ルージュと別れ、1日経過。
流石に砂漠の壁洞窟で暮らすには心底辛くなってきました。いや、昼間はいいんだけど、夜は冷凍庫だからね?オアシスの近くというわけでもないし、薪も枯木を集めたり、オアシスまで赴いて、枝を切り取ったりするだけで心許なくなってきた。
…ルージュちゃんに養ってもらうことにするか(クズ男)
と、結論づけた為、雷鳴の兜捜索に赴くことにする。この魅惑のチュチュボディの良いところは一つ。人間にも魔物にもなれること。んで、ちょっとおかしなところっつうか…ある程度怪しいんじゃないかって場所を見つけた。
電気コウモリを死闘の末、倒し、その羽や眼から自身を電気コウモリになれるようになった後、翼のパワーで空を悠々自適に飛んでいた時のことである。…なぜ死闘かって?
…ボクハ弓ガ苦手ダッタンダヨ。
で、空を飛んでいた時に見つけたのが、旅人がゲルド砂漠の奥の方、谷の中へと入っていくではないか。しかも、ついて行って入っていくと中には…掛け軸だらけの部屋に。…人が住んでいると考えないとおかしい。もし遺跡なら掛け軸は朽ちているだろう。
まぁ、お腹も空いたし、そんなこんなで帰ってきたわけだが。あそこなら屈強なゲルド族が入れないのも納得である。良かろう。潜入は大の得意だ。
こんなとき、壁も渡れて擬態もできる蜥蜴君が有用である。しかしまぁ、視界が人間よりも悪いのが玉に瑕か。今日とりあえず雷鳴の兜とやらを使わないと、薪が尽きれば明日には特大凍結チュチュの出来上がりだ。
「おい、警備は完璧なんだろうな?」
「はいっ!!全てはコーガ様のためにっ!!」
…なんだあの変態集団は。
丁髷を蓄えた赤全身タイツ集団を見て確信した。…怪しい。
地上に降りて人型になる。
「何者だぁ!?貴様ッ!!」
何者?
…うーん。チュチュって言ってもわからなそうだし…。そういえば、ルージュに名前言ったっけ?昔の名前なんて覚えてねえからなぁ…。
「わかった!!…バナナを狙いにきたなっ!?泥棒はいけないんだぞッ!!」
「……は?」
赤全身タイツのヒョロイ方がそう慌て出した。…うん。お前が言う?
取り敢えず、ナイフを出して臨戦体制。
筋肉質に見えんじゃろ?これでも女の子とアザラシを片手で運べるくらいにはチュチュ筋が発達してんだぜ?
「チッ!!やる気かっ!!」
赤タイツマンは丸いドーナツみたいな剣を取り出した。なにあれ、ちょっと可愛い。でっかい方の赤タイツマンはおっきい刀を取り出した。両手じゃないとキツそうなやつ。力持ちなんだなー。
勝者っ!!紫チュチュ侍っ!!
てか、俺すげえな。手だれ2人に無傷で突破。デカ赤タイツの方の剣は折れてるし。チュチュナイフすげー。
「うぅ…コーガ…様…。ずびばぜん…っ…。」
「…おい。」
…ボロボロのヒョロヒョロ男をのすのは些か悪役っぽいけど。此方も手段は選んでいられない。
「雷鳴の兜…どこにある。」
「らいめい…?…ゲルドの秘宝か。…あれは…コーガ様が…。」
…うっしっ!!見つかった見つかった。
遺言は受け取ったぞ?ヒョロタイツ。…地面で伸びて気絶してるだけだけどな。さてさて。その、コーガという奴をのせばいいのだな。
取り敢えず、中へと潜入捜査。……おおう。バナナが多い。
なんだこいつら、中身ゴリラなんじゃないか?相手を掴んで一緒に降りるタイプのゴリラ。下アピで煽ってくるタイプのゴリラ。バナナは朝飯で十分だなぁ。…と、勿論、バナナ以外も。
刀に、さっきのようなドーナツ型の刀、鎌みたいな刀に、弓などなど。え?バナナを武器庫に入れてるの?……もしかしてこいつら、バナナも武器に使うのか?
