ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生   作:りっくらっくろっく

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一ヶ月も投稿せず申し訳ございません!!!!


追想 4 仮

 

 

ブラックマーケットを離れヴァルキューレ警察学校に入学してもうすぐ半年が経過しようとしていた今日この頃

 

男はいつものように公安局での業務に励んでいたが、当の本人にとってヴァルキューレでの日々ははっきり言って峻厳

 

講義と訓練に加え学校が終わればその足で公安局まで出向き、日が沈むまでそこでも指導を受け、休日も基本的に公安局での業務に取り組む

 

そしていずれも朝から晩までカンナをはじめとした公安局員の監視付きで行われる

 

 

 

 

 

「はぁ.....眠い........」

 

 

日頃の疲労が蓄積したのか、瞼に強烈な重さを感じる

 

「コーヒーを淹れた。少しは目が覚めるぞ。」

 

 

机に垂れた顔の前に湯気が立ったマグカップが置かれる

 

「.....ありがとうございます。......にがっ!?

 

 

カンナの言葉通りに1撃で目が覚めた

 

「激務とはいえ睡眠時間は充分に取れるようスケジューリングしているはずなんだがな.....」

 

 

カンナが疑問を漏らすと隣で事務処理をしていた公安局員がそっと耳打ちする

 

「その事なんですが...彼、夜中にこっそりトレーニングルーム使ってるみたいなんですよ。」

 

「私は使用申請を受理した覚えはないぞ。」

 

「受理してたのは局長です。それにこっそり見たんですけど、すっごい恨み言を呟きながら筋トレしてました。」

 

「そ、そうなのか....」

 

「でも身体つきは来た時に比べて健康的になってますよね。この前なんて戦車引っ張りながらグラウンドを端から端まで往復してましたし、フィジカルは恐らくヴァルキューレいちだと思います。」

 

「局員から深夜に戦車が動いていると苦情があったが、お前が原因か。」

 

「極力騒音が出ないよう静かにやってるし、グラウンドの整備だって欠かしてないんだから文句ないでしょう?それより、資料のチェックたのんます。」

 

「ああ......よく仕上がっている。仕事もそれなりに板についてきたな。」

 

 

カンナは制作された資料に目を通し微笑みを浮かべ、キョウタロウは引き続き机に積まれた書類を処理していく

 

「この書類に書いてる"展示会に際しての警護の概要"ってなんです?」

 

「それか....来週からショッピングモールで開催される宝石展示会の警備を警備局と合同でやる事になっていてな。それに関する通達だろう。」

 

「へぇ......ん?なんで俺の名前もあんだ?」

 

「それか...お前も展示会の警備に付いてもらうからだ。」

 

 

引き出しから開かれた状態の警察手帳を見せる

 

中にはK.S.P.Dの文字と自身の顔写真が載ったカードが差し込まれている

 

「上はお前の素質を充分だと判断している。この警察手帳はお前への評価の現だ。」

 

「たった半年で?ふざけてんのか?」

 

 

あまりの突拍子の無さから半年かけて矯正したかに思われた口調が戻ってしまう

 

「一定の戦闘能力を有している人材をみすみす手放したくは無いんだろうな。」

 

「別にするには構いませんが、ショッピングモールなんて行ったことねぇんだよなぁ。」

 

「嘘でしょっ!?」

 

 

カンナの隣に立つ局員が思わず声を荒げる

 

「でも...考えてみたら学校と事務所以外でキョウタロウ君を見かけたこと無いかも。....休みの日だって基本はこっちにいるし、すごくブラックなスケジュールで動いてたんだね......」

 

「まぁ、ちゃんと綿が詰まった布団とあったかいご飯の対価って考えれば不満は無いけど。」

 

「このままじゃ将来的に社畜コースまっしぐらじゃん。」

 

「勘違いすんな、俺がこうしてんのは恩があるからだ!」

 

「.....喜悠凪、今日は休んでモールにでも遊びに行ってこい。」

 

「本当ですか!?まだ書類大量に残ってるに?」

 

「心配するな、私の方で処理しておく。警備に当たる人間が施設の構造を把握していない方が問題だ。」

 

「おっ、では私も付き添い(監視係)として......

