ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
野生(?)の少女が現れた!!
[プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました。そういった点を評価して、この作品に今回、ミレニアムプライス『特別賞』を授与します。]
司会の言葉の後に歓声と拍手が巻き起こる
「ゲームかぁ.....」
一方は静かな庇の下でラジオから聞こえる喝采に思いを馳せる
(キヴォトスに来てからはゲームやってる暇なんて無いくらい大変だったからな......)
思い出すのは生きることだけを考えブラックマーケットを這いずり回った日々と現公安局長のもとで送った厳しくも充実した中等部時代
(甚大な被害を出すような事件も起きないはずだし、息抜きにゲームしたってバチは当たらんだろ。)
家にはテレビはあれど公安局やシャーレにいる時間の方が圧倒的に長いため、娯楽品の類は一切ない
(丁度コンロ買い替えたかったし、明日にでもミレニアム方面に遊びに行くか。)
後日、身支度を済ませ街へと繰り出す
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「相変わらず品揃えには困んねぇな。」
場所はミレニアム屈指の巨大ショッピングモール
量販店の他にもレストランやゲームセンター、中古ショップなど時間潰しには困らない
家電ひとつを取っても広大なスペースが確保されており、名だたる大企業から新進気鋭のベンチャー企業までありとあらゆる商品が陳列されている
「色々あって悩むなぁ.,.」
ゲームコーナーにて手に取ったソフトは2つ
ひとつはみんなでワイワイ遊べるパーティーゲーム
名を“マリアパーティー SUPER STARS„
もうひとつは滅びゆく終末の世界を舞台に広大なオープンワールドを駆け回る名作“DARS SOULS„
膨大なタイトルの中から最終的にその2つに絞り込んだ
「マリパはひとりでやるには寂しい....かと言ってダスソは実質ソロプレイ専用だし.....どっちが良いか.....」
「アリスのオススメはダスソです!!」
声の方を向くと地面に垂れ下がる長髪の少女がおり、その背にはそれ以上に目を惹く身の丈ほどの巨大な銃火器らしきものが背負われている
(なんか見たことあるような.......)
「どちら様で?」
「あ、失礼しました。アリスはアリスです!」
「アリス....ね。それで、
「はい!特にリマスター版は画質も良くて最高です!アリスも4周くらいはプレイしましたが、プレイすればするほど新しい発見があって全く飽きません。やり込み要素も沢山です!」
「なるほど...相当このゲーム好きなんだな。」
「ダスソをやるのであればアリスと一緒にキノコ狩りをしましょう。これアリスのモモトークです。」
「おい、いきなり過ぎないか?」
「アリスの周りにはダスソをプレイしている人が全然いないんです。それに新規を囲うのは礼儀作法だと教わりました。」
アリスはただただ純粋な笑顔を見せる
「OK.....登録完了。よろしくな、アリス。」
「よろしくお願いします!えっと、キョウタロウ...ですね!.....キョウタロウ?」
「そうだけど、なんかへん......
「もしかして、ネル先輩にステゴロで挑んだ警察官って貴方のことですか!?」
「なんだ、部長さんの知り合いか?」
「はい!チビメイド様とは激闘を繰り広げましたが今となっては愉快なパーティーメンバーです!」
(ネルをチビメイド呼ばわりたぁ肝が座ってんな)
「あのチビメイド様とタイマンを張るなんて...キョウタロウは勇者の素質を持ち合わせているんですね。」
「勇者なんて大袈裟な... ありゃ事故みてぇなモンだよ。それよりアリスはなんか買い物か?」
「アリスの目的はゲーセンです。あそこのアーケードで期間限定のチャレンジモードがあるんです。それをやりたくて来ました。」
「どんなやつなんだ?」
「“ザ・ホーム・オブ・ザ・デッド„というシューティングゲーの最高難易度をさらに難しくして時間制限を付けたモードなんです。開催以来、クリア者はゼロでラスボスの顔すら誰も拝んだことがないんです。」
「そいつぁ凄そうだな。」
「はい!そして記念すべき初クリア者として、スタッフロールにアリスの名前を載せてもらうんです!」
そう豪語しながら天を差すアリスの指先は輝いてるようにも見えた
「そうかい。クリアしたら教えてくれよ。」
「もちろんです!期待しててください!」
アリスは手を振り通路の反対側へ駆けて行く
(アリス....アリス.......聞いたことあるような...無いような......)
