機動戦士ガンダム水星の魔女外典 イージス・ソウル 作:七時の権兵衛
アスティカシア高等専門学園
ベネリットグループに属する企業の推薦を受けた者のみが通う未来のフロント経済の最前線を育成する教育機関。
本来であれば通うことなど夢のまた夢であった場にM195762と呼ばれていた青年は当たり前に存在できている。
青年はシュマーツ・トレーノンと名を変えて
御三家には及ばない規模ながらもそこそこの規模の中堅寮に身を置き、同学年の寮生と交流を重ね、勉学に励む。
そんな、生活を送っていたとある日。シュマーツはある噂を耳にする。
『辺境の惑星である水星から編入生がやってくる』
しかもよくよく聞いてみれば1年ではなく2年として、だ。
かつての己と同じく、珍しい立ち位置にいる編入生を少しばかり気にかけ、できる範囲で手伝いでもするかなと思っていた当日。
編入生、スレッタ・マーキュリーは27連勝中の現ホルダーであり、御三家たるジェターク社嫡男のグエル・ジェタークとの決闘を行っていた。
そして、その場に出てきた機体は、忌々しい呪いの機体。
自分を苦しめ、弟すらも毒牙にかけようとした魔女の使い魔。
GUND-ARM。ガンダムと呼ばれる禁じられた兵器だった。
【大丈夫か?】
「何が?」
【わかっているとは思うが、あれはガンダムだ】
シュマーツの端末からは中年程度の男の声が流れてくる。
【見ていたから知っている】
【フォールクヴァングフロントで実験されていたガンダムルブリス、その改修機だろう】
【あれはヴァナディース事変の際に行方が消えていた。お前と同じくパーメットに適合したエリクト・サマヤとその母エルノラ・サマヤを乗せて】
【だが俺の記憶する限りエリクト・サマヤは生きていれば25でスレッタ・マーキュリーとは別人】
「接触が可能になったら、あのガンダムに接触する」
シュマーツの持つ端末が激しく明滅し、彼の顔を怪しく照らしながら男は言葉を紡ぐ。
青年は戦闘の終わった画面をにらみつける。
もし単に新たにできた娘に教育を与えたいだけというならこちらとしても特段何もしない。
だが、復讐のために動き、万が一にも弟に危険をもたらしかねないというならば、僕は動くしかないと覚悟を決めて。
あの後、ジェターク社が威信をかけて最新鋭実証機であるダリルバルデを出すも調整不足で逆にグエル・ジェタークの足を引っ張り敗北。
グエル・ジェタークのプロポーズなどいろいろあったが実習の協力相手を探していたスレッタ・マーキュリーに声をかけられた。
「いいよ。パイロット科だけど、メカニック科の仕事もできるから。ただ、一回だけで良いから君のモビルスーツに乗せて欲しい。動かさないし、丁重に扱うことは約束する」
約束を取り付けた僕は早速エアリアルに乗せてもらうことになった。電装系の電源を入れ、パーメットスコアを上げる。
瞬きの合間に僕の意識はパーメット内に引き込まれる。
「誰?!」
「初めまして。僕はシュマーツ・トレーノン。オックスアース残党の元実験体で、君の同類……でも、そうか。エリクト・サマヤは死んでいたのか」
「ボクのこと、知ってるの?」
僕の正体を明かし、エリクトさんの事を知っていると暗に伝えると、僕の周りに12人ほどのエリクトさん似の幼女が飛び回る。
「どうして?」
「キミにはあったことないのに!」
その後、パーメット内で行われた会話は割愛する。精々、リプリチャイルドの子たちと遊んだり、お互いの計画の邪魔をしないことを約束しただけだ。
結論としていってしまえば、プロスペラ・マーキュリー、エルノラ・サマヤは復讐よりもエリクトの実体化を優先するように動いているようだった。
完全に信用したわけではないが、少なくともエリクトさんの妹を思う気持ちに嘘はなかった。だから、それだけは信じることにした。
シュマーツ→Schmerz
トレーノン→Trennung
グルク→Glück