 

「お前はダメだ。」

 

「ぬふぁっ!」

 

「それと、もしもの為にこれくらいは携行しておけ。」

 

 

カンナから柄の白い警棒を投げ渡される

 

「ありがとうございます。」

 

 

財布などの最低限の荷物だけを持ち事務所を出ていく

 

 

 

 

 

「ホントに良かったんですか?これ、2人でやる事前提の仕事量ですよね?」

 

「いいんだ。激務に勤しんでいる中、たまには羽を伸ばして貰わなければな。」

 

「そうですか。そんじゃあ私もバリバリ手伝っちゃいますよぉ!」

 

「感謝する。」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

午前で仕事を切り上げ早速ショッピングモールへと訪れる

 

 

 

「"5.56mm弾400発 置き配実施中"....こっちはミニガンの展示か....すげぇなぁ。」

 

 

飲食店や雑貨店の合間に当然のように開かれたガンショップの数々

 

前世では生きている内に1、2回見るか見ないかレベルの店が日常に溶け込んでいる様が可笑しくもどこか収まりが良いようにも感じられる

 

「おや?お客様!こちらのミニガンに興味が....

 

「いえ結構です。」

 

「そ、そうですか....こちら本日発表の最新モデルになっておりまして.....

 

「結構です。」

 

「そう仰らずに!話だけでも!従来のミニガンはオーバーヒートによる銃身の破損が多く.....

 

「ミニガンってずっと撃ってると壊れんのか!?」

 

(食いついた!....でも)

「当たり前じゃないですか!常識ですよ!?」

 

「んな事言われても俺ミニガンなんて触った事ねぇし.....」

(キヴォトス(ここ)の常識だってまだ完璧じゃねぇんだよ)

 

「な、なるほど...話を戻しますと、銃身の熱が一定ラインを超えた場合に即座に連射を停止させる安全装置が搭載されているのです。」

 

「.....つまり?」

 

「熱膨張による破損のリスクを従来型に比べかなり落とす事に最高しているのです!」

 

「ふーん.....壊れないようになったんなら凄いな。」

(よく知らねぇけど)

 

「そうでしょうそうでしょう。こちらのミニガン、興味が湧いてきたんじゃありませんか?」

 

「あ、いや全く。」

 

「そ、そうでございますか....」

 

 

客引きを適当にあしらい散策を再開するが

 

(来てみたは良いものの、適当に見て回ったらもうやる事ねぇんだよなぁ。)

 

 

惰性で歩いていると、やがて店舗の入っていない空きテナントが目立つ様になる

 

(なんだか不気味だな....)

 

 

自身の背後に存在する活気に溢れたモールとは一転し、誰もいない空虚さが漂う

 

さながら夜に誰もいない学校を眺めているような感覚にも近しい

 

(.....?)

 

 

そんな最中(さなか)、視界の片隅に数人の怪しい人影を確認する

 

(なんだアイツら....?)

 

 

その人影は立ち入り禁止と示されたトラテープを裂きドアの先へ進む

 

(明らかに怪しい連中だな。先輩に連絡した方がい.......

 

 

異常を察知しポケットのスマホへ手を伸ばした直後、地響きと激しい揺れ、爆発音と叫び声が背後から響く

 

テナントから通路に出れば、吹き抜けからは黒煙が舞い上がり、床も壁ももはや原型を留めているのが奇跡と思えるほどボロボロになっている

 

加えて煙の匂いの中に靴墨に近しい匂いも察知できた事からモールが爆破されたのだと理解する

 

「……か……!……いま……か…」

 

 

そんな状況で空きテナントのすぐ隣から声が聞こえる

 

「おい!誰かいるのか!」

 

「こ、こっちです!」

 

 

テナントには焼け焦げた布切れが散らばっている事から服屋が入っていたことが伺え、その奥には自分とはそれほど歳の離れていないような少女が棚の下敷きになっていた

 

「おい!無事か!?すぐに出してやるからな。」

 

 

棚に乗った瓦礫をどかし棚本体も叩き壊す

 

