ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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追想 2

 

 

あの謎の少年が去ってからブラックマーケット、特に私たちが住んでる場所の周りは幾分か静かになりました。

 

彼はここ数年の間、一度も私たちの所には戻ってきませんでしたが、彼がどう過ごしているかは"とある出来事"によってある程度推測できました。

 

おっと、どうやら今日もやって来たみたいですね。

 

 

 

「あの〜すいませーん....」

 

「どうされましたか?この場所へ繋がる抜け道は私とその他1人しか知らないはずですが。」

 

「私、不良に襲われそうになったところを男の子に助けられて....その子がここなら安全だよって教えてくれたんです。」

 

 

彼はこうして助けた方にこの場所を教えているみたいです。

 

身を整えれば出ていく方もいたり、そのまま空いている建物の部屋に住む方もいたりして、数年前は2人きりで閑散としていたこの場所も少し賑わって来ました。

 

 

「...なるほど、そうでしたか。私はトウカといいます。どうぞごゆっくりして下さい。それに貴女が望むなら此処に住んでもらっても構いませんからね。」

 

「え?....あ、ありがとうございます。」

 

「あ、また新しい方ですか?」

 

 

来訪者を迎えたところで、以前トウカと共に少年を助けた友人、セイラもやってくる

 

「はい。人が来たという事は、彼も腐らず元気にやってるみたいですね。」

 

「最近ではちょっとした噂にもなってますよ。不良に襲われそうになると、運が良ければ鬼が助けてくれるって。」

 

「“鬼„ですか...不思議ですが、しっくり来ますね。」

 

「....?そうですか?」

 

「彼のヘイローの形、覚えてますか?」

 

「確か....六芒星でしたよね。どうしてそんな事を?」

 

「六芒星や鬼と名の付くものは昔から魔除けや厄除けとして使われたとされる歴史があるんですよ。」

 

「なるほど....確かにあの子は色んな人を守ってくれてるみたいですし、ピッタリですね。金棒も持ってますし。」

 

銃も持たずにここを出た時は心配でしたが、取り越し苦労に終わってなによりです。

 

 

 

 

 

 

 

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2人がいた場所を抜けしばらく歩いていると再び不良に声をかけられた。

 

 

その不良が持っていたのはマシンガン

 

流石にあんな目に遭うのはもう勘弁だ。

 

 

金棒を握り締め構える

 

それを見た不良は銃を向け引き金に指を掛けるが、それよりも早く相手の脇腹へ金棒が入る

 

その一撃で不良は悶絶してしまう

 

人を殴るのはもちろん良い気分ではなかった。

それでも、これで襲われないという安堵感の前ではどうでも良かった。

 

それからは自衛のために危害を加える相手には容赦なく叩きのめし、2人が居た場所を中心に他の2箇所を日替わりで寝床として利用しながら、金に困れば社会的地位のある者の用心棒を請け負い衣食住を確保する

 

護衛を共にした傭兵の1人からは銃弾を浴びながら依頼をこなしている事を気がかりに思われたのか、特製の弓矢を譲り受ける事となった

 

最初は命中と同時に小さな爆発を起こす矢に驚き使用を躊躇っていたが、銃持ちを相手にする上で遠距離攻撃の恩恵は大きく、自衛でも仕事でも金棒と共にその力を存分に発揮してくれた

 

そのせいなのか、闇討ちを試みる輩が多く、眠っている時であろうと僅かな気配で目が覚める様になり疲労も思うように回復しなくなってしまう

 

そんな生活が何年も続けば次第に心は荒んでいき、暴力的な面が自覚できる程顕著になっていく

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

日々を生き抜く上で疲労も限界に達しても、警戒は常に怠らず金棒抱えたまま意識を落としてしまう日が続く

 

 

 

 

 

 

 

(.....誰か、が...来る.......!)

 

 

そしていつもの様に意識を手放し眠りについてすぐ、謎の気配を察知し咄嗟に金棒を振る

 

「おっとぉ!?」

 

 

金棒を振った先にいたのは2人の人間

 

服装や腕章から然るべき組織の所属である事は想像に難くない

 

「あっぶなかったぁ...」

 

「止まれ、ヴァルキューレ公安局だ。お前には暴行並びに傷害の容疑がかかっている。大人しく同行して貰おうか。」

 

 

正直に言って警察の言葉には思い当たる節しかない

 

だがここで流れるまま認めればいくらブラックマーケットであろうと自身が不利な状況に陥ることは自明の理

 

「勘違いすんな。暴行じゃない、正当防衛だ。」

 

「ふざけた事を......襲撃の被害者は皆重傷を負っているんだ。お前の行為は正当防衛の域を逸脱している。」

 

「あぁ?なら何もせずに無抵抗にされてろってか!?冗談じゃねえ!!」

 

「何故そうなるんだ!」

 

「お前らは銃を向けられる恐怖を知らないからそんな事が言えるんだよ!」

 

「2人ともヒートアップしすぎだよ。」

 

 

物腰の柔らかそうな人物のひと声で場の空気が収まる

 

「ですが.....

