超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス 作:環 藍河
表現や演出、展開に一部修正を加えております。
※原作第1部最終章までの内容に準拠しております。一応ネタバレご注意。
ジューン・ブライド。
それは愛と絆の女神・ユノの加護と祝福を賜る、六月だけの特別な旅立ちの日。
純白のドレスに身を包み、この人と定めた相手と手を取り、将来を誓う、生涯忘れ得ぬ一日。
特に女子ならば、人生最高の一日を誰もが夢に描き、いつか叶えたいと願うことだろう。
だからこそ…卑劣な侵略者は企む。
超昂戦士たちの夢を穢し、最高の一日を漆黒の悪夢に染め抜くことを…!
……
…
「追い詰めましたっ! コマンダー、覚悟しなさい!」
「諦めろ! 逃げ場は無い!」
「一騎打ちなら受けるわよっ! 絶対負けないけどねっ!」
「往生際が悪い男は、モテないぞっ」
「くっ…」
オルタナスタイン壊滅後、ノロイを巡る戦いと並行して時折発生する、旧アルダークの残党による破壊活動。
もっとも、そのどれもが散発的かつ小規模。エスカチームの今日の出動も、フーマン部隊を難なく掃討、あとはコマンダー4人を仕留め、呆気なく完了する任務…のはずだった。
かちっ。…ぶちゅん。
「『〘〔!?〕〙』」
コマンダーの1人が、懐から取り出したリモコンのボタンを押した瞬間、ルビーが、サファイアが、トパーズもアメイズも、四方をそれぞれ歪曲空間の壁に包まれ、声を上げる間も無く、異空間に転送されてしまう。
「ふははははは! 追い詰めたあ? 誘い込んだのはこちらさ。」
「おーーーーいっ、ダイビート本部! 聞こえているんだろう?」
「聞こえていなくとも、我等の側から世界配信してやるがなあ!」
ネット上に、犯行声明がライブ配信でアップされる。
「宣言する! 我々ネオ・アルダークは、これより地獄の結婚式披露宴を執り行う!
主役の新婦は4名! エスカルビー・エスカサファイア・エスカトパーズ・エスカアメイズさあ!」
「この挙式は、超昂戦士たちに永遠の不幸と悲嘆を刻み込む、エスカチーム壊滅の記念式典となるであろう! 我等、媒酌人たるコマンダーは、新婦が絶望し、陰鬱のまま死を請い願うまで、披露宴を幾晩でもエンドレスで開催する所存である!」
「なお、近親者および関係者の臨席は固く断る! 地球人類諸君、披露宴の模様と…自死を選ぶであろうエスカルビーたちの亡骸は、特別編集の後、余す所無く全世界に配信しよう!」
「続報はこのチャンネルで! 登録して配信通知を待つがよい!」
《し…しまった!》
【近接のチームに通達! アイとメイはコマンダーを捕縛せよ! マッハとエイムは足止めを!】
エスカチームの反応を失探したオペレーターから、慌ただしく指示が飛ぶ。
「さやかちゃん、解析を!」
『もうやってる!』
副官ユーノの冷静な指示も、エスカチームが攫われた事実は覆らず、後手に回るばかり。
『こちらアイ、敵コマンダー4名、いずれも失探しました! 申し訳ありません!』
《こちらエイム、足留めの狙撃を試みるも、奴らビル陰から出てきません!》
〈こちらマッハ、上方からターゲット探索中も、痕跡見当たらず…アニキ、すまねえ!〉
「…了解、こちらでもターゲットロストした。4名は帰投せよ。」
……
…
『…解析、出たよ。あれは、平行世界で使われたイデアの壁の…精神攻撃特化版。』
「特化?」
『うん、原版はダイラストが開発した、エスカレイヤーを幽閉して力を奪い、フラストの思い描く空間で蹂躙するための牢獄。エスカレイヤーも散々苦しめられた、恐ろしい兵器よ。