「はぁ...はぁ.....ありがとうございます。」

 

「怪我は無いみたいだな。煙が来ないうちに離れるぞ。」

 

「ま、待ってください!この近くにお婆さんもいるかも知れません。」

 

「....本当か?」

 

「はい。杖を突きながらゆっくりこの辺りを歩いてたから逃げ遅れてるかも.....」

 

「わかった、そのばぁさんは必ず探し出す。お前は早く逃げろ。」

 

「いえ、わ、私も探します!」

 

「はあ!?ダメに決まってんだろ!こうしてる間にもここは燃え続けてんだ、死にたくなかったらさっさと逃げろ!」

 

 

避難を促すものの、目の前の少女の瞳に迷いは無く真っ直ぐとキョウタロウへ向けられていた

 

「危険なのは貴方も同じじゃないですか!貴方ひとりに危険を冒させるなんて出来ません!」

 

「下らねぇ正義感燃やしやがって...さっきまで棚の下敷きになってたヤツが何言ってやがる!」

 

「で、でもこんな広い中をひとりで探すのだって、それこそ無茶ですよ!」

 

 

少女の言葉通り、このモールは縦にも横にも広く、何よりキョウタロウ自身は構造すらもまともに把握できていない

 

「....お前、ここにはよく来るのか?」

 

「え?は、はい...週に4回くらいは。」

 

「なら案内頼むわ。でも危険だと思ったらすぐ逃げろよ。」

 

 

少女は力強く頷く

 

「気概は良いが、煙を吸わないように口はしっかり守れよ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 

上着の一部を裂き少女に渡す

 

案内に従い目星のつく場所を回ると、少女が唐突に足を止め何かを拾い上げる

 

それは折れた杖だった

 

「この柄、お婆さんが使ってた杖です!この近くにいるかも.....!」

 

 

少女はすぐさま近くのテナントへ駆け込む

 

「おい待て!考えなしに動くんじゃねぇ!」

 

 

怒鳴り声も無視して瓦礫を避けながら奥へと進む

 

「いました!」

 

 

指を指した先にはギリギリで意識を保った老婦が

 

「大丈夫ですか!しっかり!」

 

「...何が起こったかよく分からないけど....わたしゃいいから、早く逃げな。」

 

「ダメですよ!すぐ出しますから、頑張って!!男の人こっちです!」

 

「こんな老ぼれなんか見捨てて逃げればいいものを....」

 

「ごめん被る。これでも警察なんでね。」

 

「貴方って警察なんですか!?」

 

「疑ってんなら後で警察手帳見せてやるよ。」

 

 

追いついたキョウタロウも救出のため瓦礫に手をかけた瞬間、モール全体が再び揺れる

 

「早く逃げなさい!」

 

 

老婦の声を掻き消すように赤熱した鉄骨が2人へ襲い掛かる──────

 

 

 

「え......?」

 

「は、早く.....ばぁさん引っ張り出してやれ......」

 

 

事は無く寸前でキョウタロウが鉄骨を受け止めていた

 

しかしあまりの重量に両手と首の3点で支えているのがやっとの状況で、その間にも首と手が焼かれ続ける

 

「んんしょ...!警察さん腰を下げて!」

 

 

老婦を救出した少女がつっかえの様にした瓦礫へ鉄骨を下ろし、自身も脱出する

 

「警察さん!大丈夫ですか!?」

 

「指紋が無くなっちまっただけだ。でもま、これで犯罪し放題だな。」

 

「警察が何言ってるんですか....とにかく早くここを離れましょう。」

 

「そうだな。ばぁさん、しっかり掴まっててくれよ。」

 

 

幸いにも先の崩落によりまだ火の手が回っていない場所への道が開けていた

 

老婦を背に床を埋め尽くす瓦礫をよじ登りながら安全地帯を目指す

 

 

 

 

 

 

「ハァ...なんとか安全な場所には出られましたけど.....」

 

「外に繋がる通路は防火シャッターが降りてるし、崩落で通れない場所もある。これじゃ袋小路に突っ込んだ様なモンだな。」

 

「一応ここから直進できれば出入り口には近づけますけど、これ以上は進めそうにありませんね....」

 

「そりゃ大変だね。」

 

「こうなっちまったら消火されて救助が来るまでまで待つしかないけど...」

 

 

今いる場所まで火が到達しない保証はない

 

モールの構造を把握していれば瓦礫や防火シャッターを壊しながら進むことも可能だっただろう

 

しかし無闇に壊してしまえば、更なる崩壊や延焼を招き他の客まで危険に晒す可能性があり、なによりそんな状況になってしまえば2人を助けられるのかどうかすら怪しい

 

「どうすりゃ.........

