ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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過去編
追想


 

 

初めて会ったのは、私がまだ公安局の新入りだった時でしたね。

 

 

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「カンナ!カンナ!カンナーー!!」

 

 

それぞれが忙しなく動き回る事務所で当時の公安局局長の声が響き渡る

 

「何ですか全く....仕事ぐらい静かに出来ないんですか?」

 

「まぁまぁいーじゃないの〜。それより、少し時間貰うよ〜。」

 

 

カンナの返事も待たず、局長はとある区域の地図を机に広げる

 

「.....邪魔なのですが。」

 

「はいはい今日は新入りの意見は受け付けませ〜ん。」

 

はぁ.....」

 

 

こうなってしまっては止まらないと観念し、机の書類を退けスペースを広げる

 

「その地図はどうされたのですか。」

 

「こちら、ここ数年間ブラックマーケットで多発してる襲撃事件の被害範囲を割り出した地図になります。」

 

 

地図には小さなバツのマークがびっしりと書き込まれている

 

「その件ですか....私も中等部時代に小耳に挟みました。最近だとゲヘナ学園の情報部所属の生徒も一部被害にあったとの報告もありますね。」

 

「そうそう。そして1週間前はとうとうウチの生徒も被害に遭っちゃってね.....」

 

「その生徒は入院するまでに至りましたね。それで看過出来ない状況となり、局長自らが動いたと。」

 

「いやぁ〜苦労したよ?この為に仕事ほっぽり出して色んなトコ駆け回ったんだから。」

 

「私としては、局長としての本分も忘れないで頂きたいのですがね。」

 

「部下を守るのも局長の役目だとは思うんだけどなぁ。」

 

 

カンナは否定せず局長の次の言を待つ

 

「てなわけで、カンナには地図にマークした区域の調査に協力してもらいます。」

 

「何故私なのですか?他にも腕の立つ先輩方がいるではありませんか。」

 

「それがさー、みんな怖気付いて今1番頼れるのがカンナだけなんだよ〜。オネガイッ!」

 

「.....分かりました。」

 

 

そうしてカンナは地図に目線を落とす

 

地図に記されたマークは偶然なのか、ある形を形成していた

 

「局長、聞いて分かるとは思いませんが、マークの集合が円形になっているのは偶然でしょうか?」

 

「さっすが!良いトコに気づいたね。まるでマークされた区域の奥を守るようになってるんだよ。」

 

 

局長がバツマークを指でなぞる

 

「実際にマークの内側では同一犯とみられる襲撃事件は一切起きてない。それどころか他の犯罪も減少傾向にある。不自然な点だと思わない?」

 

「.....犯罪者、指名手配犯が根城にしているのでしょうか。」

 

「私たちが滅多に手出しできないブラックマーケットの抑止力になってくれてるのはありがたいけどねぇ...」

 

「単純に近づく者を無差別に攻撃している可能性もあります。すぐに調査に出ましょう。」

 

「カンナならそう言ってくれると思ってた。けどまずは襲われた子に色々聞いてみようか。何か新しい情報があるかもだし。」

 

 

早急に装備を整えた2人は事務所を出る

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

目が覚めると何故か路地裏にいた。

 

自分でも何故そんな場所で寝ていたのかは分からないが目覚めて真っ先に体にある違和感を覚えた。

 

(なんか....すごい小さくなってねぇか......)

 

 

訳もわからず辺りを見渡すと、ふと割れた鏡に映る自分が目に入る

 

(な、なんだ...!?これ......)

 

 

小学生ほどの見た目に自身の後頭部付近に浮かぶ六芒星なにか

 

(マジで何コレ....触っても感覚がないし...)

 

 

ひとまずは現状を把握するために路地裏から表へと出る

 

表へ出た直後に目に入ったのは街を歩くロボットや二足歩行が可能な犬猫、それもスーツや和服などの様々な衣服に身を包んでいる

 

(あのロボのビジュアル、それに頭に浮いてる物体.....

