超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス 作:環 藍河
《ふん、魔女が迫害の被害者ぁ? 笑わせるな、貴様らの活動の犠牲者が世界に何万何億といるくせに…!》
「…過去の誤ちは、消えない…。歴史の汚名は、甘んじて、受け入れるわ…。」
《ほお~、ならばお前は、その罪をどう詫びる? 貧困国の何万もの民の墓標に、どう謝罪するう?!
死ぬしかねえよなあ? 死んで詫びるんだよおおおお!》
「…でも、ね…!」
ひゅっ。
びしっ。
パキッ…びしびしっ…!!!
ぱりっ、ぴきぴきっ…
ぱーーーーーーーーん!
アメイズのウィップの一閃と共に、ショーケースで包まれた悪意は決壊する。
血塗られた宝石の輝きは、本来の高潔を取り戻す。
「誤ちを犯し、それでもリーダーに居座って生き恥をさらす覚悟は、エリザベスの家に生まれたときから、とっくに完了してるの!
その代わり、私たちは…魔女はみんなで、誤ち以上の未来を、叶えてみせる!」
《なっ…何だとおおおっ!?》
…
……
「エリー様…これが洗い直した現状と、NAUの宝石が弱者を二度と苦しめないための再建策です。」
「ありがとう、クラリス。赤字は…大丈夫?」
「系列会社を資本金ベースで12%ほど手放します。痛いですが…かの国の民たちに私たちが与えた苦しみとは、比べようもありませんから…ね。」
紛争ジュエルの片棒担ぎが露見した日から、エリーとNAUの金庫番・節制のクラリスは東奔西走した。
ジュエルに関連する数十億ユーロもの全収益を放出し、ダイヤモンド鉱山や金精錬工場を片っ端から買収。即座に操業を停止し、労働待遇の改善と人権啓発を労働者の隅々まで徹底させ…それまで操業を再開しなかった。
そして…全ての経緯を情報公開し、謝罪会見を繰り返した。
一方。
『ふははははははっ! 我等が恋人をたばかり、無辜の民を私欲の贄に供する外道どもよ!
今更ひれ伏そうが断固許すまじ! 神に召された後まで、震えて悔いよ!』
《何万もの天使ちゃんたちに、毒水を飲ませ! パパもママも奪う、ゲスの所業!!
ロリータを愛し! ロリータに愛される! このアモーレの戦士がああっ!
例え神が見逃そうともっ、地獄の果てまで追い詰めてえええっ!!
蹴散らしっ! すり潰しっ! 火山のマグマに突き落とすううううっっ!!!》
ジークフリート派・皇帝のファヴニル率いる魔女師団…ことに、マジギレの暴走ロリータユニコーン・戦車のニコールの手により、腐臭漂う独裁者はひとたまりもなく征伐され、全ての元凶たる内戦は呆気なく終結。
悪魔の輝石は一転、民主化された小国の復興の原資となる。
悲しみの後も、多大な犠牲を払うことになったが…
入手から販売まで幾重にもチェックし、いかに利益をもたらそうとも、人道に反する宝石は断じて扱わない。
ここにNAUは100%、倫理を備えたエシカルジュエリーを扱うに至ったのである。
……
…
「私たちが傷つけ、命を落とした人たちのことは、絶対忘れない。
でも、その人たちに報いるためにも、罪に汚れた歩みを、私は止めない。
それが、過去の私への落とし前よ!」
《な…何だとおっ!》
アメイズの瞳からは、迷いも、自責の念も…ましてや自死願望など、もはや消え失せていた。
「戦う宿命から、私は逃げない!
魔女と人とが手を取る未来へ、私が皆を連れて行く日まで!
あなたにどう罵られようと…負けない!」
《そ…そんな…、この電波とこの幻惑で、心が折れない…だとお?!》
【かえして…!】
《!?》
【パパを…ママを…】
〔わたしの…手足を…〕
〈ふつうに動く、からだを…!!〉
《う…うがあああーーーっ!!?
