青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。SEASON3   作:黒マメファナ

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つまりは日常回、いつも通りだね


②雪柳ストーキング

 先日千聖から突如ぶっちゃけられた六番目と七番目の女という身に覚えのねぇ存在の情報を収集すべく、オレは貴重な日曜を使って羽沢珈琲店へと足を運んでいた。いやそんなのいつも通りでしょってツンツンしたツッコミがどこからともなく聴こえてきそうだが無視、そしてノートPC片手に店内へと入るとそこでロリっ子ツインテ(お嬢様の姿)に声を掛けられる。

 

「あ、いらっしゃいませっ」

「おう二葉、日曜にバイトは珍しいな」

「今日は透子ちゃんが家族旅行でタイに居るらしくて」

「……へぇ」

 

 なんでタイ、いやタイ料理うまいけどな。

 そんなリージョンロリっ子ツインテは去年から羽沢珈琲店でバイトをしている二葉つくし、こう見えてちゃんと元祖ロリっ子ツインテ宇田川あこと同年代だが注釈通り「月ノ森女子学園」という究極のお嬢様学校に幼稚舎から通うエリートお嬢様である。まぁこの縁で知り合ったお嬢様ズバンド──「Morfonica」の二葉、桐ヶ谷と広町の中では比較的一般人に近い。

 

「広町は?」

「ああ、なんか……こころ先輩と一緒でした」

「やっぱりな」

 

 天然不思議系天才少女である広町七深はバカヒナとこころに可愛がられてる後輩キャラでもある。まぁあの中にいれば広町はすごくフツーに見える。そう言ったら嬉しそうにしていたところからも解る通り変人だ。

 このドジっ子に羽沢や若宮と同様「いつもの」と頼むと五回に二回は間違える可能性が出るため普通に頼む。松原が迷子になる確率と思えば回避したい割合だ。

 

「ダージリンと季節のケーキです」

「さんきゅ」

 

 ここに来た理由はここにいればかなりの確率でガールズバンド関係でオレの知り合いがやってくるから。偶に香織も来るがあの性格最高の元後輩にして元同僚は今日は久ぶりの親友とのデートですとわざわざ写真付きで報告してきたためスマホをぶん投げた。その親友が元カノだって知っててああいうことするからタチ悪い。だが来ないのも事実、無駄に精神すり減らさなくて済む。

 

「あ、い、いちご、ですか……? 美味しそう……」

「おう、食うか?」

「え、あ……あーん」

「美味いだろ、これ」

「は、はい……とっても、美味しいです……♪」

「つか奢……らねぇわ、びっくりするから突如出現しないでくれ」

「……?」

「素で首をかしげるのはやめろ……オレが悪いのか、そうなのか……」

 

 ちょっと年度末会わなかったから忘れてた、そういやモニカが練習休みってことはコイツいるのか。

 あどけない顔でずうずうしくオレのケーキをオレに食わせてもらい幸せオーラを出すこの強心臓小動物の名前は倉田ましろ。昨年の夏にちょうどここで出会ってご覧の通り何故か懐かれている。

 

「日曜に会えるなんて……えへへ、なんだか、特別な気分、ですね……」

「桐ヶ谷が旅行らしいな」

「つくしちゃんから聞いたんですか?」

「ああ、倉田は?」

「私は、あこちゃんとロックちゃんに誘われてて、でも先生がココに入るのが見えてつい……」

「つい……って本当にチョウチョみたいなやつだな」

「そ、それだったら……先生はきっと、甘い香りのするお花ですね」

「火って場合もあるかもな」

 

 倉田は宇田川と朝日と仲がいいらしい。同学年で、特に朝日とは戸山のファンって繋がりもあるんだとか。

 蘭と知り合ってからまるっと二年以上、その間に随分と他校の知り合い関係に詳しくなっちまったもんだ。巻き込まれてるんだがな。そして原因はだいたい、今オレが探ろうとしているやつともう一人にある。

 

「……ん、待てよ、宇田川が遊びにってことは、Roselia休み?」

「あこちゃんはオフって言ってました」

「そうか、そういやプロになったんだった」

 

 リサや紗夜がすごく嬉しそうに報告してくれたのは数ヶ月前のこと、ずっと目標だった「FWF」の本戦で「Roselia」の今後を考えた結果としてプロの道を歩みだしていた。