 

 

 

 

 

 

ブルーアーカイブのヤツまんまじゃねぇか...!)

 

 

あまりに見覚えのあるモノ達に思わず心が躍る

 

(で、でもなんでこんな事に....)

 

 

試しに自身の腕をつねれば、しっかりと痛みを感じる

 

「夢じゃないのか.....」

 

 

思わず声が漏れるほどに自身の置かれた状況は衝撃的すぎた

 

(....時系列的にはどの辺りなんだろ。もしかして、まだ見ぬ物語が始まったりすんのかなあ。)

 

 

ダァンッ

 

 

そんなワクワクも束の間、唐突に響く轟音とともに後頭部に強烈な衝撃が走る

 

振り向けば、黒灰色のセーラーを着た2人の女生徒が銃を構えていた

 

1人がもつ銃から一筋の煙が吐き出されるのを見て、自身が撃たれたのだと直感で気づく

 

しかし、それならば自身からは出血が確認できる筈であったが出血した感覚はない

 

「見ない顔だな、銃も持ってないみたいだし。」

 

「なんか面白そうじゃん。ちょっとツラ貸せよ。」

 

 

呆然としている間に再び路地裏へと引きずられる

 

「おいガキ、テメェは何モンだ?」

 

「アンタらこそ、俺をつれて何のつもり....

 

「誰が質問して良いっつった?」

 

 

不良が押し付ける銃と剣幕で思わず身が竦む

 

「おいおい、今どき銃向けられただけで怯むガキなんて珍しいじゃねぇか。ほれ、撃っちまうぞぉ〜?」

 

 

目の前で銃を遊ばせ、もう1人は明らかに遊び半分に銃身で軽く頬を叩き続け挑発する

 

(ダメだ....動けない......)

 

 

銃を持った人間に壁際まで追い詰められ逃げ場を失った状況では身体が言う事を聞かない

 

「あぁ?なんだその妙に鼻につく顔は。え?」

 

「そうイラつくなって。怖がっちゃうよ?」

 

「つっても既にスゲー震えてるぜコイツ。」

 

(コイツら...本気で撃つつもりはないのか?)

 

 

目の前で銃を遊ばせる2人だがその動作や声色から害を与えようとする意図は感じ取れなかった

 

「.....なんか...思ってたのと違うな。」

 

「そうだな。コイツ表情の変化少なすぎだろ。」

 

 

2人はガッカリした表情を浮かべる

 

「...なら俺はいくぞ。」

 

 

立ち上がり、2人を押し退けようとするが腕を掴まれる

 

「....気が済んだなら俺に用はないだろ...」

 

「あのさぁ、お前なに勘違いしてんの?」

 

 

先ほどの陽気な声とは打って変わり、低く真剣な物になる

 

「アタシらは表情の薄いアンタがつまんねえの。」

 

「.....なおさら俺に用はないだろ。」

 

「ハァ...分かってないなぁ〜」

 

 

直後にストックでの一撃が顎へ飛ぶ

 

瞬間的に手足から力が抜けその場に尻餅をつく

 

「綺麗に脳が揺れたみたいだな。」

 

「遊びってのはね?どんなにつまらなくても自分でどう楽しくするかが大事なの。」

 

 

ストックによる殴打に加え2人から肩への蹴りも貰う

 

「何しやが......