その後アリスと別れ、再びゲームコーナーを散策するがほどなくして───
「キョウタロウー!!救援を願います!!」
遠目からアリスがロボット店員を引き連れて走ってくる
「どうした?チャレンジはクリアできたのか?」
「そのこと何ですが....」
肩を落とし俯くアリスの後ろからロボット店員が話出す
「すいません。当店のチャレンジモードはマルチ限定ですので、お一人様ではプレイできないのです。」
「店にいた他の人たちは桁外れの難易度に怯えて、誰も協力してくれませんでした.....」
「なるほどな。そういう事なら良いぜ、俺が2Pになってやるよ。」
「ホントですか!?」
アリスの表情がパァッと明るさを取り戻す
「ああ。超協力プレイでクリアしてやろうぜ!」
「ありがとうございます!!」
店員に案内され件のゲーム筐体へと向かう
「ま、マジか.....」
アリスの言っていたシューティングゲームは一人称視点で人型をはじめとした様々なゾンビ、もといミュータントを撃ち抜くゲーム
「もしかしてシューティングは不得手でしたか?」
「いや苦手ってワケじゃねぇけど、その....敵のビジュアルがさ.....」
内心では手伝うと言った数秒前の自分をぶん殴りたくなっていた
(でもあんな顔見ちまったら無碍にはできねぇよな)
「心配ありません。頭を撃てば木っ端微塵に吹き飛びますから、ボスのビジュアル以外は大して気になりません!」
「割とえげつないスタンスでホラゲーやってんだな。」
「セッティング終了しました。ガンコントローラーのトリガーを引けばチャレンジが開始されます。」
「これは“試練„です。過去に打ち勝てという“試練„なんです。もう覚悟を決めてやるしかありません!」
アリスがスタンドに掴まりピョンピョンと跳ね始める
「わーったよ.....」
2人は筐体の画面の前に立ちスタンドからガンコンを引き抜き構える
「「ゲームスタート!」」
「うわーん!ミュータントの数が多すぎます!」
「流石にクリア者ゼロは伊達じゃねぇな。」
喚き立てる2人ではあるが画面に映る大量のミュータントを的確に処理しつつ、道中の救出イベントも完璧にこなしステージを駆け抜けていく
キョウタロウは最初こそ震えて照準が定まらず、外すたびにアリスがフォローを入れていたが、所詮はポリゴンだかピクセルだかの電子情報の集まりということを理解し、徐々に本調子を取り戻していった
STAGE1 チャリオット
STAGE2 ハングドマン
STAGE3 ハーミット
洗練された2人の射撃を前に立ちはだかるボスは次々と沈んでいく
その様子にゲームセンターの野次馬も息を飲み見守る
「よし...とりあえず波は乗り切ったな。」
「油断はできません。次はいよいよラスボスの“
『オマエハダレダ…
ワタシハダレノメイレイモキカヌ…
タダハカイスルノミ…』
画面内ではラスボス マジシャンが直立不動の姿勢を保ったまま高速移動を繰り返しつつ、火炎弾を投げつける
迫り来る火炎弾を撃ち落としつつマジシャンの弱点を狙い着実にダメージを稼ぐが徐々に2人の額に汗が浮かぶ
「キョウタロウ、ひとつでも撃ち漏らせば2人仲良く即死です。」
「こりゃマルチ限定なワケだな。」
「こいつぁマジでクリアすんじゃねぇか...」
「でもこのゲームはここからが本番だ。」
「俺たちに栄光の瞬間を見せてくれや!」
野次馬から期待の声が上がり始める
しかしそれに対抗するかの如くマジシャンの攻撃も苛烈さを増す
プレイヤーが使う武器は9発装填のハンドガンのみ
それに対してマジシャンが一回の行動での放つ火炎弾は12発ほど
加えてHPが50%を切れば火炎弾を上空に発射する
その際、自分自身を画面外に追いやる演出で自分への攻撃を強制的に中断させる
それでもキョウタロウは局長仕込みの早撃ちで、アリスは培ったプレイヤースキルで少ない隙を取り零すこと無くHPを削っていく
「さぁ!残り時間1分を切りました!2人のエージェントは幻想を撃ち抜き、世界を救う事は出来るのでしょうか!?」
店員がノリノリのナレーションで合いの手を入れる
残り30秒
マジシャン 残りHP20%以下
「いける....いけるぞアリス!」
「このまま火炎弾の演出がなければ.....ああぁっ!?」
マジシャンが火炎を放とうと身体を広げる
それはまさしく画面が空を向こうとする演出だが
「......負けません!!」
アリスの雰囲気が変わる
フレームレートの限界に迫るほどの速射で画面からマジシャンの判定が消えるまで撃ち込む
マジシャンの頭部が画面から完全に消える直前、画面がスローモーションになる
画面左上のタイマーは0.07秒から動く気配はなく
『イツノヒカ…カナラズフッカツ…』
そう言い残してマジシャンは爆発四散した
「第二形態とか、ない.....よな....?」
「この演出....間違いありません....!マジシャン撃破.....チャレンジモード...クリアーー!!!」
よっしゃぁぁぁぁぁぁあーーーーー!!!
