ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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追想3

 

 

身体中に走る痛みと熱が生きている事を痛烈に感じさせる

 

同時に、肌に触れる絹の感触が自身を癒すように包み込んでいた

 

「起きたか。」

 

 

窓の方を向けば自身へチューブを伸ばす点滴と共に腕を組んだ強面の警察がベッド見下ろしていた

 

そして唐突に端末を取り出してどこかに連絡を入れる

 

「尾刃です。......ええ。...はい。たった今目覚めました。......ではお待ちしております。」

 

 

連絡を終え再び険しい表情を向ける

 

「気分はどうだ?」

 

「全身痛くて死にそうだ。.....アンタが病院まで運んだのか?」

 

「私だけじゃない。お前の友人を名乗る2人が協力してくれた。最初は小さな診療所に駆け込んだが、充分な処置が出来なくてな。結果的にD.U.の大病院に運ぶことになった。」

 

「....そうなのか....」

 

「早速だがひとつ質問させてくれ。お前は何者で、どこから来たんだ?」

 

 

その言葉に初めて会った時の気迫は感じられず、ただ純粋に疑問をぶつけているだけに感じられた

 

「色々な学園のデータを当たってはみたが、お前のような男子生徒が在籍していた記録は確認出来なかった。」

 

「その事だけど....自分でもよく分からないんだよ。」

 

「....つまりは記憶喪失の類と言うことか?」

(だとしても記録にも残らないとは妙だが...)

 

「まぁ...そう.....かも?」

(面倒くせぇし...そう言うことにしておくか....)

 

「分かった。とりあえず、何か思い出したら話してくれ。時間を取って悪かった、ゆっくり休め。」

 

「いや、せっかくだし病院を歩き回ってみた......イッテェ!?

 

「休めと言ったろ。運ばれた時は全身裂傷、肋骨骨折に加え火傷を負った状態だったんだ。」

 

「マジかよく生きてたな....俺スゲェ....」

 

「それはこっちの台詞だ、全く....」

 

 

患者服の胸元を捲ると赤く腫れ裂けた皮膚が黒い糸によって繋ぎ合わされてはいたが、触れれば簡単に開いてしまいそうな程頼り無かった

 

「抜糸は3週間後。そこから先もしばらくは痛むからな。」

 

 

傷を刺激しないようにそっと服を戻すと再びカンナからの質問が飛ぶ

 

「今回の事はどこまで覚えている?」

 

「えっと....狐面のヤツに振り回されて、戦って、最終的にアンタが後ろから走ってくるとこまでだな。あの狐面はどうなった?」

 

「逃げられたよ。今は消息すら掴めなくなってしまった。」

 

 

カンナは参ったように腕を組んだまま天を仰ぐ

 

しかし直後には姿勢を正し表情も険しいものに戻る

 

「お前が根城にしていたであろう区域は恐らくだが捜査が入ることになる。」

 

「そうかよ....あそこはそっとしておいてくれねぇか?」

 

「無理だ。犯罪やテロの温床になる可能性がある。」

 

「....あの場所にいる奴らは犯罪を犯すような連中じゃない。」

 

「なぜそう断言できる。そもそもお前は被疑者の立場にある人間だ。そんなヤツの言葉をそう易々と信じると思うか?」

 

「俺の事はどう思ったて構いやしない。でもアイツらは望んであの場所に居るわけじゃない。そうならざるを得なかった奴らだっているんだよ。」

 

 

弁明は響かないのか依然としてカンナの表情は固いまま

 

「じゃあさぁ...ヴァルキューレに入らない?」

 

 

2人の間に沈黙が流れる中、ドアからに顔だけを出しながら局長が会話に割って入る

 

「は?こんなチンピラ崩れを警察にしようだなんてイカれてんのか?」

 

「まぁまぁそんな事言わずにね。私はこれでもヴァルキューレの上の人たちに顔が利くの。」

 

 

悪態を軽く流し含みのある言い方をする

 

「......何が言いたい。」

 

「簡単さ。君はヴァルキューレに入ってその手腕を発揮してくれれば良いんだよ。その代わりに君が守ってた子達には特例の場合を除き一切の干渉をしない。」

 

「本気ですか局長!?」

 

 

カンナが思わず立ち上がり局長に詰め寄る

 