 

「そんな剣幕じゃ、あの子だって話したくても話せないでしょ。」

 

 

金髪の人物とは対照的に銃を収めながら手のひらを見せる

 

「この通り、私たちは君に危害を加えるつもりはない。どうかゆっくり話す事はできない?」

 

 

無闇に射撃から入らずに会話の余地を感じさせる

 

「........話し合いが出来るなら、それに越した事は無いと俺も思う。」

 

「良かった。ココじゃなんだし、表の適当な喫茶店にでも行こうか。」

 

「ついていっても良いけど、その前に良いか?」

 

「お?早速心を開き始めたね。なんでも聞いてごらん。」

 

「さっきから一言も喋んないけど、お前らが引き連れて来た狐の面のやつは何者なんだ?」

 

「え?」

 

「何だと!?」

 

 

金髪の警察が振り返った瞬間に合わせて短刀の付いたライフルが向けられる

 

「この程度の尾行にも気づかないとは...ヴァルキューレも地に堕ちましたね。」

 

「マジかぁ...しくじっちゃった.......なぁ!」

 

局長が間髪入れず不意打ち気味に先ほど収めた銃を抜き、引き金を引く

 

その一連の動作は1秒にも満たないが狐面は簡単に躱す

 

「何故こんなところにコイツが....」

 

「あなた方がどうしてこんな場所に踏み入ったのか、興味本位で尾けてみれば、まさか鬼に出会えるとは....このワカモにとっては思いがけない幸運です。」

 

 

ワカモの言葉を意に介さず2人は射撃を行おうとするがそれよりも速く少年の方へ踏み込む

 

「ここでは邪魔が入りますね。」

 

「テメェ....離しやがれ!!」

 

 

金棒を振ろうとする腕を掴み上げ、警察2人の射撃を躱しながら自身よりひと回り小さい体をカエル棒のように振り回す

 

当然少年は地面に、外壁に、そこらのガラクタに激しく打ち付けられた衝撃に加え、積み重なって疲労により徐々に体の自由が効かなくなっていく

 

「おや?少々やりすぎましたかね...噂が確かならこの程度では何とも無いはずですが......」

 

「狐坂ワカモ、その子を離してもらおうか。」

 

「....それは聞けぬ要求ですね。」

 

「じゃあせめて教えてよ。その子を連れてどうするつもり?まさかとは思うけど、災厄の狐さんに()()()()趣味でもあったりする?」

 

(わたくし)は前々から気になっていたのです。このブラックマーケットで鬼と呼ばれるほどに名の通った人物がどのようなものなのか。」

 

 

仮面に遮られてはいるものの、少年を値踏みする様な眼差しを向けているのは一目瞭然

 

「まさかこのような子供だったとは驚きです。」

 

「その子が君の目的の鬼って確証はないでしょ?」

 

「いいえ身体的特徴、身に纏う雰囲気... 間違いありませんわ。」

 

(ホントに面倒くさくなってきたぁ....)

「でも、眼前の拉致現場を見逃すワケにはいかないね。」

 

 

少年を離そうとしないワカモに対し公安局長も本格的に戦闘態勢にはいる

 

「...よもやま話も程々にしておた方が良さそうですね。」

 

 

そう言い残し、ワカモは跳躍しながら器用にパイプを伝って逃げていく

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ふふふ.....恐らくこれでしょうね。貴方がここを中心に暴れ回る理由は。」

 

 

路地裏奥地、数名が暮らす場所を屋根から見下ろす

 

「狐野郎...アイツらに手ェ出そうモンなら承知しねぇぞ.....」

 

「それは貴方次第ですわ。」

 

 

ワカモは少年を勢いよく投げ込む

 

少年は激しく砂埃を巻き上げながらある2人の下へ転がる

 

「ト、トウカちゃん!空からキョウタロウ君が?!あ、ああ....それに、災厄の狐まで!?」

 

 

