不定形人間は族長様を救いたい   作:紳爾零士

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不定形人間は族長様と英雄様と里の危機を救いたい(前編)

どうも。不定形人間(チュチュ野郎)こと、ボルドー姉さんですっ!!いやぁ、今日も今日とて族長様とビューラさんと作戦会議でございます。

 

あの全方位殺戮落雷発生マシーンこと神獣ナボリスくんをなんとか止めねば〜あずきバー的な理由で。…この歳で眉間に皺を寄せて考えるなんてこの先、心配にな…なんでもないです。ルージュ様。

 

「…余計なことは考えず、シャキッとしろ。ボルドー。」

 

「…委細承知。」

 

ルージュ様のジト目を頂いたところで本題。

あ、今いるのはいつもの玉座のところです。ルージュから見て右がビューラさん、左がアタクシでございます。オケね。

 

でまぁ、話を纏めると。

ナボリスをなんとか止めないと里が危ねえ→乗り込まなきゃ、でも100年前の英雄しか無理じゃね?→生きてるわけねえ(イマココ!)…つまりツミッ!!数え役満というやつでござーい。

 

「どう致しましょうか。族長様。…アレがこの街まで来ることはほぼ確定と言っていいのでは。」

 

「うむ…。まだゲルド砂漠を進むのみ。近づかなければ実害はないが…。」

 

近づかなければね。

魔物相手には落雷攻撃をしてない以上、やっぱ乗っ取り確定か。英傑様がここにいればこんなこと考えなくてもいいんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぬぬぬぬぬ。」

 

赤チュチュ、白チュチュ、青チュチュ、黄チュチュのゼリーを四角に置き、我がチュチュ皮膚の片を真ん中に置き、後はチュチュ筋の神様にお願いしながら、英傑様の蘇生を…。

 

「…なにやっとるんじゃ。」

 

「…適当にこんなことしてたら、なぁんか、英傑様が地獄から復活〜なんて。」

 

「…おんなじ部屋で寝る者がそんな不気味なことをしているという事実を今知った妾の身にもなって考えて欲しいもんだが。」

 

…同部屋添い寝はマストなのですね。

というか、そっか。ルージュってこういうオカルトじみたことあんまり好きじゃなかったなぁ。と、チュチュゼリーを片付けながら考える。いや、なんというか、攻撃が効かない相手とか暗闇とかがあんまり好きじゃないらしい。だから、夜もスナザラシぬいぐるみ抱かないと寝れなかったわけだしお寿司。

 

「朝は恋愛教室として貸し出し、夜はルージュと添い寝か。…風紀が乱れあゃあいませんかね。」

 

「風紀を乱しとる元凶が妾の目の前におるぞ。」

 

おおう…。ルージュ様、そのような可哀想な人をみる目はやめていただきたいのですが…。

 

「…しかし、そうだな。英傑の存在が確認できぬ以上は、何も進まぬ。」

 

「うむむ。」

 

ルージュは夢見る少女…ってわけじゃねえし、勿論、100年も昔の人間が生きてるなんざ思っちゃいない。可能性としてあったゾーラの姫まで死んだとなれば、もう後はない。後はゴロン族ならなんとかかんとか。

 

タイマの騎士様…(後々知ったが、魔を退くで退魔らしい。そりゃ、危ない薬草を吸ったラリった騎士様にハイラルは救えないわな)が生き残っていれば良いのだが、アレはハイリア人。普通あり得ない。

 

封印とかそんなことがされていれば、一ミクロン程度にはあり得るんだろうか。…そういえば、新聞にはラネール地方の雨も、デスマウンテンの火山弾も鎮まったと書いてあった。ということは、ここの落雷も。

 

「どうした?珍しく真面目な顔をしておるではないか?」

 

そんな俺を族長様はケラケラと笑いながら見る。

バスローブ姿で普段は結った髪を下ろした姿は年寄りもなんというか、大人っぽく見えた。まだ、色っぽいだの、なんだのそんな言葉は似合わない。本人曰く、腹筋の筋もまだしっかりついていないそうな。

 