「まさか見逃すと言うんですか!?」

 

「カンナ、全てに白黒つけないでグレーな部分を残すってワリと大事なことだよ?彼の言う通り、全ての人が望んで黒に染まるワケじゃない。」

 

「で、ですが......」

 

「全ての人を救えるなら犯罪者なんて生まれない。どうしても零れ落ちちゃう、そんな人の為にも受け皿はきっと必要なんだよ。」

 

 

そこまで言うと今度はキョウタロウの方へ目を向ける

 

「君がどれだけの人を助けて来たのかはこの数週間で良く分かったよ。毎日色んな人がお見舞いに来てたからね。」

 

「ちょっと待て、俺そんな長い間意識が無かったの!?」

 

「重傷だったからね。」

 

(マジか.....)

 

「君が良ければだけど、今度はヴァルキューレでその力を振るってみない?」

 

 

まるで握手を求める様に手を差し出してくる

 

それに対する答えは───

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

数週間後、容態を完璧に回復させ退院の手続きを済ませて後に病院の出口へ向かう

 

その先のガラス戸に今では見慣れた立ち姿があった

 

「短めの入院生活お疲れ様〜。」

 

「公安局局長とその側近がお出迎えなんて豪勢だな。」

 

「側近ではなく尾刃カンナだ。いい加減覚えろ。」

 

「まあまあ〜これからは一緒にキヴォトスを守る仲間....いや、家族になるんだから仲良くいこーよ。ささ、乗って乗って。」

 

 

局長の案内で車の後部へ乗り込む

 

「ごめんねぇ〜今使えるのが護送車両しかなくって。シートとか固くない?」

 

「別に。むしろ快適なくらいだよ。」

 

 

局長の言う通り、シートは硬い部類に入るがアスファルトやコンクリートに比べれば遥かに座り心地の良い材質だった

 

「あんな劣悪な環境に身を置けば、その感性が育つのも納得だな。」

 

「住めば都ってやつだよ。」

 

「あ、そうだ!途中でお昼ご飯でも食べる?」

 

「局長?冗談も程々にしてください。護送車両が止まっていたら住民が不安を抱いてしまいます。」

 

 

助手席からのカンナの言葉もどこ吹く風のように受け流し結局は移動式屋台の前で止まる

 

「....こんな大量に買う必要あんのか?」

 

「局長、買いすぎです。」

 

「つれない部下だなぁ〜。」

 

 

局長が抱える紙袋にはホットドッグ、焼き鳥、焼きそばにその他粉物、名前ひとつで戦争の火種となる焼き菓子まで

 

「君の転入手続きはもう済ませてあるんだ。学校に着いたらそのまま授業になると思うから今のうちに沢山食べといて。」

 

「それじゃ遠慮なく。」

 

 

差し出されたプラ容器のゴムを外すと濃厚なソースと肉の香りが立ち込める

 

不細工に割れ扱いづらくなってしまった割り箸で一口目を多めに運ぶ

 

(病院食以外でちゃんと味のあるモンを食うのは何年ぶりだろ....)

 

「良い顔で食べるねぇ。やっぱり子供は笑顔が1番だ。」

 

 

恐らくミラー越しに見ていたであろう局長の言葉で自身の口元が弛んでいるのを自覚する

 

「人の顔見てねぇでちゃんと安全運転しろよ。」

 

「君だって後部座席だからって油断しないで、しっかりシートベルト締めなよ。」

 

 

そう言いながらも法定速度を少し下回る程度の速度で護送車を走らせ、世間話という名の局長の質問攻めに付き合いながらヴァルキューレ警察学校へ向かう

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「本日は我が校に転入生が加わることになりました。」

 

 

教壇に立つ教官の言葉に皆頭上にハテナを浮かべる

 

「なんでこんな時期にって顔してるけど、何やら事情があるらしい。とりあえず入って。」

 

 

ドアがゆっくりと開き少年が教官の隣に立つ

 

「今日からヴァルキューレ警察学校に通うことになりました、喜悠凪キョウタロウっていいます。よろしくお願いします。」

 

 

最後に皆の方へ一礼をする

 

「前情報ではかなり凶暴な子だった話だったけど....」

 

 

教官が繊細さゼロの疑問を小声でぶつけてくる

 

