超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス   作:環 藍河

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第3章 嵐の先の希望! 超昂花嫁、明日への決意

《ふん、魔女が迫害の被害者ぁ? 笑わせるな、貴様らの活動の犠牲者が世界に何万何億といるくせに…!》

「…過去の誤ちは、消えない…。歴史の汚名は、甘んじて、受け入れるわ…。」

《ほお~、ならばお前は、その罪をどう詫びる? 貧困国の何万もの民の墓標に、どう謝罪するう?!

死ぬしかねえよなあ? 死んで詫びるんだよおおおお!》

 

「…でも、ね…!」

 

ひゅっ。

びしっ。

 

 パキッ…びしびしっ…!!!

 ぱりっ、ぴきぴきっ…

 

  ぱーーーーーーーーん!

 

アメイズのウィップの一閃と共に、ショーケースで包まれた悪意は決壊する。

血塗られた宝石の輝きは、本来の高潔を取り戻す。

「誤ちを犯し、それでもリーダーに居座って生き恥をさらす覚悟は、エリザベスの家に生まれたときから、とっくに完了してるの!

その代わり、私たちは…魔女はみんなで、誤ち以上の未来を、叶えてみせる!」

《なっ…何だとおおおっ!?》

 

……

「エリー様…これが洗い直した現状と、NAUの宝石が弱者を二度と苦しめないための再建策です。」

「ありがとう、クラリス。赤字は…大丈夫?」

「系列会社を資本金ベースで12%ほど手放します。痛いですが…かの国の民たちに私たちが与えた苦しみとは、比べようもありませんから…ね。」

 

紛争ジュエルの片棒担ぎが露見した日から、エリーとNAUの金庫番・節制のクラリスは東奔西走した。

ジュエルに関連する数十億ユーロもの全収益を放出し、ダイヤモンド鉱山や金精錬工場を片っ端から買収。即座に操業を停止し、労働待遇の改善と人権啓発を労働者の隅々まで徹底させ…それまで操業を再開しなかった。

 

そして…全ての経緯を情報公開し、謝罪会見を繰り返した。

 

一方。

『ふははははははっ! 我等が恋人をたばかり、無辜の民を私欲の贄に供する外道どもよ!

今更ひれ伏そうが断固許すまじ! 神に召された後まで、震えて悔いよ!』

《何万もの天使ちゃんたちに、毒水を飲ませ! パパもママも奪う、ゲスの所業!!

ロリータを愛し! ロリータに愛される! このアモーレの戦士がああっ!

例え神が見逃そうともっ、地獄の果てまで追い詰めてえええっ!!

蹴散らしっ! すり潰しっ! 火山のマグマに突き落とすううううっっ!!!》

 

ジークフリート派・皇帝のファヴニル率いる魔女師団…ことに、マジギレの暴走ロリータユニコーン・戦車のニコールの手により、腐臭漂う独裁者はひとたまりもなく征伐され、全ての元凶たる内戦は呆気なく終結。

悪魔の輝石は一転、民主化された小国の復興の原資となる。

 

悲しみの後も、多大な犠牲を払うことになったが…

入手から販売まで幾重にもチェックし、いかに利益をもたらそうとも、人道に反する宝石は断じて扱わない。

ここにNAUは100%、倫理を備えたエシカルジュエリーを扱うに至ったのである。

 

……

「私たちが傷つけ、命を落とした人たちのことは、絶対忘れない。

でも、その人たちに報いるためにも、罪に汚れた歩みを、私は止めない。

それが、過去の私への落とし前よ!」

《な…何だとおっ!》

アメイズの瞳からは、迷いも、自責の念も…ましてや自死願望など、もはや消え失せていた。

「戦う宿命から、私は逃げない!

魔女と人とが手を取る未来へ、私が皆を連れて行く日まで!

あなたにどう罵られようと…負けない!」

《そ…そんな…、この電波とこの幻惑で、心が折れない…だとお?!》

 

 【かえして…!】

 《!?》

 【パパを…ママを…】

 〔わたしの…手足を…〕

 〈ふつうに動く、からだを…!!〉

 

《う…うがあああーーーっ!!?