 

「坊や、お茶でもいかが?そっちのチビちゃんも。」

 

「ありがとねおばあちゃん。」

 

 

瓦礫に腰掛けた老婦が焦げたトートバッグからボトルのお茶を差し出す

 

「そんなに思い悩んだって進まないなら、気を落ち着かせる方が大事だよ。」

 

「....ご老人は余裕がありそうですこと。」

 

「はっはっはっ、手当てするからこっちにおいで。」

 

 

今度は軟膏の容器をを取り出して蓋を開ける

 

「なんでそんな物まで...」

 

「長生きしてると何があるか分からないからね。さっきは本当にありがとうね。こんな老ぼれなんかの為に2人して体はって.....」

 

 

掬い取った軟膏を両掌と頸へ優しく塗布する

 

その上からガーゼを当て包帯を巻く

 

「痛くないかい?」

 

「こんなので痛いなんて言ってたら先輩にどやされちまうよ。」

 

「気合いの入った先輩さんね。さすが警察さんだ。」

 

「警察さん...さっきはごめんなさい。私のせいで.....」

 

「気にすんな。お前がいなかったらばぁさんを見つけられなかったんだ。」

 

 

フォローを入れるも重い空気が漂う

 

「そ、そうだ!私このモールの古着屋によく来るんですよ。」

 

 

唐突なフリも場を和ませる為の行動だと理解した2人は流されるまま会話に乗る

 

「良いねぇ。種類の違った服の中からお気に入りを探すのは宝探しみたいで、私も若い頃は結構入り浸ってたものだよ。」

 

「わかるぜ、今じゃ買えない物だったり掘り出し物が見つかったりして楽しいよな。」

 

「まあ普段から学校が忙しくて長居はしないんですけど。おばあちゃんは普段なにをされてるんですか?」

 

「わたしゃ、しがない八百屋だよ。随分前に主人に先立たれてからはずっと独りだけど......。これを機に主人の元に逝くのも悪くないかもねぇ。」

 

「す、すいません....!不躾でしたね....」

 

「良いんだよ。」

 

「ばぁさんは死ぬのが怖くないのか?」

 

 

問いかけに対し、老婦は遠くを見つめながらのんびりと茶を啜り始める

 

「どうだろうねぇ.....ただ、肉体は神さんからの借り物。それを返す時が来ただけって思うのさ。」

 

「そうかよ....だったらレンタル期間延長だ。」

 

「.....?何するつもりだい?」

 

 

瓦礫の形、重なり方を慎重に見極める

 

「....ここなら問題ないはず......この先に進めれば出入り口に近づくんだよな?」

 

「は、はい.....」

 

「よし、そんじゃあさっさと脱出してウマい空気吸おうぜ!」

 

 

瓦礫のひとつに拳を打ち込み人ひとりが通るのに十分な空間ができる

 

「そんな手で無茶するんじゃないよ。」

 

「んな事はどうでも良いから早く。煙が回ってこないうちに通ってくれ。」

 

「おばあちゃん、おんぶするよ。」

 

 

進路を塞ぐ瓦礫を他の箇所に影響が及ばぬよう慎重に壊しながら道を開くキョウタロウの後ろを老婦を背負った少女がついていく

 

やがて瓦礫の隙間からメインホールの目印となる大理石の噴水が見える

 

「2人とも、あと少しだけど口はしっかり塞いでおけよ。」

 

 

出口は近くとも最後の最後まで油断は出来ない

 

瓦礫の山を潜り抜けようやくホールへと出られる

 