 まぁプロってことは個別の仕事もあるわけで、決して宇田川が休みだからとリサが休みとは限らねぇんだな。

 

「誰を探してるんですか?」

「こころ」

「あ……えっと、七深ちゃんとリサさんが遊びに行ってるとかで、楽しそうでしたね」

「……リサ?」

 

 やっぱり、嫌な予感がしていたがリサと広町、こころが一緒という情報が倉田から告げられた。

 千聖曰くなんか企んでるらしいが、連絡しても一向に返ってこねぇところを見るに大掛かりでオレにとってロクでもねぇ計画なんだろうな。ため息が思わず溢れる。

 

「幸せ、逃げちゃいますよ」

「倉田もよく吐いてるだろ」

「私は……いいんです」

「どういうことだ」

「それより、なんでまだ倉田なんですか」

「呼び方ランクアップさせるイベント消化してくれ」

「ましろか、シロって呼んでって」

 

 後半はもはやあだ名なんだよな。そしてシロって呼べって理由も先生に呼ばれたら嬉しくて何処からでも飛んでこれちゃいますとかいうメルヘンかつ動物的な理由なのがダメ。動物枠は紗夜だけでいっぱいいっぱいなんだよ、ただでさえこっちはケダモノを数匹抱えてる状況なんだからな。

 

「なぁ倉田」

「……う」

「泣きそうなカオすんな、オレがすっげぇ悪いことしてるみてぇじゃねぇか」

「呼び方、変えてくれない……」

 

 ダメだコイツ使い物にならん。

 オレもまた面倒なガキに好かれたもんだ。本人的には教師を慕う生徒ポジションらしいが、奥沢とか松原、大和とかの立ち位置を理解してから出直してほしい。今の距離の詰め方はヒナとかモカのそれだからな。

 

「ほら、宇田川と朝日が待ってるぞ」

「は、はい……それじゃあ……」

「……はぁ、今度はゆっくり話聞いてやる、()()()

「──っ、お願いします、先生! 」

 

 さっきまでの沈んた表情はなんだったのかとツッコミたくなるほどパッと笑顔に変わった。どうしようもねぇ、こんなんだから流されやすいクズだとかこれ以上生徒増やすくらいなら死ぬか頭打って記憶失った方がいいよとか結局カズくんも浮気するんだとか散々言われるんだよな。お前のカレシになった覚えはねぇって何回言えばわかるんだバカ野郎。

 

「ごめんなさい、ましろちゃんが」

「いいんだよ、オレが悪い」

「そ、そうは思えなかったんですけど……」

 

 二葉にフォローされるが、オレが悪いことに変わりはねぇんだよな。

 倉田は、あいつは全体的に大人を──特に教師を信用してねぇんだよな。あの性格だ、我慢して付き合ってやれる教師どころか大人なんて、それこそ親くらいなもんだろ。そんな中でオレが不用意に背中を押すようなことを無責任に言うから懐かれた。それもオレがあいつの担任でも担当教科を教えてるわけでも顧問でもねぇから出来たことだ。どれかだったら間違いなく困ってただろうからな。

 

「ま、構いすぎもよくねぇってことに気づけたから、良しとしてるんだ」

「なるほど……」

「何処向けのメモだ」

「わたしは小さい妹が二人いるので、参考にと思って」

「……倉田」

 

 オレが倉田との関わりで得た気づきは小さい妹との関わりに利用されるらしい。どんまいすぎる。

 まぁあのメンタル幼稚園児のことは一旦忘れて、オレはオレのことに集中しねぇとな。相手はあの太陽サマだ、何が飛び出てくるかわかったもんじゃねぇ。

 

「……にしても、月ノ森生も随分増えたな、この喫茶店」

「透子ちゃんが宣伝しましたから、実際にここのコーヒーもケーキもお茶も、すごく美味しいし」

「そうだな」

 

 三十路の男にとっては更に肩身が狭くなったけどな。幸いなのは知り合いも多いことだ。だがその知り合いとしゃべってる姿も捉えようによってはスマホを片手に持たれてもおかしくはねぇんだよなぁ。さっきの倉田とのやり取りを冒頭から見られてたら一体どういう反応をされるんだろうか。考えるだけで身震いがする。

