ご都合主義のキリノ推しヴァルキューレ生 作:りっくらっくろっく
「諸々の報告書と申請書、それから回覧です。」
「ああ、そこに置いておいてくれ。あとキョウタロウ、お前の出張が決まった。出張先はゲヘナだ。明日までに荷造りを済ませておけ。」
追加の書類仕事を任せるような感覚で言い渡される出張命令
当然、はい分かりましたと呑み込める訳もなく思考が止まった頭で導き出した答えは
「...........あっ、局長も冗談を嗜むようになったんですねぇ!」
「私は冗談など言わん。今朝の会議で決まったことだ。」
「マジで言ってます?」
「大マジだ。今朝の会議でゲヘナでの治安悪化が問題に上がってな、今までは風紀委員会が対処していたが、
カンナの言うある日とは、風紀委員会によるシラトリ区での無差別爆撃、そしてシャーレとしてアビドスに出払っていた時である
「......だから戦力補強として俺が飛ばされるワケですか?」
「その通りだ。それに最近、局員の中で戦闘行為に関してはお前が居るからとタカを括っている連中が目立つ。そういった連中の気付けとして良い機会だ。」
「そんな重要そうな仕事、1年に任せて良いんですか?」
「これは防衛室長からの指名でもある。個人の能力を鑑みた結果、お前が選ばれたというわけだ。」
「....急な出張は百歩譲るとして、寝泊まりはどうすんです?」
「ゲヘナ支所を頼れば良い。こちらで話は付けておく。」
「..........わかりました。引き継ぎの方は....
「私がやっておく。」
後日、当番としての最低限の業務を終えてシャーレのオフィスビルから駅へ向かう
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等間隔で揺れる車内にはキョウタロウただ1人
普段ならある程度は埋まっているであろう座席も、どこかもの寂しい雰囲気を漂わせる
しかし車窓から見える街並みはそんな雰囲気を置き去りにするほど爽やかに流れていく
「きっぷー、きっぷー、きっぷを拝見。」
「お客さん、きっぷを拝見します。」
座席の隣まで来た銀髪の乗務員へきっぷを渡す
きっぷを受け取った乗務員は改札鋏を噛ませる
「ちゃんと出してくれるのか....」
「なんだ?珍しい事だったりすんのか?」
「.....どうせゲヘナ行きの列車だからとか、どうせ無法地帯だろうって運賃をちょろまかそうする輩がしょっちゅう居るんだよ。お客さんみたいに素直に払う人は少なくてね....」
「はは.....苦労が絶えねぇのはどこもかしこも同じなんだな。」
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いよいよゲヘナ自治区.....の少し前に到着した
なぜ今立つ場所がゲヘナ自治区では無いのか、その理由は単純明快
現地の不良生徒により到着駅が完全破壊されてしまったためである
事態を考慮し、車掌判断でやむなく2駅前で強制下車
「早速ゲヘナの洗礼を浴びちまったかぁ......」
なってしまった事は仕方ないと、ゲヘナへ続く高速道路を徒歩で進み始める
「にしてもあっチィな.....」
照りつける日差しとその熱を跳ね返すアスファルトとの挟み撃ち
今更ながらアビドスで独り彷徨った原作先生の気持ちを理解することとなった
「あと何キロ歩けば......って、標識が仕事してねぇ....」
見上げた標識は焦げ跡に弾痕、穴だらけで本来の目的を成していない
こうなってしまえば道なりに進む以外の選択肢は存在しない
歩き出して数時間後、キョウタロウの隣に一台のバンが止まり窓が開く
「お久しぶりですねキョウタロウさん。」
「アンタは
「貴方こそ、なぜトランクケース片手に高速道路を歩いているのですか?シラトリの方角とは全くの別ですけど。」
「今日からゲヘナに出張する事になったんだけど、色々あって徒歩で向かう事になった。」
「大体察しました。私は出先からの帰りなので、良ければ乗っていきますか?」
「マジで!?助かったぁ!」
「後部座席は荷物が多いので助手席にどうぞ。」
「あ゛〜涼しい〜!」
コートを脱ぎクーラーの前へ顔を突き出す
「ふと思ったのですが、他の方々は動きやすいシャツと防弾ベストといった装いですが、ヴァルキューレでしっかりとしたコートとスーツを着てるのは貴方だけですよね?」
「これか?返り血を目立たなくするため。」
運転席からは横目で冷たい視線が送られる
「冗談じょーだん。俺こう見えても経理も担当してるんでね。連邦生徒会に出向く機会もそこそこあってその度に着替えるのも億劫だから、ずっとこの服装ってだけだ。」
「ヴァルキューレは万年予算不足と聞きますが、資金繰りは大変ではないのですか?」
「めちゃめちゃ大変だよ。最近は整備のための物資だって買いづらいし、今は共食い整備で騙し騙し繋いでるって感じだ。」
「こちらとは別のベクトルで大変なのですね。」
「ミレニアムの会計さんが投資に精通してるらしいし、今度教えて貰おうかな.....そうすりゃ局長やみんなの負担もちょっとくらい軽く...........
