やってきました、ゲルドの街っ!!
いやぁ、いいですねぇ。砂漠の厳しい環境に負けず、活気があって。砂岩でできた建物が結構雰囲気あって。
「賊めッ!!のうのうと帰ってくるとはどういうつもりだッ!!」
…この状況じゃあなければ。
正門前で国宝を持った顧客に門番勢揃いで取り囲む?普通。…するよね。やっちまっただぁ…!!涼しい顔してるけど内心、汗ドバドバよ?
賊騒ぎに自動雷落とし殺戮マシーンことナボリス君の暴走、族長の怪我となればそりゃあ血眼にもなるわよね。だけどさ…んだ?何故、こんな街の中のゲルドの戦士が勢揃いしました。みたいな状況になっちゃってんの?
はっきり言います。助けて、ルジュえもんと叫びたい。しかし、この状況で族長を助けた功労者だよ?私と言っても信じてもらえないのが事実。ほら、街の中の観光客らしき人たちも何事!?みたいな感じで見てんじゃん。
神様〜っ!!俺が何をしたっていうんですか!?旅人倒して、幼気な少女を洞穴へ運び、記憶を読み取り、母親ヅラしただけじゃあないですか。それ以外は良い仕事しただけです…ッ!!
「い、いやぁ…ちょっとそこで拾っちゃいまして…アハハ…。」
嘘が下手ァァァ…!!
何が、頭の後ろを掻いてそこで拾ったよ…だよ。ほら、ゲルドの兵隊さん達の目、もっとキツくなっちゃったじゃないの。なんですか?ヒョロヒョロ女は変態赤タイツ集団を倒しちゃダメなんですか!?
「…嘘をつくな。ならば、我々が血眼になって探す必要はないッ!!」
全くもってその通りですッ!!
…ルージュ…早く助けて…。
「待てっ。」
おお、女神じゃ。女神が来たぞよ。
街の中から筋骨隆々の大剣持った女性と共に族長様のお通りだッ!!って状況。…ルージュもあんなムキムキになるのかな?なんか、想像つかな…ゲフンゲフン。
「その者は妾を助けてくれた恩人じゃ。更には、雷鳴の兜を約束通り、賊から持って帰ってきてくれた。中でもてなしたい。」
…流石、族長。鶴の一声で兵隊達は霧散していきましたよ。あぁ、助かった。流石の俺もあの数相手じゃ、チュチュ太郎死すってタイトルがついてたよ。
「…助かりました。族長様。」
「ほう?…前はルージュと呼んでおったのに。」
………ルージュさん?
此方が謙って族長様と言ったのには理由がある。それは隣のいかにも魔物を一刀両断するよ系女子である側近らしき人が俺を睨みつけているからだ。しかし、ルージュは揶揄うようにニヤリと笑い、そう言った。
…ほらほら、不敬だと言ったような目で周りが変わったよ。ルージュさん。
「くくくっ。冗談じゃ。ほら、早う入れ。妾の宮殿へ案内しよう。」
…生きた心地がしません。族長様。
…しかしまぁ、あれだ。
砂漠なのにしっかり水の管理も怠らず、子供たちも駆け回るくらいに元気で。活気に満ちている。…一部、女かどうかわからないのもいたが。あの岩男は男だろ。
店を構えるといってもテントを立てて、マットを床に敷き、そこに座るという感じ。街の中まで砂埃は入ってるけど…食品にはつかないのかな。アクセサリーのお店もあるんだね。
…と、門からそのまままっすぐに。階段を登って玉座が見える。なるほど。此処なら、街のみんなが見渡せる。ルージュの…いや、ゲルドの長の配慮が感じられる。…ただ…若干、ルージュには椅子が高いようで階段とチャイルドシートみたいなのが置いてあるのは可愛いポイント。
「…おい。お前、今失礼なこと考えただろ…。」
「滅相もございません、族長様。」
ルージュ様、ジト目はおやめください。その隣の方に切り捨てられてしまいます。
「まぁ、よい。…約束通り、雷鳴の兜を取り返してきてくれたんじゃな?」
「ええ。…約束しましたから。」
「うむ。確かに。…では、ビューラ。少し席を外しても良いか?2人で話したいのじゃ。」
