青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。SEASON3   作:黒マメファナ

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※これは原作の「SEASON3」の設定を踏まえて再編している物語です。そのため前シリーズの第七章⑤の曇天スピラエア以降と幕間の太陽メモリーズシリーズの内容と矛盾していますが新しい世界線として認識してください。
 色々と説明を省いているので内容を思い出したい方や未読だけど本作に興味がある方は前作のリンク貼っつけておきます。どうぞよしなに


前作「青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。」URL
https://syosetu.org/novel/238759/



第一章:新時代フラワーズ
プロローグ:前日譚


 教師なんて仕事は、やっぱりロクなもんじゃねぇ。つくづく、新しい年が始まる度に──年度が終わる度にそんなことを実感させられる。具体的に言えば繁忙期なんだから給料がもっと欲しい。

 一昨年、屋上でタバコ吸ってた不良教師(オレ)はその前から関わっていたメンヘラクソ悪魔、もとい氷川日菜(バカヒナ)との関わりと黄昏の屋上でロマンチックな通報騒ぎから始まった美竹蘭と知り合ったことがきっかけでオレが何を目指していたのかを思い出すことが出来た。

 ──んで、去年度はそのバカヒナと今井リサが卒業し、なんの因果か関わっちまった他校の氷川紗夜、白鷺千聖も無事花のJKを三年間走りきり、次の世代へとバトンを繋いだ。オレも久ぶりの担任、蘭達のクラスを受け持ち教師としてのあり方を色んな方面で考えさせられる一年だったし、評価的にはそこそこあったらしい。

 

「だからってなんで三年の担任なんだよ意味わかんねぇ……」

 

 去年度の終わり、二月頃に次のお仕事発表会という面白くもなんともねぇ人事が発表され、その前の年まで不良教師やってたオレの配属は「三年A組」と記されていた。副担任すっ飛ばすな、ふざけてるだろこの学校。

 しかも何がロクでもねぇって同期が見事一児の父親になったと報告も重なったことでオレの未来が真っ暗な気分になる。二年前に結婚して気が早い以前の問題で、そもそもこいつの奥さんは羽丘(ウチ)の卒業生なんだよな。

 

「はぁ……いっそ結婚して、子どもでも作ればオレも幸せになれるもんなのかね」

「──通報していい?」

 

 いつもの如く放課後に寒空の下だろうがお構いなしにタバコを吸って独り言を呟いていると後ろから素っ気ない言葉を向けられる。

 デジャヴがすぎる、第一なんで結婚願望で通報されなきゃならねぇんだよ。オレだってもう三十路突破しちまったんだ、そういう話を考えて一生独身か婚活するかっつう岐路に立つ時期なんだよ。

 

「一成、まさか日菜さんと……?」

「誤解だ、たしかに今じゃ合法かもしれねぇがオレにあのメンヘラクソ悪魔と同棲しろってのか、無茶だろ」

「じゃあ……白鷺さん?」

「あいつは百合の道を歩み始めたからオレが挟まるわけにはいかねぇ」

 

 同棲、じゃなくてシェアハウスをし始めるらしい二人の間に挟まったら千聖と松原の両方にどじゃ〜んと異次元にぶっ飛ばされそうなのでしばらくはノータッチで頼む。

 結婚願望をオレが口にしないのにはそういう理由がある。元生徒、現生徒、他校の生徒合わせて肉体関係が五人だ。ここで口にすればオレはメンヘラかヤンデレのどっちか、あるいは両方に殺される。

 

「担任、決まったの?」

「……ああ」

「ふぅん」

 

 そんなオレの危機感を察知してるのか、蘭は話題を変えてくれる。

 本来はこの時期に生徒に人事を教えるのはダメなんだろうが、オレは不良教師、三年の担任になったことをホイホイと蘭に喋る。すると今年担当していたクラスの赤メッシュは明るく微笑んでみせた。

 

「じゃあきっと、あたしらの担任だね」

「ら……って」

「どうせ五人一緒でしょ?」

「……そこまで知らんが、まぁそうだろうな」

 

 問題児美竹蘭の制御に成功したのは単にモカ、宇田川、上原、羽沢の四人がいてくれたからだ。オレだけじゃとてもじゃねぇけど反骨赤メッシュちゃんを清く正しい方向には進めさせてはやれないしな。

 とはいえ、とはいえだ。またオレに担任を任せるのはやめて欲しかったな、特に蘭じゃなくてモカの。

 