ただ…今回使用されたアレは、妄想空間を創るほどの性能は無い。物理的な働きかけは、ターゲットを…この場合はエスカチームを、この世界に実在する場所へ転送するくらい。』
「実在? ならば、ラボのADDDのテレメトリーで居場所は追えるのね?」
『いや…でも、防御力が強化されてる。エスカチームを飛ばした場所はすぐ出せるけど、壁の壊し方の解析が…!』
「時間がかかる、ってわけね。」
『うん…でも、データとあいつらの犯行声明から見るに、閉じ込めたターゲットへの精神攻撃にスペックを割り振っている。早く救出しないと、ルビーたちが心を壊されちゃうよ!』
「わかった。さやかちゃん、壁の解析、頼むわよ!」
『了解っ、なる早でっ!』
……
…
「うっ…。」
しばし、意識を失っていた。
ルビーの視力が徐々に回復する。
「ここ…は?」
目覚めたルビーは、広大なホールの一席にいた。
天井には無数のシャンデリア。振り返ると頭上には、天使と聖母の意匠を施したステンドグラスと十字架。横では小型のパイプオルガンとハープが賛美歌を自動で奏でる。
数百人は入ろうかと広がる室内には、幾十もの円卓が整然と並び、ソーサーとカトラリー、シャンパングラスと中心のブーケが参列者を今かと待ちかねる。
どの卓からも晴れ姿を見渡せる、生涯に一度の晴れ舞台…高砂席。
(結婚…式場?)
その誇らしい主役の席に、ルビーは不釣り合いな戦闘服のまま着座していた。
《場内の皆様…もとい、新婦・エスカルビーおひとり様にお知らせ致します。
本日の披露宴、新婦様方・新郎様方ご来賓の皆さまに、空席の分だけ招待状を送付しておりました。
しかし、誠に遺憾ながら、ご親族・近隣住民および閂市商店街の皆様・ご友人…生憎どなた様も、対ダイビート・テロリズムの犠牲となることを怖れ、すべてご欠席の返事を賜っております。》
「えっ…!?」
嫌らしく、下卑たニュアンスをたたえた場内アナウンスが続く。
《なお、只今アルダーク残党による総決起テロが決行され、ダイビート基地はじゅうたん爆撃と一斉射撃を受け続けております。従いまして、新婦同僚の皆様方…ダイビート戦闘スタッフは、この披露宴会場への到着の見込みはおろか、既に大半が殉職との情報が入っております…。》
「そ…そんな…!?」
《只今入った情報です。新婦エスカルビー様と永遠の未来を誓った、命知らずの新郎様でしたが…先ほど新郎控室にて、我らアルダークが差し向けた滅忍により、暗殺に成功しました。この晴れの日が命日となったことが…、確認、されましたっ!!!》
「…!!」
ルビーは、理解が追いつかない状況を、努めて冷静に把握しようと深呼吸する。
(つまり…これは、私の結婚式で…。
誰も…みんな、来なくて…。
結婚相手も…殺されて…?!)
《ふはははははっ、はあーーーっはっはっは、はあーーーっ!!》
「で…出まかせを言うなあっ!」
《出まかせだとお?! ほんと~おに、そう言い切れるのかなあ?
ああ、これは遠くない未来の、お前の現実だあ! 自業自得だぞ、エスカルビーよ!!》
「…どういう、こと…?」
挑発に乗せられるまいと、努めて冷静を保ちながら。
ルビーは荒ぶる心を抑えつつ、コマンダーの真意を問いただす。
《考えてもみろお! 既にお前の身元は衆目の周知! なあ、そうだろう、園崎アカリよお!》
「!!」
《だあ、かあ、らあ。こんな情報もゲットできるのだよ。》
「…ああっ…!!」
[将来の夢 6年1組]
[25歳までにお嫁さんになる 園崎アカリ]
ホールの大型スクリーンに投影された、小学校の卒業文集の寄せ書き。
《思い知るがいい! その夢、叶うはずなどないとな!
お前は自らも死と隣り合わせ、そして近づく味方も我等アルダークの格好の餌食!
そお~んなあぶねえ女に、家族も仲間も友人も、誰が好んで寄り添うものか!