ルージュのその言葉にビューラと呼ばれた魔物両断系女子は少し驚きつつもゆっくりとうなづく。
…うむ。ルージュちゃん、私のことも考えてくれたのね…。ありがたやありがたや。悪魔かと思えば、やはり天使だった。と、ルージュの部屋の前のベランダ…かな?ゲルドの街が見渡せるところへ。
「…まさか本当に持ってくるとは。なんだ?賊を全員、ドロドロに溶かしでもしたか?」
クスクスと笑いながら、えげつないこと言うなこの子。俺をなんだと思っているんだ?善良なチュチュ様だぞ。
「そんなことはしてないよ。…ただ、全員、実力で切り伏せた。」
「…その細い肢体でよくもまぁ、そんな剛力が出せるものじゃの。」
「チュチュ筋の力よ。」
「なんじゃ、それは。」
おおう。本日2度目のジト目。
チュチュ筋のことは置いておいて。まぁ、事実を述べているだけだから仕方なく。ゴリラじゃないよ?人間は脆い。
「…兎に角、助かった。妾じゃ奴らには勝てっこなかったからの。」
「良きにはからえ。」
「調子に乗るな。」
いてっ…。蹴られた。
酷いなぁ。善良なチュチュ様なのに。
「…あと、お前がヴォーイであり、魔物であることはこの街の者には内緒じゃ。もし、お前がゲルドの街に危害を加えようというのであれば…。即刻、消す。」
「わかってるよ。どっちみち、戦っても死ぬだけだ。」
あの変態集団より此処の女の子達の方が強いだろ。腹筋バキバキ、ムキムキだったぞ。…ルージュはぁ…うん。まだまだだね。
「ていっ。」
「いてっ!?」
…本日2度目のハイキック。
お尻がぁ…お尻がぁ…。まさか、2度もダメージを喰らうとは。ルージュの方を見れば、むすっとした顔で俺を睨んでいる。
「…お前じゃなけりゃ、八つ裂きしていたところじゃ。」
「それはそれは…。」
お尻という尊い犠牲が出たけどな。
「さて、俺はこれからどうすりゃ良い?…どこに住めば良い。」
「…そうじゃのう。」
住所不特定の名無しの権平にようやく住所ができる。わーい。やったぁ。洞穴生活から進化じゃっ!!
「妾と共に暮らすか。」
「……ん?」
…聞き間違いかな?
ルージュと一緒に暮らすって聞こえたんだけど…?
ルージュはキョトンとした顔で俺の顔を見ている。いやいや、キョトンとしたいのはこっちですがな。
「空き家を今から探すのも良いが、そっちの方が楽じゃろう?無論、ただお前に妾の近くに置いておくわけではない。お前ほどの実力者ならば、妾の側近で活躍できるし、妾としてもお前を監視するという名目がある。宮殿の空き部屋に暮らすが良かろう。」
「それは…同棲というやつで「せいっ。」痛えっ!?」
…ルージュさん…私のお尻のライフはもうゼロよ…。
「バカなことを言うな。妾の部屋で一緒に暮らすわけじゃあないのじゃ。…そんな、ヴォーイとの同棲など…。」
あらまぁ、顔を真っ赤にして。
族長とはいえ、女の子なのね。可愛い。
「…なんじゃ、ニヤニヤして。妾の顔に何かついてるか?」
「別に?…まぁ、流石に人の目を気にする必要があるけどさ。…俺の前じゃしっかりしなくて良いからね。」
なんというか、我慢して欲しくない。
族長だからといって、ゲルドのヴァーイだからといって生き生きとした女の子をこの街で見た身としては、ルージュだけ我慢するのはおかしな話ではないか。
「…なんじゃ、急に真面目になりおって。」
「いつも真面目です。」
「…妾は族長として皆の基本とならなきゃならぬ。だから、しっかりしなくちゃ…。」
「…うん。だから、俺の前では良いんだよ。見られなくちゃいい。」
少し、自信を持ったルージュが少し狼狽えたように見えた。町民の不安は意外にもルージュに伝わっている。俺をここに入れた時の目、本当に賊ならどうするといった目も多々見えた。
「1人ぐらい、お前を子ども扱いしても良いじゃないか。」
「…善処する。」
…そのか細い声はどこか、照れているようにも見えた。