不定形人間は族長様を救いたい   作:紳爾零士

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不定形人間は族長様を愛でたい

だぁぁぁぁぁッ!!

平常心、平常心、平常心…!!

 

訓練人形に全てを乗せろ、一刀一刀を乗せろッ!!ルージュ様、後ろでクスクス笑いながら見ないでくれなんし、気が散りまするわっ!?

 

…と、いつものように頭が狂っている私でございます。いや、今朝起きたらルージュと同じ布団にいて、ルージュをまさか抱き枕のようにしてるとは…!?その禊で素振り100回10セット中。ことの顛末を知っているルージュ様はまるで遊戯でも見るかのように、プルプル震えながら、笑っている。

 

いやぁ、そりゃね?

ルージュちゃんの健康的な腹筋と太もも良いね、ぐへへっ…みたいな感じなら納得いくけども。不可抗力なんですわなぁ…男なら言い訳すんなっつうの。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

そんなこんなでようやく終わり。

あー、地獄とはこのことか。ゲルド砂漠百周よりはマシ。あれ、キッツイからね。足砂にズボズボ入るし、流砂には勝てないし…うんぬんかんぬん。

 

「…ルージュ様?」

 

「ぷっ…くくっ…いや、すまん…。今朝のお前の慌てっぷりと来たらっ…ぷっ…!!」

 

…あー…ご機嫌ですわ。この子。

腹筋、指でなぞってやろうか、このヤロー。ヤローじゃないけどさ。ボルドーさん、汗だくよ。風呂入りてえ…。

 

「…なんか目がやらしいぞ…。」

 

「別に〜?ご機嫌な族長様を懇切丁寧にマッサージしてあげようかと思っただけですし?」

 

「…すけべじゃな。」

 

出たぁ!族長様のゴミを見るような辛辣な目っ。その手の人にはご褒美ですな。私?私は普通に傷つく。…てか、すけべって言葉、知ってたんだ。…うーむ。手をワキワキするのはやめておくか。今後。

 

「で?…ナボリスの件は進展あった?」

 

「急に冷静になるな。」

 

と、ルージュは真顔。いつもの玉座まで行く。何のためにルージュはここにいるかは知らんけど…まぁ、象徴みたいなもんで。いるだけでお仕事みたいな。ビューラさんも例のルージュ寝落ち事件の一件があるにも関わらず、何故か俺にルージュの身の回りの世話を一任している。あくまで、ビューラさんはルージュに何かあった時の矛なのだとか。

 

「…特にこれといったことはない。そもそも、神獣に入り、鎮められるのは4人の神獣に選ばれた英傑とその中心の…退魔の剣士と呼ばれた英傑のみ。妾らではなす術はない。」

 

た、大麻の剣士?

え、合法なの?この国では。まぁ、国によっては合法なところもある。ジパングが違法なだけだ。…しかし、外も危ないもんだな…吸って、剣を振り回す蛮族が英傑とは…。

 

「…何を考えておるかは知らぬが、くだらぬことだけはわかった。説明してやるからじっとしておれ。」

 

と、ジト目族長様に釘を刺されてしまった。こう言われれば、はいと言って、正座になるしかない。隣のビューラさんの目すら厳しいもんで。さぁ、無視して族長様の昔話が始まるよ!!

 

「妾もこれは言伝で聞いた事じゃが…100年も昔、ハイラルは未曾有の危機に瀕していた。厄災ガノンの復活。それにより、厄災対策に掘り出された古代遺物、人はこれをガーディアンと呼んでいた。一際大きいものを神獣と。その神獣に乗れる強き者と厄災ガノンを討つことのできる退魔の剣を持つ者…そして、ハイラルの姫の邪を祓う力が厄災ガノン討伐に不可欠だった。

 

姫は英傑を、慈愛の力を持つ美しき清流の戦士…ゾーラ族のミファー様、守りの力を持つ岩石の如き豪傑な戦士…ゴロン族のダルケル様、風を自在に操る天空の王者…リト族のリーバル様…そして、雷を自在に降らせる、まさにゲルドの誇り…ゲルド族のウルボザ様に頼み込み、ハイラルのヴォーイを退魔の剣士として迎えた。

 

しかし、厄災はその上をいった。何が起こったかは分からぬが、夢半ば…英傑たちは死に、退魔の剣士は今なお、消息不明。恐らくことの顛末を知るものは死んでおるだろう。…しかし、嘘か誠か、退魔の剣を持つ剣士は生きておるという話も…ある。」

 

「…なるほど。…です。」

 

…そうだった。ビューラさんの前でタメ口厳禁だった。

 