「よんだ〜?」

「呼んでねぇ」

「え〜、つれな〜い、せんせーが心の中で、モカちゃん愛してる〜って言ってくれたから〜、出てきたのにさ〜」

「愛してる、愛してるから担任教師に抱きつくのはやめてくれ」

「愛してるからむり〜」

 

 ──とまぁ頭の中で名前が上がった瞬間にヤンデレの方のクソ悪魔が来た。

 わざわざ屋上でさむーいと抱きついてくるが、こいつは暖かくても寒くても関係なく抱きついてくる。後は食べてるか寝てるか発情してるか病んでるかのどれか。オレの中では蘭なんて目じゃねぇくらいぶっちぎりの問題児である。

 

「……そういうことで、来年もよろしくな」

「は〜い」

「うん」

 

 モカは寂しそうな顔をしていたが、それもしょうがねぇ。

 学年が一つ上がり、二つ上がり、オレがコイツらと爛れた関係を持ってから既に三年目に突入する。

 そしてその一年が終われば、否応無しに卒業することになる。こんな気軽に会う日常は減るんだろう。

 ──それが寂しいと思うオレもまた、ロクなもんじゃねぇけどな。

 

 

 


 

 

 

 

 

 それから二ヶ月が経ち、無事に三年A組の担任として「Afterglow」の進路相談やら卒業を見守っていく担当になっちまったことを憂う暇もなくもう一つの問題に直面していた──そう、顧問の問題である。

 ヒナからは「面白い子を勧誘しといてね」と言い含められてはいるが、お前以上におもしろいヤツは知らん。

 

「え〜、だってさ、あたしが遊びに来る理由として、天文部は残しておいた方がよくない?」

「オレに会いに来る理由か」

「そーゆーこと! でさ、どーせなら部員の子もるんってくる子だったら楽しくない?」

「お前の楽しいのためにオレが労働させられるのか、やってられるか」

「お給料はカラダで払ってあげるからさ〜」

「支払うのはオレの方だよな、それって」

 

 言い含めた癖になんで居るんだろうか、というツッコミはもはや野暮だしスルーしておく。後お前、卒業したとは言ってもまだ未成年だからな、絶対に吸うなよ。

 そう言うとヒナは今更、とケラケラ笑い出した。

 

「ったく……にしても、まさか女子大とはな……いや千聖も紗夜もだが」

「ねー、千聖ちゃんあたりはふつーの大学行くと思ってた」

「まぁいいんじゃねぇの、クソビッチが焦れる対象がいねぇんだし」

「確かに」

 

 千聖とリサ、それと湊と瀬田が芸術学部があってバンド的に音楽にも強い「四ツ葉女子大」へ、紗夜とバカヒナ、後は大和と松原が「慶鵬女子大」と偏差値高めの女子大へ。

 特に紗夜とヒナは姉妹でイチャイチャとキャンパスライフを送ってるらしいと羽沢珈琲店で松原から聞かされた。

 

「学部は違うけどね〜」

「ヒナって学部なんだよ」

「人間科学部」

「……お前が?」

 

 思わず訝しげな表情を作ってしまった。ヒナの学部はいわば「人間」に対する諸々の学問だ。外面にあたる生物学や生命学に加えて内面にあたる哲学や心理学、更に教育学や看護学までその範囲の中に入ってる。教育学部出身でありある程度その辺の学問もかじってるかつヒナの内面をある程度知ってるオレからすれば耳を疑うような発言だ。

 

「ほら、前からあたしじゃない他人に興味があるって言ってたでしょ?」

「言ってたな」

「心理学とか哲学とか学べばさ、そういう興味をどーやったら知ることが出来るか、わかりそうじゃない!?」

「そうかよ……まぁオレは進路相談されたわけでもねぇし、とやかくは言わねぇが」

 

 ちなむと姉は法学部らしい。うーんテンプレ、あいつは偏差値が一番高いからって選んでそうなのか弁護士にでもなろうとしてるのかわからん。わからんけど雰囲気的に似合ってるとしか言い様がない。

 

「教育学もあるから、頑張れよ」

「その時はカズくんに頼っちゃおうっと」

「幼教じゃなきゃな」

 

 しょうがないというか、あいつらが構ってちゃん体質なのかオレが無意識に構ってるのかは知らないが生徒として数えてるメンツの進路はヒナを除いて全員把握してしまっていた。

 まず千聖が文学部、これは単位を取るのが楽でしょうということらしい。大学ナメてる。

 リサが国際学部、色々と興味が出たと言ってたが詳しい話はオレもまだ聞けてない。

 後は松原も千聖と大学は違うものの文学部で大和が社会学部らしい。後は丸山が千聖と一緒だったってことと湊が芸術学部ってのはオレが得てる情報だ。

 