 

ダンッダンッダンッダンッダンッダンッ

 

「サンドバッグが口聞いてんじゃねぇよ。」

 

 

連続した銃声と共に始まるのは苛烈なまでの暴行

 

途端に降り注ぐのは拳や蹴りではなく、銃弾の雨

 

背中には絶え間ない激痛と衝撃が走る

 

「がぁっ.....!?」

 

「お?やっと顔が変わった!」

 

「だったら我慢対決だ!お前の意識とアタシらの弾、どっちが先になくなるかなぁ?」

 

 

銃弾の雨は激しさを増し、身体は限界を迎え始めたのか血が所々に滲む

 

少しでも体を動かせば、その箇所に向けマガジンが空になるまで撃ち込まれる

 

不良の笑い声が止まる頃には地面を埋め尽くすほどの空薬莢が血溜まりの中に転がっていた

 

「あ?弾が無くなっちったよ。」

 

「でもコイツのヘイローは消えてねぇな。チッ...アタシらの負けか〜。」

 

 

霞む意識の中で2人分の足音が遠退く足音が聞こえるが、それと同時に近寄ってくる足音が地面を伝い聞こえる

 

 

 

 

 

 

 

「あの不良2人、酷いことしますね....」

 

「私たちの住処の近くで問題は起こしてほしくありませんね。とりあえずは運びましょう。」

 

「さ、流石に放っては置けませんもんね。」

 

 

2人は少年を担ぎ上げ路地裏の細い抜け道を通り奥へ奥へと消えていく

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「..........うんん...はあっ!?....いっつつ......」

 

「うわあ!?お、おはようございます.....」

 

 

目覚めて1番に視界に入ったのは自分と同じ年齢に見える2人の女の子

 

「あの、あまり動かないでくださいね。傷、それなりに深いですから。」

 

「あ、ああ。2人が手当してくれたのか?」

 

「応急処置程度のものですが、ないよりマシかと....」

 

「少し身体を上げますね。傷口を冷ませば悪化は防げますので。」

 

 

上体を起こされ地面と背中の間に氷嚢を置かれる

 

「時間が経てば楽になると思うので、それまでは安静にしてくださいね?」

 

「....ありがとう。」

 

「それにしても、ブラックマーケットに武器も持たずにやって来るなんて、アナタは何処の学校から来たんですか?」

 

「あ、いや、学校には、通ってない...はず.....」

 

「....なんだか煮え切らない答えですね。」

 

「で、でも訳アリなのは分かりましたよ。」

 

 

2人は苦笑いを浮かべ顔を合わせる

 

「動ける様になったら出ていくよ...こんな怪しい人間いても迷惑だろ。」

 

「そんなこと気にしなくて大丈夫ですよ。ここにはそういう人がいっぱい居ますから。」

 

「出ていくのは構いませんが、拳銃のひとつでも携帯した方が良いですよ?絶対に。」

 

「それと、服も替えを用意しましたのでどうぞ。」

 

 

そうして着替えと一丁の拳銃を差し出されるが手が出ることはない

 

「どうかしましたか?古い拳銃ですが使えない事はありませんよ。それに、こんな骨董品でも無いより良いと思います。」

 

「いやそうじゃなくて...俺、銃撃てないし、撃ったこともない.....ましてや持った事もない。」

 

「「え...!?」」

 

(だよなぁ....キヴォトスは幼稚園児や一般人が銃火器持ち歩いてる世界なんだもんな.....)

 

 

想像通りのリアクションが2人から帰ってくる

 

「....今までどうやって生きてきたんですか......?」

 

「射撃未経験ならともかく、持った事もないなんて.....」

 

「「はぁ.....」」

 

「....あ、これなら俺でも使えるかも。」

 

 

こめかみを押さえる2人を他所に、隅に放置されたスクラップの山から何かを引き抜く

 

「安静にと言ったじゃないですか....って、それは?」

 

「金棒のようですね。なんでそんな物が?」

 

「よく分からないけど、護身用ってんならコレじゃ駄目そうか?」

 

 

あれだけの銃撃を受けても死なない事が判明したためか、近接武器ひとつを持って安全地帯を離れようとしていた

 

「正直、現実的じゃありませんね。当てる前に蜂の巣にされますよ。」

 

「でも銃なんか扱えないしなぁ....」

 

「困りましたね....」

 

「まぁ、そこは自分で何とかするさ。」

 

