超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス   作:環 藍河

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第4章 絆のプロムナード! 街に愛された花嫁戦士

街を、森を、港を。

閂市の美しい風景を、そして住まう人々を全て見渡せる丘にそびえ建つ、結婚式場。

夕陽は既に水平線の向こうに沈み、ガーデンにはガス燈が灯され、幻想的なナイト・ウェディングの時間を迎える。

シャンデリアの照度も絞られ、代わって温かな間接照明に浮かぶ参列者席。

円卓に一つずつ配置されたスパイラルキャンドルは、主役二人が点す炎を、今か今かと待ちわびていた。

 

だが。

この披露宴に臨むのは…紅き超昂戦士が、たったひとり。

式が佳境を迎えても…そのともし火を主役とともに喜ぶ参列者は、一人たりともいない。

 

《ここで、祝電に代えまして、新婦ご友人、ご家族、近隣住民からのビデオレターをお披露目致します。ご歓談の相手もおりませんことですし、何とぞご清聴くださいませ。》

 

(アカリ…裏切ってゴメン…ゴメン…!)

「カンナ…!」

(でも…私、やっぱり…やっぱり、死にたく、ないよお…!!)

(すまぬ、アカリっち…。私の家族も標的なんだ…。)

「…よっしー…。」

(もう…私たちは、君の友とは名乗れない。この縁も今宵限りにさせてくれ…。)

 

(あなたが選んだ道なら、父さんも母さんも応援するわよ。それは今も、変わらない。)

「お…お母さんっ!?」

(でもね…娘の命が危険に晒される道まで、応援するのはムリよ。

アカリ…選ぶのよ。

超昂戦士をすっぱり辞めて、私達の家に戻るか。

それともこのまま戦うか。ただし、それなら私たちとの親子の縁を切ってからになさい。)

 

(すまねえ…うちにも子や孫がいてなあ…こいつらのためにゃあ、店を護らにゃなあ…。)

「に…肉屋のおじさんっ!」

(今までは壊されてもダイビートが補填してくれたけど、アルダークがあんなに復活しちまっちゃあ、もうムリだよなあ…?

わかってくれよ、未来が人質なんだ…!)

 

コマンダーがディープフェイクで合成した映像は、アカリのかけがえない人々の…護り続けてきた人々の、掌返し。

気力みなぎるいつものルビーなら、こんな虚構に心揺さぶられはしなかったであろう。

(み…みんなが、こんなこと言うもんかあっ! こんなウソに、騙されないっ!)

そう一喝し、不屈の闘志で罠を打ち破ったことだろう。

 

だが、今の…仲間と分断され、孤立し、精神攻撃電波にじゃぶじゃぶに侵されたルビーは…もはや挫けかけ。

そしてルビーは…最後の気力を振り絞り、独白する。

 

「みんな…謝らないで。

…安心して。みんなが私と一緒にいられなくても、それでも私は…街のみんなを、これからも、変わらず護るよ。たとえ私が…ダイビート最後の戦士になっても。

だって…これは私のやりたいこと。

みんなの平和な生活と、笑顔が続くことが、私の幸せだから…。」

 

そうだ。

事故で脚の機能を失い、未来の希望を失った、かつての私。

でも、そんな私を励まし、背中を押してくれた…学園の、そして街のみんな。

 

だから、護りたかった。

この街を侵略し、破壊し、みんなを泣かせ苦しめる、悪の手から。

みんながくれた私の未来を、今度はみんなに返すんだ。

 

だから、見返りなんていらない。

「ありがとう」は、私の言葉。

みんなからは、もう十分もらったんだから…。

 

 

新婦を天窓から祝福する、ステンドグラスの聖母。

それなのに、ルビーの健気な…慈悲に満ちた笑顔を見る者は、ひとりもいない。

 

だから。

(でも…、その平和の、すみっこでいいから…

 私も…その中に少しだけ…居たかったなあ…)

 

ルビーが落とした涙を…溢れた悲嘆を見る者も、また居なかった。

 

戦い続けても、護り続けても。

何万人、何億人を救っても。

そこにもはや、園崎アカリの居場所は、無い。

ならば私は、何のために拳を振るうのか。

隣に寄り添う人も無しで、このまま、ずっと…?