ガシャンッ
突如として大きな衝撃が2人を襲う
「まさかこんな場所で風紀委員に会えるとは思ってなかったぜぇ!はっはっはっ!!」
「.....問題発生ですね。」
窓を挟んでも聞こえる笑い声
気づくと不良が乗る車両に挟み撃ちにされていた
不良は容赦なく発砲をはじめ窓を割る
「テメェは風紀委員の一員だな?掻っ攫って身代金ガッポリ頂いてやるぜ!」
「堂々と犯罪予告とは....なんともゲヘナらしい。」
「......否定はしませんが...ガンッ
右側の不良は容赦無く側面へ車両をぶつける
しかしチナツは冷静にダッシュボードから手榴弾を取り出し、接近する車両の内部へ投げ込み素早く離脱する
「あ?こいつど素人かよピン抜いてねえ.......バァンッ
不良が笑いながらキャッチした手榴弾へチナツが発砲
そのまま相手の車両は大爆発
「私を甘く見ないことですね。」
「やるな。今度は左の奴らに近づけてくれ。」
「了解です。」
「はぁ!?テメェは猛獣!なんで風紀委員の車に....!?」
「入り用だ。それよりテメェら全員もれなく交通違反だ。」
車内へ手を伸ばし相手側のハンドルを握る
「ああっ!?テメェなにして.......
「あばよ。」
相手のハンドルを引き千切る
制御を失った車両は道路照明の柱に激突し完全停止
「あーあ、交通局とモモカのヤツにゃどう言い訳したもんかな.....」
「言い訳をせずとも起きた事をそのまま話せば良いかと.....キョウタロウさん、シートベルトはしっかり締めましたか?」
「あ?してるけど.....」
「さらに追っ手が来てしまいました。飛ばしますよ。」
アクセルを踏み込み一気に最高速度へ達する
すっかり脱力していたキョウタロウの身体は背もたれへ押し付けられる
そんな
「こりゃ、大変な出張になりそうだな.........」
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誰も居なくなった事務所でカンナが受話器を取る
「.........お疲れ様です。防衛室長。公安局、尾刃です。」
『カンナさんですか、お疲れ様です。』
電話口からは温和で物腰の柔らかそうな返事が得られる
『この時間に連絡を寄越すとは、キョウタロウ補佐の出張の件は
「ええ。しかし防衛室長、喜悠凪は行政官からシャーレの先生のボディガードに指名されています。その様な人間を動かして良かったのですか?」
『いいんですよ!ヴァルキューレの所属である彼をどう動かすかはこちらの自由なのですから。」
「しかし、これからSRTの解体も本格化するでしょうし....それに伴うデモも活発化する可能性は大いにあります。」
『......?それがどうしたのですか?』
「正直に申し上げますと、仮にSRTの生徒たちのデモが激化し実力行使に出れば、今の人員と物資では明らかに戦力不足です。」
『.....貴女は彼のことを随分と高く買っている様ですね。』
「はい。喜悠凪のことはずっと見てきましたし、彼の実力も熟知しています。」
『......言いたい事はわかりました。ですがカンナさん、よぉ〜く考えてみて下さい。精鋭部隊といえど相手は数人ほどなんですよ?』
「失礼ですが、一定の水準に達した者を数で制圧できるとは些か浅慮かと。」
『はぁ....良いですか?心配事の90%は起こらないのです。これから用事があるので私はこれで。それでは。』
相手は返答を待たずに通話を一方的に切ってしまう
「全く......防衛室長は何を考えているのやら.......」
今の私は最上級の喜びと幸せに満たされている....
今ならエデン条約だろうが戒律だろうが百物語だろうが壊せる気がする...