お…お前らはっ、お前らはあああーーーっ!!》
「なっ…コマンダー?!」
遠隔でアメイズをたぶらかすコマンダーを、逆に襲う幻惑。
その姿と声はアメイズには届かず…ただコマンダーの怯える悲鳴だけが響く。
【あなたが…ころした…】
〈わたしの…かぞくを…〉
〔あなたが…こわした…〕
〈わたしの…くにを…〉
【〔〈だいじな…すべてを!!〉〕】
《ぎゃあああーーー〜〜〜っっ!?》
…どさっ。
「…?」
コマンダーの断末魔が響き…訪れる静寂。
(お…終わった…のかな…?)
アメイズは勝利を確信できないまま、元の華やかな衣装室に、しばしたたずむ。
……
…
《あ、長官さん? ついでに伝えとくね。
このイデアの壁は、捕らえた戦士に負の精神エネルギーを流し込んで、絶望を刷り込む牢獄なの。
でも、戦士が屈さず攻撃を跳ね返したときは、行き場を失った精神攻撃はキックバックして、送り手を逆に壊すんだ。
だから、エスカチームなら自力で脱出することもできるかもね。》
「…わかった。4人を信じながら…救出作戦を続行する。」
…
……
「ふっ…ふひひっ…ははっ…!」
敗れ、堕ちるヒーローたちの悪夢に肩を震わせるトパーズは…ついに笑い出す。
《あひゃひゃひゃひゃあ! 壊れたのお? 壊れちゃったのかなあ、トパーズちゃんっ!?
まだまだまだまだ、キミのヒーローたちの惨殺シーンはたっぷり準備してるのになあ!
じゃ~あ、選んでもらおうか! エスカトパーズの最期を!
採石場で爆散? 磔でハチの巣? ギロチン台も首吊り台もあるぜええっ!》
「あーーーーっ、! はあーーーっはっはっはあーーっ!!」
両の拳を左右に突き上げ、虚像の銀幕を鋭く睨みつけ、トパーズが咆哮する。
「マジうけるんですけどーっ! この私に向かって、ヒーロー論で心をへし折ろうなんざ、一億とんで二千年、早い、早いっ、早すぎんのよーーーっ!!!」
《なあっ…何だとお?!》
「確かに…ちょっと前までのあたしだったら、これで絶望してたかもねっ!
でもねえ…今のあたしは違う!
もうエスカトパーズは、ヒーローに憧れるだけの、まねっこ戦士じゃないんだあっ!」
《ど…どういうことだっ!?》
「今ならわかるのよっ! たとえ敗れて命果てても、真のヒーローは絶望なんかしない! 最後まで諦めなければ、次にヒーローを目指す誰かが…その志を必ず受け継ぐのっ!
あたしの憧れたヒーローたちは…命運尽きるその瞬間も、絶対に希望を捨てはしないっ! その姿に憧れて戦う、あたしみたいな戦士がいるかぎり!
だからあたしも絶望しない! たとえ負けて命散らそうと、最後まで次の戦士に、この背中で!
ヒーローの生き様を見せるんだあああっ!!」
《バ…バカぬかせええっ!! 誰があとを継ごうが…そんときゃてめえは墓の下だろうがっ!
死ぬのが怖くねえのかああっ!?》
「自分の命が第一で、ヒーローが務まるか!!
強いから、勝ってカッコいいから憧れるんじゃないっ! 辛くても苦しくても逃げないから! 自分を超えて戦うから、憧れるんだあっ!