 

《それでは、新婦エスカルビー様おひとりの、ケーキ入刀でございます。》

「えっ…? …ひっ…!!」

コマンダーのアナウンスを合図に、無人の電動キャスターが音も無く運んできた、五段重ねの巨大なケーキ。

伴侶と家族を生涯飢えさせない、誓いのファーストバイト。そんな清き願いを込めたひと口を取り分ける、大きなケーキナイフは…

メッセージプレートと、2つのデコレーション人形の胸を貫き。

その幸せをあざけり笑い、踏みにじるようにケーキに突き立てられていた。

 

ジオラマのように精巧なケーキは、廃墟と化し陥落したダイビート基地を模した特製品。

絶望の表情とともに串刺しで重なる人形は…トキサダとルビー。

プレートには、ダイビートのロゴと…

 

 ”Brave Beat fighter Esca Ruby

 Death - Jun.30th.2023”

 

今日の日付が命日と刻まれ、ナイフで中央からえぐられ…さながらルビーの墓銘碑。

 

「…あはっ…ああっ…。」

ルビーは力なく、うなだれ。

「…ダメだ、こんなの…。」

遂にその心が孤立に耐えかね、絶望は声にならず、瞳から…止めどなく零れ落ちていく。

 

《新婦・エスカルビー様。その悲しみから解き放たれるためのナイフは、目の前にございます。

さあ、どうぞケーキから抜き取り、その刃を…ご自身の胸に突き立てるのです!》

「…っ!!」

 

シルバーの…刃渡りは1mほどもあろうか。巨大なウェディングケーキさえも小さく見える、そのケーキナイフ。

柄にリボンとコサージュをあしらった、本当なら夫婦の幸せを切り拓く刀は、残酷なまでに鋭利で。

いっそこのまま、この心臓ごと、悲しみを突き破ってくれたなら…!!

 

遂にルビーは…コマンダーのたぶらかしに乗せられるまま、ナイフを引き抜き。

ナプキンでクリームを拭うや、柄をシャンデリアの見守る天井へ向け。

そして切っ先を…薄い戦闘スーツが僅かに覆う、自らの胸元へ。

 

(これで…終わるの…? 誰にも届かない、この先もずっと独りの、戦いが…?)

その手は震え、花嫁は泣き濡れる。

イヤなのに。ダメなのに…!

憔悴と悲嘆は、ルビーから正常な判断力を根こそぎ奪っていた。

 

「誰か…、誰かぁ……!!」

 

 

  ばんっ!

 

 「ルビーっ! すまないっ、待たせたっ!」

 「…っ!!」

 

 固く閉ざされたセレモニーホールの扉が、突如突き破られる。

 バージンロードに立ち、絶望と希死の淵のルビーをとどめる、熱い絶叫。

 

 「ちょ…長…官…?」

 

 だっ…がばっ、ずばっ!

「ふんっ!」…ぼきっ。

 

トキサダは駆け寄り…ルビーから禍々しいナイフを奪い、憤怒とともにケーキを一刀両断。

まやかしの墓標は居合い切りの巻き藁のごとく崩れ落ち、そのナイフも、トキサダの膝でへし折られ…ともに消え失せた。

 

 「独りなものかっ! エスカルビーが…独りなものかあああっ!!」

 …ぎゅう…っ!

 「あ…、ああっ…!」

 救いのヒーローは、花嫁を偽りの孤独ごと抱きしめ…その凍てついた心を、熱く溶かす。

 

 「ルビー…見るんだ。

 君を祝福する人が…こんなにもいるんだ!」

 

 ばんっ! ばたあんっ!