風の噂では、鳥の囀りでは。

先の異変は四英傑の神獣暴走が原因であると考えられた。その神獣の制圧にはまさしく英傑の肉親…および、英傑の子孫が手を貸したとされる。あのナボリスも例外なくそうなれば、此処では間違いなく…我らが族長様…ルージュの出番だろう。幼い彼女の手に、この里の全てがかかっている。

 

もはや、子どもだ…という理由ではそれは止められないのだろうか。

 

「…ルージュ。」

 

「へ?は、へ!?」

 

手をギュッと握ってやれば、ルージュの顔は真っ赤に染まる。なんの比喩でもなく、真っ赤に。ゲルドの少しけば…ごほんごほん。個性的なメイクが際立つくらい頬が真っ赤に。こういうところは少女(ガキ)らしい。

 

「何があってもこの前みたいな無茶は絶対するな。俺がお前に絶対させないし、やらせない。1人でなんでも抱え込もうとするな。…俺やビューラさんたちを頼れ。」

 

「なっ!?…何を藪から棒に。」

 

「…子どもらしく我儘言っていいんだよ。お前は族長の前に子どもなんだから。」

 

…子ども扱いするなと怒られるか。とでも思っていたが、反応は予想とは違った。ギュッと握られた手をルージュはただ単に握り返す。

 

「…ふっ。妾にはビューラもパトリシアちゃんも…それにお前もいる。ゲルドの街は安泰だ。そうだろう?…そんな時に我儘なんて言ってられないさ。」

 

「…はぁ…。」

 

「むっ。…なんじゃ。その不遜な態度は。」

 

手を離し、プイッと横を向く族長様。

…というか、いつもいつも無理しすぎな感じがする。当たり前だ。母さん死んだ→君族長ね…だから。ルージュだって本当は、ヴォーイってなんだろね!今日のご飯なんだろね!こんな遊びがあるんだよ!etc…子どもっぽくいられたろうに。

 

「んにゃ…な、なにを…?」

 

…気がつけば、その小さな頭に手が伸びていた。

ゲルド仕込みのヘアケアはすごい。こんな劣悪環境なのに、キューティクルが傷ついて…って違うッ!!

 

「…逆だよ。お前が怪我すれば、悲しむ人間がそんだけいるってこった。」

 

「…え?」

 

「ビューラさんも、パトリシアちゃんも…俺だってお前が傷つくのは嫌だ。困ってるなら相談して欲しいし、考えてることがあれば教えて欲しい。…立場が族長ってだけでお前はまだ…子どもなんだよ。」

 

…案の定というか、キョトンとするルージュ。

物心つき、母が急逝。その後、何もわからぬまま族長の任に就く。族長とは長であると共に、組織の奴隷。だが、何もそこまで縛る必要はないじゃないか。

 

「子どもが無茶したら心配なのは当然だ。子どもが悩んでたら心配するのは当然だ。…何もお前が幼いながらに族長になったから心配なんじゃない。お前が大好きだから、心配なんだよ。だから…その…。」

 

…ダメだ。

なんかいい事言おうとしても、なんも出てこねえ。ほらぁ、キョトンとしてこっち見てますもん、ルージュ様。

 

「…ふふっ。なにか、良いことでも言おうと思ってるのか?柄じゃないな。ボルドー。」

 

「…おっしゃる通りで。」

 

「でも、気が楽にはなった。そうか、そうか。妾がみんな大好きか。…ふむ。というか、いつまで頭を撫でているつもりじゃ?」

 

おっと、これは別に他意はない。

ただルージュの髪の毛の肌触りが思いの外、気持ち良くてシルク生地みたいな触感がとても気持ちよくて…。

 

「…そんな顔するな。ソナタが顔を赤らめると…妾も少し…。」

 

と、奥ゆかしく照れる族長様。

そんな顔をされますと、私としてもなんというかむず痒い感じが致します。

 

「「…。」」

 

「と、取り敢えず、こ、この話はやめにしようっ!?なっ!?」

 

「そ、そうですねっ!?」

 

…動揺しすぎて敬語になっちゃった。

うわぁ…なんか気まず…。いやぁ、女同士のただの戯れなんだろうけれども。ルージュ様、ぬいザラシを抱きしめて、顔を赤らめていらっしゃります。はい。

 