セイラの声が上がった瞬間、一帯は阿鼻叫喚に包まれ皆蜘蛛の子を散らすように逃げまわる

 

「ま、まずいですよ!?私たちも早く逃げましょう!!」

 

「それが良さそうですね。キョウタロウさん、立てますか?」

 

「逃しませんわ。」

 

 

逃げの姿勢に入った3人を確実に捉えるべくワカモは引き金に指をかける

 

その動作に返すように金棒を向ける

 

「2人とも、他の奴らを避難させてくれ。狐野郎は俺が引き受ける。」

 

「ダメです危険すぎます。一緒に逃げましょう。」

 

「逃げた所で追い付かれて終わりだ。それに、今こそ助けてもらった借りを返す時なんだろうな。」

 

「....わかりました。どうか無茶はなさらず。」

 

 

トウカは苦い表情を浮かべつつもワカモとキョウタロウのを残し抜け道への誘導を始める

 

「差し向かいの勝負とは勇敢ですこと。しかし、勇気と無謀を履き違えてはいけませんよ?」

 

「テメェこそ、慢心して足下掬われても知らねぇぞ。」

 

「ご安心を。そのような事は天地がひっくり返ってもあり得ませんわ。」

 

「例えそうだとしても仮面くらいは叩き壊してやるよ。」

 

「いいでしょう.......叩き潰して差し上げます!」

 

 

2人が動き出したのはほぼ同時

 

ワカモが放った弾丸を金棒で弾き落とし、一気に間合いへ踏み込む

 

懐へ潜り込み足下から金棒を突き上げる

 

「おっと、当たれば一溜まりもありませんね。」

 

 

ワカモはほんの少し軸をずらして容易に回避する

 

「まだだ...!」

 

 

身体をずらされた方向へ再び金棒を振り下ろす

 

「おやおや?大した事はありませんね。」

 

「がっ、腕の次は頭かよ!離せ....がぁっ!?

 

 

鷲掴みされた頭へ無慈悲にヘッドショットが直撃する

 

強烈な衝撃で思わず身悶え地面を転がる

 

「ふざけんなぁ!!」

 

 

揺れる頭に鞭を打ち素早く立て直し足元の拳銃を弾き飛ばす

 

当然躱されるが視線が逸れた隙にライフルを持つ手を狙い突きの攻撃を行う

 

「考えましたね。ですが....」

 

 

後退され簡単に躱される

 

それでもガムシャラに振り続けるが、位置の下がった所で金棒を踏みつけ行動を封じられる

 

そこから流れる様にスナイパーライフルとは思えない速さの射撃が数発返され全弾が命中する

 

「くだらないですねぇ。さぁて、次はどんな物を見せてくれますか?」

 

(クソ...どうすりゃいいんだよ.....!)

 

 

唯一の遠距離攻撃手段の弓は振り回された反動で落とし紛失、周囲に落ちた銃を使ったとしても、付け焼き刃が通用する相手ではない

 

ワカモを見据えながらも一向に対抗策は浮かばないまま、待ちくたびれたのかワカモが半歩踏み出す

 

「来ないのなら此方から....貫いて差し上げますわ。」

 

 

一瞬の内に狐の面が目と鼻の先まで迫り壁へと叩きつけられる

 

それと同時に背中への衝撃と右肩に強烈な灼熱感が襲う

 

ぐぅぁ....マジかよ...」

 

 

肩の灼熱感の正体はワカモのスナイパーライフルに取り付けられた短刀

 

短刀は身体と建物の壁を縫い付けるように貫通していた

 

「言ったでしょう。貫くと....。さぁ、金棒を持った腕も封じられた今、どうしますか?」

 

 

ワカモは笑い混じりにライフルを押し込む

 

「よく見とけ慢心狐、こうすんだよ。」

 

 

キョウタロウも笑い混じりにポケットからピンとレバーが抜かれたサーモバリック手榴弾を取り出す

 

「はっ.....!?」

 

 

それを見たワカモは途端に飛び退き、肩を貫いた短刀も抜ける

 

ははは、狐のクセに脱兎みてぇな動きだな。流石にサーモバリックは怖かったか?」

 

 

笑いながらキョウタロウが遊ばせる手榴弾が起爆される様子は一向にない

 

「それは.....」

 

「大体あってんぜ。こいつはガワだけの偽モンだよ。」

 

「...よくも愚弄してくれましたね.....」

 

「どうしたよ、一杯食わされただけでオカンムリか?」

 

「ええ、それもう.....たとえ泣き叫んで許しを乞おうとも許しません。」

 