「でもさ、よかったよねぇ」

「何が」

「千聖ちゃん、カズくんのお陰で電車の乗り継ぎなんとかなってるって」

「……そうか」

 

 ああ、シェアハウスの件だな。

 二人の大学はそこそこ距離がある。あるって言っても電車で通い合える範囲だからそう身構えることでもないんだが、松原と千聖のコンビとなると話は変わる。

 方向音痴がもはや異能レベルの松原とデートの時に何度教えても電車の乗り換えで混乱していた千聖だからな。

 

「結局中間地点じゃなくて、慶鵬の近くなんだっけか」

「そ、あたしとかおねーちゃんが出来るだけ一緒に行ってあげてる」

「近くなのに」

「近くなのにね」

 

 話し合った結果、千聖が電車通学になり何度か通ってルートを頭に叩き込ませてやった。その時にオレはなんで他校のお前の進路の、しかも電車通学慣れのために休日潰してるんだよと文句を言ったら、私だって生徒でしょうと魔性の微笑みを向けられて何も言えなくなった。結局デートになってたし、千聖が楽しそうだったからよかったっちゃよかったんだけどな。

 

「何かあったの?」

「よく考えろ、千聖だぞ相手……もう覚えてる癖にわからなくなったの、とオレを呼び出そうとするに決まってるだろ」

「あははははは、千聖ちゃんらしい!」

「……あれで乙女だからな、頭ん中」

 

 遠回しでいじらしい誘い文句、そんなお姫様の手を取ってしまうオレも大概ではあるんだけどな。もうちょっとなんて言うんだろうな、大学の近くで隠れ家的な喫茶店を見つけたので、連絡をいただければ案内しますと生真面目に隠しきれてないソワソワ感と待てが出来てる賢い犬感が出てる紗夜を見習ってほしいよ、お前も千聖も。

 

「なんかね、おしゃれなバーもあるって」

「未成年」

「来年行こうね」

「誕生日は三月だろ、お前も紗夜も」

 

 ほぼ二年後じゃねぇかとツッコミを入れる。成人式よりも二ヶ月後の話だ、その時までオレを青春で振り回すつもりかと問うとヒナは誰も離れようとしないじゃんとそっぽを向いた。

 まぁ、今年度末までは無理だろうな、モカと蘭が居る限り、先に卒業したからってはいさようならってわけにはいかねぇだろう。

 

「ちゅーして」

「ここ部室だ……バカヒナ」

「だーれもこないもん、カズくんが欲しい」

「後でな」

「ちゅーだけでいいからさ〜」

 

 その手は食わねぇからな。ヒナのちゅーしよからのえっちしよのコンボは当たり前の日常だった。屋上で最後の最後までそれで、卒業式の時もずっこけたからな。

 とはいえ、去年のあの事件は相当──オレも大人気なかったな。

 

「あー、浮気騒動」

「お前のだからな、本当にバカだろ」

「でもそれでちょっと素直になったカズくんにきゅんきゅんしちゃったんだもん、あれはあれでよかったなぁ」

 

 黙れ、と思わず口から出てしまう。

 ちょうど一年ほど前だ、このメンヘラクソ悪魔はあろうことか、アイドルで生徒会長の分際でよくわからん男とホテルへと入って、平然とそれがカレシだとのたまった。それで怒ったわけじゃねぇんだが。

 

「あれ? 妬いちゃった? あたしにカレシができたの知って、カズくんはどう思ったの?」

「どうもこうもねぇよ、バカヒナ──オレはどういうつもりか訊いてんだよ」

「妬いちゃったならしょーがないなぁ、あたしは別に本気じゃないよ? ただちょっとしつこく誘ってくるからさ、諦めてくれるならと思って一回だけ」

「……バカだな本当にお前は」

 

 妬いたよバカ、とそれだけを言ってオレは二度目に誘ってきたそいつを教師の立場を使って追い払った。そうしたらヒナはますますオレから離れなくなっちまんだが、まぁあんなところで意地張ってヒナを突き放すよりはよっぽど後悔しねぇだろうと思うことにした。

 同時にヒナの真意を知ったんだ。

 

「なんかさ、最近のカズくんってどっかつまんなさそうだなぁと思って、だからあたし達がいる以上そんなことにはならないよって教えてあげたかったんだよね」

「そんなことって」

()()()()()()()だなんて、あり得ないよ!」

 

