ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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猛獣、学びを得る

 

 

「やっほー☆久しぶりだね。今日も迷子になっちゃったの?校舎は反対方向だよ?案内したげよっか?」

 

 

目の前の生徒、聖園ミカがコロコロとした笑顔を浮かべる

 

「俺はガキか。」

 

「実際に私よりふたつも下でしょ?私から見ればガキみたいなものじゃーん♪」

 

(腹立つぅ.....こちとら精神的にはお前より生きてんだぞ)

「....とりあえず元気そうで何よりだ。あれから何か盗まれたりしてないか?」

 

「なになに?心配してくれたの?もう大袈裟なんだから。」

 

「前みたいなのは頻繁にあったんだろ?そりゃ心配のひとつもするさ。」

 

「え.....!?あ、ありがと...」

 

「それで最近は平和か?」

 

「....小物が盗まれたり捨てられたり、服もいくつか.....」

 

「....まぁ、言ってわかる様ならあんな事はしねぇよな....」

 

 

コートからメモ帳を出しペンを走らせる

 

そのメモ帳のページを破りミカは差し出す

 

「これは...?」

 

「俺の連絡先。盗まれた物によっては動けるかも知れねぇから、取られたり壊されたりしたら、しっかりと証拠は残しておけよ。」

 

「.....なんでそこまでしてくれるの?」

 

「至聖所の時に言ったろ?可能な限り力になるって。それにセイアとナギサからの頼みでもある。」

 

「2人が.....」

 

「学園のトップ2人がこんな木端にまで頭下げて頼んできたんだ。それくらい愛されてるんだよ、お前は。」

 

「........そっか。私も....希望を持っても良いのかな.......」

 

「持ちたいなら持ちゃいい。誰も咎めやしねぇよ。」

 

「.....ありがと。」

 

 

居心地の悪い様な表情を見せるが、どこか嬉しそうにも見られる

 

「.....サオリたちはどうしてるの?」

 

「元気にやってるよ。最初はやりづらそうにしてたけどアリウスで暮らしてたお陰か、全員思ったより図太くて助かってる。」

 

「そうなんだ..... あの時はホントにごめんね...何度も蹴ったりして.....たくさん血が出てたよね.....」

 

「もともと生傷だらけの身体だ、今更傷のひとつやふたつ増えたって大して変わんねぇから気にすんな。」

(にしてもベアトリーチェの奴....人の身体を作り直すんなら傷も消しとけよな。)

 

「特に問題がないならもう帰るよ。元気でな。」

 

「ね、ねぇ、もうちょっとお話とかしてかない?」

 

 

踵を返し正門へ向かう足をミカの言葉が止める

 

「.....時間に余裕はあるから良いけど、俺と話してて楽しいか?」

 

「私最近誰とも話す機会がなくって退屈なんだよ?それに出来る限り力になるって言ったのは君じゃん。」

 

「.......わーったよ。でも面白い話題なんて持ってねぇぞ。」

 

「いいのいいの。」

 

 

そう言いながらスキップ混じりで背後に回る

 

「前々から思ってたけど意外と綺麗な髪してるよね。」

「他人の髪なんていじくって楽しいのかよ。」

 

え〜、コレくらいの乙女心もわからないようじゃ、この先やってけないよ?君の周りは女の子だらけなんだから。」

 

「はいはい、肝に銘じておきますよ。」

 

 

嫌味ったらしい言葉も耳に入らないのか髪を触る手を止めない

 

「うーん...やっぱり手入れは甘いかなぁ。ちゃんとリンスとか使ってるの?」

 

「..........忘れなきゃな。」

 

「こまめにケアしないと、せっかくの綺麗な髪も台無しだよ?ヘアゴムも古くて切れかかってるし......あ、切れちゃった。」

 

「おいこら。」

 

「そんな怒ることないじゃん。私の余ってるやつあげるからさ。」

 

 

ジャージのポケットからゴムを取り出し、結うために髪を持ち上げた瞬間

 

「何これ....」

 

 

絞り出されたミカの声を聞いた直後にキョウタロウ自身も"やっちまった"と言わんばかりに天を仰ぐ

 

「その首の痕、どうしたの...」

 

 

髪の下には焦茶に変色し、抉れて沈んだ皮膚

 

「何年も前に大火事の時にできた火傷だよ。普段は首だけ化粧して隠してるんだが....」

(朝はずっとミサキが見てたしなぁ...)