「やっと開けた場所に出られたな。」

 

「ええ!後は出口まで一直線です!おばあちゃん、もう少しの辛抱だからね。」

 

 

少女が出口へ走り出した瞬間、進路を塞ぐように地面が粉塵を巻き上げる

 

「なになに!?」

 

「逃げ遅れた客か。丁度いいや、新作の試し撃ちに付き合ってくれや。」

 

 

声の先にはガスマスクを付けミニガンを構える不良と思しき人間が数人

 

3人を取り囲む中、一風変わったショットガンとマシンガンを持った不良が前のめりになりキョウタロウを見据える

 

「ん?....おいおいおいおい!ブラックマーケットの鬼だぜコイツ。公権力に媚びて警察になったって噂はホントだったのかよ!」

 

 

不良たちから嘲笑が湧き上がる

 

「テメェらの目的はなんだ。」

 

「あぁん?そんなのここに運ばれた宝石以外にあるかよ。あれを売り捌いちまえばしばらくは遊んで暮らせるんだ、狙わない手はない。」

 

「....つまりテメェらは、石ころの為だけになんの罪もない人達を巻き込んで爆破したってわけか。」

 

「だからなんだよ。文句あんのか?」

 

「逆に無いと思ってんなら相当幸せな頭してるぜ?」

 

 

 

 

 

 

「こほっ....かはっ......」

 

「おばあちゃん大丈夫?」

 

「すまないねぇ....」

 

 

両者が睨み合う背後で、咳き込む老婦の背中を少女が摩る

 

背後の2人は口を塞いでいるものの、ここまで来る途中に少なからず煙を吸い込んでしまっているためか呼吸が浅いうえに早くこれ以上居座るのは危険この上なく、それは自身も例外ではない

 

頭痛と眩暈、霧視にほんの少しの痙攣と、一酸化炭素中毒の症状が現れ始めている

 

「やるしかねぇ.....」

 

 

頭を過った唯一の方法は自分が囮となって2人を確実にモールから脱出させること

 

「おい!テメェら聞いたか!?この鬼をぶっ潰せば箔がつくぞ!やっちまえぇ!!」

 

 

リーダー格の不良がアサルトライフルを連射した瞬間、キョウタロウは老婦と少女の方向へ突っ込む

 

「ばぁさん任せたぞ。」

 

 

背中に銃撃を受け首のガーゼが剥がれ落ちるが老婦を抱える少女を瓦礫の向こう側へ投げ込む

 

「逃げられます!」

 

「ガキとババアはほっとけ!」

 

「そうだ!撃ちまくれ!」

 

 

ガスマスクを付けた不良3人のミニガンの乱射を噴水の影に飛び込み隠れてやり過ごす

 

(あのミニガン...店で展示されてヤツじゃねぇか。テロに窃盗って、どんだけ罪を重なるつもりだよ.....)

 

「オラァ!!このままじゃテメェが潰れるのも時間の問題だぜ〜?」

 

 

不良の笑いに呼応する様に噴水の上部が弾け飛ぶ

 

「それとも大人しくブチのめされるかぁ〜?」

 

 

大理石が砕け散る感触が背中でも薄っすらと感じられるほどに弾幕が迫る中

 

(そうだ、そのまま....考えなしに撃ちまくってくれ...あの客引きの売り込みが本当ならもうすぐ.....)

 

 

ただ待っていた

 

ミニガンの安全装置が起動する瞬間を

 

そして次第に銃身が真っ赤になり煙を上げ始める

 

「あれ?止まっちゃった!?」

 

(来たーー!!)