「....わかりました。何か困った事があれば、いつでも戻って来て構いませんからね。」

 

「その時はお力添えしますので....どうかお元気で。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「地図だとこの辺りだね。被害が密集してる三箇所のウチの一箇所。」

 

「見たところ、異常は無さそうですね。」

 

「ま、ココが駄目でもマークに沿ってれば何か見つかるでしょ。」

 

 

2人は地図のマークを追いながらブラックマーケットを進んでいく

 

「被害者の供述によれば、相手は銃は使わずに何か棒状の凶器を用いて犯行に及んでいるという事でしたね。」

 

「所謂、バールのような物ってやつね。」

 

「我々も注意が必要で..........っ!?」

 

 

突如なにかを察知したカンナが走り始め、少し先の路地裏に入る

 

「ちょっとちょっと!どうしたのさ!?カンナセンサーに反応アリなの?」

 

「ふざけないで下さい。この先から強い鉄錆の匂いがしてるんです。」

 

 

一層暗くなった路地裏最奥に繋がる通路で2人の足が止まる

 

「お、雰囲気はあるね。」

 

「絶対に何かがある筈です....」

 

 

銃のロックを解除し構える

 

「そんじゃ、ココからは慎重に行こうか。」

 

 

ゴミ箱の影、建物同士の隙間、セピア色に褪せた窓の向こう側、死角となる箇所すべてに意識を巡らせ進行する中で“それ„は唐突に現れる

 

「局長、ライトはつけずに突き当たりを見て下さい。」

「ん〜どれどれ.....あ、なんかいるね。」

 

 

2人が目にしたのは曲がり角の突き当たりに黒い布を纏った小さな影

 

「恐らくは一連の襲撃の犯人でしょう。鉄錆の匂いの出処もあの者です。」

 

「少し動いてるけどヘイローは消えてる....寝てるのかな?」

 

 

局長が手錠を持ち足音を殺して近づく 

 

そして数メートルの距離まで近づいた瞬間

 

「おっとぉ!?」

 

 

六芒星のヘイローが現れ、局長に目掛けて凶器を振りかぶる

 

しかし、局長も攻撃を避けながら素早く反撃の態勢に入っていた

 

「あっぶなかったぁ...」

 

「止まれ、ヴァルキューレ公安局だ。お前には暴行並びに傷害の容疑がかかっている。大人しく同行して貰おうか。」

 

 

そこまでカンナが口にすれば当然相手からも返ってくる

 

「勘違いすんな。暴行じゃない、正当防衛だ。」

 

「ふざけた事を......襲撃の被害者は皆重傷を負っているんだ。お前の行為は正当防衛の域を逸脱している。」

 

「あぁ?なら何もせずに無抵抗にされてろってか!?冗談じゃねえ!!」

 

「何故そうなるんだ!」

 

「お前らは銃を向けられる恐怖を知らないからそんな事が言えるんだよ!」

 

 

業を煮やし、イラつきを隠そうとしない2人の間に公安局長が割って入る

 

「2人ともヒートアップしすぎだよ。」

 

「ですが.....

 

「そんな剣幕じゃ、あの子だって話したくても話せないでしょ。」

 

 

局長は銃を収め、カンナも銃を下ろす

 

「この通り、私たちは君に危害を加えるつもりはない。どうかゆっくり話す事はできない?」

 

 

2人を見据え、少年もようやく金棒を下ろす

 

「........話し合いが出来るなら、それに越した事は無いと俺も思う。」

 

「良かった。ココじゃなんだし、表の適当な喫茶店にでも行こうか。」

 

「ついていっても良いけど、その前に良いか?」

 

「お?早速心を開き始めたね。なんでも聞いてごらん。」

 

 

 

 

 

 

 

「さっきから一言も喋んないけど、お前らが引き連れて来た狐の面のやつは何者なんだ?」

 

 

 

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