 

「髪伸ばしてるのもコレを隠すため?」

 

「まあな。見てて良い気分でもないだろ?それに恥ずかしいし。」

 

「....私が君の立場ならきっと同じ事してる。はい結べた。」

 

「ありがとな。」

 

 

ミカが髪を結び終えると同時にポケットが震える

 

「....局長か。ちょっと待ってくれよ。.......もしもし?」

 

『キョウタロウ、大至急シラトリ区に戻ってきてくれ。』

 

「切羽詰まった様子ですけど、何があったんですか?」

 

『シラトリでゲヘナの美食研究会が暴れ回っている。動ける者を手配しているが止まる様子がない、応援を頼む。』

 

「了解しました。すぐに戻ります。」

 

「うわぁ〜大変そ.....」

 

「...いつもの事だな。もはや安心すら覚えるよ。」

 

「えぇ....」

 

「ま、事件発生って事で俺は帰る。何かあったら遠慮なく連絡してくれ。じゃあまたな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次があるんだ....」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「う〜ん.....どうしよ....」

 

 

屋根裏部屋へ繋がる扉の前でミカの小声を聞いた2人の足が止まる

 

「なにやらミカが唸っているね。」

 

「何があったのでしょうか....もしやイジメがエスカレートして部屋で何か問題が起きたのでしょうか.....ミカさん?失礼しますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ナギちゃんにセイアちゃん!?」

 

「休憩中に失礼するよ。君の呻き声が漏れていてね、何事かと様子を見に来たのだが.....」

 

「ミカさん?スマホを片手にベッドに埋まって何をされていたのですか?」

 

 

2人が部屋の中まで進んでくるとミカもベッドから跳ね上がる様に起き上がる

 

「ねえねえ!聞いてよ2人とも!!」

 

「どうしたんだい?」

 

「それがね、キョウタロウ君から連絡先貰ったんだけどね?相手は警察だし、はじめの挨拶とかどう送ったら良いのかな....ずっと考えても良い案が浮かんでこなくってさぁ....どうしたら良いかな.....」

 

「そんな事かい......彼はそんな堅いものよりも、柔らかな態度を好むよ。」

 

「...なんでセイアちゃんがそんな事知ってるワケ?」

 

「以前2人っきりで話をした時の話題になったんだよ。」

 

「今なんか変な強調入らなかった?」

 

「今はどうでも良い事じゃないか。それよりもナギサ。」

 

「は、はい....?」

 

「君はキョウタロウ君が初めてトリニティに訪れた時、大層な歓迎をしたらしいじゃないか。」

 

 

目線を向けられるが当の本人は心当たりがない様な表情になる

 

「ほら、戦車と正義実現委員会を総動員したやつのことだよナギちゃん。」

 

「.....あっ!あ、あの時は彼の情報が不確かな物ばかりだったのでどうしても関わらせる訳にはいかなかったのです!」

 

「まぁとにかく、ミカがあの殺伐とした雰囲気の中でフランクに話し掛けてくれたのが嬉しかったらしい。」

 

「へ、へぇー、そうなんだ.....ありがと!参考にしてみるね。」

 

 

2人を強引に部屋から押し出し鍵を閉めてしまう

 

 

 

 

 

 

「よくわかりませんが、大丈夫な様ですね。」

 

「トリニティに来ていたなら私たちの所にも顔を出したら良かっただろうに。」

 

「彼も多忙な中で時間を捻出してくれているんです。」

 

「色々と積もる話があったんだがな...」

 

「次回お越しの際にゆっくりと話せる時間を設けましょう。その時はより上質なケーキをご用意して。」

 