 

ワカモから放たれるプレッシャーが膨らむ

 

「ですがせめて、良い声で泣いてくださいね。」

 

 

ノータイムの射撃を自由の利かない身体で辛うじて避けるがバランスを崩して倒れてしまう

 

「隙ありです。」

 

 

鋭い蹴りが腹部へと飛ぶ

 

本能的にその一撃を受けてはいけないと頭の中で警鐘が響くが、避けることは叶わず身体の中で嫌な音が響く

 

「今の感触、恐らくは肋骨が折れましたね。」

 

ぐっ......」

 

「骨が折れたというのに、中々我慢強い子ですねぇ。」

 

「テメェの為に...なんか、死んでも泣いてやるかよ......」

 

「威勢の良さだけは認めて良いかもしれませんね。」

 

 

啖呵を切ったはいいものの、小さな体躯では大した抵抗もままならず壁際まで蹴り飛ばされる

 

「ですが、これで終わりです。」

 

 

今までの連射とは対極に1発のみ放つ

 

すると空気が抜ける音と共に鼻を刺す独特の臭いが周囲に広がる

 

ワカモが狙ったのはキョウタロウではなく、すぐ背後のガスボンベ

 

弾と鉄による摩擦から火花が飛び、中身の液体ガスへと引火する

 

次の瞬間、周囲を純白に染めるほどの大爆発が巻き起こる

 

そしてワカモは自身の横を小さな体が爆風により通り過ぎて行くのを確認する

 

「...我ながら大人気なかったでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

「まだ....立ってる、ぞ....」

 

「ふふふ....これは驚倒ですね.....」

 

 

ワカモが振り向いた先には身体中に鉄片を生やしながらも金棒を杖代わりに立つキョウタロウの姿があった

 

「最後に1発くらいは貰えよ....!」

 

 

倒れながらも残された体力、気力の限りに金棒を投げる

 

「窮余の策ですか。」

 

 

しかし投げられた金棒に勢いはなく、容易くあしらわれワカモの後方へ打ち上げられる

 

「さて、この後はどうしま........!?」

 

 

背中から鋭く、それでいて喰らい付くつ様な威圧感が襲いかかる

 

思わず振り向くとそこには偶然か必然か、背後まで迫ったカンナが打ち上げられた金棒を掴み取っていた

 

うっ.....!」

 

 

振り向いた瞬間には既に金棒はワカモに到達しており、狐の面を砕く

 

(....直撃はしたが効果は薄いか...)

 

 

多少のけぞり後退するが、棒立ちになったワカモは砕け散った仮面と気絶したキョウタロウ、睨みつけるカンナをそれぞれ一瞥するが

 

「....興が冷めました。」

 

 

反撃に移る事はなく、つまらなそうに呟きカンナに背を向ける

 

「今回は痛み分けとしてあげましょう。」

 

「貴様、何を企んでいる。」

 

「企みも何も言葉の通りですわ。もとより童相手にほんの少しでも本気になった時点で、このワカモにとっては敗北も同然です。」

 

 

静かに歩き出すが足元に放たれた銃弾が進行を阻む

 

「待て、逃さんぞ。」

 

「追いたければどうぞ遠慮なく。まぁ...負傷者を放置するのがヴァルキューレのやり方ならですが。」

 

 

そこまで言葉を綴ればカンナの足が止まる

 

その隙をつきワカモは逃げ去って行く

 

一方でカンナも倒れたキョウタロウの側へ駆け寄る

 

(脈は浅いが残っている。裂傷に火傷、破片による深刻なダメージ、目には刺さっていないな....だが処置を急がなくては。)

 

「はぁ...はぁ.....キョウタロウさん!無事ですか!?」

 

「...君たちは?」

 

「わ、私たちは、その倒れてる子のお友達なんです。」

 

「災厄の狐が建物の上を飛んでくのを見て、それで.....キョウタロウさんは無事なんですか?」

 

 

戻ってきた2人が息を切らしながらもカンナに迫る

 

「落ち着いて聞いてくれ。はっきり言って重傷だ。急いで病院に連れて行かなければ、最悪は....。とにかくこの辺りに病院、もしくはそれ相応の治療を施せる場所はあるかい?」

 

「.....ここを出て30分ほどの場所に無免許医がやってる診療所があります。設備も古くて建物も小さいですが、それなりの応急処置はできるかと。」

 

「わかった。色々と言いたい事はあるが、今はそこへ急ごう。案内してくれ。」

 

 

 

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