 

 

ミニガンの稼働が止まった瞬間に警棒を伸張しながら噴水の影から飛び出す

 

「出やがったぜ!蜂の巣だぁ!!」

 

 

1番離れた場所に立つリーダーは即座にマシンガンを向けるがキョウタロウも飛び出すと同時に警棒を投げつけていた

 

不良リーダーが避ける為にほんの一瞬視線を切った隙に目の前の不良の胸ぐらを掴み上げ

 

「なっ!?」

 

 

マスク目掛け渾身の頭突きを喰らわせる

 

固いガスマスクに打ち付けたことで額からは血が吹き出るが、頭突きを受けた相手も同時に昏倒する

 

「次はテメェだ!」

 

 

昏倒した不良からミニガンを引ったくり、すぐ近くにいる別の不良へ向けるが、当然撃ち方など分かるはずもなく掴んだ瞬間に振りかぶる体勢になる

 

不良も咄嗟にミニガンを体に寄せガードを合わせるようとするが、振り抜かれたミニガンは銃身を破壊しながら呆気なく不良の側頭部へ到達する

 

しかし、振り抜いた事により敵に向けた背中へ針が刺さる感触が走る

 

背後では不良リーダーが構える銃から細いワイヤーが火の光が反射し、自身のもとまで伸びている

 

「くたばれ!200万ボルトだ!!」

 

 

次の瞬間、身を焼く様な電撃が全身を駆け巡る

 

「がぁっ....!?」

 

「ハハハッ!科学の力ってすげぇな!」

 

 

不良リーダーが背負っていたのはショットガンではなくテーザーガン

 

一酸化炭素中毒から来る手足の痺れに加えテーザーガンの電撃による筋肉の著しい収縮と呼吸困難

 

手足の感覚は消え去りうつ伏せで倒れる

 

「う、動かなくなっちまいましたね。」

 

「だははっ!鬼っつっても大したことねぇな!!オラッ!」

 

 

リーダーがケラケラと笑いながら顔を蹴り上げ、爛れた頸を踏み躙る

 

「ハハハッ!気分イイなぁ!!あの鬼が手も足も出せずに無様に倒れてるなんてな!」

 

 

手足は動かず相手のされるがまま、言われるがまま

 

「そういえばコイツ銃持ってませんね。銃が怖くて持てないって噂はホントなんですね。」

 

「あー確かに。オラァッ!!銃も碌に握れねぇ臆病者が!しゃしゃり出てんじゃねぇよ!」

 

 

絶えず苛烈な蹴りが飛ぶが不良の"臆病者"の一言がキョウタロウに火をつけた

 

「リ、リーダー...!なんかそいつ動き始めてますよ!」

 

「は?んなわけあるか.....

 

確かに.....!俺は銃も持てない人間だがな...目の前の悪人見逃せるほど落ちぶれちゃいねぇんだよ......!」

 

 

焼け爛れた手で不良リーダーの足を握る

 

リーダーも危険を感じたのか瞬時に振り払う

 

「な、なんでまだ動けんだよ....!」

 

「こんのぉッ!!」

 

 

銃身の回転が始まるミニガンを向けられるが倒れたままの体勢で素早く蹴りを入れる

 

ミニガンの照準は当然隣に立つリーダーへと向いてしまう

 

「危ねぇだろ!!」

 

 

リーダーはヘンテコな体勢になりながらもなんとか連射を躱わす

 

その隙にキョウタロウも立ち上がり距離を取る

 

「なんて往生際の悪い奴なんだよ。」

 

「だったら動かなくなるまで撃ち込むだけだ!」

 

 

テーザーガンを向けられるのと同時に上着を目の前に投げ広げる

 

飛ばされた針は上着に受け止められる

 

それによりほんの一瞬突っ張った上着の部分に拳を打ち込みテーザーガンを砕く

 

「まだマシンガンが.....

 

「甘いんだよ!」

 

 

向けられたマシンガンに蹴りを入れようとするが手応えは薄い

 

「ぬわっ!?」

 

 

しかし本体の破壊は出来なかったものの蹴りはマガジンに直撃する

 

蹴られたことでマガジンのロックが無理矢理外され、本来連射されるはずだったマシンガンから放たれた弾丸は薬室に込められた1発のみ

 

その1発も気合いと額で受け止める

 

「ようやく....届いた!」

 

 

固く組んだ両手を脳天へ振り下ろす

 

渾身の一撃は不良リーダーの意識を刈り取るのに充分な威力でありリーダーは声も出さずに膝を折る

 

「.....あ、とは、お前、だけ.....」

 

「ひぃぃ....!!」

 

 