 

「それは〜、あたしが〜、呪いをかけているからでは〜、ないでしょ〜か〜」

「……なるほど、納得した」

 

 突如としてオレの背後から声を出すのは自称超絶美少女JK青葉モカ、その実態は超絶ヤンデレクソストーカーだ。

 今日は蘭から練習あるからどうのってライン来てたんだけどな、どうやらストーカーを極めすぎたあまりに時空すらも歪めたらしいなこいつは。だがオレの耳にだけ届く声でモカはいつものうざったらしい波ダッシュを消してしゃべってくる。

 

「浮気した」

「してねぇ」

「あーんまでしてさ、最後にはああやって甘い顔してましろ、とか呼んじゃうから虫が増えるんだよ」

「冒頭から見てたのかストーカー、つかアフグロの練習はどうした」

「ふっふっふ〜、も〜終わったも〜ん」

「急に元に戻るな」

 

 モカのふざけた口調の裏にある不機嫌オーラを振り払うようにしてお前ならオレが何を思ってるかってのもわかってんだろと返事をする。盗聴してるからその時の内心までは読めないも〜んとか言ってくるだろうけどな、コイツはそういうところあるから。わかっててキレるんだよなめんどくさいことに。

 

「読心は〜あたしのあいでんてぃてぃ〜なんだけどな〜」

「……アイデンティティか、一瞬何かと思った」

「えーごだも〜ん」

「発音びっくりするほど日本語だったけどな」

 

 そう言いつつモカにケーキを奢ってやると嬉しそうに食べてるんだから、三年になろうが相変わらず原始的欲求に忠実なやつ。

 ──ってそうじゃねぇ。オレが流されやすいクズなのは知ってるがわざと煙に巻こうとすんじゃねぇバカモカ。ストーカーならオレの休日の目的くらい知ってるだろ。

 

「こころん?」

「わざわざ確認すんな、めんどくせぇ」

「今リサさんと何かしてるよね」

「……やっぱリサか」

「あ〜、千聖さん曰く、ろくばんめ〜でしたっけ、あたしは三番までしか許してないってずっと言ってるのにな〜」

「嘘つけ、最近は四と五も認めてんだろ、なし崩しで」

「許してる〜とも言ってないも〜ん」

 

 つかリサが六番目なんだな、まぁ出会った順番としてはこころよりは前だが、オレとしてはこころの気持ちは知ってるもののリサがオレのことをっていうのは知らねぇ──っていうか確信はしてなかったんだよな。去年一年はずっと世話になりっぱなしで、関わってた回数も多かったが。

 

「リサさん、バイトでも明らかにせんせーの話増えてたよ」

「意識的に絆したわけじゃねぇんだけど」

「知ってる〜六番と七番と八番は無意識だもんね〜」

「……最後の倉田か?」

「せーかい」

 

 勘弁してくれ、絶対にやめてほしい。

 正直な話をするとお前ら五人にリサとこころくらいならまだなんとかギリギリ許容範囲内だがそこに一人増やされたら間違いなくキャパオーバーだ。ただでさえ今年は新入部員を丁重に扱ってるってのに。

 

「……九?」

「はっ倒すぞ」

「ぼーりょくはんた〜い」

 

 過去に何度も言葉の暴力で死ね死ね言ってきたやつがなんか言ってら。つかなんだ九って、野球やってんじゃねぇんだよ。

 それに比べりゃ、今のモカなんて可愛すぎて手元に置いておきたいくらいだけどな。相変わらず激重な好きって感情を表情に出してくるところは今も苦手だが。

 

「……せんせー、ちょっと変わった?」

「ほぼ毎日ストーキングしてくるお前にしちゃ珍しい質問だな」

「なんか、ゆる〜くなった」

「モカに緩いって言われるのか……問題だな」

 

 緩く、か。その言葉は確かに今のオレを指すのに最適なんだろう。

 モカ達がまだ一年の年度末、オレは確かに一つの決意をした。生徒(ガキ)どもを愛して、生徒(ガキ)どもに愛される、そんな教師になる。そんな決意と夢を抱いた。

 ──それがいつか崩壊するという恐怖を突きつけたのは他でもねぇヒナだった。

 