 

「へいアカリっ、長官さんとアツアツのとこ、空気を読まずに失礼すっぞ!

 唯一無二の友人代表その1、カンナさん! ご招待にあずかり只今参上だあっ!」

「…唯一なのに『その1』とはこれいかに。…まあよかろう。

 続けてこちらは唯我独尊、友人代表その2・よっしーさんだ。」

 

…。

……?!!

「…ほへっ…?」

 

「アカリっち…ズッ友の祝福、今日はとことん受け止めてもらうぞ。…あ、ご祝儀は出世払いで。」

「な…なあっ…??!」

 

カンナとよっしーに続き、押し寄せるのは…

「うわ〜…、この式場、中はこんななんだ…」

「やだっ、アガる〜。園崎さん、羨ましいっ」

「園崎ー、クラスみんなで来たぜっ!」

「お前はタダメシ食いたいだけだろー」

制服姿の同級生数十人と担任。

 

 「…ど、どうしてみんな、ここに来てるのーーーーっ!?」

 

ルビーの赤面などお構いなし。

そんな学校関係者御一行様のさらに後方から。

 

「あ〜、まだるっこしいなあ! おい、手前の扉から入っちまおうぜ!」

 

 ばあん! ばたんっ!

 

「おうアカリちゃん、こんな日までエスカルビーかい? 早いとこドレスに着換えてきなよっ?」

「早く見たいわねえ〜、三が日に晴れ着で暴れた、あのアカリちゃんが…ウェディングドレスなんて…ううっ…!」

 

「に…肉屋のおじさん、呉服屋のおばさんっ!? どうして…?」

「いやあ、何でもアカリちゃんのブライダル? セレモニーやるって連絡回ってきたからよお。」

「お…お店、お休みじゃないでしょ?!」

「おう、だから本日夕方の閂中央商店街は、会員店舗すべて、臨時休業さ!

 今ごろ仕事帰りのお客さん、晩メシに困ってるかもなっ、がははははっ!!」

「アカリちゃんの晴れの日に、仕事なんざ手に付くわけがないよっ!」

「祝い酒も生花も、一番いいヤツ持ち込みだかんね、ドォーンと盛大にやろうな!」

(は…花屋のおじさんっ、酒屋のおじさんも…!)

これまた数十人の、ご近所様方御一行。

 

「すみませ〜ん、ちょっと、先に私たちを通して下さい、新婦の父と、母です〜。」

「お…お父さんっ? お母さんっ?!」

「全く…長官さん! 皆さん巻き込む大イベントなんですから、もっと早く言ってくださいよ。礼服だってすぐには整いませんし、女性は美容室だって必要なんです! おじいちゃんたちを呼ぶのだって、グループメッセージ一本ってわけにいかないんですから…!」

「は…はい、すみませんでした…。」

さらに、礼服の装いで参戦した、十数人の園崎家御親戚一同。

ここまでだけで、都合、100人。

 

……

この後も、引きも切らない鈴なりの参席者の行列だが、少し時間は遡り。

 

『長官さん、長官さーん。イデアの壁の解析、一丁あっがりーっ!!』

「速いなあ! それで、結果は?」

『いや~、思いのほか簡単だったわあ。

 まずは転送先だけど、ポイントC-3、閂市郊外のガーデンヒルズウェディングホール。』

「! そこは…!」

『うん、例のダイビート協賛企業の系列。今年はライカちゃんやら春霞さんやら、さんっざん協力したアソコだね。』

「うっ…!」

…メイリーズ・ワンダフルランドの悪夢が未だ醒めないトキサダは、苦虫を噛み潰した表情に。

『…逆にいいんじゃない? 今回はコマンダーに占拠されて迷惑してるんだから、解放すれば貸し1つだもん! やっちゃえ、長官さん!』

…貸しはとっくに作りまくり、むしろ既に恩の売り越し超過、貸し倒れの危機なのだが。

 