半開きの眼を向けられた不良は萎縮しミニガンを握る腕の力も抜ける

 

息も絶え絶えに足を引き摺りながら近づくキョウタロウを目の前に動くことすら出来ないでいる不良だったが

 

「……………」

 

「は...え.....?」

 

 

僥倖にも手を伸ばせば届く距離まで接近した直後、キョウタロウも限界を迎えたのか、立ったままヘイローが消えた

 

結果、その場で意識を保っているのはただ1人

 

「た、助かった....のか?」

 

 

唯一立っている不良の目の前には、倒れてからピクリともしないリーダーとキョウタロウ

 

この状況ならトドメを刺す事は造作も無いが

 

「....何なんだよ...こんな猛獣みたいなヤツ相手にしてられるかよ.....」

 

 

戦意を失い立ち尽くすばかり

 

「ここはさっさと逃げ.....べあっ!?」

 

「動くな。」

 

 

後ずさる不良が突然体勢を崩し倒れる

 

その上からカンナが馬乗りになり腕を抑え付ける

 

「この爆破事件の主犯はお前達で間違いないな。」

 

「あ、アンタは狂犬.....

 

「黙って私の質問にだけ答えろ。主犯はお前達だな?」

 

 

後頭部に銃口を突きつけ再び問いただす

 

「はい....その通りです.....」

 

「....とんでもない事をしでかしてくれたな。お前達を連行する。」

 

 

懐から覗く手錠を見た不良はほんの少しの無抵抗も見せずに手錠を受け入れる

 

「あっ、消火済んでたんですね。」

 

 

不良が辺りを見渡すと、瓦礫の撤去を進めながら取り残された客を次々に運び出す救急隊員の姿があった

 

キョウタロウも救急隊員にゆっくりと寝かされ処置を受けている

 

「カンナさん、キョウタロウ君なんですけど....お婆さんと女の子が言ってた様に首と手に酷い火傷が。」

 

「それ以外にもおでこからの出血と一酸化炭素中毒の症状が確認されました。今は高濃度の酸素吸入で対処してます。」

 

「....嫌になるなぁ......」

 

 

キョウタロウが酸素マスクを押し当てられながらも薄らと目を開け意識を取り戻す

 

「無理して喋ろうとするんじゃない。」

 

「だってよぉ...たった2人助けただけで木偶の坊になっちまったんだ。情けなくて仕方ねぇよ.....」

 

「....そう自分を卑下するな。寧ろ大火災の中、たった1人で2人を救出しながら犯人を足止めしたんだ。大健闘だったんじゃないか?」

 

「そう....ですかね...」

 

「文字通り、最後の最後まで倒れずに戦った貴官を誇りに思う。ほら、担架が来たぞ。今は呼吸に専念しろ。」

 

 

処置にあたった数人により担架に乗せられる

 

再び薄れる意識の中、心地よく揺れる担架が場にそぐわない眠気を誘い瞼を下ろす

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「呼吸器系、血中酸素濃度ともに異常無し。ですが念の為にあと2、3日は経過観察としましょう。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

カンナが病室を出る医者へ頭を下げる

 

「一応聞いておくが、2度目の病院生活はどうだ?」

 

「満足にシャワー浴びれないこと以外不満はありませんよ。」

 

「両手と首の包帯が取れるまで辛抱だ。」

 

「本当やになるなぁ....」

 

 

ため息混じりに首を摩っているとカンナが紙袋を差し出す

 

「なんです?」

 

「お前が助けた老婦からの差し入れだ。手紙も同封されている。」

 

「...わざわざ律儀なこった。」

 

 

テープで止められた二つ折りの紙を袋から外す

 

手紙には名前を聞けず仕舞いだった警察官への感謝と治ったら八百屋に来て欲しいとの旨が綴られていた

 

「なんだか...こそばゆいな......」

 

「お前の功績だ。胸を張れ。」

 

 

こそばゆい気持ちを誤魔化すため袋の中を覗けば光沢を帯びた衣と香ばしい薫りが食欲を唆る

 

気づけば自然と手が伸びていた

 