「……日菜さんが浮気してたってやつ」

「カレシじゃねぇ」

「けど、日菜さんと一成は両想いだから、意味合いは正しい」

「……その両想い、ってのも頷くのイヤなんだよ」

 

 浮気、もう最適な言葉を探すのめんどくせぇから浮気でいい、あの浮気でオレは結局最初に抱いた決意なんて砂上の楼閣でしかなかったと思い知らされた。同時に、口を開けて愛されたいと寄ってくる生徒を構ってるだけじゃ、オレはいつか不幸になる、また元の無気力なダメ教師に戻っちまう。

 

「そう、だからあたしはちょっと──怖かった」

「怖かった?」

「うん、日菜さんが離れて、一成が絶望したら……考えそうなことは、逃げることだもん」

「……逃げる、そうだな。逃げてただろうなオレのパターンからして」

 

 クズ教師(ゆみこ)が弱ってく現実からも、それがどうしようもなく誰かに甘えたくて浮気しちまったことも。

 飽きた、だなんてちょっとでもオレを知ってるやつからしたらすぐバレる嘘まで吐いて突き放したのも。

 レナのことだって、全部そうだ。オレは全部から逃げてきてる。実際にオレを愛してくれるこいつらからも逃げようとしてこころとかモカとかヒナとかに逃げ道潰されてきたんだもんな。

 

「でも、今の一成は全然、逃げてない。自分を柔らかくして、続けようとしてくれてる」

「……そりゃ、きっとましろのお陰だな」

「……?」

 

 そういや二葉つながりで知り合って少しした頃の倉田の援交未遂事件はサマーフェスで大忙しだったモカのストーキングの対象外だったな。あれは大変だったが逃げずにいたのはハロハピに囲まれてたせいだな。最後には蘭やモカも一言くれたっけ。

 あの時に逃げる倉田を見て、ああこれじゃあ意味ねぇんだなって気づけたんだよ。めちゃめちゃブーメラン放ってて説教した時はキツかったけどな。

 

「それがあって、ヒナの件もちゃんと向き合おうと思ってな──そうしたらあっさり解決したよ、なんだったんだろうなあの時間は」

「そっか……ふ〜ん」

「なんだよ」

「ヤキモチ」

「なら、その曇天が晴れるまでオレの家で雨宿りしてくか?」

「……キザだなぁ」

「そこは変えられねぇもんでな」

 

 モカは今の柔らかいくらいのオレでちょうどいいんだろうな。コイツがいずれ抱える問題に直面した時には、今までの黄昏ティーチャーじゃ泣かせて、せいぜい一緒に死んでやるくらいのことしか出来なくなる。時間が必要になって、遠ざけて、余計に恨みを買うのは正直ごめんだ。コイツはちゃんと向き合って、オレから手を広げてやんねぇとダメになる。

 

「……今、一成から誘ってくれた?」

「そうだな……そういや初めてか?」

「うん……えへへ、そっかぁ、誘ってくれたかぁ……♪」

「なんだよ、珍しいからって」

「また今度教えてあげる〜」

 

 まぁ今は破顔したモカが幸せそうだからそれでいい。好きと甘い声で囁いてくれるモカに、オレもだと言えればそれで。

 高校を卒業すれば否応なしにまた環境は変化していく、その先でモカを待ってる困難から助けてやれるのは、オレとオレが愛してやまない生徒たちだろうからな。

 

 

 

 

 

 

 

 




簡易的におさらいキャラ紹介

○青葉モカ
 中学生の頃に連携授業でやってきた未来のクズ教師に興味を持ち、以来現在までストーキング+盗撮を継続中。嫉妬深くヤンデレ、実はまだ千聖と紗夜が関係を持つことに対してあまり良い思いをしていない。
○初期版とSEASON3の違い
 初期版では悪魔なので心折れそうなクズ教師を誘導することで蘭、日菜、モカの三人にまで追い落とそうと画策していたが失敗、自分もこころを使ったかなり強引な方法で遠ざけられてしまい、それを二年ほど恨んでいた。
 だが今回は既に自分で立ち直ってしまったがゆえに誘導できずに逆にほだされてる。

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