 お…お前らはっ、お前らはあああーーーっ!!》

 

「なっ…コマンダー?!」

遠隔でアメイズをたぶらかすコマンダーを、逆に襲う幻惑。

その姿と声はアメイズには届かず…ただコマンダーの怯える悲鳴だけが響く。

 

 【あなたが…ころした…】

 〈わたしの…かぞくを…〉

 〔あなたが…こわした…〕

 〈わたしの…くにを…〉

 【〔〈だいじな…すべてを!!〉〕】

 

 《ぎゃあああーーー〜〜〜っっ!?》

 

…どさっ。

「…?」

 

 コマンダーの断末魔が響き…訪れる静寂。

(お…終わった…のかな…?)

 アメイズは勝利を確信できないまま、元の華やかな衣装室に、しばしたたずむ。

 

……

《あ、長官さん? ついでに伝えとくね。

このイデアの壁は、捕らえた戦士に負の精神エネルギーを流し込んで、絶望を刷り込む牢獄なの。

でも、戦士が屈さず攻撃を跳ね返したときは、行き場を失った精神攻撃はキックバックして、送り手を逆に壊すんだ。

だから、エスカチームなら自力で脱出することもできるかもね。》

「…わかった。4人を信じながら…救出作戦を続行する。」

……

 

「ふっ…ふひひっ…ははっ…!」

敗れ、堕ちるヒーローたちの悪夢に肩を震わせるトパーズは…ついに笑い出す。

《あひゃひゃひゃひゃあ! 壊れたのお? 壊れちゃったのかなあ、トパーズちゃんっ!?

まだまだまだまだ、キミのヒーローたちの惨殺シーンはたっぷり準備してるのになあ!

じゃ~あ、選んでもらおうか! エスカトパーズの最期を!

採石場で爆散? 磔でハチの巣? ギロチン台も首吊り台もあるぜええっ!》

 

「あーーーーっ、! はあーーーっはっはっはあーーっ!!」

 

両の拳を左右に突き上げ、虚像の銀幕を鋭く睨みつけ、トパーズが咆哮する。

「マジうけるんですけどーっ! この私に向かって、ヒーロー論で心をへし折ろうなんざ、一億とんで二千年、早い、早いっ、早すぎんのよーーーっ!!!」

 

《なあっ…何だとお?!》

「確かに…ちょっと前までのあたしだったら、これで絶望してたかもねっ!

でもねえ…今のあたしは違う!

もうエスカトパーズは、ヒーローに憧れるだけの、まねっこ戦士じゃないんだあっ!」

《ど…どういうことだっ!?》

 

「今ならわかるのよっ! たとえ敗れて命果てても、真のヒーローは絶望なんかしない! 最後まで諦めなければ、次にヒーローを目指す誰かが…その志を必ず受け継ぐのっ!

あたしの憧れたヒーローたちは…命運尽きるその瞬間も、絶対に希望を捨てはしないっ! その姿に憧れて戦う、あたしみたいな戦士がいるかぎり!

だからあたしも絶望しない! たとえ負けて命散らそうと、最後まで次の戦士に、この背中で!

ヒーローの生き様を見せるんだあああっ!!」

 

《バ…バカぬかせええっ!! 誰があとを継ごうが…そんときゃてめえは墓の下だろうがっ!

死ぬのが怖くねえのかああっ!?》

「自分の命が第一で、ヒーローが務まるか!! 

強いから、勝ってカッコいいから憧れるんじゃないっ! 辛くても苦しくても逃げないから! 自分を超えて戦うから、憧れるんだあっ!

たとえ敗れて死んだって、あたしは最後までヒーローを選ぶっ!」

《し…死ぬより、ヒーロー…っ?! 狂ってやがるうううっ!》

 

「あんたみたいなゲスには、何度生まれ変わってもわかんないでしょうね。

我が身かわいさで卑怯に手を染め、エゴで…一人きりで戦う、あんたみたいなのにはね。」

 

 ちゃきっ。

 

「…知ってる? この剣はあたし一人の剣じゃない。

あたしの理想を作ったヒーローたち…

命がけであたしを超昂戦士にしてくれたルビーたち…

鍛えてくれたエリス師匠やダイビートのみんな…

そして、あたしと一緒に理想のヒーローを目指す、りるか…!」

 