野次馬も店を震わせるほどの歓声を上げ辺りは熱狂の渦に包まれる
「やったな!アリス!」
「やりました!」
互いのガンコンをコツンと軽く叩き合わせる
「まさか本当にクリアなされるなんて.....」
「いやぁ〜良いものを魅せていただきました。」
野次馬を掻き分けスーツを来たブルドッグが拍手をしながら現れる
「貴方はホーム・オブ・ザ・デッドの統括ディレクター!?」
「いかにも。私“ザ・ホーム・オブ・ザ・デッド„の統括ディレクターにございます。」
「そんな人がどうしてゲーセンに?」
「それがですね、お二人ともチャレンジモードをノーコンノーダメでクリアしたとネットで大バズり中ですよ。」
Dが見せるスマホの画面には2人の後ろ姿が映るネット記事が表示されている
「もうそんなに拡散されてんのかよ....」
「これはディレクターとして見ない訳にはいかないでしょう。お二人の熱意はそのガンコンを見ればガツンと伝わってきますよ。」
「え?...うおっやば!?」
「ああっ!?」
2人が持つガンコンのグリップ部分にはうっすらと罅が見えている
「それに、丹精込めたゲームでこれまでの人が熱狂してくれるなんて.....私、感激で涙が.....失礼。」
Dはハンカチを取り出し止まらない涙を長い続ける
「あの、写真よろしいですか?スペシャルサンクスとして是非スタッフロールに名前のほかにツーショットを載せたいのですが....」
Dの提案にアリスとキョウタロウは顔を合わせ
「「もちろん(喜んで!)」」
「では筐体の前に並んでもらって。」
筐体の前へ並ぶ
2人では身長差が大きく、キョウタロウが片膝立ちになりそこにアリスが友好の印にと肩を組もうとするが
「.....!?」
「アリス?」
ほんの一瞬、アリスの顔から表情が消え失せ動きもピタリと止まる
「.....いえ、ただの静電気だったみたいです。」
「そうか......」
(今の違和感はなんだ...?)
「ではいきますよーはい、ゾンビィ〜。」
Dの呼びかけに再びアリスと肩を組む
「ゾンビィィィーー!!」
「ゾォンビィィ....。」
アリスは高らかにVサインを掲げ、キョウタロウは左手の甲カメラへ向け顔の横へもっていき獣の爪を思わせる形にする
パシャッ
ツーショットには満面の笑みを浮かべる2人が写される
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「来た時は昼間なのにもう夕方かぁ....」
「綺麗な夕陽ですね。」
ショッピングモールを背に偶々道が被ったアリスと帰路に着く
「時間というのは、楽しいことをしているとあっという間に過ぎてしまうので寂しいです。」
「だからこそ、限りある時間を本気で楽しむ為に人は色々なモンを考えて来たんだろうな。」
「それでも少し寂しいです。」
夕陽を見上げながら物憂げな表情になる
「夕陽は今日の終わりと同時に明日の始まりでもあるらしいぞ。だからそんな顔する必要ねぇって。」
「......そうですね!今日はこの出会いをクリア報酬としてパーティーメンバーに自慢します!」
「そうかい。.....おっと、俺はここまでだ。縁があったらまたな、アリス。」
「また会いましょう!」
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「ミレニアムの.....アリス..........やっぱ聞いたことある気がすんだよなぁ...」
胸に突っかかる疑問を消化しきれないまま買った物を整理する
「考えても仕方ないし、ダスソのキャラメイクですっか。」
購入した家電のセッティングも済ませゲームのパッケージを開く
「さて、始めますか.....って、あっ!?」
ここで漸く気づく
「ゲーム機本体の方を買ってねぇ......やっちまった....」
今更ショッピングモールに再度出向く気にはなれず、本体は後日購入した
小さい頃地元で2箇所しかないゲーセンにあった50円で遊べる鉄拳が大好きでした。