「流石に集団の場では弁えるに決まってんだろ。」

 

「あらそうなの?それじゃあ、とりあえず好きな所に座ってちょうだい。授業始めるよ。」

 

 

学校に向かう途中で聞かされていたように、教室の後ろ側には薄く埃を被ったまま放置された机が生徒の少なさを物語っている

 

ひとまず教官から授業で使う教本一式を受け取り後ろの席へ着く

 

「どうも!これからよろしくお願いしますね!」

 

 

席に着くと隣の生徒から明朗快活な印象を覚えさせる挨拶を受け思わず顔が向く

 

「えっ....!?」

 

「はっ、はい?....私の顔になにか付いてますか?」

 

 

隣で目を丸くしあっけらかんとする生徒を目にした瞬間、忘れかけていた思い出が洪水の様に溢れ出す

 

先端に近づくにつれて透き通る空色へと変化する三つ編みが2つ

 

「あっ、名前を言ってませんでしたね。私は中務キリノです!」

 

「そこ!授業中なんだから静かに!」

 

「す、すいません...」

 

 

そしてその透明感を際立たせる鮮やかな白髪と教官に叱咤されながらコロコロと忙しく変わる表情

 

「早速で申し訳ないのですけど、6行目の意味を教えて頂けないでしょうか。」

 

 

教本の文章をなぞる細く華奢な指

 

「それなら教官に質問したら?」

 

 

小声で問いかけるキリノへ隣に座る生徒が言をはく

 

「フブキ、教官の講義を遮るわけにはいきませんし....」

 

「教官は分からない私たちの為に講義してるんだから、質問あるんならジャンジャンしないと損だよ?」

 

「そうですよ中務さん。分からないまま放置されても後から自分の首を絞めるだけですから、皆さんも分からなければ遠慮なく質問して下さいね。」

 

 

教官の言葉を皮切りに教室中から質問が飛び交う

 

「皆さん、質問はひとつずつですよ。」

 

「これでは質問できるのは当分後になってしまいますね。」

 

「だ、だったら分かる範囲で教えようか?」

 

「ホントですか!?ありがとうございますキョウタロウ!」

 

(!?!?!?....推しが名前を呼んでくれた....!!)

 

 

キリノが机を少し寄せ、教本を間に入れる

 

(近っ!?!?)

 

「ん?なんだか美味しそうな匂いがしますね。」

 

 

キリノの顔が更に近づく

 

「あ、く、来る途中に色々ご馳走になったんだよ。」

 

「良いですね!匂いだけでも美味しいのが伝わってきます。もし良ければ今度ご一緒してもよろしいですか?」

 

「い、良いよ。喜んで。」

 

「決まりですね!!」

 

「中務さん。」

 

「はい教官!どうされましたでしょうか!」

 

 

教官の呼びかけにキリノが椅子を跳ね飛ばすほど力強く立ち上がる

 

「もう喜悠凪さんと仲良くなったみたいですね。次の射撃訓練の際は案内をお願いしても良いかしら。」

 

「お任せください!」

 

 

右手でピシッと敬礼を行う

 

「射撃訓練か.....」

 

 

つま先から頭までピンと伸ばすキリノとは正反対に背中を曲げ疼くまる

 

「ん?どうしました?も、もしや体調不良ですか!?」

 

「あ、いや、ちょっと気が滅入ってな...」

 

 

授業は滞りなく進む中、次に行われる射撃訓練への不安が一気に押し寄せる

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「うぅぅ....全然当たりません......」

 

 

キリノは箱の中の弾薬を使い切る勢いで射撃訓練に臨む

 

台から溢れた空薬莢が足元を埋め尽くすがいずれも的を捉えることはなく、その内何発かは跳弾を起こし教官に命中する始末

 

「キリノは相変わらず下手だねぇ。」

 

「フブキはスコープ付きのライフルなんですから簡単そうで良いですよね!」

 

「そういじけんなって。俺よりはマシなんだから。」

 

 

キョウタロウもまた不貞腐れるキリノの隣で射撃訓練に当たっていたが

 

「そう言うキョウはさっきから一度も撃ってないけど銃に問題でもあるの?」

 

「問題があるのは、俺の方かな.....」

 

 