たとえ敗れて死んだって、あたしは最後までヒーローを選ぶっ!」
《し…死ぬより、ヒーロー…っ?! 狂ってやがるうううっ!》
「あんたみたいなゲスには、何度生まれ変わってもわかんないでしょうね。
我が身かわいさで卑怯に手を染め、エゴで…一人きりで戦う、あんたみたいなのにはね。」
ちゃきっ。
「…知ってる? この剣はあたし一人の剣じゃない。
あたしの理想を作ったヒーローたち…
命がけであたしを超昂戦士にしてくれたルビーたち…
鍛えてくれたエリス師匠やダイビートのみんな…
そして、あたしと一緒に理想のヒーローを目指す、りるか…!」
《あ…あああっ、ああーーーー~~っ!?》
「一対一じゃない。あんたは何百、何千ものヒーローたちに、決して許されないケンカを売ったのよっ! 正義の一閃、その身で受けろおおっ!!」
《ぎゃあああーーー〜〜〜っっ!?》
…どさっ。
「…へっ? …ちょ、ちょっと? あたしまだ、斬ってないわよおおっ!?」
トパーズの素っ頓狂な声に、返すコマンダーの反応は無かった。
トパーズを堕とせなかったイデアの壁の精神エネルギーは、コマンダーに幻覚として跳ね返り…
ヤルトラマンが、メタルヒーローが、スーパー戦隊が、プチピュアが。
レジェンドが、りるかが、ダイビートの全ての戦士が。
ルビーが、サファイアが、アメイズが、そして最後にトパーズが。
何百、何千もの拳撃と剣戟が、その瞬間、コマンダーの歪んだ心を粉砕していた。
(…もしかしてあたし、思念波でコマンダー倒しちゃったとか…?
ふ…ふふふっ、ふははははっ、スゴイぞあたしっ! 新必殺技の覚醒だあーーーっ!!)
…それは違う。
……
…
《さあ、ヒビキよ。己とその子、その孫…末代まで貴様を苛む呪い、しかと自覚しただろう。
ならばその忌まわしき血、自ら封じよ。
案ずるな、ハガネはいずれ想破が誅伐しよう。あとは、貴様の自刃で不幸の連鎖は止まる…!》
「…くくっ…くっくっくっ…!」
すすり泣きか、はたまた自嘲か。うつ向いたまま肩を震わせるヒビキが、言葉を続け。
「…私が…不幸だと…。
だから、まだ見ぬ私の男も、私の子どもも、不幸だと…?」
《な…なっ!?》
きびすを返すヒビキの表情に…コマンダーは驚愕する。
「生憎だったなあっ! ならば心の底から、私の本心を叫んでくれる! よく聞けえっ!
私はっ、私はあああっ!」
敵への反発でも、やせ我慢でもなく、サファイアは自らのありのまま、心のままに…
「天下無双の、果報者だあああーーーっ!」
叫びきった。
その顔には、生い立ちの不遇への怨嗟など無く。
満面の笑顔と、心の底からの快哉の叫びが、試写室を満たす。
《は…はあ~~っ!? 気でも触れたかあっ?!》
「閃忍の素質が無いことが、不幸だと?
逆だ! 才無きが故に、私は超昂戦士になれた!
ルビーに、トパーズに、アメイズに…最高の仲間達に出会えた!」
《な…なああっ!?》
「今なら言える! 非力を嘆いたあの日々は…今日のための臥薪嘗胆の日々だったと!
閃忍になれぬ自分に価値は無いと塞ぎ続けた私は…
若頭領に居場所を戴き! 道を示してくれたルビーに出会えて! 自らを変える勇気を得たんだ!
そして私はエスカサファイアになれた! あろうことか、人類の運命が懸かる戦いにまで加わり、皆を護り抜くことができたんだ!
この僥倖、貴様ごときにわかるものかあ!」
《ぬぐっ…だが、ハガネはどうする! 奴の汚名はあ!?》
「言う輩には、言わせておけっ! 私もまた、いつかハガネを討つ戦士! 汚名と言うなら、自らすすぐ!」
《な…な、がっ…!?》
「覚えておくんだな。何が自分の幸運か、何が不幸かなど、自分にだってわかりはしない。
全ては時が過ぎた後に、自ら顧みて決めるだけのこと。
ましてや、結果を見ただけの外郎が後付けで決めつけた不幸などに、私は膝を屈したりしない!」
忍びらしからず、昂ぶる心のままに…しかし本心のありったけを叫び続けたエスカサファイアは…
一瞬、柔和な…慈愛をたたえた笑顔に戻り、
「私の幸福は、私が決める。」
その決意と自負は、痩せ我慢とは程遠く。
眼差しに秘める凛然たる希望は、既に最高の幸福をその手に収めた者のそれであった。
ちゃきっ。
「お前にも教えてくれよう。
お前が私の生い立ちを…私を奈落の底に突き落とし、加古野を愚弄する口実を知り得たとき…さぞかし自分は運が良いとほくそ笑んだことだろうな。これで私を悲嘆と狂い死にに追い込める…と。
生憎だが、それは勘違いだ。
思い知れ! その幸運こそが、己が身の破滅をもたらす、最悪の不幸であったことを!」
構える苦無が鈍く煌めき、今すぐにも獲物に喰らいつかんばかり。
「…加古野ヒビキ、これより修羅となりて、貴様を冥府の果て、魔道の坩堝の底まで追いつめてくれよう!