『次に壁の突破方法。アレは使用者、つまり今回はコマンダーね、その欲望を壁の中で具現化する装置。

 だから、破るにはその真逆をブチかまして、中和させればオッケー!』

「…つまり?」

『なーんかアイツら、【最悪の披露宴を届ける】とかほざいてたよねー。

…だったらこっちは、最高の披露宴をプロデュースしてあげればいいのよっ。』

 

  最高の、披露宴。

 

「そ…そんなことで、破れるのか? あのイデアの壁が?」

『うん、シミュレーションも完璧!』

 

つまり…必要なのは、ルビーを祝福する一般参列者。

 

ルビーの鍛え抜いたフィジカルと、D2エナジー全出力で放つストライク・エスカレーションでも開かなかった、イデアの壁で牢獄化された式場の扉。

最初に正面を開けた人物こそ、ダイビート最強戦士のトキサダだったが…

その突破力の源は、超昂戦士でも何でもない一般人たちの、ルビーへの心からの祝福だった。

 

『とりあえず、いちばん大きな披露宴会場だけ、ルビーとコマンダーのやり取りがダダ漏れてて傍受可能なんだけどねー。

…どうもあのヤロウ、ルビーの披露宴にだーれも来ない、みんなルビーを見捨てて【貴様みたいな危ない女は永遠に孤独だあ!】とか、あり得ない洗脳をかましちゃってるみたい。』

「なっ…何だと…っ!」

 

『だからねー、こっちからはきちんと参列者を呼んで、ハッピーウェディングを挙行すればオッケー…なんだけど…?』

 

……

「…ふっ…。

 ふふっ…ふははははっ…!」

 

『あ…あれっ? 長官さーん? もしもーし?』

 

その胸の奥底に湧き上がるは…魔王の狂気と憤怒。

そうか。あの馬鹿は。

俺の戦士を…ルビーを愚弄し、罵り、蔑み…泣かせているのか。

 

「なあ、さやかさん。壁を破れば反動がコマンダーに返るんだよな?

それなら…ルビーが幸せを感じれば感じるほど、コマンダーへの反撃は強烈になるのか?」

『…えっ? …まあ、そうなるの…かな…?』

「…わかった。ならばダイビートの全力で、この披露宴を成功させてやる!」

『えっ…えええええーーーっっっ!?!』

 

トキサダは…かつて無いほどに怒り、わなないていた。

(覚悟しろ、コマンダー。その愚行の報い、百倍にも万倍にもその身で受けよ…!)

 

「ふはっ…ふははっ、ははははははあああーーーーっっ!!」

 

エリスやキリカがいたなら…?

いや、そこに居合わせた者ならすべてが戦慄する、継彦が乗り移ったかのごとき魔王ぶりであった。

……

かくしてトキサダはありったけのアカリの知人を招待し…設立2年半のダイビートの総力を結集した救出作戦を敢行。

〘ロビーにてお待ちの、ご参席の皆様方にご案内申し上げます。大変長らくお待たせ致しました。式場正面および左右の扉から、どうぞ順番にお進み下さいませ。〙

先程までのコマンダーとは全く異なる、慈愛溢れるアナウンスを合図に。

ダイビート職員が。街の人々が。2年半を共闘した戦士たちも、中にはかつて刃を交えた者たちまで。

ルビーと縁深いあまたの参列者が、堰を切ったようにホールに進撃を始めた。

 

…だが。

 

「…待って! みんな!

 待ってくださいっ!!!」

 

突如、大きな式場に響く、新婦の嗚咽。

「…ルビー?」

 

「みんな…来てくれて、ありがとう…。

でも…ダメだよ、みんな。

だって私、超昂戦士だよ…。

世界中に正体を知られちゃって…いつも敵に狙われて…。 

それなのに、今までみたいに私につきあったら…みんな、みんな私の巻き添えで危険な目にあって…殺されちゃうかもしれないんだよ…!