「先輩も食べます?甘エビがいいアクセントになって美味しいですよ。」

 

「遠慮しておく。それはお前の物だろう。」

 

「そう言わずに、食べてるのがバレたら俺が怒られるんですから、助けると思って2つくらい。」

 

「.....わかった、ひとつ貰おうか。」

 

 

観念した様子でひとつを手に取り口へ運ぶ

 

「それにしても、どうしてアイツらは展示会の前に爆破なんて敢行したんでしょうね。」

 

「どうやらモール側のミスで予定より早く宝石が搬入されたらしい。その情報がどこからか漏れてしまい今回の事態に至ったようだ。一報でもくれれば、こちらも人員の都合を付けたんだがな.....」

 

「報連相の重要さをこんな形で痛感するなんて思わなかった....」

 

「全くだ。次にこのような状況に陥った時は、無言でも構わないから電話をくれ。」

 

「肝に銘じておきます。」

 

 

さっさとかき揚げを食べ終えたカンナは扉へ向かう

 

「私はこれで。医者の指示にはちゃんと従って早く戻ってくるんだぞ。」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「と言うのが俺が警察になろうと思い立った経緯です。休憩がてらの暇潰しくらいにはなりました?」

 

"キョウタロウも最初から強いわけじゃなかったんだね。"

 

「そりゃそうでしょうよ。」

 

「今のキョウタロウがあるのは地力と血の滲む努力と鍛錬の賜物です。その甲斐あってか、今では公安局長補佐を任されるまでになりましたから。」

 

"補佐って役職の割には暴走する場面が多い気がするけど...."

 

「ま、まぁ、そこに目を瞑ればキョウタロウは本当に良くやってくれています。」

 

"確かに。ちょっとうたた寝してたら書類の山が消えてるって、事もザラだったし。"

 

「出張が多いのは理解してますけど、もっと休み取ってくださいよ。」

 

"いやぁ...頼りにされると、つい気合い入っちゃって"

 

「それで潰れたら元も子もないでしょうに...」

 

「先生は上手な休み方を覚えるべきですよ。」

 

"耳が痛いいぃ〜、カンナも人のこと言えないくせにぃ〜!"

 

「子供ですか!私の事は良いんですよ。」

 

"私の前ですら滅多に鎧を脱いでくれないくせにぃ〜!"

 

「なっ!?そ、その話はあの場限りのはずでしょう!?」

 

"へへえーん!一生擦ってやるもんね〜!"

 

「こ、この────

 

「失礼します!キリノ、ただいま到着しました!」

 

「私もいるよ〜。」

 

「....騒がしい連中が来てしまったな...」

 

"あれ?2人ともいらっしゃい。こんな夜更けにどうしたの?"

 

「局長とキョウタロウが当番と聞いたので差し入れを持ってきましたよ!」

 

「2人は仕事となるとトコトンまでやっちゃうし、そこに先生も合わさったら歯止めが効かないでしょ?仕事に打ち込むにしてもほら、ドーナッツでも齧ってゆったりのんびりと、ね。」

 

"こんなに沢山...高かったでしょ。"

 

「それが深夜セールで色々安かったんだよね〜。」

 

"ありがと。"

 

「キョウタロウ、私にも何か手伝えることはありませんか?」

 

「えっと...そうだなぁ.....向こうの書類を様式別で仕分けてくれ。」

 

「お任せください!!」

 

「先生、コーヒーはいつもの銘柄で良い?」

 

"フブキってコーヒー淹れられたの!?ありがとう!"

 

「みくびられて貰っちゃぁ困るよ。」

 

「ところで、声が漏れてましたけど何の話をしていたんですか?」

 

「ちょっとした昔話だよ。」

 

「そうだったんですか。....先生、なんでキョウタロウがお化け嫌いかご存知ですか?」

 

"え、気になる!あの異常な怖がり方にも何かルーツが..."

 

「実は中等部卒業祝いで遊園地に行った際、興味本位で入ったお化け屋敷が意外にもハイクオリティで.....

 

「待て!それ以上言うなッ!!」

 

 

 

思い出話も程々にその日のシャーレは明け方まで賑やかだった

 

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