推して参る!」
《か…かはあっ…、そんなあ…?》
だだだっ…!!
コマンダーは敗走する。
《ち…ちきしょうっ、ちきしょおっ…!!》
だが…どこに逃げても、どれだけ遁走しようとも、ビームクナイの狙撃が執拗に迫る。
《くそっ…くそおおっ…、加古野…ヒビキめえええっ…》
しゅっ…ずぱっ。
《ひぐうっ…ぎいやああああーーーっ!?》
隠れ、息を整える間もなく…手足の腱を、漆黒の苦無が裂く。
(落ちぶれても忍びなら、悲鳴くらいかみ殺せ。想破の里ではガキでもできるぞ。)
《はぐっ…おま…おまえはああああっっ!!》
そこにたたずむは、蒼きくノ一ではなく…
黒き屈強なる、加古野の忍。
(家名など、あの日とっくに捨てた。俺の名誉など、下郎が貶めるほどの価値もない。
だが…)
とすっ。
《か…かひゅ…ひゅうう…っ!》
(その汚い舌は、閻魔に差し出す価値も無い。二度とさえずるな。)
《くへえっ、へえっ、もごっ、へあああーーーーっ!!》
ぶちっ。ざしゅっ。
苦無が肺を刺し、豪腕が舌を引き千切り、忍者刀が喉笛を切り裂く。
呼吸も、命乞いの手段も、断末魔さえも奪われたコマンダーは…苦しみ抜いた後、永遠の闇に還る。
…どさっ。
「なっ…?!」
サファイアが見えぬコマンダーに猟犬のごとき追跡を宣言した瞬間、イデアの壁の矛先はコマンダーへ。
そこから彼が見た幻は、狩られる者の恐怖は…因果応報の致命傷となった。
「気配が消えた…?
…いや、ルビーたちが危ない!」
コマンダーの突然の消滅をいぶかりながらも、その理由をただすべき時ではなかった。
サファイアは映写室を飛び出し、相棒を探す。
……
…
3人のコマンダーたちは、イデアの壁でエスカチームを潰すはずが…皮肉にも自らが潰された。
エリーに出処不明の宝石を仲介し、その責任を問われNAUを追われた元幹部。
ウラジミールを操るはずが、エスカチームの新戦力に加えてしまう失態を犯したコマンダー。
自らの怠惰と無能を棚上げし、冷遇を家格の低さのせいにし、想破の面汚しと上弦衆を追放された忍び。
そんな3人が心の闇からコマンダーに堕ち。
アメイズ、トパーズ、サファイア…、三人の心を粉砕し屈服させ、自害させて復讐を成す。
そんな下卑た野望は…ここに脆くも潰えた。
一方、牢獄の式場に幽閉され、孤独の披露宴に震えわななくルビー。
イデアの壁を打破し、ルビーに希望の笑顔を取り戻す、救いの手は…未だ届かない。
第3章、いかがでしたでしょうか。
リメイク前との変更が、ここから少しずつ発生します。
特に、トパーズの絶望からの逆転劇は…この1年で、りるかが参戦してくれたことで、描きたかったビジョンにピタッとハマる描写ができました。
…あんまり差に触れると、前作を読み返されてしまうので(恥ずかしいっ!)このくらいで。
次の第4章、ルビー救出のあれこれですが、現在も加筆修正中です。投稿が遅くなったらゴメンなさい…ですが、今描けるベストを追求中です。乞うご期待!