フブキが指摘するように訓練開始から今に至るまで、目標に向け何度も構えるが引き鉄を引けずにいた

 

「とりあえず撃ってみなよ。」

 

 

促されるままに銃を構えるも腕が震え照準が定まらず、リボルバー下げを台に戻す

 

「ダメだ.....撃とう撃とうって思っても、いざ銃を使うとなると体が思い通りに動かなくなっちまう。」

 

「その銃はそこまで重いのですか?」

 

「いやそういう問題じゃ無いと思うけど....」

 

「...怖いんだ。俺にとって銃は人の命を簡単に奪える物って認識だから、使うのを躊躇うっていうかさ....」

 

「なんか変わった悩みだね。」

 

「そういう事なら私が協力しましょう!」

 

 

キリノがキョウタロウの使うレーンまで侵入する

 

「お、おい、危ねぇって....」

 

「ほら、手が震えるなら私も支えます。構えて下さい。」

 

 

無理矢理グリップを握らされた手を更にキリノの両手が力強く包む

 

その姿勢になれば二者の距離は自然と急接近する

 

「ちょ、ちょっと....近すぎ.....」

 

「安心して、何も怖い物なんてありませんよ。ゆっくり深呼吸です。」

 

「わ、わかった。」

 

 

息を吐く毎に震える手も銃口と共に徐々に安定する

 

リアサイトとフロントサイトが的の中心に重なる瞬間に引き鉄を引く

 

発射された弾丸は真っ直ぐ的の中心を射抜く

 

はずだった─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あだぁっ!?」

 

 

的に向かうはずだった弾丸は物理法則を無視した軌道の跳弾を起こしキョウタロウの額ど真ん中を直撃した

 

「なぁんでそうなっちゃうかなぁ....」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 

フブキは呆れながら、キリノあたふたとしながら揺り起こす

 

「お、お願いします!目を開けてください!!」

 

「待って大丈夫だ!いきなり弾が目の前に来たからビビっただけだよ....」

 

 

命中した箇所をさすってみるが、出血は無く、大した傷にもなっていない

 

(やっぱり何ともない.....)

 

「でもこれで分かったんじゃない?銃は怖くないって。」

 

「ま、まぁそうだけどさぁ....」

 

「喜悠凪さんはやっぱり見学にした方が良さそうですね。」

 

 

残り時間を教官の提案に従い壁際で大人しくしていたが

 

(なぜキョウタロウは向こうでソワソワしているんでしょう....?やはり怖さは簡単に消えないのでしょうか...)

 

 

 

 

 

 

 

 

(....柔らかかったなぁ.......)

 

当の本人はキリノが隣に擦り寄ってきた際の感覚がこびりつき忘れられずにいた

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

生徒たちが去り夕陽だけが廊下を満たす中、ある2人の人物が邂逅する

 

「教官、お疲れ様です。」

 

「お疲れ様。...貴女は公安局の尾刃さんね。どうかしたの?」

 

「転入生の様子について伺いたく存じます。」

 

「まあ...概ね良好って感じかしら。クラスの子のほとんどはかなり無愛想って印象を持ってるみたいだけど、良い関係を築けてる子もいるわ。」

 

「喜悠凪と仲良くなれる生徒がいたと...」

 

「その通り。中務さんと合歓垣さん。他の子とは格段に仲が良いわよ。たとえ数人でも友達ができて良かったわ。」

 

「なるほど....お忙しい中ありがとうございます。明日からは私も喜悠凪の指導に入りますので。」

 

「貴方のほうが忙しそうだけど、ありがとう。」

 

「いえ、元は私たちがする筈だったのですから。」

 

 

短いやり取りを終え互いに反対方向へ歩いて行く

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「銃の整備の指導をしていく。まずは分解の仕方からだ。座れ。」

 

 

いかにもな見た目のシンプルなハンドガンが新聞紙を敷いた作業台に置かれる

 

「お前は今まで銃を使ってこなかったらしいが、警察になれば必然的に銃を持つことになる。」

 

「わかった。流石に知識はあった方が良いもんな。」

 

 

自身の不得手と向き合い自然と肩に力が入る

 

「まずは弾を抜く。」

 

 

トリガーの横を押しながらマガジンを抜きとる

 

「中にも残っている。スライドを引け。」

 

 

