「ふむふむ、なるほど。元はチュチュのような姿をしている生命体で人間の記憶を辿りに姿を形成しておると。それで…今はヴァーイの姿をしておるが、ヴォーイだと申すか。ふむふむ。…ん?妾はヴォーイに抱きついた?」
理解してくれたようでなによりです。
何やら族長ちゃんの顔が赤いような気もするが、気にしない気にしない。砂漠のど真ん中で公然わいせつ罪が成り立つなら、俺は2度目の死を味わうことになっていたでしょうね。
「こほん。と、兎に角。…お前は妾を助けた事実は変わらぬ故な。不問にしておいてやるから…その…時折、母様の姿を…。」
「それは難しい。」
「な、何故じゃっ!?」
まぁ、定義的にそういうもの。チートとかそんなんじゃないし、再現するのがせいぜいできる程度で。ただ、模倣はできるが、完全にはなれず、魔物や人間の血肉を体に入れないとダメだろうなぁ…などと言い訳してみる。
はっきり言おう。やってみなきゃわからんっ!!ただ、模倣品で族長ちゃん…もとい、ルージュを満足させてはいけないと思ってる。彼女が恐らく、前を向くための障害になるからね。…なんか俺、主人公っぽいっ!!
「…そうじゃな。お前は母様ではないからな。…して、お前はこれからどうする?人の体に擬態できるのならば何処へでもいけるじゃろう?」
「え?あー。」
「…その様子だと。見渡す限りの砂に迷ったというところか。お前を信用してないわけではないが、ゲルドの街には…。」
…まぁ、そうだよねぇ。別に助けたからと言って、何も見返りなんて求めちゃいない。
「まぁ、洞穴でなんとか過ごすさ。」
「…昼間は灼熱、夜は極寒のこの洞穴でか?」
それにお外には大量虐殺雷装置が歩行中。あー、くそっ。八方塞がりだぁ。食べ物もそろそろ肉が恋しいし、魚も食べたいし、水も欲しい。チュチュは体の水分が無いと干上がっちまうんだよ。ちくせう。
「そう言うなら、助けてくれよ。ルージュ。」
「…妾はゲルドの族長だぞ。ゲルドの皆を危険に晒すわけにはいかない。だからと言って別の街ならいいという話でもないが。…しかし、ルージュ…か。久々に名前で呼ばれたな?」
わぁ、あどけない少女がニヤリなんて笑ってまぁ…。これは不敬だとかなんとかでお亡くなりになる可能性大でございますわ。
「あれ、ダメだった…?」
「いいや。…この立場になると族長様と呼ばれるだけ。名前なんて気にしようにも無い。ただ…妾は族長として相応しく無いのでは…と思ってな。」
心中お察しします。
ただでさえ、幼いルージュが族長になり、その後に神獣暴走、あまつさえ宝具も盗み出される始末。それが尾を引いているのだろう。ルージュの顔色が暗くなった。
「…やはり、妾には何もできないのか。」
「話の腰を折るようで悪いが、お前は俺にとってはただのルージュだ。それ以上でもそれ以下でも無い。」
「…え?」
さっきの記憶をのぞいちまったからか、ルージュがそう悲観することも理解はできる。その上で俺ができることはなんだろうか。
「…よくわからんが、お前一人が気に病んで解決することならとっくに解決してるわ。もっと誰かを頼ってもいいんじゃないの?…一人で解決しようとしないでさ。」
「し、しかし…。」
「一人でなんでも抱えすぎだって。…別にルージュが間違えても誰かが責めるわけじゃないんだから。人は間違えるっ!!…ね?」
…うむ。なんて言葉下手なんだろうか。
冷や汗ダラダラね、ワタシ。
…と茶化してみるけど、結局、子どもに重圧がかかるようなのは嫌なだけで。ここら辺はゲルド族がどういう種族かによるから。女しかいなくて男性禁制だってのは知ってる。
「…腹減ったな。飯でも作るかな。」
「へ?こんなところでか?」
…ルージュちゃん、困惑中でございます。
そこらへんの鉄鍋を持ってきて、薪をくべればあら不思議。なんでもできる鍋ちゃんの出来上がりです。勿論、それだけじゃない。先程、ルージュが眠っている間に丁重にお話をして頂いた鶏肉とそこら辺に生えてた黄色いキノコを炒めたものと、適当にメロンと砂漠の…ビリビリフルーツ?かな。を甘く煮たやつ。…砂糖とか無いからメロンの甘さだけど。
皿はどこから出したって?
