなんて....」

 

「お泊まりの時になにかあった?」

 

「別に....頼られてるなら、少しぐらいは応えてみようかなって....思っただけ。ほら、駄弁ってる間にも仕事は溜まるんだから、さっさと片付けるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「シノンさーん!いますか〜?」

 

「お待ちしていましたよ、名も無き公安局員さん。」

 

「持ってきましたよ。コチラが喜悠凪キョウタロウの生態を撮り納めた映像です。」

 

 

薄暗い部屋でクロノス報道部のシノンと公安局の生徒が物品のやり取りをしていた

 

シノンは机に置かれたビデオカメラを満足気に天へ掲げる

 

「何事も臆せず、ダメ元で頼んで見るものですね。」

 

「結局こんな事を頼んで何が目的だったんですか?」

 

「目的は話した通りですよ。ごく一部の親しい方以外からは本当に印象が最悪なんですよ。それに以前に誤報をばら撒いてしまった事の贖罪もありますね。」

 

「あぁ、生活安全局の人が小さくなった時のヤツですね。まぁ、こっちは渡す物を渡しましたので。」

 

 

公安局の生徒が逆手で手招きをする

 

それに応える様にシノンが1枚のディスクを差し出す

 

「どうぞ。今までのカンナ公安局長のインタビュー映像.....そのノーカット無編集データです。」

 

ふふふ....ありがたくいただきます。.....ではバレるとヤバいんでここいらで。"今日私たちは会わなかった"という事にしておいて下さいね。」

 

「ご協力感謝します。帰りはお気をつけて。」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。