ましてや一生の伴侶だとお!? そお~んな人様並の幸せが、貴様につかめるわけがないだろおっ!?》
「…ああっ…!!」
園崎アカリの平穏な日常は失われた。
幻魔王オルタナスタインとの最終決戦で、ルビーはひとたび敗れ…変身を解かれ、地に墜ちた。
その映像は世界に配信され…エスカルビーの正体を知らない者は、もういなくなった。
それは人類の危機を救うための、決死の戦いの代償であったが…。
がちゃっ。ぐぐぐっ、ぎりぎりぎり〜っ。
(くっ…開かないっ! …こっちも! …ここもっ…!!)
ルビーは会場の扉という扉、ガラス窓に至るまで、こじ開けられるドアを探し脱出を試みる。
ざっ…だだだだっ!
バージンロードのスタート地点となる扉に正対し、ルビーは後ずさり、助走の距離をとり…
「ストライクーー! エスカレーションっ!」
がしいいいいんっ!
「きゃあああああっ!!」
ルビー渾身の一撃は、見えない壁に阻まれた。
《無駄だ、無駄ムダあ! 別次元でエスカレイヤーを散々拘束したイデアの壁より堅牢なのだぞ。
エスカルビーとて、独りで破るなど不可能!》
「あ…ああ…っ…!」
育て、慈しんでくれた父の手から、明日を共に拓く新郎へバトンを繋ぐ、バージンロード。
そのどちらも居ない一本道の上で…ルビーは突っ伏し、依る瀬無く唇を噛むばかり。
《さあ、諦めて孤立無援の中、恒久の絶望をその身に刻むがいい! それがアルダークに歯向かった、安い正義の代償だあ!》
「うっ、ううっ、ぐう〜っ!!」
ルビーは知覚できなかったが、式場一帯には精神汚染を引き起こす毒電波が発信されていた。
強気を振り絞るルビーを徐々に蝕む、絶望。
(私…もう、誰とも…会えない…?
カンナ、よっしー、学校のみんな、先生…
商店街のおじさん、おばさん、パパ、ママ…
みんな、みんな…私と一緒だと…殺される…?
ダイビートのみんな…、ユーノさん、さやかさん…
神騎さんや魔女さん、閃忍さん…
超昂戦士のみんなも…殺されたっていうの…?!)
広すぎる披露宴会場は、アカリの善行と人徳の深さの賜物。
本当ならば鈴なりの参列者が、彼女と彼女を射止めた果報者の新たな門出を心から祝うことだったろう。
だが今は、その広さはかえって残酷な孤立を浮き彫りにするばかり。
やがてルビーの強き心は、徐々に削り落とされていく。
(…長官…!)
…
……
超昂戦士たちもいつか叶えたいと夢見る、幸せな未来への門出の日。
その望みを無惨に穢そうと、コマンダーたちが選んだ牢獄は、結婚式場だった。
ルビーだけではない。サファイア・トパーズ・アメイズ…。
《お前達が望む幸せなど、永遠に来ないのだ!!》
コマンダーたちが突きつける幻惑のフェイクムービーが、エスカチームを…。
六月の花嫁たちを、絶望へ突き落とさんとしていた。
ご覧いただき、誠にありがとうございます。筆者の環藍河です。
リメイク投稿を予告しておりましたが、6月には間に合わず…いや、「メイリーズワンダフルランド」が明日までだから、セーフっ、セーフ…?
ともあれ、大変遅くなりましたが、環版「マジメかー!」超昂大戦ジューンブライドSS、大幅リメイクでお届けいたします。
超昂大戦を昨年5月に始めてから、たった2ヶ月後に投稿した前作「虜囚の花嫁」。
原作への知識も足りず、表現力も未熟、書くべきことと書くべきでないことの取捨選択もダメダメの中、勢い任せに書き上げたもので…実はずっと書き直したかった作品です。
この第1章を含め、冒頭はあまり変更ありませんが…直後の中盤は表現のかみ砕きや描写をきちんと入れて、伝わりやすいよう大幅加筆。
さらに終盤は展開を結構変えることになりました。
前作をお楽しみ下さった方にも、前作でがっかりさせてしまった方にも。
もちろん初見の方にも、お楽しみいただけますように。
予定は5章構成です。続きにもご期待くださいませ!