「…そろそろ寝ようか。明日も早いし。」

 

「…そう…じゃな。…な、なぁ。ボルドー。」

 

「ん?」

 

ベッドの上でコンパクトに身体を…あれ、体育座りみたいにして、こちらを見ている。胸にぬいザラシを抱いて、俺の方を見ている。

 

「…お前は、居なくならん…よな?」

 

…その言葉はまさに年相応のようで。

元より、ルージュは俺を父母と照らし合わせているきらいがある。だからこそ、とても…その顔は不安と悲哀に満ちていた。

 

「…バーカ。」

 

「わっぷっ!?」

 

…だからこそ、その馬鹿の頭を優しく撫でてやった。急なことで変な声を出していた。慌てるように俺の手の影からこちらを見るルージュ。上目遣いになっている…が、その目はキョトンとしていた。

 

「俺は人に戻るまで死ねないよ。心配性な族長様を泣かせちゃ、俺がここにいる意味がなくなる。もう一つの家みたいなここを守るまで俺は居なくなっちゃいけねえの。…族長なら一言言えばいい。『いなくなるな』と。…それが命令なら俺たちは聞かなきゃ行けない。」

 

「…命令じゃ…ない。命令じゃなくて…めーれぃ…じゃあ…。」

 

「…あ。」

 

…やば。泣き出した。

 

「あぁっ。うんっ!!俺が悪かった、だから泣くな?な?」

 

「うぐっ…うぅっ…ないてなど…おらぬぅ…っ!泣いてなどぉ…ひぐっ…!」

 

ポロポロと泣き出す姿。

…まぁ、それを見てゲルドのナイフが首に触れる瞬間が脳裏によぎったけども。あれだ。今際の際ってやつだ。

 

という、現実逃避はさておき。

…胸の中で泣くルージュはやっぱり怖かったのだろう。幼くして全てを失い、族長となる。その状況の周りの目が、その状況の周りの態度が、彼女を不安のどん底まで突き落とした。減らず口を言い合う友達も、こんなことがあったなんて言い合う親兄弟もルージュにはいない。…彼女にとっては俺が初めてなんだ。こんな…アホみたいな言い合いをするのは。

 

「わかったわかった!!…約束だっ!!」

 

「ひぐっ…やくそく?」

 

そう言って俺は手を突き出す。…小指だけを伸ばしたその手を見て、ルージュはキョトンとする。泣き腫らんだ顔でも美人なのは親に感謝するべきだな。

 

「ほら、こうやんの。」

 

…そして、彼女の手を持って彼女の手の小指に自身の小指を絡める。

 

「指切りげんまん〜♪嘘ついたらハリセンボン飲〜ます♪指切ったっ♪…ってな。約束だ。約束。その儀式。これをやったら両者とも絶対にやらなきゃならない。」

 

「…なるほどな。こんな子どもっぽいこと…初めてやったよ。」

 

そう言ってルージュはその自身の手をギュッと胸に抱いた。まるで温もりを確かめるように、少し微笑みながら。…よかった。元気を取り戻したようだ。

 

「なぁ。…平和になったら、どこか行かぬか?」

 

「どこかって?」

 

「うーむ。…妾はこのゲルドの街…砂漠より遠くに行ったことがない。それは其方も同じ。だったら、一緒に歩いてみるのもいいだろ?な?」

 

…おおう。ルージュ様の押しが強いような気がします。

 

まぁ、子どもの提案を無碍にするほどの外道ではない。ましてやルージュの頼みだ。飲んでやらねえ理由がねえ。

 

「あぁ。わかったから早く寝ろ。明日も早いだろ。」

 

「ふふっ。ほんとか!?約束だぞっ!?」

 

「あぁ。約束約束。」

 

…やけにはしゃいでいるように見えたが、まぁ、いいだろう。俺も眠くなってきたし。…なんか、明日には全てが丸く収まってねえかなとも思う。英傑がいきなり生き返って、あの暴走ラクダを止めてくれるんじゃないかと。馬鹿馬鹿しい話だけど、この街を見てるとそう思う。このルージュを見てるとそう思う。

 

…それが本当になればいいのに。

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