 それからもう一年だ。確かにその間にも色々なことに巻き込まれ、名前を個別に覚える他校の生徒も、羽丘の生徒も増え、気づけば凪いでいたのは春の間だけだった。

 流石に肉体関係は増えなかったけどな、いや五人でも多いんだよ。正直感情を抜きにすれば減らしたい。

 

「高校卒業しても、パスパレはなくならないし、カズくんもいなくならない……あたしの青春はまだまだ終わらないってことだよね」

「そうだな、大学なんてまさに青春の集大成だろ、思う存分青春しろよ」

「そーする」

 

 ヒナの課題、青春をしゃぶり尽くすという言葉のそのままに、こいつは傍若無人に大学生活を過ごすんだろう。それを見守らせてくれるっつうんだから、オレはそれでも幸せものだよ。

 結局、その日はヒナとくだらねぇ雑談を繰り広げるだけで時間が消費されていき誰も仮入部をするやつもいなかったが、それから数日経つと入部届が提出されたことを知った。

 その人物は一年、外部から来た──と言っても最近は中学は花咲川だったところから羽丘に来るやつが結構増えてるし逆も然り、数年前とは諸々の、端的に語弊を恐れずに言えばヒナやら蘭たち、戸山たちのせいで、状況が変化してるんだよな。

 

「……高松、あかり、でいいのか? ヒナの眼鏡に適うやつだといいけどな」

 

 少し癖のある「高松燈」という字を見てそう呟いた。

 まぁでも、羽丘の天文部は変人の巣窟、というのが通説であるためあんまり心配はしてねぇけど。なんせヒナの先輩もヤバいやつだったし。

 顧問であるオレとしては、普通に星を観たいとか、或いは──そうだな、一昨年の文化祭でのプラネタリウムで刺激を受けてとかそういう入部希望者が居てくれたらいいんだけどな。

 この時のオレは、それが無理な話であることも薄々解っていた。未来の話をするなら、それから一年後に入ってくるであろうオレにとってのもう一つの転機となるであろう最良の縁を結び直してくれるあいつのようなやつではないことは察していた。

 

(ともり)ちゃん、おはよー」

「……ん」

 

 だから、後に会う高松が自分の道標をもう一度見つけるのは、オレの役割じゃねぇ。所詮は絆して、ヤってを繰り返した淫行教師だ、ちゃんと青春しているやつが歩む道を見つけるのは、自分自身以外だと「仲間」ってやつなんだろう。

 なんて格好つけたところで、笑ってくれる悪魔は卒業しちまって隣で向日葵を咲かせてはくれねぇんだけど。だけど、オレというやつはガールズバンドやってるJKのトラブルを司る神様に愛されてしまっているということもまた事実で、嫌な事実だ。どうせ愛してくれるならガールズバンドやってるピカピカの太陽神でいいんだよな。

 

「こ……ここが、羽丘……っ、清瀬先生の……いる……わ、私にだって……出来るもん……!」

 

 不穏な影にも、これから出会う不思議ちゃんの影にも気づかず呑気に蘭たちを構って、担任して、時折屋上でタバコを吸う日々を送るオレを神様は許しちゃくれない。放っておいてもくれない。

 ──これはオレが歩む、もしも、というよりは後から加わった色々がオレに影響を与える別の物語だ。

 

 

 

 




しばらく週一とかになると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
一番しなきゃいけないのは語られてない「SEASON2」の間に何が起きたのかなんですけどね。

期間が空いてるのでおさらいキャラ紹介しときます。

○清瀬一成
 ロリコン変態クズ教師(30)のすがた。天文部顧問で担当は英語。一昨年は担任ではなかったがそれ以降は二年A組、三年A組とアフグロの担任をしている。登場当時は28だった男も今年で31歳、だがまだ性欲的な意味でも健康体である。
 色々あって屋上でタバコを吸う、日菜とカラダの関係を持つ、などの不良教師。現在は一応真面目に担任をこなしつつヒロイン五人とイチャイチャしている。
 今作は新ヒロインのせいでやや考え方に変化があり、初期版とは違う道を歩んでいる。

○氷川日菜
 不良のメンヘラクソ悪魔ちゃん。無事に? 高校を卒業し晴れて大学生活を大好きなおねーちゃんと歩んでる。クズ教師とは高校一年生の冬からの付き合い(意味深)で彼と一緒に屋上でタバコ吸っていた。
 天才というよりは天災系だが去年は最悪なことに別の男とホテルでワンナイトという浮気までやらかしている。初期版はクズ教師へのあてつけでここから関係を続けることになるが今作では既に関係は断っていつものカズくんラブ勢に戻っている。
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