《あ…あああっ、ああーーーー~~っ!?》

「一対一じゃない。あんたは何百、何千ものヒーローたちに、決して許されないケンカを売ったのよっ! 正義の一閃、その身で受けろおおっ!!」

 

 《ぎゃあああーーー〜〜〜っっ!?》

 

…どさっ。

「…へっ? …ちょ、ちょっと? あたしまだ、斬ってないわよおおっ!?」

トパーズの素っ頓狂な声に、返すコマンダーの反応は無かった。

 

トパーズを堕とせなかったイデアの壁の精神エネルギーは、コマンダーに幻覚として跳ね返り…

ヤルトラマンが、メタルヒーローが、スーパー戦隊が、プチピュアが。

レジェンドが、りるかが、ダイビートの全ての戦士が。

ルビーが、サファイアが、アメイズが、そして最後にトパーズが。

何百、何千もの拳撃と剣戟が、その瞬間、コマンダーの歪んだ心を粉砕していた。

 

(…もしかしてあたし、思念波でコマンダー倒しちゃったとか…?

ふ…ふふふっ、ふははははっ、スゴイぞあたしっ! 新必殺技の覚醒だあーーーっ!!)

…それは違う。

 

……

 

《さあ、ヒビキよ。己とその子、その孫…末代まで貴様を苛む呪い、しかと自覚しただろう。

ならばその忌まわしき血、自ら封じよ。

案ずるな、ハガネはいずれ想破が誅伐しよう。あとは、貴様の自刃で不幸の連鎖は止まる…!》

 

 「…くくっ…くっくっくっ…!」

 

すすり泣きか、はたまた自嘲か。うつ向いたまま肩を震わせるヒビキが、言葉を続け。

 

 「…私が…不幸だと…。

  だから、まだ見ぬ私の男も、私の子どもも、不幸だと…?」

《な…なっ!?》

きびすを返すヒビキの表情に…コマンダーは驚愕する。

 

「生憎だったなあっ! ならば心の底から、私の本心を叫んでくれる! よく聞けえっ!

 私はっ、私はあああっ!」

 

 敵への反発でも、やせ我慢でもなく、サファイアは自らのありのまま、心のままに…

 

 

  「天下無双の、果報者だあああーーーっ!」

 

 

 叫びきった。

 

その顔には、生い立ちの不遇への怨嗟など無く。

満面の笑顔と、心の底からの快哉の叫びが、試写室を満たす。

《は…はあ~~っ!? 気でも触れたかあっ?!》

 

「閃忍の素質が無いことが、不幸だと?

 逆だ! 才無きが故に、私は超昂戦士になれた!

 ルビーに、トパーズに、アメイズに…最高の仲間達に出会えた!」

《な…なああっ!?》

「今なら言える! 非力を嘆いたあの日々は…今日のための臥薪嘗胆の日々だったと!

 閃忍になれぬ自分に価値は無いと塞ぎ続けた私は…

 若頭領に居場所を戴き! 道を示してくれたルビーに出会えて! 自らを変える勇気を得たんだ!

 そして私はエスカサファイアになれた! あろうことか、人類の運命が懸かる戦いにまで加わり、皆を護り抜くことができたんだ!

 この僥倖、貴様ごときにわかるものかあ!」

 

《ぬぐっ…だが、ハガネはどうする! 奴の汚名はあ!?》

「言う輩には、言わせておけっ! 私もまた、いつかハガネを討つ戦士! 汚名と言うなら、自らすすぐ!」

《な…な、がっ…!?》

 

「覚えておくんだな。何が自分の幸運か、何が不幸かなど、自分にだってわかりはしない。

全ては時が過ぎた後に、自ら顧みて決めるだけのこと。

ましてや、結果を見ただけの外郎が後付けで決めつけた不幸などに、私は膝を屈したりしない!」

 

忍びらしからず、昂ぶる心のままに…しかし本心のありったけを叫び続けたエスカサファイアは…

一瞬、柔和な…慈愛をたたえた笑顔に戻り、

 

「私の幸福は、私が決める。」

 

その決意と自負は、痩せ我慢とは程遠く。

眼差しに秘める凛然たる希望は、既に最高の幸福をその手に収めた者のそれであった。

 