指示通りに引けば中から1発の弾が台へと転がる

 

「あのまま続ければ思わぬ暴発が起こす可能性がある。整備の時は要注意だ。次はトリガー付近のレバーを外せ。そうすればスライドが取れる。」

 

「.....おっ、取れた。もっと工具とか使うイメージだったけど案外手軽にできるんだな。」

 

「初歩的なことも知らないとは、お前はよく分からないヤツだな。本当に。」

 

 

カンナは呟きながらも指導を進める

 

「部品を全て分解したら、次は汚れを落とす。」

 

 

細かくバラした部品ひとつひとつ、内部の溝やスプリングまでブラシで磨き錆や煤を落としていく

 

そして布を噛ませたクリーナーロッドを銃身内部に通し汚れを拭き取り、磨き上げた部品を組み立て

 

「最後はスライドの感触に違和感がないかをチェックするのだが、そこは私がやろう。」

 

 

カンナが銃を手に取りスライドを数回動作させる

 

「.....どんな感じだ?」

 

「......よく出来ている。今日はここまでで良いだろう。」

 

 

安堵のため息を吐き肩の力が抜ける

 

「明日からは私も本格的にお前の指導に携わる事になる。厳しくいくからな。」

 

「お手柔らかにたのんます。」

 

「.......学校はどうだった?」

 

 

途端に柔らかな口調で問う

 

「急にお母さんみたいなこと言うじゃん....」

 

「何を馬鹿なことを。お前をヴァルキューレに入れたのは私たちだ。アフターケアは当然だろう。」

 

「.....まぁ射撃訓練と戦車の操縦以外はなんとかなりそうだよ。.....てか戦車の操縦ってなんだよ!?射撃はまだ理解できるけど戦車の使い方までは必要なくないか!?」

 

「フッ...甘いな。」

 

 

コーヒーを少し啜り口角をあげる

 

「違反者が戦車数台を引っ提げているなんて状況はザラにある。その場面に遭遇した時に戦車の可動域や駆動系を理解していれば対処に役立つ。」

 

「そういうモンなのかな...?」

 

「そういうものだ。何かと忙しい1日で疲れたろう?今日はもう帰れ。」

 

「陽も沈んだし、そうさせてもらうかな。」

 

 

足元に置いた鞄を拾い出口に向かうが

 

「アンタは帰らないのか?」

 

「私はまだ仕事が残っている。先に帰って構わない。」

 

(大変そうだけど、俺がいたって手伝える事は無いか。)

 

 

淡白な答えにこれ以上返す事はせず事務所を出ていく

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時計はもうすぐ丑三つ時を指す頃

 

風呂上がりに荷物整理を終えてようやく床につく

 

(2度目の学校生活、意外と楽しかったな....)

 

 

未だに冴える頭で1日を振り返る

 

学生と言えど警察を育てる機関である為、座学や基本的な体育に加え射撃訓練、近接戦闘(CQB)、逮捕術、盛大なクラッシュをかました戦車の操縦訓練など学生とはかけ離れた授業の数々

 

どれもは前世では到底体験し得ないものばかり

 

特にCQBにおいては射撃訓練でズタボロだったキリノが教官を倒せるほどの実力を持っていることが判明した時間でもあった

 

(力任せに殴り倒す俺と違って、みんな手際良かったな。)

 

 

しかし楽しい事ばかりでは無いのもまた事実

 

話しかける生徒は多かったが相手への信頼よりも警戒心が勝り反応を返すことは少なかった

 

(俺って意外に人見知りだったのかな...。そこは追々、無理矢理にでも矯正していこう。それと何より.....)

 

 

銃への恐怖心

 

キヴォトスで生きる上で最優先で解決しなければならない課題が頭を過ぎる

 

(本当にどうしたモンかな....)

 

 

銃を握るように手を構えてみる

 

手のひらにはリボルバーの重厚感が蘇り震え始めるが、それよりも鮮烈に思い出される布越しのキリノの肌の感触がリボルバーの感触を打ち消し震えが止まる

 

(.....推しの力ってすげぇな...キリノには感謝しねぇとなぁ......)

 

 

しかし、そんな事を本人の目の前で言えば不快感を与えることは確定事項のため、胸の内にそっとしまっておくことを決め瞼を下す

 

 







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