私…みんなと違う…

もう私…普通の女の子じゃないんだよ…!」

 

まだコマンダーの精神攻撃のダメージが残る、弱気のルビーは…悲痛のまま、皆をたしなめる。

 

……

「…違うよ。エスカルビーは…園崎さんは、私たちとおんなじだよ…!」

「えっ…?」

絞るように声を上げたのは、学園の同級生。

だが、その勇敢な声に誰もがうなずき…我も我もと言葉を継ぐ。

「園崎は…俺たちが知ってる、アルダークが攻めてくる前の園崎と、何も変わらないよ。

エスカルビーになって、アルダークやディストバーン、オルタナスタイン、ノロイと戦った今でも…。」

 

「私…エスカルビーは特別だと思ってた。

すごいパワーで、人間じゃ勝てない敵でもひょいっと叩き潰しちゃう…

私たちとは全然違う、スーパー戦士なんだって…。

でも、そうじゃなかった…。エスカルビーは、一緒の学校の…私たちと同じ女の子で…。」

「侵略者に殴られても、吹っ飛ばされても、立ち上がって…。ルビーなら当たり前だと思ってたけど…違うんだ。

園崎さんは…怖いのに、痛いのに、戦ってる。刺されて死にかけても、また戦って…ううっ…!」

(あ…!)

 

「だからさ…俺たちもう、エスカルビーに全部おまかせになんか、できないよ…。」

「体張って、命賭けてる園崎さんを…他人事なんて思えない!」

「…一緒に私も戦う、なんてできないけど…。

今日みたいに、私たちがルビーに何かできるときは…絶対いっしょに頑張る!」

「大したことはできねえけど…少なくとも、襲われるのが怖くて園崎を見捨てるなんて、イヤだっ!」

「そうだよ…ルビーが私たちを護りたいって言ってくれてるのに…その私たちがカッコ悪いこと…できないよ!」

 

我も、我もと。同級生達がルビーと、絆を誓う。

(あ…ああっ…!)

その熱さに、ルビーの心の檻は少しずつ氷解するが…

 

 

 「ちょっとごめんよ。」

 

  つかつかつか…ぶんっ。

 (えっ…?)

 

  ごちいいんっ!! 

 

 商店街のおじさんの一人が、ルビーに歩み寄るや否や…

 真上からルビーの脳天に、げんこつ一発。

 

 【{(〔えええええーーーーーっっっっ!?〕)}】

 

「いっ…痛あああーーーーっっ?!」

「いらねえ気遣いしてんじゃねえよ、アカリちゃん! 水くせえなあ!」

「お…おじさんっ!?」

 

ダイビート最強の超昂戦士が…半べそで頭を抱えてお説教を受けている。

 

「自分のせいで危険だから、もう近寄るなって? バカ言うな!

こちとら客商売だ。スジの悪い連中くらい、自分たちでどうとでもする!

そんなんでアカリちゃん見捨てるような根性なし、うちには一人もいねえんだよ!」

「おうよ、俺らにしてみりゃ、アカリちゃんは今でもおチビちゃん。いっつも誰かの世話焼いて、いっつもムチャしてばっかりの、昔のまんまだよっ!

それが、俺たちを巻き込みたくない? 冗談言うない、まだまだアカリちゃんなんか、俺たちが見守らなきゃ危なっかしいんだ、頼まれたって見放すもんかよ!」

「え…えええーーーっ!?」

 

「へへっ…アカリちゃん、ちょーっとエスカルビーに変身して、ちょーっと地球救ったくらいじゃ、おじさんたちを気遣うにゃあ、十年早いなあ。」

「全くだよ。というより、アカリちゃんがエスカルビーだってわかって、すっごく納得したわあ。

だってあの子、アカリちゃんそのまんまだもの。正義感と人思いの固まりで、いつも一生懸命で…。」

 

人類の救世主を、寄ってたかって子ども扱い。

 

「…だからね…。

どんなに強くなったって、あたしらは今も、この先も…アカリちゃんを放っとけないんだよ…!」

 

それでも、今のアカリには。

(あ…あああっ…!!)