「君は何故そこまでして彼にケーキを食べさせようとするんだい?」

 

「彼はケーキの真の魅力を理解してくれています。それ以外に理由は必要ありません。」

 

「ナギサ......彼までロールケーキ漬けにするのはやめるんだぞ?」

 

「しませんよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ただいま〜。」

 

「お疲れさまです。昼過ぎまでトリニティに縛られた上にゲヘナ生の対処なんて大変でしたねぇ.....」

 

「いや、俺が来た頃には全員ゲヘナに帰って行ったらしい。」

 

「何故私たちがその対処に回されなかったんだ?やはり私たちは、まだ信頼足り得る人間ではないという事か......」

 

「違ぇよ。トリニティとゲヘナが絡む案件には極力関わらせないようにするってのが上の方針だ。」

 

「そうなのか......」

 

「過去の件を鑑みれば妥当だが気に病むことはねぇよ。お前らはできる範囲でできる事をこなせば良い。」

 

「そういう事ならこの書類、終わらせたから最終チェック.......」

 

 

言葉を言い切る前にミサキの口が止まる

 

「アンタ、なにそれ...」

 

「......?」

 

「それ。フリルの付いたヘアゴム。少なくとも朝はそんな可愛らしいの付けてなかったよね。」

 

「キョウタロウ君ってそんな可愛いゴム持ってたんだね。すごく意外。」

 

「これか...普段使ってるのが切れちまったんでな。ミカから余ってるって貰ったんだよ。」

 

「ふーん....聖園ミカからね......」

 

 

呟きながら机のハサミを持ち出す

 

それを見たキョウタロウの顔も青くなる

 

「お、おい冷静になれ。」

 

「安心して。私は至って冷静だから。」

 

「じゃあそのチョキチョキ鳴らすのやめてくれよ!」

 

「そんな長い髪してるから聖園ミカのヘアゴムなんて付ける羽目になるんだよ。」

 

「待て待て待て、お前がミカを敵視するのは理解出来るけどヘアゴムは関係ねぇだろ。な?」

 

「この際だから私と同じ髪型にしてみる?似合うと思うよ?」

 

「話を聞け!何が"この際"だよ!?人の髪切んのは資格がいるんだからな!?」

 

「それは営利目的の場合でしょ。この前教本で見た。」

 

「日々の研鑽をこんな場面で発揮すんじゃねえ!!」

 

 

 

 

「やめろミサキ!!」

 

 

 

ハサミを片手にジリジリと距離を詰めるミサキに喝が入る

 

「ね、姉さん....」

 

「教本を読んでいるならその先の文言も分かるだろう。対象者の同意なく髪を切った場合は、暴行罪が成立してしまう可能性がある。」

 

「.....確かに書いてたかも。」

 

 

バツの悪い様子でハサミを下ろす

 

しかしながら不幸はこれで終わりではなかった

 

 

ピロンッ

 

 

通知音を発するキョウタロウのスマホへ視線を送る

 

「は....?"聖園ミカ"....?」

 

(これはやば.....

 

「へーー、アンタは部下に仕事を押し付けて自分は呑気に他所の女子と連絡先の交換に行ってたんだ?」

 

「待ってくれ、これは違う。」

 

「何が違うの?現にこうして聖園ミカから連絡が来てるよ?」

 

「…………」

 

「弁明はなし?」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫ちゃん、サオリ姉さん、私これ知ってます。修羅場ってヤツですよ、この前ドラマで見ました。」

 

「追い詰められてるキョウタロウ君はレアかも。」

 

「ミサキが感情を表に見せる程になるなんて、キョウタロウには借りを作ってばかりだな.......」

 

 

 

 

 

 

「サオリ、そう思ってんならその借りを今返してくれ。」

 

「任せてくれ。」

 

 

サオリは軽く笑いながらミサキを連れ巡回へと出ていく

 

 

 

(これがミカの言ってた乙女心ってヤツなのか...?)

 

 

 

 

 

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