道阻むタイツマンたちをのして、辿り着いたのは…大穴の空いている部屋。なんだこれ。落ちたらただじゃ…すまないな。うーむ。ここでやるのは避けたいが…。
「…あん?誰だぁ?俺様の寝床にいるやつは。」
そうは問屋が卸さないと。
…さてさて、赤タイツの変態集団の親玉はどんなかなぁ?…まぁ、予想通り赤タイツの男。
「て、おおーっ!!いい姉ちゃんじゃないのっ。」
「は?」
「そうかそうか…。俺様に求婚するためにここまで…。」
…なんか、俺の姿を見て顔を赤らめてるんだけど。
ずんぐりむっくりの男。キモいような面白いような。まぁ、道程で邪魔になるなら、狩るのみだが。
「嬢ちゃん、名前は。いや…先に俺様が名乗るべきか。うん。可憐なお嬢さんを怖がらせてはいけないからなっ!!…俺様は、イーガ団の総長ッ!!強く、逞しい男ッ!!コーガ様だッ!!」
…なに、ラジオ体操でもしてんの?
周りが砂漠だからか、あの西部劇の丸い草…ほら、あれ、なんだっけ?…あれが転がってる様子が頭の中で再生される。こいつあれだ。…バカだ。
「さぁっ!!お嬢さん、名前をっ!!俺様は名乗ったぞ?いや、お近づきの印にバナナをあげよう。バナナパーティーだっ!!」
「…おあいにく様。野暮用につき、そんな暇はない。」
「そう、焦るな。俺様とお嬢さんが会えたのも何かの縁。さぁさぁ!!お名前をッ!!っと!?」
…付き合う暇はないっ!!
放たれた俺の斬撃をコーガは最も容易く、避ける。
「チッ!!…いやいや、そう怒ってはダメだ。うん。お嬢さんは気が動転しているだけ。…うーむ。やはり、バナナで話を聞いた方がいいだろうか。いきなり名前を催促するなんて失礼だしな!!」
…ポジティブすぎんか。ワレェ。
地団駄を踏んでいたにもかかわらず、すぐに飄々とした態度に戻るコーガ様。流石に俺も望んで女の格好してるわけじゃねえっつの。
「…雷鳴の兜、それを取り返しにきたッ!!」
「…雷鳴?…お前さん、まさかっ!?ゲルドの!?」
ようやっとコーガ様の態度が変わる。
地面を蹴り、前に出、コーガ様の上からナイフを振り下ろす。チッ。避けやがった。
「なんちゅうパワーしてんだっ!?地面が割れてんじゃねえかッ!!」
「当たり前だッ!!」
チュチュ筋、舐めんなッ!!
「雷鳴の兜かー。しかしなー。うーん。」
…あれ?
なんで攻撃しようとしないんだ。まさか…こいつ…本当に俺に惚れてやがるの?え?リアリー?マジ?
考え込むコーガ様をよそに頭がぽかんとする。
「普通なら渡さないんだがなぁ。お嬢さんと戦って死ぬ確率の方が…うーん。いーやっ!!ダメだッ!!それじゃあ、俺様がカッコ悪いじゃないかッ!!というわけでお嬢さん、覚悟ッ!!」
「どういうわけだッ!?」
…あ、やべ。思わずツッコんじまった。
まぁ、いい。戦うのね?…って、えーっ…。そんな棘鉄球、頭の上に浮かべるなんて聞いてないんですけど?
「くらえっ!!」
「おっと!?」
棘鉄球とチュチュナイフが噛み合って火花が散る。
いや、流石に魅惑のチュチュボディでもこれはあれだ。お薬飲めたねみたいになるっ!?ひき肉ならぬ、ひきチュチュゼリーになるっ!?
「うぉぉぉっ!!」
「なにぃぃっ!?」
全力で鉄球をかっ飛ばす。
その鉄球はコーガ様にぶち当たり、コーガ様は体ごと地面に叩き、落とされてしまった。…痛そうね。いや、のびちまったら意味がないっ!!
「雷鳴の兜、場所を吐いてもらおうか?」
「ぐっ!?…わかった、わかった!?その刀を下ろせ。くそぉ…せっかくゲットしたってのに…。ほらよっ!!」
おっと。
…意外と聞き分けがいいな。あの変態集団のボスなのに。というか。これが雷鳴の兜か…。なんか、虫みたいで可愛い。ちなみにコーガ様は地団駄を踏んで駄々を捏ねているが、無視だ無視。
「チッ!!絶対にまた取ってやるッ!!覚悟しやがれッ!!」
などと捨て台詞を吐き、コーガ様は消えていった。
…さて、取り敢えずこの雷鳴の兜をルージュの元へ送りに行きますかね。