ちゃきっ。

 

「お前にも教えてくれよう。

お前が私の生い立ちを…私を奈落の底に突き落とし、加古野を愚弄する口実を知り得たとき…さぞかし自分は運が良いとほくそ笑んだことだろうな。これで私を悲嘆と狂い死にに追い込める…と。

生憎だが、それは勘違いだ。

思い知れ! その幸運こそが、己が身の破滅をもたらす、最悪の不幸であったことを!」

 

構える苦無が鈍く煌めき、今すぐにも獲物に喰らいつかんばかり。

 

「…加古野ヒビキ、これより修羅となりて、貴様を冥府の果て、魔道の坩堝の底まで追いつめてくれよう!

推して参る!」

 

《か…かはあっ…、そんなあ…?》

 

 だだだっ…!!

 

 コマンダーは敗走する。

《ち…ちきしょうっ、ちきしょおっ…!!》

 だが…どこに逃げても、どれだけ遁走しようとも、ビームクナイの狙撃が執拗に迫る。

《くそっ…くそおおっ…、加古野…ヒビキめえええっ…》

 

 しゅっ…ずぱっ。

《ひぐうっ…ぎいやああああーーーっ!?》

 隠れ、息を整える間もなく…手足の腱を、漆黒の苦無が裂く。

 

(落ちぶれても忍びなら、悲鳴くらいかみ殺せ。想破の里ではガキでもできるぞ。)

《はぐっ…おま…おまえはああああっっ!!》

そこにたたずむは、蒼きくノ一ではなく…

黒き屈強なる、加古野の忍。

 

(家名など、あの日とっくに捨てた。俺の名誉など、下郎が貶めるほどの価値もない。

だが…)

 とすっ。

《か…かひゅ…ひゅうう…っ!》

(その汚い舌は、閻魔に差し出す価値も無い。二度とさえずるな。)

《くへえっ、へえっ、もごっ、へあああーーーーっ!!》

 

 ぶちっ。ざしゅっ。

 

苦無が肺を刺し、豪腕が舌を引き千切り、忍者刀が喉笛を切り裂く。

呼吸も、命乞いの手段も、断末魔さえも奪われたコマンダーは…苦しみ抜いた後、永遠の闇に還る。

 

…どさっ。

「なっ…?!」

サファイアが見えぬコマンダーに猟犬のごとき追跡を宣言した瞬間、イデアの壁の矛先はコマンダーへ。

そこから彼が見た幻は、狩られる者の恐怖は…因果応報の致命傷となった。

 

「気配が消えた…?

 …いや、ルビーたちが危ない!」

コマンダーの突然の消滅をいぶかりながらも、その理由をただすべき時ではなかった。

サファイアは映写室を飛び出し、相棒を探す。

 

……

3人のコマンダーたちは、イデアの壁でエスカチームを潰すはずが…皮肉にも自らが潰された。

 

エリーに出処不明の宝石を仲介し、その責任を問われNAUを追われた元幹部。

ウラジミールを操るはずが、エスカチームの新戦力に加えてしまう失態を犯したコマンダー。

自らの怠惰と無能を棚上げし、冷遇を家格の低さのせいにし、想破の面汚しと上弦衆を追放された忍び。

 

そんな3人が心の闇からコマンダーに堕ち。

アメイズ、トパーズ、サファイア…、三人の心を粉砕し屈服させ、自害させて復讐を成す。

そんな下卑た野望は…ここに脆くも潰えた。

 

一方、牢獄の式場に幽閉され、孤独の披露宴に震えわななくルビー。

イデアの壁を打破し、ルビーに希望の笑顔を取り戻す、救いの手は…未だ届かない。

 




第3章、いかがでしたでしょうか。
リメイク前との変更が、ここから少しずつ発生します。
特に、トパーズの絶望からの逆転劇は…この1年で、りるかが参戦してくれたことで、描きたかったビジョンにピタッとハマる描写ができました。
…あんまり差に触れると、前作を読み返されてしまうので(恥ずかしいっ!)このくらいで。

次の第4章、ルビー救出のあれこれですが、現在も加筆修正中です。投稿が遅くなったらゴメンなさい…ですが、今描けるベストを追求中です。乞うご期待!
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