まぁ、こんなちっちゃい子でも歴史のお勉強をしているのだと関心関心。しかし、あの全自動雷起こし殺戮マシーンことナボリス君を止めるにはそんな噂に縋らなくちゃいけないとはな。…ふむ。

 

「今、妾にできるのは…ナボリスがゲルドの街に危害を加えぬよう…見張ることのみか。ボルドー、お前も出来ることはしてくれ。無論、怪我せぬようにな。」

 

…お前が言うか案件。

無茶して怪我をしたのはルージュの方だというのに。やっぱり、背負すぎだと思うのはおかしな話ではない。ビューラさんも釘を刺したいんだろうが、相手が族長という立場ゆえに、他言無用ということか。ふーむ。

 

まぁ、あとで釘を刺しておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ。」

 

「…はい?」

 

…その日は何事もなく、鍛錬とかご飯食べたりとかして夜になった。もう寝るだけ、そう考えていた俺の目の前には…当然のように我が自室の寝具の上に鎮座する族長様。…WHY?何故?

 

「…なぜ、当然のようにいらっしゃるのです…?」

 

…やべ。誰もいないのに敬語になってしまう。

 

「ふむ。妾の寝屋にお前を通すようビューラに言ったら諭されてな。仕方ないから、今日もお前の寝屋にやってきたというわけじゃ、何か問題か?」

 

…問題か?じゃないよっ!?

いや、昨日のは不可抗力であって、そんな首傾げて言われても。…自然とため息が漏れてしまう。

 

「そんな関係じゃねえだろ?…早すぎねえか。」

 

「何がじゃ?…別に変な意味はないぞ?昨日、妾は久方ぶりに安眠できてな。お前がいることでせらぴー?効果があることに気づいた。だから、妾の為に共に寝てほしい。ゲルドの街にいるお前への命令じゃ。」

 

命令じゃ、にこっ。じゃあないのよ。

ルージュ様?ヴォーイは皆狼なのです。軽々しく一緒に寝て?なんて言うんじゃありませんよ。生殺…まぁ、俺は今は女の子なのですが。

 

「…つまり、ルージュちゃんは眠れないからボルドーお姉ちゃんに一緒に寝て欲しいと。そっかそっか。」

 

「…寝れないわけじゃないがな。これから一緒に寝ることで先の一件は不問にしてやる。…どうじゃ?悪い話ではなかろう?」

 

…先の一件って。

抱きつく以上のことをしてもおかしくないんですがね。まぁ、潔くお相手するしかないわな。…だけど。

 

「…何か思うところでも?…ナボリスの一件について。」

 

「うえっ…。ば、バレたか。お前はいつも勘が鋭いな…。」

 

あら、ちょっと嫌そうなお顔。

…すぐにため息をついて遠いところをむき出した。ふむ。やはり、思うところの一つや二つはありそうな。

 

「…神獣様に乗り込めやしない。見ているだけの我が身が虚しくてな。ナボリスを鎮めるにはありもせぬ伝説に縋るしかない…か。ハイラルの…しかも、ヴォーイはこの街に入れやしないのにな。…そんな妾を皆はゲルドの族長とは認めてくれぬよな。」

 

「…まぁた、そんなことを。…そう思ってんのはお前だけだろ。」

 

…と、言うのがわかってるかのようにルージュは微笑む。悲しげに。恐らくは俺が優しさを働かして、良い感じに取り繕ったとでも思ってるんだろう。そんなことする奴は褐色ロリ幼女の腹筋に欲情なんてしませんっ!!断言できるわッ!!

 

「いくら族長とはいえ、子どもにあのバケモンを鎮めろなんて馬鹿なこと言う馬鹿はいねぇって。居たら、族長権限で言ってみろ。お前がやれって。」

 

「いや、それはまた違うだろ。」

 

そうかね?

…まぁ、でもルージュの顔がさっきよりも晴れやかな笑みに変わったような気がする。あくまで気がするだけだけど。

 

「…妾を甘やかしても損しかないぞ?」

 

「知るかよ。甘えたきゃ勝手に甘えろ。まだ子どもなんだから。」

 

「ふふっ。全く、変わったヴォーイじゃの。」

 

…まぁ、生まれ変わったらチュチュで女の姿になってて男なのに男禁制の街に入れて、そこの族長様を呼び捨てで呼んでる男が変わってないわけないじゃない。…でも、ルージュがちゃんと笑えるようになったのはよかったかもな。

 

「さて、寝るか。」

 

「うむ。…抱きしめすぎて、妾を殺さぬようにな?」

 

「もう抱きしめねえよっ!!」

 

………多分。

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