何よりも心の凍傷を癒やす温もり。

 

「なあ、忙しくなっても、また商店街、来てくれよっ。コロッケ揚げていつでも待ってるし、定休日でも歓迎するぜ!」

「エスカルビーになっても、倉庫係や買い出し、また来なよ? 絶対だよっ!」

「何言ってんの。うちの前が通勤ルートだろ? アカリちゃん、明日からも通りかかったら、挨拶しとくれよ!」

 

さっきまで、テロの脅しで孤独を強いられたアカリの、絶望の涙は。

 

(…おじさんのゲンコツ、昔は痛くて怖いだけ…だったのに…!)

 

もはや、敵に屈しない強い絆に喜び震える、嬉し涙に変わっていた。

 

……

《そ…そんなっ、そんなバカなあアアアあっっっ!!!》

遠隔でルビーを孤立させ追い詰めたコマンダーは、今度は自らが壁の中で孤立していた。

《ありえない…エスカルビーに、仲間が…こんなに…ぃっ!!

認めないいいっ!! オレだけに微笑んだルビーがああっ!! 浮気いっ! 二股あっ!》

 

この男…一度(モブとして)ルビーに助けられただけである。

自分勝手に恋慕の情を寄せ、しかしルビーの取り巻きの多さに、自分の偏愛が届かない逆恨みを抱いたキモ男は…闇の深さに付けいられ、コマンダー墜ちしていた。

 

《こ…この淫乱悪魔めええっ!! 今度こそすべての縁を断ち切ってやるうううっ!

そうさっ、永遠にオレだけの…オレだけのルビーになれえええっ!!》 がっ…がちゃっ。

 

 ぷすっ…ぷすぷす…ぼんっ。

《え…へっ?!》

 …がしゅっ!

《う…ぎゃあああーーー〜〜〜っっ!?》

 

…どさっ。

 

イデアの壁を強化しようと出力を上げるも、既にルビーたちにはその攻撃は届かない。

そればかりか、壊された壁の反動が上乗せされ…コマンダーは地獄の孤独に墜ちた。

 

……

 

(長官さーん、ユーノさーん? 敵コマンダー反応、ぜんぶ消滅したよー。)

さやかの報告もそこそこに。

「ルビー、よく耐えたわ。お疲れさま。」

「ユーノさん…ユーノさんも、来てくれたんですか!」

「ええ…でも、作戦はこれからよ。」

(…作戦?)

 

おもむろに式場のマイクを取り、ユーノが告げる作戦。

 「これから、新郎・戦部トキサダ、新婦・エスカルビーこと園崎アカリの…

  模擬披露宴を挙行します。」

 

……

 

「…はい?」

 

 披露…宴? 私が?

 …誰と?

 

 …?

 こくり。

「………?!」

 

口をあんぐり、発する言葉を失いながら…ルビーはトキサダを指さし。

覗き込む眼差しに、トキサダは無言で…強くうなずいて返す。

 

「えええええーーーーーっっっっ!?!」

 

 




筆者です。第4章、ルビー救援部隊の到着シーンを大幅改訂でお届けします。

リメイク前の展開や描写…筆者の理念っぽいモノ、コマンダーを論破するような理屈が先に立ってしまって、かと言って読者さまがスッキリするようなロジックでもなかったような…。
1年経って筆者のスキルや文章構成能力が僅かに伸びた分だけ、考え抜いて読者さまをスッキリさせる、もしくはハートウォーミングさせるように、いま描ける精一杯を追求したら、文章量も展開もかなり変わりました。いかがでしょう?

そんなこんなのクライマックス、次回第5章はいよいよルビーの披露宴、そして(第6章に分けるかもしれませんが)R-15相応の書き足しを予定しております。今しばらくお待ちを、そしてご期待を!
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