企業秘密。
「はい、粗末なものですが。」
「サークサーク。…頂きます。」
あら、流石はゲルドの族長。とてもお行儀のいい。笑顔で飯を食べる姿は未だ少女なんだよなぁ。あどけないっつうか、なんつうか。でも、まぁ、喜んでご飯食べてる様子を見るとなんか、こっちまでお腹いっぱいになってくる。
「うわっ!?パトリシアちゃんっ!?」
口元についた果実の煮汁、アザラシ君に舐められてるし。きゃっきゃっと戯れてる様子はさっきの暗い顔なんて忘れるほどだ。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末様でした…と。」
「しかし、まさか魔物に養われるとは。こんなおかしなことはない。」
…そうなんだよなぁ。
今の魅惑のチュチュボディもいいけど、討伐されちゃ世話ない。生きたいし、なんなら、人間として扱われたい。今の俺は赤髪のハイリア人の女性という感じ。まぁ、元の男との違いは特段感じないかな。関係ないけど。
人間として生きてもいいが、絶対どこかでボロが出る。平穏な生活などない。平穏に生きてえもんだ。
「心は人だよ。姿形は…かわっちまってるがな。」
「…神獣様ならば或いは。…いや、なんの確証もないが。」
「まぁ、暫くはここに居る。…どうする?送って行こうか?」
見たところ、ルージュは武器も持っていない。アザラシ君が送ってってくれると言っても外は電気蜥蜴やら電気チュチュやら電気コウモリやらでいっぱいいっぱい。
「だからと言って、お前も武器なんて持っちゃいないじゃろ。妾だって誇り高きゲルドのヴァーイなのじゃ。このままでも行ける。」
「あっそ。」
まぁ、俺も丸腰だもんな。
ところがどっこい。これもチュチュボディの力で解決。腕からチュチュボディを摘み、ちぎって武器の形を形成する。サーベル状の剣の完成。水さえあれば壊れることなく完全供給できるが、純水じゃないと無理なんで海水は無理なんで…と。
「…そんなぷよぷよで何が…。」
「薪をこさえる時にこれを使ってる。木を…それどころか、石を真っ二つにぐらいはできるぞ?」
「…へ?…お前は化け物か何かか?」
ジト目は気にしない気にしない。
まぁ、族長様がエスコートをお気に召さないなら良いけれど。そろそろどこかに定住しないと夜は防寒、昼間は防暑、しかも水源なしはこの身体には応えるぞ…。メロン様々だよ、全く。
「…そろそろ行くか。街の者も妾を心配しておるだろうし。」
「何かあったらいつでもおいで。まぁ、こんな砂地の洞窟だから何かもてなせるわけでもないけど。張り詰めてるだけじゃ何も始まらないから。」
「…優しい…な。…そうじゃ。雷鳴の兜。」
雷鳴の兜?
あぁ、あの賊に取られたとかいう街の宝が。…ちょっと待てよ。やな予感。
「あれを取り返してくれれば、お前のゲルドの街に来ることを拒むものはおらぬと思う。しかし、お前が魔物にならぬ、人を襲わぬを第一としてだが。」
「…ふむ。考えておこう。」
「…それじゃあの。また、機会があればな。」
そう言ってルージュは洞窟から出ていった。この近くにはあの無差別落雷マシーンも居ないから大丈夫だろう。さてと…。
「…雷鳴の兜か。」
…ちょっと探してみるかな。